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第1章 惨劇のヒロイン

第2話 魔法学園にて

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 魔法学園には、様々な年齢の種族が通う、魔法を習得すれための学校。

 私と、バンピーロは、晴れて入学することになった。
 入学試験とかはなく、願書だけ出せば、それだけで入れる。
 人間世界の学校なら、義務教育とかじゃない限り、そんなことはなさそう。
 だけど、外国ならあるかもしれない。

 その中でも、人間はめずらしいのか、よく話しかけられる。

「もしかして、人間?」

「人間の匂いがする」

「人間がどうやって、ここにやってきたの?」

「魔力を感じないけど、魔法なんて使えるの?

落ちこぼれになりそう・・・」
 
 私は、そんなことで動揺もしない。
 だけど、問題はバンピーロだ。

「セリオちゃんは、これでも頑張っているんだ!」

「バンピーロ、いいのよ・・・。

こういうこと言われるのは、慣れっこだし・・・」

「セオリちゃんは、傷つくことがあるなら、遠慮なんてしなくていいから、もっと僕を頼るんだ。

でないと、本当にセリオちゃんが・・・・」

 バンピーロが、悲しそうな表情をした。
 もしかして、私のことを心配してくれている?

「ありがとう、バンピーロ。

でもね、この人たちは、私にひどいことをしようってわけではないと思うわ。

ただ、人間や魔力を持たない者が目の前にいることが、珍しいだけだから、バンピーロは必要以上に気にしすぎなのよ・・・・」

 まわりにいる人たちからは、ひそひそ話が始まる。

「この二人、付き合ってる?」

「入学した当初から、こんな感じか」

 だけど、私はこんなことぐらいでは、物おじたりしない。

「ただの腐れ縁よ」

 私は、静かに答えた。

「腐れ縁かあ。

いいなあ。

こういった関係がほしいなあ」

「羨ましい?」

「羨ましい。

すっごく羨ましい。

セリオちゃん、すごくきれいだし」

「ありがとう」

「髪もつややかで、瞳も宝石みたいだ。

髪留めの赤いリボンも似合っている。

どこで、買ったんだ?」

「市場の商店街かしら?

10歳の誕生日に、買ってもらったの」

「髪のお手入れとか、どうしているの?」

「これは、そこらへんで売っているシャンプーとか使っているから、特に意識したことはないかも。

髪質はママからの遺伝かもしれないわね」

 ここで、バンピーロの視線を感じた。

 やばい、嫉妬しているかもしれない。

「ナンパか?」

「どう見ても、ナンパじゃないわよ」

「君の髪も瞳も僕だけのためのものなのに・・・」

 バンピーロは、どこか悔しそうだった。

「大丈夫よ。

私は、誰かのものになったりとかしない」

「だといいんだけど」

 バンピーロは、どこか納得していなさそうだった。

「婚約者って言ったでしょ?

その話をしたことは、なかったことになったのかしら?」

「なってない!」

 私はこの時、バンピーロは子供みたいで可愛いと思ってしまった。

 なんやかんやで、私は幸せな学校生活を送っていた。
 だけど、それも長くは続かなかった。

 幼稚園時代のいじめっ子集団がせめてきた。

「ここに、佐藤はいるかー!」

「佐藤のやつ、逃げられると思うなよ!」

 佐藤というのは、私の苗字だ。
 数年ぶりで懐かしい感情があるのと、同時に恐怖もあった。

 どこにいても、やってくる。
 まさか、魔法学校にもやってくるとは思わなかったけれど、元いじめっ子軍団は何の魔力も持っていない。
 だから、勝てっ子ない。
 だけど、元いじめっ子軍団は次々に、人を殺していった。

「なんだ、こいつら?」

「人間の匂いがするけど、何者なんだ?」

「魔力は持っていないはずだ。

どんどん、魔法を使うんだ!」

 元いじめっ子集団は銃や包丁を持っていて、それを使い、次々に銃殺や刺殺をしてくる。

 魔法学校の生徒や先生たちの魔法で、少しずつ元いじめっ子集団を撃退している。

「佐藤は、どこにいるの?」

「佐藤は、どこかにいるはずだ。

探すんだ!」

 私は槍をかまえた。

 私が、当のいじめられっ子の佐藤だと気付いていないみたい。

「君のいう、佐藤って誰のこと?」

「は?」

「佐藤って、誰のことかって話よ」

 私は、元いじめっ子のリーダーにそうささやいた。

「幼稚園の頃のひ弱な女のことだ!

坊主頭のな!」

「何のことかわからないけど、君のお目当ての相手はいないと思うわ。

早々に立ち去るのね」

「うちは、佐藤ってやつをいじめたいんだ!

いじめることを生きがいとしている!

今だって、そう!

いじめたいから、探しているんだ!

ストーカーしているんだ!

いじめをしていないと、禁断症状がでそうで・・・・」

「そんなことなら、重症ね」

「そうだよ!

重症だよ!」

「なら、昔の人がどこにいるかを探すよりは、お医者様を探した方がいいんじゃないかしら?」

「今すぐ、殺す!」

 元いじめっ子リーダーが銃を向けたところに、バンピーロが私を救出してくれた。

「バンピーロ・・・・」

「セリオちゃんにひどいことをする人は、僕が許さない。

僕が相手だ」

「かかってきな!」

「バンピーロ、こんな相手に勝てる?」

「勝てる勝てないじゃない。

君を守るか、守らないかだ」

 こうして、バンピーロが元いじめっ子に立ち向かった。

「一緒に逃げよう!

バンピーロ!

私は、君に生きてほしいよ!」

「はん。

あたしは人間世界でも警察に追われ、家族からも見放され、異世界では指名手配犯の身だ!

あたしの顔を見た以上は、簡単に逃げられるなんて思わない方がいい!」

 私も、戦わないと・・・・!

 誰にも言えないけど、私が原因で起こったことだから・・・!

 だけど、恐怖のあまり、足が動かなかった。

「バンピーロ、お願い・・・。

帰ってきて・・・・」

 バンピーロは、銃で何か所も撃たれて、怪我をしていた。
 それでも、生きているのは、吸血鬼であるおかげだと思う。

「セオリちゃん、僕は絶対に助かるから、この場を離れてよ」

 バンピーロは足を負傷して、今にも動けそうになかった。

「うちの言ったことを、お忘れで?

顔を知られた以上は、逃がさないって」

「逃げられないことなんて、承知の上だよ。

逃げられないなら、逃がしてくれないなら、戦うまでよ!」

 私は槍を抱えて、元いじめっ子のリーダーに戦闘をしかけた。

「うちは、あんたらを、世界を、許さない!」

「全部、ぜーんぶ、自業自得よ!

話を聞いた限りね!」

「うちは、理屈屋なんて嫌い!」

「私は、いつまでも過去のことばかりにこだわって、自分のことよりも、いない人のことばかり気にして、仲間の命でさえも、罪悪感を持たない君が嫌いだよ!」

 私は、負けずと言い返す。
 二度と、あの時のように我慢したりしない。

 私は、逃げることだけじゃない。
 戦う手段もある。

 私は銃での攻撃を槍で跳ね返し、ナイフも槍の刃先で折った。

「高かったナイフを、どうしてくれるの?」

「こっちこそ、大切な友達をどうしてくれるのよ?」

 私は過去にやってきたこともそうだけど、大切な人を傷つけたことを許せそうになかった。

「くっそ、強いなあ。

お前ええええ!」

「当り前よ。

ただ、守られているだけの私じゃないもの」

「佐藤は、どこだああああああ!」

「佐藤、佐藤って言うけど、過去のいない人のことなんて、諦めるのね。

どんなに探しても、どんな世界にも、手がかり一切ない人のことなんて、見つけようがないわよ・・・。

そう、私のパパと同じようにね・・・」

「うるさい!

うるさい!

佐藤が、佐藤をいじめることこそが、うちの生きがいなんだ!

佐藤のいない世界なんて、死んでるも同然だ!」

「なら、君は人としてとっくに死んでいるわね」

「お前に、何がわかるんだああ!

幼稚園の頃の快楽は、今でも忘れない!

うちは、そのためのストーカーになって、友達も犠牲にしてきた!

佐藤は、ここにいるとうちの直感が語っているんだ!」

「その佐藤って人は、本当にここにいるの?

いないんじゃない?

君の勘違いなだけで」

 私と元いじめっ子リーダーは、今は槍と銃での戦いだ。

 銃の玉が飛ぶたびに、槍で跳ね返し、元いじめっ子に全部当てていた。
 血だらけになりながらも、銃を撃ち続けるその姿は、まるで人間とは思えなかった。

 普通の人間なら、死んでいるはずだけど、なぜ生きていられるの?
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