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しおりを挟む家に着いた後、メイドに彼を客間に案内させる。きっと私が男を連れて来たと向こうに連絡が行っているだろうから、明日にはこちらに来て話をしに来るだろう。
「さて、どうなるかしら。私に別れさせようとしてくるはず…まぁ、駆け落ちも悪くないわね」
*
「お嬢様、次期伯爵様が応接間でお待ちです」
朝から来たようだ。とりあえず一緒にいた彼、ヴェルディには待っていてもらって私だけ応接間に入る。
「ようこそいらっしゃいました。次期伯爵様」
「ああ、こちららこそ急にすまない。急だが、本題に入らせてもらうよ。こちらに、昨日君が男を連れ帰って来たと連絡があったが、その方とはどの様な関係なのだ?」
「私の……好意を持っている方です。私はその方と伯爵家を出て行きたいと考えております」
「…君の意思は尊重するように言われているのだが、諦めてくれ。もう、私との婚約は決まったも同然の状態なのだ、今更だと撤回しずらいだろう。それに、伯爵様からも諦めさせろと言われている。」
想定済みだ。少しでも可能性を見たのが間違いであった。元より、私は伯爵の決定に頷いてすらいない。だから今、婚約者の準備をしていた所で、どの道私が婚約を拒否するのだから変わらないだろう。スッと冷たい視線を送ると、そんな態度に驚いたのか元王太子はビクつく。そして、立ち上がって元王太子を見下げながら言った。
「では、私は此処から去りますと伯爵にお伝えください」
「な…っ、そんなの、ダメだ」
「何がダメなのですか?貴方には私を縛る権利はありません。では、さようなら」
元王太子を背にして早足で歩く。扉を開けると、彼が待っていた。全ての用意も朝早くに相談した後に終わらせておいた為、後は隣国に向かうのみ。
馬車に乗る手前で元王太子が走って来た。
「待て、ちゃんと考えろ。そいつに付いて行くよりも、ここにいた方が良い生活が出来るじゃないか!しかも、急に駆け落ちなど!許され無いぞ!!」
「許される必要はないんです。貴方達など、私にはどうでもいいので。あぁ、あと一つ伯爵に伝えておいてくれませんか?」
「…は?」
「貴方のことは父だと思った事はありません、と」
そうして馬車に乗り込んだ私の後に続いて彼も乗る。
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