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14.長い長い夜(Side亮祐)
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土曜の夜、俺は並木百合と約束をし、洋一の店に訪れた。
そして彼女との時間は、自分でも驚くほどとても楽しいものだった。
取材の時同様、聞き上手な彼女は俺から話を引き出してくれるし、会話が途切れない。
ちょっと意味深なことを俺が言えば、困り顔で照れる姿が可愛くて、ついつい何度もからかってしまった。
もともとお酒はあまり強くないと言っていた彼女は、赤ワインを飲み出したあたりから、ほんのり頬を赤くしていた。
とろんとした潤んだ目や、白い肌が鎖骨のあたりまで赤く染まっている姿は欲情的だった。
酔っぱらうと赤くなるだけでなく、甘えてくるタイプでもあるらしい。
水を飲んだ方がいいと勧めると、「常務が飲ませてくれませんか?」と上目遣いで言われた時にはどうしようかと思った。
そのあと、だんだん眠そうにユラユラと小さく揺れていた彼女は、最終的に完全に眠ってしまい、今現在に至っている。
「あーあ、彼女完全に眠っちゃたな」
最後のお客を入り口で見送ってから戻って来た洋一が、彼女を見ながら笑った。
「途中から眠そうだったしね」
「あんまりお酒は強くないって言ってたのに、お前が飲ませたんだろ」
「そんなことはしてないって。体質的にワインは酔いが回りやすかったのかもね」
「で、どうする?歩けなさそうだけど」
「タクシー呼んで送ってくよ」
「それがいいな。俺がタクシー呼んでおいてやるよ」
「ありがとう」
彼女の住所は知らないけど、タクシーに乗り込んでから聞き出せばいい。
その頃には目を覚ますかもしれないし。
俺はタクシーが到着するまで、眠っている彼女を横目で眺めながら、残りのワインを口に含んだ。
数分後にタクシーが到着。
彼女に声を掛けたり、肩を揺すってみたけど起きる気配がない。
仕方がないので、背中と膝の裏を支えて抱き上げながらタクシーへと運んだ。
ほっそりとした身体は、驚くほど軽く、もう少し食べた方が良いんじゃないかと思わず心配になった。
「じゃあ今日はありがとう。おやすみ」
「おう、また来いよ!」
洋一に礼を言いタクシーの後部座席に乗り込む。
隣で眠る彼女の肩をもう一度揺さぶってみるが反応がない。
住所が分からずどうしようもないので、とりあえず俺の家に向かうことにした。
タクシーが俺の家に到着すると、再度彼女に声をかけて起こしてみる。
「ん‥‥」
「並木さん、起きた?歩ける?」
少し反応があり、ゆっくりと瞼が持ち上がる。
ぼんやりとした表情の彼女は、まだ眠りからは覚醒していないようだ。
肩を支えると歩くことはできるようだったので、マンション常駐のコンシェルジュにも協力してもらい、彼女を俺の家まで運んだ。
家に着くなり再び眠ってしまった彼女を抱きかかえ、俺が使っているキングサイズのベッドに横たわらせる。
そこまでしてふぅと息を吐いた。
致し方なかったとはいえ、彼女を家まで連れてきてしまった。
シミひとつない白い肌を上気させながら、ベッドに乱れた髪を広げて目を閉じる彼女はひどく蠱惑的だ。
そんな姿を見ていると、妙に悩ましい気持ちになってくる。
酔った脳にこれ以上この姿を見せるのは毒だ。
視界に入れないよう俺はベッドのある寝室をあとにした。
リビングのソファに腰掛けながら、ミネラルウォーターを飲み、酔いを覚ます。
無駄に広い家ではあるが、これまで必要がなかったので客室はなく、ベッドは1つしかない。
俺はシャワーを浴び、楽な格好に着替えると、ソファーのうえで毛布に包まり、目を閉じた。
目が覚めた彼女は明日どんな反応をするだろうか?
想像すると楽しくなってきて、口の端が自然と持ち上がり笑みが浮かぶ。
今から少しばかり楽しみである。
そして彼女との時間は、自分でも驚くほどとても楽しいものだった。
取材の時同様、聞き上手な彼女は俺から話を引き出してくれるし、会話が途切れない。
ちょっと意味深なことを俺が言えば、困り顔で照れる姿が可愛くて、ついつい何度もからかってしまった。
もともとお酒はあまり強くないと言っていた彼女は、赤ワインを飲み出したあたりから、ほんのり頬を赤くしていた。
とろんとした潤んだ目や、白い肌が鎖骨のあたりまで赤く染まっている姿は欲情的だった。
酔っぱらうと赤くなるだけでなく、甘えてくるタイプでもあるらしい。
水を飲んだ方がいいと勧めると、「常務が飲ませてくれませんか?」と上目遣いで言われた時にはどうしようかと思った。
そのあと、だんだん眠そうにユラユラと小さく揺れていた彼女は、最終的に完全に眠ってしまい、今現在に至っている。
「あーあ、彼女完全に眠っちゃたな」
最後のお客を入り口で見送ってから戻って来た洋一が、彼女を見ながら笑った。
「途中から眠そうだったしね」
「あんまりお酒は強くないって言ってたのに、お前が飲ませたんだろ」
「そんなことはしてないって。体質的にワインは酔いが回りやすかったのかもね」
「で、どうする?歩けなさそうだけど」
「タクシー呼んで送ってくよ」
「それがいいな。俺がタクシー呼んでおいてやるよ」
「ありがとう」
彼女の住所は知らないけど、タクシーに乗り込んでから聞き出せばいい。
その頃には目を覚ますかもしれないし。
俺はタクシーが到着するまで、眠っている彼女を横目で眺めながら、残りのワインを口に含んだ。
数分後にタクシーが到着。
彼女に声を掛けたり、肩を揺すってみたけど起きる気配がない。
仕方がないので、背中と膝の裏を支えて抱き上げながらタクシーへと運んだ。
ほっそりとした身体は、驚くほど軽く、もう少し食べた方が良いんじゃないかと思わず心配になった。
「じゃあ今日はありがとう。おやすみ」
「おう、また来いよ!」
洋一に礼を言いタクシーの後部座席に乗り込む。
隣で眠る彼女の肩をもう一度揺さぶってみるが反応がない。
住所が分からずどうしようもないので、とりあえず俺の家に向かうことにした。
タクシーが俺の家に到着すると、再度彼女に声をかけて起こしてみる。
「ん‥‥」
「並木さん、起きた?歩ける?」
少し反応があり、ゆっくりと瞼が持ち上がる。
ぼんやりとした表情の彼女は、まだ眠りからは覚醒していないようだ。
肩を支えると歩くことはできるようだったので、マンション常駐のコンシェルジュにも協力してもらい、彼女を俺の家まで運んだ。
家に着くなり再び眠ってしまった彼女を抱きかかえ、俺が使っているキングサイズのベッドに横たわらせる。
そこまでしてふぅと息を吐いた。
致し方なかったとはいえ、彼女を家まで連れてきてしまった。
シミひとつない白い肌を上気させながら、ベッドに乱れた髪を広げて目を閉じる彼女はひどく蠱惑的だ。
そんな姿を見ていると、妙に悩ましい気持ちになってくる。
酔った脳にこれ以上この姿を見せるのは毒だ。
視界に入れないよう俺はベッドのある寝室をあとにした。
リビングのソファに腰掛けながら、ミネラルウォーターを飲み、酔いを覚ます。
無駄に広い家ではあるが、これまで必要がなかったので客室はなく、ベッドは1つしかない。
俺はシャワーを浴び、楽な格好に着替えると、ソファーのうえで毛布に包まり、目を閉じた。
目が覚めた彼女は明日どんな反応をするだろうか?
想像すると楽しくなってきて、口の端が自然と持ち上がり笑みが浮かぶ。
今から少しばかり楽しみである。
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