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番外編 三毛猫を愛する者たちへ 第1章

第5話

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「そろそろ冒険しようよ」

「にゃー」

「待ってよ、どうしてこんな急に?」

「なんとなく」

「いいにゃないか。菊に身を任せておけば」

「不安な人に身を任せたな」



「久しぶりですにゃ、ミッケ」

「その声は、お兄たま」

 お兄たま?

「我がにゃは、マッケ。

ミッケの兄ですにゃ」

 ミッケそっくりの三毛猫が現れた。



「お兄たま、どうして急に?」

「兄として来てにゃったのに、感謝の心がないやつめ」

「にゃにをー」



「ミッケ、この猫って‥‥」と菊。

「あたちの兄にゃ」

「ミッケに兄なんているの?」

「いるのにゃ。

猫は魚のごとく子どもを沢山産むから、双子や三つ子なんてよくある話にゃ」



「ふんにゃ、だが、メス猫のほとんどは人間世界へ、

オス猫のほとんどはわたちたちの世界へ転送されますがにゃ」

「人間世界って俺たちの世界のこと?」

「そなたは別の世界から来たのかにゃ?」

「うん」

「よかろう、一から話してやるにゃ」



「三毛猫ワールドという異世界が始まりにゃ。

三毛猫ワールドには、女神がいてにゃ、

女神はメス猫のほとんどを人間世界へ、

オス猫のほとんどはわたちたちの世界へ転送しますにゃ。

まれにオス猫を人間世界へ、

メス猫をわたちたちの世界へ転送することがありますのにゃ」



「俺もそうなの?」

「どうゆう意味にゃ?」

「俺も元々人間世界にいたけど、気がついたらこの世界にいて‥‥」

「女神は三毛猫しか転送しないがにゃ。

そなた、どうゆう経緯で来たかいつここに来たか覚えてるですかにゃ?」

「いつかは、最近。

どうゆう経緯か覚えてない」

「赤ん坊ではにゃかった、と?」

「うん」

「なら、女神の仕業ではにゃいですにゃ」

「どうしてここに?」

「わかりませんにゃ」



「それはあたちの仕業にゃ」

「え?」

「軽扉にゃんが気に入ったから誘拐してきたにゃ」

 俺はカチンと来て「お前の仕業か」とミッケを蹴り飛ばした。

「うにゃああああああああああ」



「軽扉にゃま、菊にゃまと負けないぐらい暴力的ですにゃ」

「菊程やってないでしょ?」

「ボクそんなに暴力的だった?」

「やり過ぎるぐらいやってる」と俺とマッケ。





「ミッケ、俺を元の世界に戻してよ」

「できないにゃ」

「やれよ」俺は威嚇した。

「わかりませんにゃ」

「いい度胸だね」



「ミッケにも事情があるにゃろうから聞いてやるにゃ」

「うん‥‥で、どうしてそんなことしたの?

人間世界じゃだめなの?」

「軽扉にゃんを愛でていたかったにゃ」

「しばくぞ、こら」

「最近の軽扉にゃんこわいにゃ」

「思ってないよね?」



「軽扉にゃんとの出会いは20年前‥‥」

「俺、まだ10代だよ?」

「軽扉にゃんに一目惚れして‥‥」

「恋愛要素、発展させないでくれる?」

「とにかく軽扉にゃんが好きだにゃーーーー」

 ミッケが俺に抱きつこうとしたものだから、とにかく投げ飛ばした。

「うにゃああああああああ」



「軽扉にゃん、キスしようにゃ?」

「また同じ目に会いたいのか?」

 殴る準備ならできている。



「まあまあ、その辺にしといて、本題にゃ。

三毛猫刈り隊からわたちたちを守ってくださいにゃ」

「よっしゃ、お安い御用だ」と菊。

「待ってよ、そんな急に引き受けていいの?」

「いいのにゃ。

あたちからもお願いにゃ」

「お前だけにはお願いされたくなかった」



「わたちたちは三毛猫刈り隊から誤解を解きたいですのにゃ」

「誤解?」

「わたちたちは災いを呼ぶと思われていますからにゃ、

どうか誤解を解いてほしいのですにゃ」

「誤解なんてそんな簡単に解けるの?」

「できないと思いますにゃ」

「だったらお願いするな!」



「だけど、やってみるべきだよ。

やらなくてどうこう言うより、やってみるんだよ。

このままだと三毛猫たちが可哀想だよ」

「うん」



「ありがとうございますにゃ」

「これであたちもお酒が飲みたい放題にゃ」

「お酒なんて飲むの?」

「インフルエンザビールって言う‥‥」

「病気になりそう‥‥」





「がははは、見つけたやでえ、三毛猫」

「捕まえましょう」

 フトシスタがマッケを、カナシスタがミッケを瞬間的に捕らえた。

「しまった‥‥!」と菊。

「離すにゃー」

「そんなことしたら、俺元の世界に帰れなくなる‥‥」

「そっちの心配?」



「なるほどね、もしかして僕と同じ人間世界出身者ですか?」

「君もなの?」

「僕たち三人元々住んでる世界が違っていましたが、ミッケによって転送されたんですよ」

「わいとミッドシスタも、人間世界出身者ではなかへんが、異世界出身者やでえ。

やけど、このミッケのせいで帰れなくなったんや」

「あたしたちは帰る方法を見つけたいだけですのよ」



「ミッケ‥‥?」

 俺はミッケを威嚇するよう睨んだ。

「あたちは悪くないにゃ」

「ミッケ、通りでこの人たちのことが戸籍になかったんですのにゃ」

「お兄たままで‥‥」



 俺は三毛猫刈り隊が可哀想になったし、ミッケを殴りたくもなったけどこらえた。

 今ここでやったら、菊みたくなりそうだから。



「ミッケをどうするつもり?」と菊。

「簡単やでえ。ミッケのことやらから本当のことを隠したるでえ。

あとは‥‥」

「人質としても役に立ちそうですわね」

「言わなくてええ!

ミッケがわいに何をしたか知ってるやん?」

「知らない‥‥」



「僕が説明しましょう。

ミッケは僕たちを転送しておきながら帰す方法を知らない、と。

ですので、どうやって転送したか、確かめておかないと‥‥」

「そうゆうことやでえ。

わいらばっかり悪者になったらたまらん」



 三毛猫刈り隊はミッケ、マッケを連れ去った。

 菊が「待て」と言いながら追いかけようとするものだから俺は止めた。



「どうして止めるの?」

「どう考えてもミッケが悪いよね?」

「軽扉?」

「ミッケが恨まれるようなことしたから。

ミッケが転送したとしたら尚更‥‥何されてもしょうがないよね‥‥」

「心配にならないの?」

「心配する義務はない」

「でも‥‥‥‥」

「取り返したいの?」

「うん、大事な仲間だもん」

「なら、一人ですれば?

俺は巻き込まれただけだもん」



「軽扉、急にどうしちゃったの?」

「どうもしてないよ。目が覚めたんだ。

三毛猫を守る義務とかあった?使命とかあった?

明らかに巻き込まれただけだよね?

俺、関係なかったよね?」

「ミッケの気持ちを聞いたの?」

「聞かなくてもわかる」

「どうしてわかるの?」

「ミッケのことだからそうに決まっている。

だから、助ける義務なんかない」

「軽扉‥‥」

「わかったら、もう‥‥‥‥。

ちなみに三毛猫刈り隊がどこにいるか知ってるの?」

「わからない」

「なら、自分で考えて答えを導きだせば?」



 菊がひとりでに泣き出した。

「軽扉、ひどいよ」

「酷いのはだれ?

俺、本当はこんなことやりたくなかった」

「ボクたちがやらなかったら誰がやるの?」

「警察に任せればいいだろ!」

「警察が当てにならないなら、ボクたちがするしかないよね!?」

「なら、戦う力があるの?立ち向かって勝てるの?」

「やるんだよ。そうして道を開いていくの」

「開いてないじゃない!」

「これから開くかもしれない‥‥」

「無責任にも程がある!」



 菊は大声で泣き出しながら、俺を叩いたから叩き返した。

 菊は転んで立ち上がることなく、泣き続けた。

 俺は嫌気がさしてその場を去った。





 悪いのは全部ミッケなんだ‥‥。

 ミッケは何がしたかったの?

 

 可哀想な気もしなくはなかったけど、許せない気持ちの方が勝ってしまった。

 異世界に転送したこと。

 何でもいいから元の世界に帰りたい。



 俺はこの先どうしたらいい? 

 前に進むための方法もわからなくなった。



 俺はこんな三毛猫刈り隊とかどうでもいい。

 三毛猫を守るとか本当はそんなことしたくなかった。

 ただまわりに流されていただけ。
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