68 / 104
第五章 天使と勇者と相棒と
第六十二話 隣り合わせの危険(スズリーナ視点)
しおりを挟む
「はあっ…はあっ…ぐっ」
歯を食いしばり、走った。
…ったく、何でこんな事に…!!
「それもこれも全部全部…あの国王のせいよ!!」
そう。
召喚に失敗した奴が邪魔だから殺して来いとか抜かしやがったあのデブ。
…自分で失敗したんでしょ!?
てか人選ミスよ!!
あのディリーって奴が失敗しただけで私達暗殺部隊は関係ないじゃないっ!!
…仕事仲間だったシュナイサーも戻って来ないし!!
…噂では、あの標的のタクヤ側に寝返ったとか…
まあ、私達も寝返ったも同然か。
「…ス、ズりん」
「ヒラル!!」
ヒュー、ヒューと浅い息をしながらもその命を繋いでいたヒラル。
でも、あのタクヤの魔法は「エクスヒール」。
中級の回復魔法は命を救うことは出来ない。
早く、病院に連れて行かなければ…!
「スズ、りん」
「喋らないで!!静かに…!!」
「…泣かな、いで」
「ーーーえ?」
ヒラルに落ちる無数の水滴。
それで、自分が泣いていることが分かった。
ああ…
自分はここまで仲間というものを意識していたのか。
暗殺者の世界で…
暗殺者とは、攫われて来た子供や暗殺者の家業に生まれし者がなる仕事。
私は、暗殺家業に生まれた「ムヒュル家」の者だ。
それで弟も暗殺者だ。
…初めて人殺しを経験したのは10歳ごろか。
実戦に放り込まれて、盗賊を殺した。
…あの日に血にまみれた自分。
心は、捨てたはずだった。
…だが、タイルに会った。
タイルは攫われて来た子供で、家業の者ではない。
だが、才能があったらしく、メキメキと実力を伸ばしていった。
ソイツが、私を今の暗殺部隊…《青龍の逆鱗》に誘い込んだのだ。
それから、あそこで活動してるけど…
メンバー全員訳ありだし。
ヒラルは呪いと感謝で部隊に。
私は家業の誇りで部隊に。
タイルは自ら成立した。自由を表す為に。
イルマは…分からないけど、仲間だ。
「ーーースズ姉ーーーー!!」
「スズリーナぁぁあああああっ!!」
「父さん!?それにアルル…!!」
私の弟と父が走って来た。
まだ避難してなかったのね…
街は、あの後ろの2人の天使が放った魔法…術でボロボロだった。
しばらく走ってて見かけたから多分街を破壊していたんだと思う。
「ちょっと!!早く逃げないとっ…」
「何言ってる!?俺も暗殺者だ!!」
「そうだよスズ姉!!」
父は昔足を負傷して暗殺者を引退した。
それに弟もまだ幼いし…
戦える訳が、ない。
「いいから!!逃げっ…」
と、
ガラガラッ!!
「あっ…!?」
「ーーーーー!!」
…嘘、でしょ?
嫌、嫌、いや、いや、いや…
「父さんーーーー!!アルルーーーー!!」
2人は。
降ってきた瓦礫に潰されていた。
「あ、あ、あああ…」
血が、流れ出す。
…もう、生きてはいないだろう。
「うああああああああっ!!」
私は、泣き崩れた。
ヒラルが複雑な顔で私を見ていた。
そんな、そんな…
と、
「おい!大丈夫か!?」
「あ、あなたは…」
走って来たのは、勇者だった。
瓶を、握りしめている。
「ーーー!」
勇者は瓦礫をはねのけると、2人を引っ張り出した。
そして…
ポタ
「………」
「…何、してるのです」
勇者は、父さんとアルルの口に瓶の中身を数滴落とした。
…その瞬間。
パアアアアッ!!
「!!」
「ガフッ、ゲホッ!」
2人は、息を吹き返したのだ。
「う、嘘…でしょ?」
幻でも見てるの?
人を生き返らせることなんて出来ないはず…
ましてや、ただの水に見えるそれにそんな効果は。
「…スズリーナ」
「スズ姉」
「…うああああぁんっ!!」
人目も気にせず、泣きついてしまった。
良かった。生きててくれて良かった…!
「あの、ありがとう…」
「………」
その水を、ヒラルの傷口にもかける。
「…え?」
途端に、ヒラルの傷が塞がってしまった。
「じゃあな」
…去って行くあの背中にどれだけ感謝したのだろう。
私は、泣き崩れた。
歯を食いしばり、走った。
…ったく、何でこんな事に…!!
