76 / 92
67話 冤罪
しおりを挟む「ヴィクトリア・メイスフィールド。貴方をクララ嬢の殺害容疑で拘束させてもう。」
「それは、いったいどういうことでしょうか?」
何故、いきなり犯罪の容疑をかけられているのか全く分からなかった。
「……今日、教会を出て過ぎに近くで爆発騒ぎがあった、こちらにも聞こえるほどの大きさだったと聞く。」
「はい、確かに聞きました。窓の外を見ると教会の近くで煙が上がっているのが見えました……。」
「その騒ぎに乗じて、私とクララ嬢が二人になったのを見計らって襲撃してきた者たちがいた。」
淡々と感情の読めない声で話すアレクに、すこしずつ自分の身に何か良くないことが起きているのが分かった。
「襲撃した男たちは私がすぐに撃退したし、捕縛することができたがその襲撃者達は今回の爆破事件も襲撃もすべて貴方から依頼されたのだと自白している。」
「そんなっ! 私はそんなことしておりません!!」
明らかに誰かが私を陥れようとしている。アレクの目が一瞬揺らいだのが見えた。
「……しかし、貴方が襲撃者の1人と密会しているところを見たという一般人が出てきた。」
「そんなことはありえません! 私は王宮に来てからは外へは出ておりません!!」
「それを証明できる者はいるのか?」
「メイがおります! 彼女はずっと私に付いておりました。王宮から出ていないと証明できるはずです。」
「しかし、彼女は君の……メイスフィールド家のメイドだ。口裏を合わせたのかもしれない。」
「そんなっ……。」
それまで黙って二人のやり取りを見ていたクララが口を開いた。
「ヴィクトリアさん!! 私がアレク様と仲良くしているのが嫌でこんなことしたんですよね!? だって、学園の時も婚約者だったジェフリー様と少し話しただけでも私に辛く当たってきたのだもの。」
今更、学園時代の事を持ち出してきた。あまりに彼女が無節操に男性に過剰なスキンシップを取るので少し窘めただけなのに、彼女にはそれが『虐めた』事になるらしい。
「……私は、男性との距離は節度を持って接するようにとご忠告しただけですわ。」
「またそうやって、睨みつける……。アレクさまぁ~、私こわいですぅ~。」
アレクの腕を両手でぎゅっと掴みますます体を寄せ付けた。
「とにかく、事件の詳細が判明するまで貴方を一時、拘束させてもらう。すまないがこちらの指示に従ってもらえないだろうか。」
「……わかりましたわ。」
これ以上、何を言っても疑われていることに変わりはないので素直に従うことにした。
「では貴族牢へと案内する。明日、聞き取りを行う。」
「貴族牢……。」
貴族牢とは文字通り、罪を犯した貴族が収監される部屋で、一般と違って簡素ではあるが部屋はそれなりに整えられている。しかし、窓の外は鉄柵がされ脱出困難になっており、扉の前には見張りの騎士が常時立っている。
つまり私はもうすでに犯罪者として扱われているのね。
「私が案内しますのでついてきてもらえますか?」
アレクの部下のロイさんが私の目の前に立った。
「はい…。」
ロイさんと私は、王宮を出て貴族牢のある塔へと歩く。
「ヴィクトリア嬢、こんなことになって申し訳ない。アレクもどうにかお嬢を助けようとしていたのだけど証人が出てきてからはどうしようもなかったんだよ。」
人気がいない廊下を二人で歩いていると、ロイさんが話しかけてきた。
「その証人の方は確かに私だとおっしゃったのですか?」
「学園の給仕の仕事をしている時があって、その時に君を知ったらしい。」
「そうなのですか……。」
「その証人が俺の知り合いでね。まさかと思って何度も確認したんだけど……。」
「………。」
確実に私の方に分が悪くなっている。それでも貴族牢に入れられては無実を証明する手立てがない。
「とにかく、今は大人しくしておいてね。俺達が何とかするから!」
ロイさんが私を元気づけるように明るい声で話す。
「私は今回の件に無関係です。それだけでも信じていただければ。」
「うん、わかっているよ。」
貴族牢に入ると意外と綺麗な部屋になっていた。ベッドにテーブルと椅子が置いてあり、紅茶を作るセットも置かれていてお菓子等もある。ただ、やはり窓の外へは出られないように頑丈な鉄柵が付けられていた。
「これからどうなるのかしら。」
窓の鉄柵の隙間から見える月を眺めながら、眠れない夜になりそうだとヴィクトリアは思った。
その日の夜、王宮でも事件が起きる。
アルフレッド王子の婚約者でもあるマーガレットが忽然と姿を消したのである。
0
お気に入りに追加
3,636
あなたにおすすめの小説
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
侯爵家の当主になります~王族に仕返しするよ~
Mona
恋愛
第二王子の婚約者の発表がされる。
しかし、その名は私では無かった。
たった一人の婚約候補者の、私の名前では無かった。
私は、私の名誉と人生を守為に侯爵家の当主になります。
先ずは、お兄様を、グーパンチします。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【短編集】勘違い、しちゃ駄目ですよ
鈴宮(すずみや)
恋愛
ざまぁ、婚約破棄、両片思いに、癖のある短編迄、アルファポリス未掲載だった短編をまとめ、公開していきます。(2024年分)
【収録作品】
1.勘違い、しちゃ駄目ですよ
2.欲にまみれた聖女様
3.あなたのおかげで今、わたしは幸せです
4.だって、あなたは聖女ではないのでしょう?
5.婚約破棄をされたので、死ぬ気で婚活してみました
【1話目あらすじ】
文官志望のラナは、侯爵令息アンベールと日々成績争いをしている。ライバル同士の二人だが、ラナは密かにアンベールのことを恋い慕っていた。
そんなある日、ラナは父親から政略結婚が決まったこと、お相手の意向により夢を諦めなければならないことを告げられてしまう。途方に暮れていた彼女に、アンベールが『恋人のふり』をすることを提案。ラナの婚約回避に向けて、二人は恋人として振る舞いはじめる。
けれど、アンベールの幼馴染であるロミーは、二人が恋人同士だという話が信じられない。ロミーに事情を打ち明けたラナは「勘違い、しちゃ駄目ですよ」と釘を差されるのだが……。
完結一話追加:囲われサブリナは、今日も幸せ
ジュレヌク
恋愛
サブリナは、ちょっと人とは違う特技のある公爵令嬢。その特技のせいで、屋敷から一歩も出ず、限られた人とのみ接する読書漬け生活。
一方のクリストファーは、望まれずに産まれた第五王子。愛を知らずに育った彼は、傍若無人が服を着て歩くようなクズ。しかも、人間をサブリナかサブリナ以外かに分けるサイコパスだ。
そんな二人が出会い、愛を知り、婚約破棄ごっこを老執事と繰り返す婚約者に驚いたり、推理を働かせて事件を解決したり、ちょっと仲間も増やしたりしつつ、幸せな囲い囲われ生活に辿り着くまでのお話。
なろうには、短編として掲載していましたが、少し長いので三話に分けさせて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる