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スパークル
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しおりを挟む「だったら、もう、一生気にしたままでいいよ」
諦めて笑うと、蒼月が「え?」とわずかに目を見開く。
「気にしたままでいいから、せめて、映画撮影をしてるあいだだけは、昔みたいに、ふつうに接してほしい」
「昔みたいに……?」
「うん。わたしと蒼月と大晴、三人で仲の良い幼なじみだったよね? 大晴に呼び出されてコンビニで三人でアイスを食べながら話してたとき、わたし、昔に戻ったみたいでちょっと楽しかったんだ」
「コンビニでアイス……」
無表情でつぶやく蒼月の反応は薄い。
そういえば、前にこの話を持ちかけたときも、蒼月の反応は薄かった。
あのとき、ひさしぶりに三人でバカみたいな会話をして。それが楽しいと思ったのに。蒼月は違ったのかな。
「まあ……、蒼月が嫌だったらムリしなくてもいいんだけど……」
「嫌じゃないよ。気を付ける。でも、僕、すぐに忘れちゃうかもしれないから……。そのときは、陽咲がまた僕に教えてくれる?」
蒼月が指先でメガネを押し上げながら、深刻そうな顔でわたしをじっと見てくる。
「それは、かまわないけど……」
戸惑い気味に頷きながら、変なことを言うなと思った。
すぐ忘れちゃうって、どういう意味――?
適当な大晴なら、冗談でそう言うこともありそうだけど、蒼月の表情を見る限り、冗談を言っているようには見えない。
最近の蒼月は、少し変だ。なにが変なのかと聞かれたら、うまくは答えられないけれど。
顔を合わす度に、毎回違う人と話しているような……。そんな感じがするときがあるのは気のせいだろうか。
考えていると、蒼月が、ふいに、斜めにさげていたボディバッグに手を伸ばした。
「大晴から連絡来てる。準備できてるから、早く来いって」
ボディバッグからスマホを出した蒼月が、それをわたしに見せながら苦笑いする。そうやって笑う蒼月の表情からは、さっきまでの深刻さは消えていた。
「早く行こう」
「あ、うん……」
先に歩き出した蒼月を小走りで追いかけると、彼がほんの一瞬足を止めてわたしが隣に並ぶのを待ってくれる。
「そういえばわたし、花火やるの、今年初かも」
「僕も、今年初めて……、なのかな」
わたしの話に、蒼月が曖昧に笑いながら答える。その言い方も、なんだかおかしい。
けれど、その奇妙さの理由が、わたしにはやっぱりわからなかった。
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