「それもこれも全部全部…あの国王のせいよ!!」
そう。
召喚に失敗した奴が邪魔だから殺して来いとか抜かしやがったあのデブ。
…自分で失敗したんでしょ!?
てか人選ミスよ!!
あのディリーって奴が失敗しただけで私達暗殺部隊は関係ないじゃないっ!!
…仕事仲間だったシュナイサーも戻って来ないし!!
…噂では、あの標的のタクヤ側に寝返ったとか…
まあ、私達も寝返ったも同然か。
「…ス、ズりん」
「ヒラル!!」
ヒュー、ヒューと浅い息をしながらもその命を繋いでいたヒラル。
でも、あのタクヤの魔法は「エクスヒール」。
中級の回復魔法は命を救うことは出来ない。
早く、病院に連れて行かなければ…!
「スズ、りん」
「喋らないで!!静かに…!!」
「…泣かな、いで」
「ーーーえ?」
ヒラルに落ちる無数の水滴。
それで、自分が泣いていることが分かった。
ああ…
自分はここまで仲間というものを意識していたのか。
暗殺者の世界で…
暗殺者とは、攫われて来た子供や暗殺者の家業に生まれし者がなる仕事。
私は、暗殺家業に生まれた「ムヒュル家」の者だ。
それで弟も暗殺者だ。
…初めて人殺しを経験したのは10歳ごろか。
実戦に放り込まれて、盗賊を殺した。
…あの日に血にまみれた自分。
心は、捨てたはずだった。
…だが、タイルに会った。
タイルは攫われて来た子供で、家業の者ではない。
だが、才能があったらしく、メキメキと実力を伸ばしていった。
ソイツが、私を今の暗殺部隊…《青龍の逆鱗》に誘い込んだのだ。
それから、あそこで活動してるけど…
メンバー全員訳ありだし。
ヒラルは呪いと感謝で部隊に。
私は家業の誇りで部隊に。
タイルは自ら成立した。自由を表す為に。
イルマは…分からないけど、仲間だ。
「ーーースズ姉ーーーー!!」
「スズリーナぁぁあああああっ!!」
「父さん!?それにアルル…!!」
私の弟と父が走って来た。
まだ避難してなかったのね…
街は、あの後ろの2人の天使が放った魔法…術でボロボロだった。
しばらく走ってて見かけたから多分街を破壊していたんだと思う。
「ちょっと!!早く逃げないとっ…」
「何言ってる!?俺も暗殺者だ!!」
「そうだよスズ姉!!」
父は昔足を負傷して暗殺者を引退した。
それに弟もまだ幼いし…
戦える訳が、ない。
「いいから!!逃げっ…」
と、
ガラガラッ!!
「あっ…!?」
「ーーーーー!!」
…嘘、でしょ?
嫌、嫌、いや、いや、いや…
「父さんーーーー!!アルルーーーー!!」
2人は。
降ってきた瓦礫に潰されていた。
「あ、あ、あああ…」
血が、流れ出す。
…もう、生きてはいないだろう。
「うああああああああっ!!」
私は、泣き崩れた。
ヒラルが複雑な顔で私を見ていた。
そんな、そんな…
と、
「おい!大丈夫か!?」
「あ、あなたは…」
走って来たのは、勇者だった。
瓶を、握りしめている。
「ーーー!」
勇者は瓦礫をはねのけると、2人を引っ張り出した。
そして…
ポタ
「………」
「…何、してるのです」
勇者は、父さんとアルルの口に瓶の中身を数滴落とした。
…その瞬間。
パアアアアッ!!
「!!」
「ガフッ、ゲホッ!」
2人は、息を吹き返したのだ。
「う、嘘…でしょ?」
幻でも見てるの?
人を生き返らせることなんて出来ないはず…
ましてや、ただの水に見えるそれにそんな効果は。
「…スズリーナ」
「スズ姉」
「…うああああぁんっ!!」
人目も気にせず、泣きついてしまった。
良かった。生きててくれて良かった…!
「あの、ありがとう…」
「………」
その水を、ヒラルの傷口にもかける。
「…え?」
途端に、ヒラルの傷が塞がってしまった。
「じゃあな」
…去って行くあの背中にどれだけ感謝したのだろう。
私は、泣き崩れた。
0
お気に入りに追加
2,210
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる