あじさい 短編集(外伝)

二色燕𠀋

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「はー、ヤバイなんなの楽しくて仕方ねぇ…!」
「俺がこんなに落ち込んでんのがか!?」
「うん、あんた最高のバカ」
「うるせぇや!来年は光也の番な!決めた!そうしよ!これ当番制ね!オーナー権限発令!再来年は真里ね!」
「ふははっ!覚えてたらやってやるよ!まぁ忘れてやる!嫌だもん!」
「はぁあ!?」
  
 来年、再来年か。いつの間にかそんな話が出来るような、そんな場所に俺は来たのか。当たり前な日常会話のなかに、ふとそう思った。
  
 その日はまたいつも通り緩く忙しかった。よほど気に入ったらしく光也さんはお客さんに柏原サンタ写真を見せまくっては爆笑していた。
  
 クリスマス当日は何故だかお店は前日ほど混まず、緩く過ぎていった。
  
 開店あたりに遥子すみこファミリーが来て飯食って帰ったりしたことが予想外だったくらいで、あとはいつも通り、緩く過ぎた。
  
 急に柏原さんが、「思ったより暇だし、早めに閉めよう」と言い出したのでいつもより一時間早く閉店。やっぱりこんな日は早く帰りたいのかな、と静さんの顔が浮かんだが。
  
 閉店してすぐ、「はい、今からクリパやりますよ」と言い出した。光也さんと二人ではてな顔をしてると、「いいから座れ!」と言われ、仕方なくテーブル席に座る。

 厨房に引っ込んだなと思ったら、ケーキとローストビーフと、取り敢えずなんか料理とかを持ってきて最後、シャンパンを2本くらい置いた。
  
 あんな料理、いつのまに用意したんだろう。

「いつの間にシャンパン用意したの?しかもこれ…出してるやつじゃないじゃん」
 
 マジか。

「いつの間に料理も!これどこしまってたんすか!」
「昨日散々コケにされたからな!しかも驚くのはまだ早いぞ」
  
 今度はレジのあたりをなんか漁って袋を持ってきた。
   光也さんと俺はラッピングされた箱をもらった。

「光也のは超音質ヘッドフォン。真里はこの前欲しいって言ってたコードなしマウス。
 よし!どっきり大成功だな!」
  
 そう言って柏原さんはシャンパンをあけてグラスに注いだ。取り敢えず三人で乾杯。

「ありがとうございます。マジ柏原さん抜かりないね。雑談からよく欲しいもの拾ったよね」
「おっさんホント怖いわー。ありがとうじゃん」
「俺は出来る男だからね」
「そうだねおっさん。
 俺もどっきり大成功かな」
  
 そう言うと光也さんは立ち上がり、バーカウンターへ行き、なんだか下を漁って紙袋を二つ持ってきた。ひとつは柏原さんに、ひとつは俺にくれた。

「え?」
「マジ?」
「いやぁ、あんたがシャンパン隠してたならカウンター下で正解だったな。漁られてたらバレてたもん。ティーニニック10年。これって他の手に入んないんだね。一番安いので我慢してね。
 後で飲み行きたいね。
 真里は財布。お前の財布ぼろっぼろだからちょっと買い替え」
「うわぁ…すげぇ…ヤバイ。俺柄にもなくちょっと泣きそうなんだけど」
「泣くの早いっすね。俺もあるから」
「マジ?やめてよね」
  
 仕方ない。
  
 一度バックヤードに取りに戻る。まさかこーゆーパターンで渡すと思わなかったからなぁ…。全然ラッピングとかしてなかったな。
 箱ごと持ってって渡した。二人分のワイングラス。

「ワイングラス。家で使ってくださいね。まさかこのパターンだと思ってなかったんでラッピングとかしてないけど」
  
 柏原さんは受けとると俯いてしまった。泣いてますねこれ。
   顔をあげるとやっぱり涙ぐんでる。

「ちょっと予想してなかったっすねこれ…。おっさんわりとキテますね」
「サプライズするはずがされてやんの」
「うるせぇ!お前ら好きだ!」
  
 喜んでいただいて何より。柏原さんもサプライズ成功するといいね。
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