46 / 47
41.NYでの最後の夜(Side百合)
しおりを挟む
「もう最後の夜か‥‥」
亮祐さんの仕事終わりにブルックリンで落ち合い、レストランでの食事中に私は思わず呟いた。
食事をしながらいつものように今日あったことをお互いに報告し合っていたのだが、ふと今日が5日目だと思い出したのだ。
もう明日は帰国のために移動するだけ。
亮祐さんとニューヨークで過ごせる最後の夜だったのだ。
「そんな淋しそうな顔しないで。帰したくなくなるから」
亮祐さんは眉を下げ、淋しそうな顔をしてしまった私を慰めるように少し頭を撫でてくれた。
「このままうまく商談がまとまれば、あと数週間で帰国できると思うしね」
「うん。ごめんなさい、亮祐さんは仕事で来てるのに。亮祐さんと一緒にいられるし、ニューヨークも楽しかったからつい帰りたくないって思っちゃったんです」
「また一緒に来よう。その時は俺もプライベートで来て、百合を色々案内したいし」
「はい、次の楽しみにしておきます」
亮祐さんとニューヨークを一緒に見て回れたらきっと楽しいだろう。
なにせ長年ここに住んでいた人なのだ、亮祐さんが学生の頃に過ごした場所などを見てみたいなと思った。
食事を終えると、私たちは観光スポットとしても有名なブルックリン橋を歩きながら渡り、マンハッタンにあるホテルに戻ることにした。
ブルックリン橋からはニューヨークの夜景が一望できてとても綺麗だ。
ニューヨークの高層ビルがキラキラと輝き、とても幻想的でロマンチックな景色だった。
「すっごく綺麗ですね!」
「そうだね。そういえば百合は横浜の夜景も夢中で眺めてたよね」
「あの時の景色も素敵でした。それにどっちも亮祐さんと一緒に見られるのが嬉しいんです」
そう微笑むと、亮祐さんは一瞬眩しそうに私の顔を見て目を細める。
「さっきも俺と一緒にいられて楽しかったって言ってくれてたね。だから帰るのが淋しいって」
「はい」
「なら、俺とずっと一緒にいない?」
「えっ?それってどういう‥‥」
どういう意味?と聞き返そうと思った時、亮祐さんはポケットに手を入れ、中から小さな箱を取り出した。
そして私の目の前に差し出して、箱の蓋を開ける。
「!」
「俺も百合とずっと一緒にいたいと思ってる。だから百合、俺と結婚して欲しい」
「‥‥!!」
私は突然のことに驚きすぎて言葉を失う。
亮祐さんに真剣な眼差しで見つめられ、心臓が激しく音を立てる。
(う、うそ‥‥!これってプロポーズ??)
目を白黒させる私の様子に、亮祐さんは思わずといったようにふっと笑みを溢す。
「驚いた?」
「は、はい。それはもうとっても‥‥!」
「この指輪、実は両親に紹介した頃にはもう購入してたんだよ。その頃には俺には百合しかいないって思ってた。この前は百合に気持ちを伝えてもらったけど、俺もちゃんと伝えたいって思ったんだ」
思わぬ言葉にさらに驚く。
そんなに前から考えていてくれたなんて。
そう思うと胸が温かくなってきて、嬉しい気持ちでいっぱいになる。
(こんな素敵な人にこんなふうに想ってもらうことができて、私はなんて幸せなんだろう)
「百合、言ってなかったと思うけど、俺は正直に言うと百合に出会うまでは、女なんて面倒だと思ってテキトーだったし、本気になんてなったことなかった。けど、百合のことは特別なんだ。百合のことになると執着するし、嫉妬するし‥‥それは百合も知ってるよね?つまり、百合が俺を想ってくれているのと同じように、俺も百合が好きだよ。大塚百合になって欲しい」
「亮祐さん‥‥」
嬉しくて嬉しくて声にならない。
きっと今の私はものすごくみっともないくらい顔が弛んでいると思う。
「それで百合の返事は聞かせてくれないの?」
「‥‥そんなの”はい”以外にありません!本当に私でいいんですか?」
「百合でじゃなくて、百合がいいんだよ」
そういうと、亮祐さんは私の左手を手に取ると、箱から指輪を取り出してそっと薬指にはめてくれた。
私の左手の薬指には、キラキラと輝く光がその存在を主張する。
「ありがとうございます。本当に嬉しい‥‥」
嬉しさで涙が溢れてきて、私は涙ぐみながら亮祐さんを見上げた。
亮祐さんは指で私の涙を拭うと、触れるだけの優しいキスをしてくれた。
ブルックリン橋の上で美しい夜景を背景に、私はそのキスに酔いしれる。
(忘れられないプロポーズ‥‥。亮祐さん、本当にありがとう。あなたに出会えて、あなたを好きになって私は本当に幸せです)
亮祐さんの仕事終わりにブルックリンで落ち合い、レストランでの食事中に私は思わず呟いた。
食事をしながらいつものように今日あったことをお互いに報告し合っていたのだが、ふと今日が5日目だと思い出したのだ。
もう明日は帰国のために移動するだけ。
亮祐さんとニューヨークで過ごせる最後の夜だったのだ。
「そんな淋しそうな顔しないで。帰したくなくなるから」
亮祐さんは眉を下げ、淋しそうな顔をしてしまった私を慰めるように少し頭を撫でてくれた。
「このままうまく商談がまとまれば、あと数週間で帰国できると思うしね」
「うん。ごめんなさい、亮祐さんは仕事で来てるのに。亮祐さんと一緒にいられるし、ニューヨークも楽しかったからつい帰りたくないって思っちゃったんです」
「また一緒に来よう。その時は俺もプライベートで来て、百合を色々案内したいし」
「はい、次の楽しみにしておきます」
亮祐さんとニューヨークを一緒に見て回れたらきっと楽しいだろう。
なにせ長年ここに住んでいた人なのだ、亮祐さんが学生の頃に過ごした場所などを見てみたいなと思った。
食事を終えると、私たちは観光スポットとしても有名なブルックリン橋を歩きながら渡り、マンハッタンにあるホテルに戻ることにした。
ブルックリン橋からはニューヨークの夜景が一望できてとても綺麗だ。
ニューヨークの高層ビルがキラキラと輝き、とても幻想的でロマンチックな景色だった。
「すっごく綺麗ですね!」
「そうだね。そういえば百合は横浜の夜景も夢中で眺めてたよね」
「あの時の景色も素敵でした。それにどっちも亮祐さんと一緒に見られるのが嬉しいんです」
そう微笑むと、亮祐さんは一瞬眩しそうに私の顔を見て目を細める。
「さっきも俺と一緒にいられて楽しかったって言ってくれてたね。だから帰るのが淋しいって」
「はい」
「なら、俺とずっと一緒にいない?」
「えっ?それってどういう‥‥」
どういう意味?と聞き返そうと思った時、亮祐さんはポケットに手を入れ、中から小さな箱を取り出した。
そして私の目の前に差し出して、箱の蓋を開ける。
「!」
「俺も百合とずっと一緒にいたいと思ってる。だから百合、俺と結婚して欲しい」
「‥‥!!」
私は突然のことに驚きすぎて言葉を失う。
亮祐さんに真剣な眼差しで見つめられ、心臓が激しく音を立てる。
(う、うそ‥‥!これってプロポーズ??)
目を白黒させる私の様子に、亮祐さんは思わずといったようにふっと笑みを溢す。
「驚いた?」
「は、はい。それはもうとっても‥‥!」
「この指輪、実は両親に紹介した頃にはもう購入してたんだよ。その頃には俺には百合しかいないって思ってた。この前は百合に気持ちを伝えてもらったけど、俺もちゃんと伝えたいって思ったんだ」
思わぬ言葉にさらに驚く。
そんなに前から考えていてくれたなんて。
そう思うと胸が温かくなってきて、嬉しい気持ちでいっぱいになる。
(こんな素敵な人にこんなふうに想ってもらうことができて、私はなんて幸せなんだろう)
「百合、言ってなかったと思うけど、俺は正直に言うと百合に出会うまでは、女なんて面倒だと思ってテキトーだったし、本気になんてなったことなかった。けど、百合のことは特別なんだ。百合のことになると執着するし、嫉妬するし‥‥それは百合も知ってるよね?つまり、百合が俺を想ってくれているのと同じように、俺も百合が好きだよ。大塚百合になって欲しい」
「亮祐さん‥‥」
嬉しくて嬉しくて声にならない。
きっと今の私はものすごくみっともないくらい顔が弛んでいると思う。
「それで百合の返事は聞かせてくれないの?」
「‥‥そんなの”はい”以外にありません!本当に私でいいんですか?」
「百合でじゃなくて、百合がいいんだよ」
そういうと、亮祐さんは私の左手を手に取ると、箱から指輪を取り出してそっと薬指にはめてくれた。
私の左手の薬指には、キラキラと輝く光がその存在を主張する。
「ありがとうございます。本当に嬉しい‥‥」
嬉しさで涙が溢れてきて、私は涙ぐみながら亮祐さんを見上げた。
亮祐さんは指で私の涙を拭うと、触れるだけの優しいキスをしてくれた。
ブルックリン橋の上で美しい夜景を背景に、私はそのキスに酔いしれる。
(忘れられないプロポーズ‥‥。亮祐さん、本当にありがとう。あなたに出会えて、あなたを好きになって私は本当に幸せです)
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
同居離婚はじめました
仲村來夢
恋愛
大好きだった夫の優斗と離婚した。それなのに、世間体を保つためにあたし達はまだ一緒にいる。このことは、親にさえ内緒。
なりゆきで一夜を過ごした職場の後輩の佐伯悠登に「離婚して俺と再婚してくれ」と猛アタックされて…!?
二人の「ゆうと」に悩まされ、更に職場のイケメン上司にも迫られてしまった未央の恋の行方は…
性描写はありますが、R指定を付けるほど多くはありません。性描写があるところは※を付けています。
十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
和泉杏咲
恋愛
私は、もうすぐ結婚をする。
職場で知り合った上司とのスピード婚。
ワケアリなので結婚式はナシ。
けれど、指輪だけは買おうと2人で決めた。
物が手に入りさえすれば、どこでもよかったのに。
どうして私達は、あの店に入ってしまったのだろう。
その店の名前は「Bella stella(ベラ ステラ)」
春の空色の壁の小さなお店にいたのは、私がずっと忘れられない人だった。
「君が、そんな結婚をするなんて、俺がこのまま許せると思う?」
お願い。
今、そんなことを言わないで。
決心が鈍ってしまうから。
私の人生は、あの人に捧げると決めてしまったのだから。
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
東雲美空(28) 会社員 × 如月理玖(28) 有名ジュエリー作家
⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒* ゚*。*⌒*。*゚
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる