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The 33rd episode

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「ごめんなさいホントにごめんなさい、」
「…は?」

 政宗の力は抜けたようで、だけどもうこの恐怖は政宗のものではないとわかっているけど、腕で身を守るように顔を隠す自分が忌々しい。

てか息吸えねぇし
涙腺どうしたんよ、俺。

 急に軽くなり「おい潤、」と、次は流星の声が近いし腹に優しめに手を当てられたのもわかり、腕を退ければ落ち着いているが焦りは見える表情の流星が、肩を掴んで「大丈夫か、」と言った。

 途端に本当に息苦しいもんだとより過呼吸になる。これは戻れなければ痙攣する。
 
 どうやら、政宗は尻餅ついてる。流星が引き離したようだった。

 「副部長、やりすぎですって」と、向こうは向こうで声がしていた、多分年長者の慧さんだ。流星は流星で「こんな状況で悪いけど皆休憩!」と言い放つ。

「いや、部長、」
「と、取り敢えずお水なんですかこれっ!」
「包帯?」
「ありがたいけど今声かけないでくれるか、」

 後輩たちを制するそれも申し訳なくて起き上がろうとするが「起きんなクズ、」と言われた。

「いっ、」
「舌噛むぞ、今は無理に呼吸しろバカ、」
「はっ、」

なんだ。
 急激に安心するのがわかった。呼吸をするのを思い出す。

 すぐになんとか思い出した。何より安心材料だったのが、あの流星が、寂しそうな、けど意思は見える目で見てくれたからかもしれない。

 流星だって過去も、祥ちゃんも、そして皆を知っている。だから誰よりも多分、不安で怒っているくせに、そんな表情が見れてよかったなんて、虫がよすぎるけど。

「…ごめっ、」

 咳き込んだ。
 振り向いて政宗を見る前に「うるさい死ね」と言われた。腕に抱かれたままだったがそのままいきなり手を離しやがるので見事に頭を打った。

「痛ぇ」
「言わせておけば腹立つな先輩、」

あっ。

「…りゅ、」
「悪かったなポンコツ営業クソ経理部長で。調子に乗んなよ、俺がどんな気持ちであのクソ野郎からずっと背負ってやってきたと思ってんだよ、大体俺たちの教育係じゃねぇかよおい、いま俺が止めに入らなかったらこの腑抜け温室クソ淫乱野郎は一生不能になったぞおい、」
「…腹立つけど確かにそうだなこのクソガキ」
「どうでもいいけど。どうせ皆死なねぇから。過去に拘ってんのは皆一緒だから歩むしかないんじゃないんですかぁ?センパイ。あんたが…歩いてきちまったように俺もこいつも祥真も皆歩いてきちまってんだから潤、てめえ祥真はどこ行ったんだよ」
「…ごめんっ、」
「はぁ、呆れる。けど俺にも呆れてる。頭冷やしに警視庁行って来るマジで。
慧さんすみませんありがとうございます。その先輩もこのバカ野郎もほっといても勝手に仕事するんで、慧さんもすみませんが休憩してください」

なっ、

「まぁ…そうすることにします。皆にはきっと二人がなんとか言ってくれますよね?」

えっ。

「…すみませんでした」

マジか。
政宗すら謝罪したわ。わかるわ、俺も謝っとこ。

「慧さん…、すんませんでした…」
「いや、まぁいいです。大丈夫ですか監督官」

監督官…。

「はい、その…」
「まぁ持病お持ちでしたよね。無理はしない方がいいですよ、若いんだから。サボらしてはくれないらしいですけど」
「…はい、まぁ…」
「で、部長。警視庁のどちらへ?」
「…まぁ一課と五課あたりですかね…武宮さんも五十嵐さんもキレそうですけど」
「本当にそれだけですね?」
「…まずは、です。あとは帰って来て部下の仕事具合で。
 …部長が失踪するパターンは洒落にならないので」

あぁ…。

「潤、」
「あ、はい」
「…祥真に関しては今は後だ。お前の書類の進み具合に任せる。無駄だろうが俺からも連絡は取る、これでいいか?」

あぁ、確かに流星なら…。

「あぁ…」

 うんと言えなかったが振り向いた流星に俺は笑えたかもしれない。

「悪いな、ありがと」

 照れ臭そうに「ん、はい」と言い残して去って行く流星と、見守るような柔らかい表情の慧さんも去る。

 政宗と目が合ったから、手の甲で拭って舐めて見せてやった。「しょっぱいな」と言えば漸く政宗は笑い、「淫乱」と悪口を言う。

 こんな環境を祥ちゃんも知っていたら、よかったのになぁ。
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