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15話 ほのぼの回がまさかのホラー回だった
しおりを挟む私達と大きさは変わらないが相手はモンスターだ。普通の子供ならあっという間にやられてしまうだろう。
「不味いですね……」
ウィリアムが少し焦った声で言った。
「そうだな。帯剣してれば何とかなったかもしれないが今日は持ってねえし、騎士達はワイバーンの相手でこっちにまで手が回らないかもしれないな」
マークが同意する。その間もジリジリとオークが近づいてきていた。
「このままこの場にとどまるのはよくありませんね。オークは群れを成して行動するのでそのうち仲間が集まってくるかもしれません。とりあえず私が足止めしますので後ろの脇道から森の中へと逃げましょう」
王子が両手を前に出して詠唱を始めた。
「レイラ嬢からこの道を真っ直ぐ走って先に行っててください。僕たちは王子と一緒にすぐに後を追いますので」
「……わかりましたわ。皆様もお気をつけて」
ウィリアムが促すように脇道へと誘導した。私が女だから王子達との走るペースに差がある。その為、先に逃がすのだろう。
本当は一緒に残ってみんなと一緒に戦いたかったがモンスターとの実戦経験がない私だと足手まといになるだけだと思いなおし、指示にしたがって森の中かへ続く道へと走った。
「ちくしょう、はじめてのおつかいどころじゃねーじゃねえか!!」
走りながら思わず愚痴を吐く。のどかな雰囲気から一変、殺人鬼が現れたホラー映画の主人公の気分だ。
走りながら後ろを振り返ったらまだ3人は来ていない、周りも見渡すがモンスターらしきものは見えなかった。
木々で覆われた森の中は薄気味悪くて心細くなるがそれでも言われたとおりにひたすら獣道を走り続けた。
「お!…っと。あぶねえ」
急に明るい場所に出たと思ったら崖になっていて、古い吊り橋が架けられていた。崖の下を覗くと川が流れているようだ。
「どうしようかな」
まっすぐ道を進めと言われたがここで3人を待った方がいいのではないだろうか。だいぶさっきいた場所より離れているし、3人と合流した方がいいのかもしれない。
私が橋を渡るか迷っていると森の中から人の走る足音が近づいてきた。
「レイラ嬢、よかった! なかなか追い付かなかったので心配しました」
森から抜けてきた王子が私を見つけて安心したように言った。後ろの二人も無事のようだ。
「皆様もご無事でよかったですわ! この橋を渡るか皆様をお待ちするか迷ってたのです」
「ずいぶんと古い吊り橋ですね」
「だなあ。でも、あいつらが追ってくるかもしれないし渡るしかないんじゃねえの?」
ウィリアムが不安そうだがマークがそのまま進んで橋の上を少し歩いた。
「お! 意外に大丈夫だぞ、この橋。このまま進もうぜ!」
「またあなたは勝手に!!」
マークの行動にウィリアムが腹を立ててたが結局、そのまま橋を渡ることになった。
先頭がマーク、その後ろにウィリアムで次に私、最後に王子が並んで渡る。
何かの木のツルで作られた橋は歩くたびにミシミシを音を立ててるがマークが言うように丈夫にできてるらしくこれなら渡れそうだ。
足元を見ると乱雑に編み込まれたツルの間から川が流れているのが見えた。
急に怖くなって目をつぶって慌てて首を横に振った。
お、落ち着け大丈夫だ!
「大丈夫ですか? レイラ嬢」
「だい…… 《ブチッ》 あっ!!」
王子に声をかけられて大丈夫だと答えようとして後ろを振り返った瞬間、何かが切れるような嫌な音がした。
「「「うわあああああああ!!!」」」
そしてそのまま私達は谷底へと落ちて行った。
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