33 / 99
エリクルside
しおりを挟む
「少し気になったんだけど、いいかい?」
僕が声をかけたのは、この地に住まうとされている黒龍の神である。
人々に敬われた龍の姿をした神は、それはもう神々しい姿をしていた。
先ほどまで親である白龍に甘えていたが、今は気晴らしなのか、外に出ていた。
「君さ、人をたくさん殺したらしいね」
「………」
「ああいや、責める気はないんだ。ただ、本当かなって気になってさ。とてもそうは思えなくて」
「………」
神は無言のまま、琥珀色の瞳でじっと僕を見上げてみせる。
言葉は通じているんだろう。
だが、僕にはロールちゃんのような、神と話す能力などない。
「本当だ」
「!」
すると、後ろから白龍がやってきた。
アルと契約したという、もう一人の神。
いや、一匹というべきなのか。
「昔は此奴もやんちゃでの。雨を降らせたはいいが、間違って洪水にしたりもした。人間に恨まれれば、拗ねて降らせない時もあった」
「そうですか」
白龍はそれを咎めることはない。
当たり前といえば当たり前だろう。
この神が残酷なのではない。
善悪などはなから存在しない、無邪気な存在なだけ。
別に悪いこととは思っていないけれど。
「お主、変わっとるの」
「僕が?」
「そうだ。普通の人間なら酷い、とかやり過ぎだ、とか、責めるものだろう」
「僕は別にそう思わない」
「冷たい奴だの」
「あなたがそれを言うのか」
人のことを言えないだろう。
白龍を睨んでやれば、「はっ」と白龍は鼻で笑った。
「さすがあのアルジェルドと友人をやれるだけあるの」
「……まぁね」
そこは僕の自慢でもある。
あのアルと唯一無二の親友であり、お互いを高め合う存在である。
何よりアルといれば楽しい。
「いい奴かは知らないけど」
「乙女に一年間も何も言わなかった奴だぞ? なぜあいつはあそこまで口下手なのだ」
「そういう奴だ。僕がフォローしようにも、今回の件は庇いきれない」
「お主ーー乙女のこと、別に好きではないだろう」
「好きだよ?」
間髪入れずに答えれば、白龍は「違う」と否定した。
「親愛は感じるが、アルジェルドのような恋慕は感じぬ。お主、乙女に一度求婚しただろう」
神は何でもお見通しとでも言うのか。
つくづく神は便利で羨ましい。
「あれを求婚と言うのかわからないけどね」
「お主は本気ではなかった。なぜ、そんなような行動をとった?」
「別に」
「友人の尻拭いでもする気だったのか?」
「ラティアンカ嬢が、あのままでは可哀想だと思っただけだ」
嘘などついていない。
ラティアンカ嬢がアルとの関係に疲れていたのは事実だし、何より哀れだと思った。
下手な男に渡すより、もらってしまったほうがいいだろうと。
「お主の軽薄さは気に入らん」
「そりゃどうも」
「アルジェルドを焚き付けたつもりか」
「そんなわけないじゃない」
「……裏の読めん男は嫌われるぞ」
「構わない。今のところ、恋愛感情を持つ人はいないから。それに、僕だって神様はあんまり好きじゃないんだ」
おっといけない。
つい口を滑らせてしまった。
誤魔化すように笑って見せれば、白龍も作った笑顔で笑い返してくる。
「安心せい。私はお主をどうこうする気はない」
「よかったよ。僕なんて、あなたが怒ればすぐ死んじゃうからね」
「自分の命なんてどうでもいいんだろう」
「僕だって命は大事さ」
「薄っぺらい奴」
神がここまで毒を吐くとは、珍しい場面が拝めたのではないだろうか。
何より神は嘘をつかない。
僕のことを、白龍はきっと嫌いなんだろう。
「まあいい。お主に頼みがある」
「僕に?」
「乙女とアルジェルドを、必ずくっつけろ」
「……わかってるよ」
僕がどうこうしなくたって、あの執着は筋金入りだ。
ラティアンカ嬢だって意地を張っているけれど、すぐ仲良くなるだろう。
「アルジェルドだけでは、また妙な方向に転がりかねん。乙女と誤解して引き裂かれれば、両者ともあまり幸せにはなれんだろ。仮にも、命の恩人なのだ」
「クルゥ」
同意するように、黒龍のほうが喉を鳴らした。
わかってる。僕だって、アルとラティアンカ嬢には幸せになってほしい。
もちろん、ロールちゃんにも。
「それと。あまり、自分を偽るなよ」
「……お節介な神様だな」
「世話くらい焼いたっていいだろう」
「はいはい」
自分を偽るな、か。
それはラティアンカ嬢に言うべきじゃないのか?
神の考え事は、いつまで経ってもわからない。
「それじゃ、僕らはこれで失礼させてもらうよ。アストロにいかなきゃだし」
「……ああ」
物言いたげな神を置いて、僕達は旅を再開する。
その視線に、気づかないフリをして。
「準備できたよっ! ほらっ、早く乗っちゃいな!」
そう急かしたのはスズカさんだった。
ロールちゃんはもっと収穫祭を楽しみたかったらしく、残念そうにしている。
「でも、さっきの騒動でいつ誰がやってきてもおかしくない。お偉いさんと面倒なことにならない内に行きな」
咄嗟に黒龍を睨めば、サッと顔を逸らされる。
後ろめたいことをした自覚があるんだろう。
神の加護とは寵愛を示す。
黒龍とやらもラティアンカ嬢を気に入り、印をつけようとしたに違いない。
アルが嫌がるはずだ。
「本当に、ついてくるのですね」
「そうだ」
ラティアンカ嬢とアルが話している。
元々虐げられていたわけでもないので、特にラティアンカ嬢も緊張している様子はない。
でも、ダメだな。
言いたいことだけ全部言って満足したアルが、相槌を打つだけになってる。
あれじゃあ進むものも進まない。
「ええと……」
「………」
ほら、無言になった。
ここは割って入ってやろう。
「お二人さん、何を話しているんだい?」
「エリクル様」
「別に。大したことじゃない」
僕が入ったことによって、アルが不機嫌になったことがわかる。
親友にまで嫉妬するのはやめてほしい。
別に下心はないんだから。
話題を適当に繋げていけば、会話は再開する。
離れる間際に、そっとアルにアドバイスをした。
「ちゃんと話せよ。前から言ってるだろ?」
「………」
ヤツからの返事はなかった。
ラティアンカ嬢といるだけで幸せだと言わんばかりに、頬を緩ませている。
「気持ちが傾くといいんだけどな……」
面倒なゴタゴタで、疲れた気がする。
風魔を浮き上がらせ、ある程度操作をして休もうとすると、ロールちゃんが温かい飲み物を持ってきてくれた。
「これ、どうぞ!」
「ありがとう、ロールちゃん」
「えへへ」
彼女は本当に優しい子だ。
彼女の記憶が戻ればいいと思うのも本心だ。
だけど。
彼女の記憶が戻った時、僕は一体どうすればいいのかはわからない。
僕が声をかけたのは、この地に住まうとされている黒龍の神である。
人々に敬われた龍の姿をした神は、それはもう神々しい姿をしていた。
先ほどまで親である白龍に甘えていたが、今は気晴らしなのか、外に出ていた。
「君さ、人をたくさん殺したらしいね」
「………」
「ああいや、責める気はないんだ。ただ、本当かなって気になってさ。とてもそうは思えなくて」
「………」
神は無言のまま、琥珀色の瞳でじっと僕を見上げてみせる。
言葉は通じているんだろう。
だが、僕にはロールちゃんのような、神と話す能力などない。
「本当だ」
「!」
すると、後ろから白龍がやってきた。
アルと契約したという、もう一人の神。
いや、一匹というべきなのか。
「昔は此奴もやんちゃでの。雨を降らせたはいいが、間違って洪水にしたりもした。人間に恨まれれば、拗ねて降らせない時もあった」
「そうですか」
白龍はそれを咎めることはない。
当たり前といえば当たり前だろう。
この神が残酷なのではない。
善悪などはなから存在しない、無邪気な存在なだけ。
別に悪いこととは思っていないけれど。
「お主、変わっとるの」
「僕が?」
「そうだ。普通の人間なら酷い、とかやり過ぎだ、とか、責めるものだろう」
「僕は別にそう思わない」
「冷たい奴だの」
「あなたがそれを言うのか」
人のことを言えないだろう。
白龍を睨んでやれば、「はっ」と白龍は鼻で笑った。
「さすがあのアルジェルドと友人をやれるだけあるの」
「……まぁね」
そこは僕の自慢でもある。
あのアルと唯一無二の親友であり、お互いを高め合う存在である。
何よりアルといれば楽しい。
「いい奴かは知らないけど」
「乙女に一年間も何も言わなかった奴だぞ? なぜあいつはあそこまで口下手なのだ」
「そういう奴だ。僕がフォローしようにも、今回の件は庇いきれない」
「お主ーー乙女のこと、別に好きではないだろう」
「好きだよ?」
間髪入れずに答えれば、白龍は「違う」と否定した。
「親愛は感じるが、アルジェルドのような恋慕は感じぬ。お主、乙女に一度求婚しただろう」
神は何でもお見通しとでも言うのか。
つくづく神は便利で羨ましい。
「あれを求婚と言うのかわからないけどね」
「お主は本気ではなかった。なぜ、そんなような行動をとった?」
「別に」
「友人の尻拭いでもする気だったのか?」
「ラティアンカ嬢が、あのままでは可哀想だと思っただけだ」
嘘などついていない。
ラティアンカ嬢がアルとの関係に疲れていたのは事実だし、何より哀れだと思った。
下手な男に渡すより、もらってしまったほうがいいだろうと。
「お主の軽薄さは気に入らん」
「そりゃどうも」
「アルジェルドを焚き付けたつもりか」
「そんなわけないじゃない」
「……裏の読めん男は嫌われるぞ」
「構わない。今のところ、恋愛感情を持つ人はいないから。それに、僕だって神様はあんまり好きじゃないんだ」
おっといけない。
つい口を滑らせてしまった。
誤魔化すように笑って見せれば、白龍も作った笑顔で笑い返してくる。
「安心せい。私はお主をどうこうする気はない」
「よかったよ。僕なんて、あなたが怒ればすぐ死んじゃうからね」
「自分の命なんてどうでもいいんだろう」
「僕だって命は大事さ」
「薄っぺらい奴」
神がここまで毒を吐くとは、珍しい場面が拝めたのではないだろうか。
何より神は嘘をつかない。
僕のことを、白龍はきっと嫌いなんだろう。
「まあいい。お主に頼みがある」
「僕に?」
「乙女とアルジェルドを、必ずくっつけろ」
「……わかってるよ」
僕がどうこうしなくたって、あの執着は筋金入りだ。
ラティアンカ嬢だって意地を張っているけれど、すぐ仲良くなるだろう。
「アルジェルドだけでは、また妙な方向に転がりかねん。乙女と誤解して引き裂かれれば、両者ともあまり幸せにはなれんだろ。仮にも、命の恩人なのだ」
「クルゥ」
同意するように、黒龍のほうが喉を鳴らした。
わかってる。僕だって、アルとラティアンカ嬢には幸せになってほしい。
もちろん、ロールちゃんにも。
「それと。あまり、自分を偽るなよ」
「……お節介な神様だな」
「世話くらい焼いたっていいだろう」
「はいはい」
自分を偽るな、か。
それはラティアンカ嬢に言うべきじゃないのか?
神の考え事は、いつまで経ってもわからない。
「それじゃ、僕らはこれで失礼させてもらうよ。アストロにいかなきゃだし」
「……ああ」
物言いたげな神を置いて、僕達は旅を再開する。
その視線に、気づかないフリをして。
「準備できたよっ! ほらっ、早く乗っちゃいな!」
そう急かしたのはスズカさんだった。
ロールちゃんはもっと収穫祭を楽しみたかったらしく、残念そうにしている。
「でも、さっきの騒動でいつ誰がやってきてもおかしくない。お偉いさんと面倒なことにならない内に行きな」
咄嗟に黒龍を睨めば、サッと顔を逸らされる。
後ろめたいことをした自覚があるんだろう。
神の加護とは寵愛を示す。
黒龍とやらもラティアンカ嬢を気に入り、印をつけようとしたに違いない。
アルが嫌がるはずだ。
「本当に、ついてくるのですね」
「そうだ」
ラティアンカ嬢とアルが話している。
元々虐げられていたわけでもないので、特にラティアンカ嬢も緊張している様子はない。
でも、ダメだな。
言いたいことだけ全部言って満足したアルが、相槌を打つだけになってる。
あれじゃあ進むものも進まない。
「ええと……」
「………」
ほら、無言になった。
ここは割って入ってやろう。
「お二人さん、何を話しているんだい?」
「エリクル様」
「別に。大したことじゃない」
僕が入ったことによって、アルが不機嫌になったことがわかる。
親友にまで嫉妬するのはやめてほしい。
別に下心はないんだから。
話題を適当に繋げていけば、会話は再開する。
離れる間際に、そっとアルにアドバイスをした。
「ちゃんと話せよ。前から言ってるだろ?」
「………」
ヤツからの返事はなかった。
ラティアンカ嬢といるだけで幸せだと言わんばかりに、頬を緩ませている。
「気持ちが傾くといいんだけどな……」
面倒なゴタゴタで、疲れた気がする。
風魔を浮き上がらせ、ある程度操作をして休もうとすると、ロールちゃんが温かい飲み物を持ってきてくれた。
「これ、どうぞ!」
「ありがとう、ロールちゃん」
「えへへ」
彼女は本当に優しい子だ。
彼女の記憶が戻ればいいと思うのも本心だ。
だけど。
彼女の記憶が戻った時、僕は一体どうすればいいのかはわからない。
259
お気に入りに追加
6,224
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
【完結済み】婚約破棄致しましょう
木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。
運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。
殿下、婚約破棄致しましょう。
第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。
応援して下さった皆様ありがとうございます。
リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。
【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?
鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。
そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ……
※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。
※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。
※この作品は小説家になろうにも投稿しています。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました
鳴宮野々花@軍神騎士団長1月15日発売
恋愛
伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。
ところが新婚初夜、ダミアンは言った。
「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」
そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。
しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。
心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。
初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。
そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは─────
(※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる