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これはもしや、「おもしれー女」的な展開では?

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前世の記憶が戻って、あっという間に半年が経った。
まあイルニとは相変わらずだし、お父様やお母様は厳しいけど愛してくれるし。
ぶっちゃけ不満はない。
お兄様のほうはもうとっくに学園に入学して、今は生徒会長をやってるみたいだ。
そんなお兄様の妹としてやっていけるのかなっていう不安はあるけど、やっぱり死にたくないからモブになるしかない。
もう正直生徒会長の妹っていう響きがヤバいけど、息を殺していこう。
そんなある日のことだった。

「ティナ。パーティーに行きますよ」
「……はぁい」

この厄介なのがパーティーという名の出会い場のことだ。
将来の結婚相手を見染めたり、学園に入学する前の友人を作ったりするのだ。
凄く面倒でときどき仮病を使って休んでいたけど、つい先日そのことがお母様にバレた。
鬼かな? ってレベルで怒られたからもうしないとこう。
今日はおとなしくパーティー会場に引き摺られることにする。

「姉様っ、行っちゃ嫌です!!」
「イルニ……」

しかし、ギャン泣きでイルニが私のことを引き止めてきた。
私のことが大好きなイルニのことだから、多分婚約者に私を取られると思っているんだろう。
そんなことないから安心してほしい。

「パーティーに行くだけだよ」
「やだ!! 姉様っ、僕の姉様っ」
「イルニの姉さんですよ~」
「ぜったい、結婚なんてしないでくださいね?」
「うーん、それはどうかなぁ」

貴族として嫁入りはもう義務みたいなところあるし、結婚しないのは無理じゃないかな。
素直にそう言えば、じわじわとイルニの目に涙が溜まっていく。

「嫌ですぅうううううう!!」
「イルニ坊ちゃん、私達とお留守番しましょう」
「姉様ぁああああ!!」

弟の凄い叫び声を聞きながら、いそいそと屋敷を後にする。
罪悪感は凄いけど、立派に育ってくれ、弟よ。
そしてついたパーティー会場。
お母様と一緒に来たけど、挨拶回りで忙しいみたいで私は「お友達と遊んでおいで」と放り出された。
私、目つきが悪いんだよね。
それはもう自分で鏡見てびっくりするくらいに。
だから、この年頃の子達は怖がって話しかけてこないわけで。

「ボッチ飯は辛いよ……」

一人寂しくご飯をつつくハメになった。
うう、女の子達がヒソヒソ話してこっち見てる。
絶対「怖い人いる」って思われてるよ。
目線に居た堪れなくなった私は、ついに我慢できずにパーティー会場を抜け出した。
人がいないテラスのほうに出て一息ついたのに、誰かが私に話しかけてくる。

「おい、何だお前は。ここは俺の場所だぞ」

男の子だ。
綺麗な金髪に青の瞳。もうこの時点で嫌な予感がする。

「し、失礼しました~」
「いや、待て。話し相手になれ」

がしりっと手を掴まれ、結局逃げられなかった。
もうヒシヒシと主要人物感が伝わってくる。
イルニはアニメで、幼少期のころのシーンで姉に縋るところが印象に残っていたおかげで覚えていたけど、他の人物はだいたい大きくなった姿しか覚えていない。
つまり目の前の少年が誰かわからないわけで。

「どちら様でしょうか……」
「はあ? 俺のこと知らないわけ?」

ため息をつくと、少年は名乗った。

「俺はルードレア。で、お前は」
「ティナです……」
「ふぅん。ティナか。何でこんなところに来たんだよ」

こんなところとは、テラスのことだろうか。
素直にありのままを話す。

「他の子の視線がやばくて来ました」
「あー、お前目つき悪いもんな」
「失礼ですね! 気にしてるんですよ!」
「だってそうじゃん」
「レディに向かってそんなこと言っちゃダメなんですよ!?」
「レディとか」
「笑わないでください」

鼻で笑って「レディねえ」と繰り返すルードレアに腹が立った。
ルードレアとかめちゃくちゃ聞き覚えのある名前だったけど、この際気にしない。

「私だって立派な淑女なんですよ」
「淑女がパーティー抜け出すわけないだろ」
「だったらあなたは何なんですか」
「俺はいい子じゃないんで」
「一緒じゃないですか」

どうせルードレアも面倒になって抜け出してきたんだろう。
なんだか親近感を覚えて、ルードレアの横に座ることにした。
で、色々話した。
普段家族にもしないくらい口が勝手に動いて、ゲラゲラと笑った。
こんなに話が合うのは久しぶりかもしれない。

ゴーン、ゴーン。

はっと気づけば、時計の鐘が鳴っていた。
長居したら抜け出していることがバレて、お母様に叱られる。

「ごめん、もういかなきゃ。またね!」
「!? おい!」

シンデレラよろしく会場に走る。
結局お母様にはバレ、しこたま怒られた。
ルードレア、また会えるといいなぁ。
この時の私は、浮かれてそんなことをふわふわ考えていた。
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