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18話 俺はこんな事で死にたくない。 - 2回目 -(side:アレク)

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 ―― 時は遡って、メイスフィールド家の当主の寝室。

俺は、ヴィクトリアから聞いた話を全部話した。ただ、メイドとして雇ったとか手作りの朝飯を食ったとかは言っていない。


……俺はこんな事で死にたくない。



「なるほど、お嬢様も『前世持ち』でしたか。それで昨日の奇行が納得できました。およそ普段のお嬢様がされるような行いではなかったので。」

納得、といった感じでセバスチャンが頷いた。

「『前世持ち』? お前はそういう種類の人間を他にも知っているのか? 俺は前世の話をする奴にあったことも聞いたこともないのだが。」

なんだかさっきから呆けているルイスをほうって、まともに話が出来そうな執事に問いかける。

「おります。私が知っている限りでも2人……お嬢様を入れたら3人になりますね。ただ、『前世持ち』はかなりの国家機密扱いとなりますので国の中でも私と旦那様、あとは陛下と本人たちの夫ですね。」

「夫? というか国家機密をなぜ執事のお前が知っている? 陛下や宰相ならまだわかるのだが。」

おかしな話である。公爵家の執事がなぜ知っているのだろうか。

「ああ、それは私が『前世持ち』の息子ですから、旦那様もですが。」

そこまで聞いてようやく気付く、なるほどあの・ ・人たちか!

「もしかして『嵐の双子姫』。なのか?」

かなりの破天荒な御二人だったと聞く、やっかい事に首を突っ込んでは嵐のように周りを巻き込んで引っ掻き回し、しかし不思議なことにそのすべてが良い方向に収まったらしい。

「ははは、なかなか懐かしい呼び名でございますね、さようでございます。私と旦那様の母上達でございます。………〈スパーン!!〉旦那様、そろそろ正気に戻ってください。」

あれ? 今、執事が主人の頭をたたかなかったか?

「はっ……おおおお!! やはり私のかわいいヴィクトリアは、神が私の元に届けてくださった天使だったのだな!! しかしアレク様、なぜヴィクトリアも一緒に連れてこなかったのですか!」

昨夜、ヴィクトリアから父親ルイスとの口論の内容を聞いていたからその物言いにかなりムカついた。

「ルイス、そんなこと言うがな、自分が悪いわけでもないのに父親にいきなり怒鳴られて『修道院に行け』は横暴ではないのか? それに覚悟を持って家を出た彼女を無理矢理にここへ連れてくることは俺にはできない。」

「それは違うのです! 少し頭に血が上って……、しかし『前世』を思い出したばかりのリアにいきなりあんな出来事が起きたのだ、きっと混乱したに違いない。それをわたしはっ、私が間違っていた。ちゃんとリアの話を聞いてあげなければいけなかったのにっ…ああ、私はなんてことを………。」

ルイスは悲痛な顔で懺悔を口にする。


「まあまあ、昨日は本人が『前世』を思い出したばかりだったし、よほど疲れているようだったからなウチに泊めたのだ、そこら辺は勘弁してくれ。あと、気になることを聞いちまったものだからもう少しヴィクトリア嬢から状況を聞きたくてな。」

「気になること?」

「ああ、あんたは大方知ってそうだな。今回の騒動の発端となった光の魔法が使える少女について。」

ルイスの目がスーッと細められた。やはり、知っていたようだ。

「それは、リアから聞いたという『乙女げえむ』と関係あると?」

俺は頷いた。そのげえむの詳しい内容までは話していない。
ヴィクトリアはそのげえむの内容を知っている何者かがいるかもと言っていた。その何者かが今回の件を企てたのなら少々厄介なことになりそうだ。

「それなら、陛下と一緒に話しを聞いた方がいいでしょう。セバスチャン、登城の用意と私の部下に陛下への謁見の許可を早急にするようにと連絡しろ。それから………。」

「かしこまりました、すぐに手配いたします。」

なぜか急に宰相モードになったルイスが執事に次々と指示を出している。俺は何だか嫌な予感がして席を立った。

「では、俺はこれで……。」

「何を言っているのですか、あなたにも一緒に来てもらいますよ。ヴィクトリアの件もありますし、ああ、そうそう、陛下との謁見が終わりましたらあなたの家に私も行きます。リアを迎えに。」

「へ? ちょ、ちょっと待て。えっと、ほら、お前たちは昨日、喧嘩したばっかりだろ。日を改めた方がお互いにいいのではないかな~……と。」

「何を言っているのですか。こういうことは早いうちに謝ったほうがいいのです。全面的に今回は私が悪いので全身全霊で謝ります。今日、許してくれなくても毎日でも通って許してくれるまで謝る覚悟です!」

その言葉に俺は驚愕した。




いろいろマズイ、かなりマズイ!


このままだと俺は確実に息の根を止められる!!


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