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第四章 魔法使いと大会

第五十七話 ドンマイ

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俺は試合後、医療室へと向かった。
傷ついた選手達はここで傷を癒やすのだ。
ちなみに…スカーレットはタイルに頼んで医療室に送ってもらった、はず。

「ふぅ~」

ガチャッ

「タ、タタ…」
「ん?」
「ダグヤ~~~~っ!!」
「うおっ!?」

何が起きた!?
えっと…この抱きついて来てる見覚えのある真っ青な髪にポニーテール…

「ナナカ…?」
「う、へぐ」

ズビッと鼻をすするのは…確かにナナカだった。
目は真っ赤に腫れており、泣きはらしたのが分かった。

「ま、まげじゃった、よぉ~~~」
「ご、ごめんたくやおにいちゃんっ!!」
「スカーレット?…ナナカどうしたんだ?」
「じ、じつは…」
「私が説明するわ」
「スズリーナ!」

はあ…とため息をつきながらユピテルの腕に包帯を巻いているスズリーナ。
この二人、医療室にいたのか。

「あわわわ…お、落ち着いて…」
「ユピテル。落ち着け」
「で、でもぉ~。カロン~…」

ユピテルに突っ込みを入れている少女、この子はカロンと言うらしい。
…相変わらず棒読みで。
まあ、メンバー発表の時にしかその突っ込みは聞いたことないけど。

「その子、大人用のポーション飲んじゃったのよ」
「大人用?」
「…アルコール入りの」
「そ、そんなポーションあるんだ…」
「ぶぇぇ~~ん」

泣きついてくるナナカは明らかに泥酔している。
いつもとは比べものにならないような泣きっ面だ。

「ナナカ、とりあえず…落ち着け」
「へ、う、で、でもぉ」
「スズリーナ、酔い醒ましの薬品ある?」
「ごめん、ないわね。私、スキル「回復術」持ってないから作れないし…」
「じゃ、俺が作るわ。そこら辺の薬品借りる」
「え!?」

驚いて固まる皆を置いといて、取得に語りかける。

「取得、酔い醒ましの薬品の作り方出して」
『分かりました…』

ヴォンッと出てきた画面に書いてある作り方を眺める。
なるほど…

「クルボボの実…クルボボ…あった」

薬品棚に置いてあるクルミのような瓶詰めの実を取った。
あと、レルフドリンクだ。

「ドリンクは…これか」

冷蔵庫に丁度入っていた。
クルボボの実をすりつぶして、頭がすっきりするレルフドリンクの中に入れる。これに呪文をかける。

「聖なる癒やしの力よ。傷つき者を癒せ。ホーリーヒーリング」

ポウ、とドリンクに光が灯る。
これを、ナナカに渡した。

「これ、飲んで」
「ん…ゴクッ」

効いてくれればいいんだけどな…

「…あれ?私一体何を?」
「よ、よかったあ~」

スカーレットが安堵の吐息をもらした。
ナナカはお酒に弱いみたいだ。
…この世界の成人年齢は18歳。
お酒はそこから飲んでいいけどー…絶対飲ませないとこう。

「あ…タクヤ…」
「あー、その、なんて言うか…」
「負け、ちゃったな…」
「………」

…これは相当へこんでる。
は、励ましの言葉が思いつかないーーっ!
と、

「でも、いい経験だよね。私、もっと頑張る!!」
「ナナカ…」

たくましいな!
いや、村娘がここまで強いのって異常だと思うけどね…

「まあ、ドンマイだ。ナナカ。次に向かって頑張ればいいさ」
「…うん。大会、頑張って」

ナナカが頷き、微笑んだ。
と、

「あ、あなた…何者ですか…?」
「?」
「あの戦闘力に癒やしの力…あなた、勇者様みたいですね」
「…俺は勇者じゃないよ」

語りかけてきたユピテルにそう返した。

「ええ。知ってます。だって…今の勇者様はツカサ様ですものね」
「司を知ってるのか!?」

思わず、身を乗り出した。
ユピテルは驚いたようだが、思い出したかのように頷く。

「そうだったですね。あなたはツカサ様の親友でした」
「ああ…そうだ」
「ツカサ様は今魔王を倒すために伝説の装備集めの旅をしてらっしゃいますの。本当、凄いですわよね…」
「…そうだったのか」

司も司で決心を固めてるんだ。
…なら、俺も固めなきゃな。

「ナナカ、スカーレット。帰ろうか」
「?帰って良かったっけ」
「次は明日だ」

そうなのだ。
準決勝は明日。
もう終わったら帰っていいらしい。

「帰られるのね?では、また明日会いましょう。応援してますわ」
「じゃあね」
「じゃあ」

カロンとユピテルとスズリーナに見送られ、俺達は医療室を後にした。
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