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第27話 男子三日会わざれば刮目してみよ

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「お前がキサラを殺したのか?」

「俺の他に誰かいるの~?」

男はこっちをおちょくるように教会内をキョロキョロと見渡す。

「このっ!僕を見くびるなよ!」

僕は暗殺者ではあるが正規兵よりは強い自信がある。

キサラの仇を討ってやる!

僕は白い修道士の格好をした男を殺すために駆ける。
男は動かない。防ぐ素振りもない。いや僕の動きについてこれないだけか?なら!さっさと死ね!

ビュオ!!

男の後方から突如十字架が飛んできた。僕はそれを回避する。
男の後方から全裸のキサラが僕に襲い掛かってきた。

「なっキサラ!君は生きているのか!やめろ!やめてくれ!」

「暗部の人間にしては感情剥き出しだな。そんなに『姉』の状態が気になるかね?」

なっ!何で、こいつ、が!それを知っている!

「君達が幼い頃に住んでいた村が盗賊に襲われ、君達姉弟は盗賊に拐われてオモチャにされてたんだよねえ。姉は毎晩のように盗賊共に慰み者にされ、女の子のような顔をしている君もだいぶ『使い込まれて』いたようだねえ。挙げ句の果てに姉を抱くよう命令されて、姉を何度も孕ませたんだよねえ。その後に暗部の人間に偶然助けられた君達は暗部に人殺しを学び、そして国の暗部として働き、現在に至る。ははははははは!!壮大な人生送っているなあ君っ!!」

「なんで、知っている?」

「『それ』に聞いたからに決まっているだろ?」

浅田は全裸の女『キサラ』を指差す。



「俺の進化した『魔法』の実験台になってもらっただけさ」



浅田源氏は『死体に生命力を与える』魔法使い。

1、生命活動を停止(死亡)した生物に限り気を注ぎ込む事によって死亡した生物を動けるようにする。

2、気を注ぎ込む量が多いと生前の体と知能を維持する事が出来る。

3、気を注ぎ込む量が少なすぎると体の腐敗を少し遅らせ、知能はかなり低くただ徘徊するか近くにいる者に襲いかかるかしか出来なくなる。

4、気を注ぎ込むによりある程度なら肉体を再生させる事が出来る。

5、死体の操作は不可能。



これが月島が出会った時点での浅田源氏の魔法の限界。



そして現在は、魔導書『死を隷属させる者』を現界する事が出来る。

1、魔導書現界時、魔法に必要な気を抑える事が出来る。

2、魔導書現界時、死者を蘇生する事が出来る。ただし、一人二回まで。

3、魔導書現界時、死体に気を注ぎ込む量が多ければ多いほど精密な操作を可能にする。

4、魔導書現界時、死体を爆発させる事が出来る。威力は注ぎ込む量によって変化する。

5、魔導書現界時、『周囲にいる生物の死への恐怖心を増長させる』能力を持つ魔剣、『デス・セイバー(死を彷彿させる魔剣)』を現界させる。

6、魔導書に死体を収納でき、魔導書現界時に死体を取り出せる。


「『男子三日会わざれば刮目してみよ』ってね。くくく、君のお姉さん俺に跨がってイヤらしく腰を振りながら答えてくれたよ。本人の事も、君の事も、仕事仲間の事も、何もかも教えてくれたよ」

「貴様等は、許さん!絶対に殺してやる!」

「おお、向かってくるか?キサラ!『姉として弟を殺してやれ』」

全裸のキサラが素手でマリルに襲い掛かる。

『マリル、お姉ちゃんが嫌いなの?』

『マリル、なんでお姉ちゃんを傷つけるの?』

『マリル、結局貴方もあの盗賊共と同じだったの?』

『痛い、痛いよ、マリル、なんで?なんで?虐めるの?』

『お姉ちゃんが嫌いなの?お姉ちゃんが悪い事しちゃた?』

「くそっ!お前は女に戦わせるのか!卑怯者!」

まるで生前と変わらぬ顔と声でマリルに言葉を投げ掛けるキサラ。それをやらせている男にマリルが怒る。

「暗部の人間に卑怯呼ばわりされるとは思わなかったよ。女?いや、もう『それ』死んでるし。死体じゃん、物だよ物」

だが、男は全く動じない。

「ふむ、分かったよ」

ボンッ!ビチャ!

「え?」

マリルの目の前でキサラが破裂した。その肉片の一部がマリルの頬に当たる。教会の床にキサラの肉と血が辺りに巻き散らかされた。

「え?キサラ?え?姉さん?」

「ん?お前がやらせるなって言ったじゃん。だから廃棄しただけじゃん。何驚いてんの?」

「て、てめえは、ゆるさねえ!!ぶっ殺してやる!」

「何キレてんの?『デス・セイバー(死を彷彿させる魔剣)』」

ガキンッ!

マリルのナイフを浅田は魔剣を呼び出し、魔剣でナイフを払う。

ガキンッ!ガキンッ!キンッ!ガキンッ!キン!キン!

「んん?動きが鈍らないな?憎悪が死への恐怖心を上回っているのか?面倒だな。成る程成る程良い実験になるだな」

「このクソ野郎!僕の姉を!僕の彼女を!僕の妻を!よくも!よくもおおおおおおお!」

ガキンッ!ガキンッ!キンッ!キンッ!ガキンッ!

くそっ!こいつ!飄々としながら僕のナイフを簡単にさばいてるだと!

「そんなにお姉さんが殺されたのがショックだったか?悪い悪い、あ?確かユステリカ王国には『死者を蘇生させる魔法使い』がいるんじゃん?なら王子ツテで蘇らせればいいじゃん?」

「『あのお方』の魔法は暗部ごときには払えないほどの大金が必要で!蘇生成功率がかなり低くて死体の状態が悪ければ悪いほど成功率が下がっていくんだよ!こんなバラバラじゃあ、もう無理だろ!」

「あ?そうなの?ごめんごめん」

「許さん!許さん!許さん!許さん!許さん!許さん!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!絶対殺す!」

「ほう?奇遇だなあ!俺もてめえを殺してやりたいと思ってたんだよなあ!!マリル!!」

教会の入口から『あの男』の声が聞こえた。マリルが振り返るとラクシャータを抱きかかえたゼロ=インバース(月島竜一)がいた。

「やあ、同志竜一!時間稼ぎは上手くいったぜ!」

「ご苦労だったな同志源氏!グッ、ジョブだぜ!」

ゼロが隣にいた女性にラクシャータに預けると僕に近づいてきた。

「てめえええええ!ラクシャータに抱きついたらしいなあああああ!ぶっ殺してやるから覚悟しろや!!!」

ビビる必要ないだろ!!

「こっちだっててめえをぶっ殺してやりたいと思ってたんだよおおおおおおお!!!」
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