役立たずの俺は異世界で「取得」と呼ばれるスキルで成り上がります

第一章 勇者は親友、俺は平均魔法使い

第七話 お孫さんはツンツン100％

「…じゃあ、行ってきます」
「タクヤ様、気をつけてください！」

ネネやカストルさん、リチャードさんに見送られ、俺はウルフ退治へ向かった。
ただ、予想外なことが一つ。

「よし！！いくぞうタクヤ！！」

このお孫さんのことだ。



10分前…



「ウルフ退治に今から行くのですが、そのウルフってどこにいるのですか？」

俺が長老様のもとを離れたとき、リチャードさんに聞いた。
やっぱり、めんどくさいことはちゃっちゃと片付けたほうがいい。

「…ああ、とうとう行かれるのですね」

リチャードさんは息を深く吸うと、言った。

「皆のもの、今すぐここに集合だ！なるべく早く！」
「はいっ！」

近くにネネがいたらしく、トテテテ…と走っていった。

「ウルフはタクヤ様が行かれた裏山の一番奥におります。…どうやら揃ったみたいですね」

気がつくと、村人全員が集結していた。
みんなみんな、はちきれそうなそれぞれの感情を抑えて俺を見る。

「本当に…本当にありがとうございます！タクヤ様！」
「いえ、まだ倒してませんし」

いや、ほんと。
プレッシャーハンパないから。
そのとき。

「私も連れてけ！！」

少し離れた場所から少女の声が聞こえた。

「な…ナナカ様」

リチャードさんがその少女を見ると、つぶやいた。
少女はナナカというのか。
真っ青な髪をポニーテールに結び、その青と同じ色をした鋭い目をもって俺を見た。
ナナカは本気だ。

「ナナカ様、危険です！！どうかおさがりください…！」
「いいや！！私は行く！！アギトおじい様の孫として行く義務があるんだ！！ということで連れてけ！！」

ビシィと人差し指を俺に突きつけ、大胆不敵に微笑んだ。
なかなかの迫力。
………
…ん？
アギトおじい様。
アギト…アギト…って。

「長老様？」
「そうだ！私は次期村長のナナカ！私には村を守る知識が欲しい！」

そうだったのか。
今考えてみたら長老様の青色の目がナナカにもある。
なるほど。

「ナナカ様…！！」
「大丈夫です。俺が責任もって彼女を守ります」
「うん！よろしく！」

リチャードさんがちょっと可哀想だったので、俺が助け船を渡す。
かな～り顔が困ってる。

「本当に、申し訳ございません。ですが、このリチャード、ナナカ様のお世話がかりとしてお願いします」

…そうだったんだ。
ナナカのお世話がかり。
どうりで村をまとめてるっぽいと思った。

「では、行こうタクヤ！私がタクヤと呼んだからにはタクヤも私のことナナカって呼べ！！」
「分かりましたよ。ナナカ」

こうして、俺たちは裏山へ足を運んだ。









「ふんっ！！」

俺が遭遇したキラースパイダーをブラックホールで倒すと、闇属性がレベル5になったのが確認できた。
裏山に到着してかれこれ30分ぐらい。
さて、ナナカは…

「うひぃぃぃっ！！キモイッ！キショイッ！来るなぁぁ」

泣きながらキラースパイダーを一掃していた。
しかも目をつむって剣で。
よくもまあそんな器用なことが出来るもんだ。

「おりゃっ」

助太刀といわんばかりに俺がブラックホールでまたキラースパイダーを包んだ。

「ふ、ふう…やったぞ！」

剣を突き上げて、ナナカは俺に言った。
うん、頑張った。
あんだけ怖がってたもんな。
ナナカの称号はどうやら「魔法剣士」らしく、大分強いのは認める。
だけど「エアガン」の魔法の流れ弾が飛んでくるのは勘弁な………

「結構進んだけど、もうすぐか？」
「ああ。もうつくぞ」

さっきまで怖がってたのが嘘みたいにナナカが俺の前をズンズン歩いた。
さてと、気合い入れるか。









「あれだ！あれ！」
「分かったから静かに」

ぴょんぴょん飛び跳ね指差す所は、ウルフの寝床？らしき所だ。
薄暗く、ウルフはまだ姿を現さない。

「よしっ、行く…ぞ…？」

ふいに、ナナカの動きが止まる。
ん？なになに？
………
つい、後ろを振り返る。

…はい、お約束。

後ろにはウルフが構えてました～…