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16話 死ぬかと思った - 1回目 -(side:アレク)
しおりを挟む屋敷を出て俺が騎士団より先に向かったのはメイスフィールド家だった。
ヴィクトリアは、朝になれば自分が家を出た事に気づかれるだろうと言っていた。ならば先に宰相と会って話をつけなければこの国がヤバい、大袈裟じゃなく確実にだ。
さて、どう話をしようかと考えつつそれでも妙案は思い浮かばず重い足取りでメイスフィールド家の玄関までやってきた。
なにやら屋敷内が騒がしいような気配がする。やはりヴィクトリアがいなくなったのがばれてしまったか。
玄関先に出てきた侍女に宰相への取次ぎを頼むと慌てたようにまた屋敷の中へと入っていった。少しすると執事の恰好をした男がやって来た。
「大変お待たせしました、執事のセバスチャンと申します。只今、主人の方は立て込んでおりまして……。」
そう言って頭を上げた。執事は髪型や髪と瞳の色は違うが宰相とそっくりの男で驚いたがすぐに思い当たった。
「ああ、おまえがあの王女の息子か。」
先々代の双子の王女が嫁いだ先が姉の方が当時のメイスフィールド家の嫡男で妹がその嫡男に仕えていた従者だったという。当時は相当の騒ぎだったらしいが。
なるほど、その従者の子供が今は公爵家の執事をしているのか。
「さようでございます。皆様、私を見ると驚かれるのですよ。」
「なるほど……。で、宰相閣下に是非お目通り願いたい。火急の用だといえば ―― ヴィクトリア嬢の事だと言えば会うだろう。」
最後は周りに聞かれないよう声をひそめて執事にだけ聞こえるように言った。
執事の目が大きく見開かれた。
「これは、失礼しました。ではさっそくこちらに、旦那様の部屋へ案内いたします。」
そう言って屋敷の中へと案内した。
案内された先は、どうやら寝室のようだ、中へ入るとベッドの中でうなされている宰相がいた。
「ルイス、俺だ。」
「アレ……ク様。今、あなたにかまっていられる暇などありません。わ、わ、私の天使がっ……。」
「あの、そのな、そのヴィクトリア嬢の事なのだが……。」
「何か知っているのか! どこだっ、どこにいる!?」
今の今まで死人のような顔をして寝ていたやつががばっとベッドから起き上がり俺に飛びかかると騎士服の襟首を締め上げてきた。
「ぐっ!! お、おち……おちつけっ…ぐっ!!」
ギュウギュウと締め付けられて息が出来ない。腕を掴んで離そうにも馬鹿力で全然ほどけない。
あ…俺、死ぬかも……。
敵地にて国の為に命を散らすのは本望だが、自国の宰相に絞め殺されるなんてまっぴらごめんだ。
あ……何だか気が遠くなってきたぞ、そして女神が俺に向かって微笑んでいるような幻が見える………。
スッパ ―― ン!!
「って…。」
セバスチャンが思いっきりルイスの頭を手で叩いた。
「旦那様、落ち着いてください。お嬢様の唯一の手掛かりになる方を絞め殺さないでくださいませ。」
「おお、私としたことが! 申し訳ございません、アレク様。少々気が動転しまして、で、娘はどこにいるのですか? 無事ですか? すぐに迎えに行かなければ!!」
と矢継ぎ早に聞いてくる。俺は空気を大きく吸い込んで息を整えるのがやっとだ。
「…少し、まて。はぁ~~~~ふぅ………と、その前にヴィクトリア嬢の話をする前に約束してほしい。」
「なんでしょう! リアに会えるならなんでもお約束します!」
「ふぅ…、これから俺が話すことを最後まで聞け。そして、絶対にさっきみたいに俺を殺そうとするな。いいな? 約束だぞ? 」
「それは、話の内容によるなぁ……。」
「大丈夫です! 旦那様が何かされようとしましたら私が全力でお止め致します!」
ルイスの言葉を遮って執事が代わりに返事をする。ルイスはいまいち信用できないがこの執事なら言葉の通りに全力で止めてくれるだろう。
若干の不安が残りつつも昨夜の出来事を全部話すことにした。
「コホン……では、ヴィクトリア嬢と出会った経緯について話をする。」
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