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第六章 拓也、旅路を行く

第七十六話 二日酔いなお仲間

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「お。起きましたよ?タクヤさん」
『…負け、た?』
『長ぁ!負けちゃいましたよ!』

翌朝。街の宿屋で眠っていたケット・シー達が目覚めた。
ちなみに、サリィとリンディはもうすでに起きており、二日酔いという由々しき事態に苦しんでいる。

『き、もち、わるい』
『長も二日酔いか…俺もだ』

ケット・シーのお供がつぶやいた。
どうやら酒は無理やり飲んでいたらしく、全員グダグダだ。

「…で、ケット・シー様」
『む?』
「………結局街を出て行くので?」
『まあ、そう、なる』

その場にいたソフィアに聞かれ、グワングワンとする頭痛で頭を抑えながらもケット・シーは答えた。

『ならば!我らもついて行きますよ!』
「え!?ケット・シーの一族は!?」
『だって、一族は我々だけですしっ!』
「そ、そうなんだ…」
『大丈夫!長の強力な加護があればこの街は安全ですよ!』

このケット・シーは二日酔いは無いらしい。
ケロッとしていて、案外逞しいものだ。

『じゃあ…名前、決める』
「ああ。契約だから…そもそもケット・シーは名前無いの?」
『名前、一人称…無い』

つまり、名前という一人称は無いという事か。
じゃあ、えっと…

「まず君はクリーム」
『くりぃむ』
「クリームね」
『くりぃむ』

どうやら、ケット・シーの長…クリームは舌が回らないらしい。
クリームなのは、毛がクリーム色だからだ。

「じゃあ君は…ヒュー」
『僕はヒューですね!名前、嬉しいです!』

ヒューという名前はまあ大した理由は無いが…風のように速く駆け抜けてほしいから?みたいた。

「最後に…君はダルージャ」
『ダルージャか…ある本の一説で呼んだ事がある。かの勇敢な戦士の名だ』
「よく知ってるね。俺も、本で呼んだんだ」

そうなのだ。村の宿屋に暇つぶしとして置いてあった書物をちょぴっと覗かせてもらった。
その本のダルージャという者は冷静に戦い抜き、戦場に勝利をもたらしたらしい。

『ふむ。良い名だ』
『じゃあ…名前をもとに、あなたに、一生の、忠誠を』
『『名前をもとに、あなたに一生の忠誠を』』

ケット・シーから煙のような物が出て、俺に吸い込まれた。

『ケット・シー、クリーム、ヒュー、ダルージャ、テイムしました』

これで、仲間がまた増えたという事だ。
と、

「と、いうことは我がギルドに入って頂けますよね!?」
「ど、どうした急に………」

突然黙り込んでいたソフィアがそんな事を言い出した。
と、

「「「そうだそうだーー!」」」
「黒き英雄!折角だしギルド入んなよ!」
「ケット・シー様をお仲間にされてるんだ!あんたなら大歓迎さ!」
「ぜひ!ぜひ!」
『…とんずら、する?』
「ああ。そうしよう」

クリームの意見に賛成し、二日酔いでうめいているサリィとリンディに声をかけて宿を飛び出した。

「「「待てや~~~!!」」」
「ヒイイイイ!怖い!何か、スッゴい怖い!」
『あ、頭が痛いわ!揺らさないでぇ~!』

そうして、走ってフルールの街をとんずらこいてしまったとさ。
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