59 / 92
50話 魔物(side:アレク)
しおりを挟む飛び出してきた魔物は人型だった。
体長は3メートルほどあり、体は筋骨隆々で血管が浮き出ている。頭には二本の角が生えていて口は吸血鬼の様な牙がむきだしていた。
アレクはその魔物の顔を見て驚愕した。
「ローガン……。」
俺が何故、ヴィクトリアの拉致を知ったのかは数刻前に遡る。
執務室で仕事をしていたら窓をトントンと叩くものがいる音がする方へ視線を向けると青い鳥が窓際にいた。
「初めて見る鳥だな。」
見たことのない綺麗な青い鳥に思わず窓を開けると青い鳥がいきなりしゃべりだした。
「ヴィクトリア。タイヘン! サラワレタ! テガミヲミテ。」
そう言うと青い鳥は俺の目の高さまで飛んで足首に結びつけられた紙を見せた。紙を開くとアンジュ様からの手紙でヴィクトリアが気分転換に街へ出かけた事、帰りが遅いため確認したところどうやら攫われたらしい。すぐにこの場所へ向かってくれとの内容が書かれてあり、手紙の最後には『たぶん犯人はローガンではないか』と書かれていた。
すぐに出動してアンジュ様が示した場所へと来たが、屋敷の者はそのようなひとはここにはいないと頑なに屋敷に入るのを拒むのでそろそろ無理矢理にも突入しようと決意した時にリュウがいきなり騒ぎ出した。
「きゅうう、きゅうううううううう!きゅううう!」
(アレク、ヴィクトリアがいるとこわかった!いっしょにいこう!)
「っ!? お、おい!!」
いきなり肩を掴まれてそのままリュウは屋敷の2階のある部屋へと一目散に飛んで行きそのまま窓に突っ込んだ。
すぐにヴィクトリアを見つけることができたのだが、ヴィクトリアへの暴行の傷跡を見てかつてないほど怒りがふつふつと湧いてきた。
絶対にローガンをこの手で捕まえる。奴にはヴィクトリアにした暴力の報いを受けてもらう。
そして俺の目に現れたローガンはもはや人とは呼べない異形の者となっていた。
「ローガン……。」
「ふっははははは!!! アレク・ハワード! 俺は最高の力を手に入れたぞ! 魔力がどんどんみなぎってくるのがわかる。今日こそ積年の恨みを晴らしてもらうぞ!」
「ローガン。お前、自分がどういう状態なのかわかっているのか?」
「はは、オークの力と竜族の魔力と私の知性があればお前など、すぐにひねりつぶしてくれる!!」
ローガンの血走った目はすでに常軌を逸しているのだろう。
「アレク。どうする?」
隣にいるロイが小声で話しかけてくる。
「お前の部隊は地下に行ってジャンという男を救出してくれ。スミス商会の息子だ。俺はローガンをなんとかする。他の騎士達には退避命令を。」
その言葉にロイは目を見開いた。
「おまえ一人でやるっていうのか!? ばかじゃねえの!? 今のあいつは俺でもヤバいってわかるぞ!!」
「大丈夫だ。リュウもやる気みたいだしな。なんとかなるさ。」
「ギュルルルルルル!!!」
(あいつすっごい嫌な感じ!!)
「お前‥‥。」
「俺達は大丈夫だ。ほら、早く行け!」
「ちっ…。わかったよ! 無理すんじゃねえぞ!!」
こういう時、何を言っても無駄だとわかっているロイは舌打ちしながらも俺の指示に従って離れて行った。
「話し合いは終わったのか?」
「ああ。」
その瞬間、ローガンはファイアを打ってきた。1メートルくらいの大きさのそれは避けることもできたが避けると俺の後ろの建っている屋敷にあたってしまう。
「ぎゅうううう!」
(しーるど!!)
リュウが俺の目の前に飛び出してシールド魔法でファイアを相殺する。
「リュウ、助かった。ありがとう。」
「きゅう、きゅうううう!!」
(うん、まにあってよかった!!)
「なるほど、そのドラゴンが少し邪魔だな…。」
ローガンは召喚魔法で魔物を召喚した。
「gyuuuuuu、&%$#&!!!!」
(ぎゃああ、&%$#&!!!!)
ドラゴンはムカデが苦手だと言い伝えにはあったのだが本当に苦手だったのか。百本足と言われる魔物が地中から長い胴体を這わせてリュウを追いかけまわしている。リュウはファイアブレスで抵抗しているが奴には効き目がないらしい。
「さあ、邪魔をするものはいなくなったな。じっくりと嬲り殺してやろう。ククク…。」
ローガンがニヤリと笑った。
リュウを早く助けてやりたいがまずは目の前のローガンを大人しくさせるのが先だ。
俺は腰に差した剣を抜いて構えた。
0
お気に入りに追加
3,641
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
魔力なしと虐げられた令嬢は孤高の騎士団総長に甘やかされる
橋本彩里(Ayari)
恋愛
五歳で魔力なしと判定され魔力があって当たり前の貴族社会では恥ずかしいことだと蔑まれ、使用人のように扱われ物置部屋で生活をしていた伯爵家長女ミザリア。
十六歳になり、魔力なしの役立たずは出て行けと屋敷から追い出された。
途中騎士に助けられ、成り行きで王都騎士団寮、しかも総長のいる黒狼寮での家政婦として雇われることになった。
それぞれ訳ありの二人、総長とミザリアは周囲の助けもあってじわじわ距離が近づいていく。
命を狙われたり互いの事情やそれにまつわる事件が重なり、気づけば総長に過保護なほど甘やかされ溺愛され……。
孤高で寡黙な総長のまっすぐな甘やかしに溺れないようにとミザリアは今日も家政婦業に励みます!
※R15については暴力や血の出る表現が少々含まれますので保険としてつけています。
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい
ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。
だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。
気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。
だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?!
平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ
弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は、たった今をもって解消させてもらう!!』
国のこれからを背負う若者たちが学院を卒業することを祝って開かれた舞踏会の日、めでたい筈のその席に響いた第一皇子の声を聞いた瞬間、私の頭にこの場面と全く同じ“ゲーム”の場面が再生された。
これ、もしかしなくても前世でやり込んでた乙女ゲームの終盤最大の山場、“断罪イベント”って奴じゃないですか!?やり方間違ったら大惨事のやつ!!
しかし、私セレスティア・スチュアートは貧乏領地の伯爵令嬢。容姿も社交も慎ましく、趣味は手芸のみでゲームにも名前すら出てこないザ・モブ of the モブ!!
何でよりによってこのタイミングで記憶が戻ったのか謎だけど、とにかく主要キャラじゃなくてよかったぁ。……なんて安心して傍観者気取ってたら、ヒロインとメインヒーローからいきなり悪役令嬢がヒロインをいじめているのを知る目撃者としていきなり巻き込まれちゃった!?
更には、何でかメインヒーロー以外のイケメン達は悪役令嬢にぞっこんで私が彼等に睨まれる始末!
しかも前世を思い出した反動で肝心の私の過去の記憶まで曖昧になっちゃって、どっちの言い分が正しいのか証言したくても出来なくなっちゃった!
そんなわけで、私の記憶が戻り、ヒロイン達と悪役令嬢達とどちらが正しいのかハッキリするまで、私には逃げられないよう監視がつくことになったのですが……それでやって来たのが既に悪役令嬢に攻略され済みのイケメン騎士様でしかも私の初恋の相手って、神様……これモブに与える人生のキャパオーバーしてませんか?
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる