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4話 父と娘、親子喧嘩勃発です

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「お前は、自分が何をやらかしたのかわかっているのか!!」

あの後、引きずるようにお父様の執務室へと連れてこられた。

「最初に『婚約破棄』を口にされたのはジェフリーの方ですわ。しかも皆の前で私を辱めるような言葉を口になされて…… お父様は娘がそんな扱いをされてもお許しになられるのですか?」

「減らず口をたたくな! 婚約者の腹を殴るなどと、貴族の令嬢がすることか!! お前の蛮行はもう王宮内まで広まっているぞ!」

「婚約者ではなく『元』ですわ。」

「ええい! 黙れっ、お前はこの婚約がどんなに大事な事かわかっているのか!」

「わかっていますわ。それはもう、簡単に婚約破棄を口になされるジェフリー様以上に。」

顔を真っ赤にさせて怒りに震えているお父様を見つめながらゆっくりとした口調で冷静に返した。


ヴィクトリアのメイスフィールド家とジェフリーのクレイグ家とは元々、政敵同士だった。
現在、国王であるアントニオ陛下がまだ第一王子だった頃、母親が違う第二王子との王位継承争いがあった。
メイスフィールド家は第一王子であるアントニオ様をクレイグ家は第二王子を押し、表にはあまり出てないが裏ではかなりの苛烈な争いになったそうだ。

そして、第一王子であったアントニオ様が国王になり両家の因縁を断ち切ろうと結ばされたのが私とジェフリーの婚約だったのだ。


「わかっているのなら、なぜこういうことになるのだ。」

先ほどより少し落ち着いたのかトーンを落として私に尋ねる、しかしその目は鋭いままだ。

「私は今まで十分すぎるほどジェフリー様の婚約者として振舞ってまいりました。たとえ暴言を吐かれようとも、私という婚約者がいても他の女生徒にべったりとくっついていらしても私は黙って耐えておりました。しかし本日のジェフリー様は私の友人でもあるマーガレット様にいじめをしたなどとありもしないことで糾弾なされて見るに堪えなかったのです。しかも、私も一緒になっていじめたなどと、お前とは婚約破棄だと。それでもお父様は耐えろとおっしゃるのですかっ。」

「…それでもだ、もういい。お前には失望した。暫く部屋で反省していろ。もう、お前を嫁に貰いたいという家などないだろうから今後は修道院にはいってもらう。」

「修道院は嫌です! そこに入れられるなら私は平民になって暮らしたいですわ!」

とんでもないことを口にしたお父様に言い返した。
修道女なんて一生、修道院からでられない牢獄のようなものだ。

「黙れ! これは決定事項だ。セバスチャン! このバカ娘を部屋に連れていけ!決して外へは出すな!!」

有無を言わせないお父様にムカついたが今のままでは何も聞いてくれそうにない。おとなしく部屋に帰ることにした。



まあ、すぐに出るけどね。




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お父様へ

私はお父様がお決めになったことがどうしても納得いきません。
そこで私はメイスフィールドの名を捨てることにしました。
あなたの娘はいなかったとお思い下さい。
私はこれから平民となり自分なりの生き方を歩みたいと思いますので
探さないでください。
最後に、お体にお気をつけて。
                          
                           ヴィクトリアより

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