11 / 104
第一章 勇者は親友、俺は平均魔法使い
第十話 水不足の原因
しおりを挟む
「長老様…」
訪れたのは、長老様の家。
皆が暗く沈んだ表情をしていたのが気になったのか、リューリャさんは、カストルさんに聞いた。
「何か…あったのですか?」
「…………」
静かに、答える。
「また井戸潰しだ…」
「!!」
ハッと息をのみ、手を口にあてた。
長老様も、顔を伏せ、俺に言った。
「すまないの…客人。この村には税を払えるほどの余裕はない。それでよくあの者に井戸を潰されるのじゃ…」
井戸潰し。
なるほど…そういうことだ。
最初この村に来たとき、リチャードさんは水不足にひどく苦しげな様子だったのにも関わらず、井戸はちゃんと役目を果たしていた。
あの、マクスリル様という奴が、毒の魔法で井戸を使えなくしていたのか。
「よくされるの。喉がカラカラになっても水がないし、家の中に水を配置するのも禁止されてる…」
ナナカの絞り出した声は、今までとは違い震えていた。
「また、死にかけるの?」
「そんなの嫌よ…!」
村人たちがざわめきはじめる。
これは、なんとかしないと…
「取得、なんとかなる?」
『…はい。ある条件を満たせば』
「条件?」
いつもより時間をかけて話す取得に、俺は違和感を抱いた。
『それは…青龍を召喚することです。青龍は普通、人には懐かない者。それはとても難しいもので…』
「ん?ちょっと待てよ。青龍だって?」
聞き覚えのあるワードに俺の耳は反応した。
青龍。
無詠唱の魔法を使う時に力をかしてくれたやつ!
「俺、知ってる!」
『なんと、そうですか!ではきっと大丈夫です!では、外に出てもらえます?』
「えっと…ここらへんでいい?」
『はい。充分です』
俺は、青龍召喚の為に外に出た。
村人たちは、一体何がこれから行われるのかを固唾をのんで見守っていた。
『では…召喚をするため、召喚陣を描きます』
「召喚陣?」
『タクヤ様と、ツカサ様が召喚された時にあった、あれです』
ああ!あれ!
なんか文字が書いてある丸い光るあれ!
召喚陣だったのか。
『では、このとうりに書いてください』
ヒュオッと目の前に現れたのは、難しそうな円に文字が色々書いてあるやつ。
思ったより時間はかかりそうだ。
「あの…これから、何をされるので?」
リチャードさんが、聞いてきた。
「これから、青龍を召喚するんですよ」
「青龍!?」
驚いてリチャードさんは、俺を見た。
「まさか青龍を…いえ、手伝います」
そして俺たちは、召喚陣を描き始めた。
「出来たっ!!」
出来上がった召喚陣を、村人はまじまじと見る。
「これで、青龍を召喚するのか?」
「そうだよ」
ナナカも興味深そうに俺と召喚陣を見比べる。
「次はどうすればいいの?」
『呪文を唱えるのです。呪文は、「召喚の加護」のおかげで頭に勝手に浮かびますよ』
召喚の加護。
そのためにあったのか。
「………下がってください」
村人たちに下がるよう促し、呪文を唱えだした。
「古の魔法よ!古き戦龍よ!
我を助けたまえ!我を守りたまえ!
雨よ、恵みよ、地にすべての輝きをもたらす安らかなる光よ!
いまここに集結せよ!
青龍、召喚!!」
次の瞬間、召喚陣からまばゆい光が溢れだし、俺たちを包んだ。
『ほほう…また会ったな。小さき者よ』
…この声は。
やはり。
「…青龍。さっきぶりだね」
召喚陣の上には、フヨフヨと浮く立派な龍がいた。
青龍にふさわしい空色の鱗に、金色のツノ。長く伸びる髭。
何よりも深い青の瞳。
「これが青龍…」
「なんて大きいんだ」
村人が目を見開いて見守る。
『さて、なんのようがある?』
「この村の毒を消し去って欲しいんだ。井戸に毒が放り込まれて水が飲めない」
『ほう』
青龍は大きい爪のついた手を顎にあて、さすった。
『…よかろう。だが、おぬしも協力してもらおう』
「協力?」
ふむ、と頷き答える。
『契約を』
「契約…リンディとしたやつか」
確か、相手の名前を呼ぶやつね。
『だが、我には名がない。おぬしがつけよ』
俺が?
う~ん…?
ダサいのしか思いつかない。
青~、青~、あお~、せい~…
「じゃあタツで」
『たつ』
「俺の友達の名前だよ」
昔飼っていた犬の名前をつけるのもどうかと思うが、いたしかたない。
『では…我が名は、タツ。いまここでタクヤ。おぬしと契約しよう』
とたん、ものすごく魔力が吸い取られた。
「…ぁ」
意識が薄れた。
「タクヤ!!」
「タクヤ様!」
その声を最後に、俺の意識は途切れた。
訪れたのは、長老様の家。
皆が暗く沈んだ表情をしていたのが気になったのか、リューリャさんは、カストルさんに聞いた。
「何か…あったのですか?」
「…………」
静かに、答える。
「また井戸潰しだ…」
「!!」
ハッと息をのみ、手を口にあてた。
長老様も、顔を伏せ、俺に言った。
「すまないの…客人。この村には税を払えるほどの余裕はない。それでよくあの者に井戸を潰されるのじゃ…」
井戸潰し。
なるほど…そういうことだ。
最初この村に来たとき、リチャードさんは水不足にひどく苦しげな様子だったのにも関わらず、井戸はちゃんと役目を果たしていた。
あの、マクスリル様という奴が、毒の魔法で井戸を使えなくしていたのか。
「よくされるの。喉がカラカラになっても水がないし、家の中に水を配置するのも禁止されてる…」
ナナカの絞り出した声は、今までとは違い震えていた。
「また、死にかけるの?」
「そんなの嫌よ…!」
村人たちがざわめきはじめる。
これは、なんとかしないと…
「取得、なんとかなる?」
『…はい。ある条件を満たせば』
「条件?」
いつもより時間をかけて話す取得に、俺は違和感を抱いた。
『それは…青龍を召喚することです。青龍は普通、人には懐かない者。それはとても難しいもので…』
「ん?ちょっと待てよ。青龍だって?」
聞き覚えのあるワードに俺の耳は反応した。
青龍。
無詠唱の魔法を使う時に力をかしてくれたやつ!
「俺、知ってる!」
『なんと、そうですか!ではきっと大丈夫です!では、外に出てもらえます?』
「えっと…ここらへんでいい?」
『はい。充分です』
俺は、青龍召喚の為に外に出た。
村人たちは、一体何がこれから行われるのかを固唾をのんで見守っていた。
『では…召喚をするため、召喚陣を描きます』
「召喚陣?」
『タクヤ様と、ツカサ様が召喚された時にあった、あれです』
ああ!あれ!
なんか文字が書いてある丸い光るあれ!
召喚陣だったのか。
『では、このとうりに書いてください』
ヒュオッと目の前に現れたのは、難しそうな円に文字が色々書いてあるやつ。
思ったより時間はかかりそうだ。
「あの…これから、何をされるので?」
リチャードさんが、聞いてきた。
「これから、青龍を召喚するんですよ」
「青龍!?」
驚いてリチャードさんは、俺を見た。
「まさか青龍を…いえ、手伝います」
そして俺たちは、召喚陣を描き始めた。
「出来たっ!!」
出来上がった召喚陣を、村人はまじまじと見る。
「これで、青龍を召喚するのか?」
「そうだよ」
ナナカも興味深そうに俺と召喚陣を見比べる。
「次はどうすればいいの?」
『呪文を唱えるのです。呪文は、「召喚の加護」のおかげで頭に勝手に浮かびますよ』
召喚の加護。
そのためにあったのか。
「………下がってください」
村人たちに下がるよう促し、呪文を唱えだした。
「古の魔法よ!古き戦龍よ!
我を助けたまえ!我を守りたまえ!
雨よ、恵みよ、地にすべての輝きをもたらす安らかなる光よ!
いまここに集結せよ!
青龍、召喚!!」
次の瞬間、召喚陣からまばゆい光が溢れだし、俺たちを包んだ。
『ほほう…また会ったな。小さき者よ』
…この声は。
やはり。
「…青龍。さっきぶりだね」
召喚陣の上には、フヨフヨと浮く立派な龍がいた。
青龍にふさわしい空色の鱗に、金色のツノ。長く伸びる髭。
何よりも深い青の瞳。
「これが青龍…」
「なんて大きいんだ」
村人が目を見開いて見守る。
『さて、なんのようがある?』
「この村の毒を消し去って欲しいんだ。井戸に毒が放り込まれて水が飲めない」
『ほう』
青龍は大きい爪のついた手を顎にあて、さすった。
『…よかろう。だが、おぬしも協力してもらおう』
「協力?」
ふむ、と頷き答える。
『契約を』
「契約…リンディとしたやつか」
確か、相手の名前を呼ぶやつね。
『だが、我には名がない。おぬしがつけよ』
俺が?
う~ん…?
ダサいのしか思いつかない。
青~、青~、あお~、せい~…
「じゃあタツで」
『たつ』
「俺の友達の名前だよ」
昔飼っていた犬の名前をつけるのもどうかと思うが、いたしかたない。
『では…我が名は、タツ。いまここでタクヤ。おぬしと契約しよう』
とたん、ものすごく魔力が吸い取られた。
「…ぁ」
意識が薄れた。
「タクヤ!!」
「タクヤ様!」
その声を最後に、俺の意識は途切れた。
0
お気に入りに追加
2,210
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる