26 / 73
White Dust
3
しおりを挟む
「…楓ちゃんさぁ、」
少し落ち着いた頃にマーサが俺を抱き締めながら背中に語ったので「なに?」と、批判かな、怒るよなと振り向いたのだが、ふと黙ったマーサは即、ベットの引き出しからエフェドリンを取り出したのだった。
「…ちょっと息苦しそうだね楓」と、自分の口に錠剤とペットボトルの水を含んで俺に口移ししてきて。
広がった生ぬるい水と溶けかけた錠剤。飲めるまではこの恋人、舌を抜いてくれないのだ。
なにか、じわりと頭に、安心だとかそんな優しい言葉が喉へ流れ込む。
好きな色で塗り替えられていくような自分に酔いそうで。
「ん、ありがと…」
「…何か嫌なことあったの?」
飲み込んでしまっては出ていかない。
答えられずにいて、「いや、違うならいいよ」と、頭を撫でるように抱き締めてくれた腕が逞しかった。
「なんとなーくね」
「…やっぱ、ごめん」
「いや気持ちよかったんだけどね、まぁ、俺は入れられ向きじゃないらしいからアレですけど」
「…んー?」
ちょっと高い背の顔を見上げるようにして、けど微妙な位置だから顎をなんとなく食めばじゃりっとする。あんま好きじゃないわりに結構これ、やっちゃうんだよなぁ。
「はは、どーしたの楓ちゃん!」
恋人は破顔しキスをして、頭をわしゃわしゃ両手で混ぜてくるのになんだか、安心してしまった。
完全に力が抜けて、「あぁ、力入ってたんだな、なんだろう」とぼんやり考えた。
調子に乗って額をアゴヒゲでじゃりじゃりやってくるのに「痛い、それ痛い」と言うが、「いーんです今日は」と、よくわからないけど、まぁやめてくれた。
少しして見つめ合う。破顔はなくなり、けど優しい顔だった。多分、俺の話を待っているんだろうな、そう思えたら気まずくなる。
だけど俺が黙っていれば大抵マーサは聞いてこないのだ。ただ、待ってくれるから、「お馬さんごっこだよ」と気付いたら滑り落ちてるもので。
「ん?」
「いや…」
「何?元彼的な…やつすか?」
気まずい。
「いえ、違いますね」
「どう考えてもバックだとしかいま」
「…あの、」
ちょっと軽い調子で流してくれようとしてるんだけどな。
わりと楽しくない声の俺にマーサは「…どしたの?」と声を、潜めた。
「いや、…なんてことも、ない話で」
「うん」
「…俺、母子家庭だから、学童保育に行ってたんだけど」
「あ、そうなの?」
「うん」
「学童保育?」
「うーん、小学校にあった。なんか、母親が働いててさ、帰り遅いから」
「保育園みたいなやつなのか?」
「うん、そうだね。3年生で…卒園?なのかな」
「ふーん…」
言葉にしてみると、情景が浮かぶようだった。
名前は忘れたけど、男の先生。優しかった。
そう、特に嫌なものじゃなかった。
「…男の、ちょっと大きめな先生がいた」
「…ん」
あ、ちょっと察したかな。
「で?」を優しくしようと多分頑張ってくれているんだろうけど。
「…小学校ってホントに苦痛だったんだけどさ」
「あぁまぁ、話してたよね」
ぼんやりと、けどはっきり輪郭を捕まえて目を閉じる。
要らない方の心配なんだろうか、マーサが「まぁ、その、いいよ、楓」と言ってくるのだけど。
「マーサ?」
「うーん、正直言ってしまえば話によっては聞いてあげたいような聞きたくないようなで、いま俺はさ迷ってるね」
「…なら内容も宙ぶらりんかな、嫌でもなかったし、うんといや…わからないな」
「んー、任せる、と言っちゃうとなんか楓に投げてるような…複雑だな…」
は、
「ふっ…、」
笑ってしまった。
あぁ、俺の方がおっさんに近いんだし良い加減に…しろよ。
「…あれ、笑える感じ?」
「宙ぶらりん。うん、そうだけど怒らない?」
「…怒りは、出来ないね」
「…優しいなぁ、マーサは」
だから一回抱き締めた。
ふふ、と笑ったありがたまたま乳首に近かったみたいで「あ、楓ちゃん、ちょっと反則」と笑ってくれた。
「ごめんそんなつもりなかったから後で死ぬほど抱いて」
「え?マジ?」
「…うん…いや…」
「え、どっち」
「任せる」
「困ったな~」とマーサは笑った。抱いてもらうかは話の長さに任せるとしようか。
俺は、うん、そう。確かに、何もかも失うものはないはずだろう?と、灰色な自分の心に話し掛ける。
夜のような、深い、黒に近い青のマーサの目に、染められたいと思ってしまった。
「…あぁ、そう。俺はほら、学校でどちらかと言えば浮いていたみたいで」
「…うん」
胸板に額を擦れば少し、湿っぽくなった気がする先の俺は体育館裏、学童保育の前で体育座りをして泣いている、上履きのまま。
なんでバカにされたか、腹が立ったはずなのに、やっぱり一人で泣いたんだろう。
少し落ち着いた頃にマーサが俺を抱き締めながら背中に語ったので「なに?」と、批判かな、怒るよなと振り向いたのだが、ふと黙ったマーサは即、ベットの引き出しからエフェドリンを取り出したのだった。
「…ちょっと息苦しそうだね楓」と、自分の口に錠剤とペットボトルの水を含んで俺に口移ししてきて。
広がった生ぬるい水と溶けかけた錠剤。飲めるまではこの恋人、舌を抜いてくれないのだ。
なにか、じわりと頭に、安心だとかそんな優しい言葉が喉へ流れ込む。
好きな色で塗り替えられていくような自分に酔いそうで。
「ん、ありがと…」
「…何か嫌なことあったの?」
飲み込んでしまっては出ていかない。
答えられずにいて、「いや、違うならいいよ」と、頭を撫でるように抱き締めてくれた腕が逞しかった。
「なんとなーくね」
「…やっぱ、ごめん」
「いや気持ちよかったんだけどね、まぁ、俺は入れられ向きじゃないらしいからアレですけど」
「…んー?」
ちょっと高い背の顔を見上げるようにして、けど微妙な位置だから顎をなんとなく食めばじゃりっとする。あんま好きじゃないわりに結構これ、やっちゃうんだよなぁ。
「はは、どーしたの楓ちゃん!」
恋人は破顔しキスをして、頭をわしゃわしゃ両手で混ぜてくるのになんだか、安心してしまった。
完全に力が抜けて、「あぁ、力入ってたんだな、なんだろう」とぼんやり考えた。
調子に乗って額をアゴヒゲでじゃりじゃりやってくるのに「痛い、それ痛い」と言うが、「いーんです今日は」と、よくわからないけど、まぁやめてくれた。
少しして見つめ合う。破顔はなくなり、けど優しい顔だった。多分、俺の話を待っているんだろうな、そう思えたら気まずくなる。
だけど俺が黙っていれば大抵マーサは聞いてこないのだ。ただ、待ってくれるから、「お馬さんごっこだよ」と気付いたら滑り落ちてるもので。
「ん?」
「いや…」
「何?元彼的な…やつすか?」
気まずい。
「いえ、違いますね」
「どう考えてもバックだとしかいま」
「…あの、」
ちょっと軽い調子で流してくれようとしてるんだけどな。
わりと楽しくない声の俺にマーサは「…どしたの?」と声を、潜めた。
「いや、…なんてことも、ない話で」
「うん」
「…俺、母子家庭だから、学童保育に行ってたんだけど」
「あ、そうなの?」
「うん」
「学童保育?」
「うーん、小学校にあった。なんか、母親が働いててさ、帰り遅いから」
「保育園みたいなやつなのか?」
「うん、そうだね。3年生で…卒園?なのかな」
「ふーん…」
言葉にしてみると、情景が浮かぶようだった。
名前は忘れたけど、男の先生。優しかった。
そう、特に嫌なものじゃなかった。
「…男の、ちょっと大きめな先生がいた」
「…ん」
あ、ちょっと察したかな。
「で?」を優しくしようと多分頑張ってくれているんだろうけど。
「…小学校ってホントに苦痛だったんだけどさ」
「あぁまぁ、話してたよね」
ぼんやりと、けどはっきり輪郭を捕まえて目を閉じる。
要らない方の心配なんだろうか、マーサが「まぁ、その、いいよ、楓」と言ってくるのだけど。
「マーサ?」
「うーん、正直言ってしまえば話によっては聞いてあげたいような聞きたくないようなで、いま俺はさ迷ってるね」
「…なら内容も宙ぶらりんかな、嫌でもなかったし、うんといや…わからないな」
「んー、任せる、と言っちゃうとなんか楓に投げてるような…複雑だな…」
は、
「ふっ…、」
笑ってしまった。
あぁ、俺の方がおっさんに近いんだし良い加減に…しろよ。
「…あれ、笑える感じ?」
「宙ぶらりん。うん、そうだけど怒らない?」
「…怒りは、出来ないね」
「…優しいなぁ、マーサは」
だから一回抱き締めた。
ふふ、と笑ったありがたまたま乳首に近かったみたいで「あ、楓ちゃん、ちょっと反則」と笑ってくれた。
「ごめんそんなつもりなかったから後で死ぬほど抱いて」
「え?マジ?」
「…うん…いや…」
「え、どっち」
「任せる」
「困ったな~」とマーサは笑った。抱いてもらうかは話の長さに任せるとしようか。
俺は、うん、そう。確かに、何もかも失うものはないはずだろう?と、灰色な自分の心に話し掛ける。
夜のような、深い、黒に近い青のマーサの目に、染められたいと思ってしまった。
「…あぁ、そう。俺はほら、学校でどちらかと言えば浮いていたみたいで」
「…うん」
胸板に額を擦れば少し、湿っぽくなった気がする先の俺は体育館裏、学童保育の前で体育座りをして泣いている、上履きのまま。
なんでバカにされたか、腹が立ったはずなのに、やっぱり一人で泣いたんだろう。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
クソザコ乳首くんの出張アクメ
掌
BL
おさわりOK♡の家事代行サービスで働くようになった、ベロキス大好きむっつりヤンキー系ツン男子のクソザコ乳首くんが、出張先のどすけべおぢさんの家で乳首穴開き体操着でセクハラ責めされ、とことんクソザコアクメさせられる話。他腋嗅ぎ、マイクロビキニなど。フィクションとしてライトにお楽しみください。
ネタの一部はお友達からご提供いただきました。ありがとうございました!
pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。
なにかありましたら(web拍手)
http://bit.ly/38kXFb0
Twitter垢・拍手返信はこちらから
https://twitter.com/show1write
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
出産は一番の快楽
及川雨音
BL
出産するのが快感の出産フェチな両性具有総受け話。
とにかく出産が好きすぎて出産出産言いまくってます。出産がゲシュタルト崩壊気味。
【注意事項】
*受けは出産したいだけなので、相手や産まれた子どもに興味はないです。
*寝取られ(NTR)属性持ち攻め有りの複数ヤンデレ攻め
*倫理観・道徳観・貞操観が皆無、不謹慎注意
*軽く出産シーン有り
*ボテ腹、母乳、アクメ、授乳、女性器、おっぱい描写有り
続編)
*近親相姦・母子相姦要素有り
*奇形発言注意
*カニバリズム発言有り
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ある宅配便のお兄さんの話
てんつぶ
BL
宅配便のお兄さん(モブ)×淫乱平凡DKのNTR。
ひたすらえっちなことだけしているお話です。
諸々タグ御確認の上、お好きな方どうぞ~。
※こちらを原作としたシチュエーション&BLドラマボイスを公開しています。
専業種夫
カタナカナタ
BL
精力旺盛な彼氏の性処理を完璧にこなす「専業種夫」。彼の徹底された性行為のおかげで、彼氏は外ではハイクラスに働き、帰宅するとまた彼を激しく犯す。そんなゲイカップルの日々のルーティーンを描く。
【R18】やがて犯される病
開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。
女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。
女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。
※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。
内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。
また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。
更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる