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The 1st episode
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そのまま俺は警察病院に向かう。
診療時間外ではあるが、手帳を見せ、事情を話して通してもらった。
202号室。個室のようだ。
看護士曰く、伊緒は外傷もほとんどないため、あとは本人の希望次第で退院出来るとのこと。
色々な手続きを済ませたいのもあったのでまずは本人と話してみることにした。
まだ寝てるかと思い静かにドアを開けると、やっぱり寝ていて。
起きるまで取り敢えず待っていようと思い、仮眠を取ることにしたが、結局俺が起きたのは伊緒が病室に入ってきた音だった。隣を見ればいつの間にかベットは空で。
「あ、起こしちゃいました?」
「いつの間に…」
タオルケットまで掛けてあった。
「寝ててもいいですよ?」
「いや、大丈夫。ありがとう」
なんだかにやにやしている。
「どうした?」
「いや、なんだかなんていうか…。
流星さんすごく安らかに寝てたんで、心温まりました」
確かに、状況の割には寝てしまった気がする。
「そうか」
「お見舞い来てくれたんですね。ありがとうございます」
「あぁ…まぁ。
お前さ、退院したらどうすんの?」
「…わかりません。ですが、まぁ子供でもないし、大丈夫」
「…ダメだなぁ。見通し立てとかないと、身を滅ぼすぞ。まだまだガキだなぁ」
「まぁ、そうですね」
「…まぁ、何かあったら言ってこい。連絡先…」
取り敢えず紙に、ケータイのメアドだけを書いて渡した。
だが、伊緒は困ったように笑った。
「…まさか、お前ケータイ持ってないのか?」
そう聞くと、ぎこちなく頷いて。
「マジかよ。仕方ねぇな…いま何時だ?」
時計を見るとまだ7時くらいで。
「…いや、大丈夫ですよ」
「まぁ俺の気分次第だ。気分が乗ったらもう一回来るから」
早くてもケータイ会社なんて9時くらいからしかやってないだろう。取り敢えず一度帰ろうか。
「まぁ、また来るよ。じゃぁな」
一度病院を出て、取り敢えず伊緒の日用品やらなんやらを揃えるために車を走らせた。
ケータイは一台契約した。全てを午前中に済ませ再び病院に行くと、伊緒は驚いていた。
「流星さん…ありがとうございます」
「いや、別に。ただ家とかは…」
「いやそれはもう、大丈夫。今日はちゃんと帰って寝てください」
「…そうするよ」
どうやら少し世話を焼きすぎたらしい。恐縮してしまったようだ。
午後には久しぶりに家に帰って寝た。起きたのは20時くらいの、局長からの電話だった。
俺は基本的に、数少ない休みの日は電話を取らないのを知っているから、局長はあまり電話をしてこないのだがどうしたのだろう。緊急事態だろうか。多分違うだろうけど。
「…はい、スミダ」
『うわぁ、機嫌悪いな』
当たり前だ。俺はいま寝起きだ。
「…用事は?大した用事じゃないなら寝ますけど」
『嫌だなー。大した用事だし何より別れの挨拶をしてやろうかなと思ったのに』
「あ?何?」
『俺と話すの最後かもよ?』
「え、辞職するんですか?」
『うん、お前がね』
一瞬判断するまでに時間が掛かった。間髪入れず、『お前、降格!』と告げられた。
診療時間外ではあるが、手帳を見せ、事情を話して通してもらった。
202号室。個室のようだ。
看護士曰く、伊緒は外傷もほとんどないため、あとは本人の希望次第で退院出来るとのこと。
色々な手続きを済ませたいのもあったのでまずは本人と話してみることにした。
まだ寝てるかと思い静かにドアを開けると、やっぱり寝ていて。
起きるまで取り敢えず待っていようと思い、仮眠を取ることにしたが、結局俺が起きたのは伊緒が病室に入ってきた音だった。隣を見ればいつの間にかベットは空で。
「あ、起こしちゃいました?」
「いつの間に…」
タオルケットまで掛けてあった。
「寝ててもいいですよ?」
「いや、大丈夫。ありがとう」
なんだかにやにやしている。
「どうした?」
「いや、なんだかなんていうか…。
流星さんすごく安らかに寝てたんで、心温まりました」
確かに、状況の割には寝てしまった気がする。
「そうか」
「お見舞い来てくれたんですね。ありがとうございます」
「あぁ…まぁ。
お前さ、退院したらどうすんの?」
「…わかりません。ですが、まぁ子供でもないし、大丈夫」
「…ダメだなぁ。見通し立てとかないと、身を滅ぼすぞ。まだまだガキだなぁ」
「まぁ、そうですね」
「…まぁ、何かあったら言ってこい。連絡先…」
取り敢えず紙に、ケータイのメアドだけを書いて渡した。
だが、伊緒は困ったように笑った。
「…まさか、お前ケータイ持ってないのか?」
そう聞くと、ぎこちなく頷いて。
「マジかよ。仕方ねぇな…いま何時だ?」
時計を見るとまだ7時くらいで。
「…いや、大丈夫ですよ」
「まぁ俺の気分次第だ。気分が乗ったらもう一回来るから」
早くてもケータイ会社なんて9時くらいからしかやってないだろう。取り敢えず一度帰ろうか。
「まぁ、また来るよ。じゃぁな」
一度病院を出て、取り敢えず伊緒の日用品やらなんやらを揃えるために車を走らせた。
ケータイは一台契約した。全てを午前中に済ませ再び病院に行くと、伊緒は驚いていた。
「流星さん…ありがとうございます」
「いや、別に。ただ家とかは…」
「いやそれはもう、大丈夫。今日はちゃんと帰って寝てください」
「…そうするよ」
どうやら少し世話を焼きすぎたらしい。恐縮してしまったようだ。
午後には久しぶりに家に帰って寝た。起きたのは20時くらいの、局長からの電話だった。
俺は基本的に、数少ない休みの日は電話を取らないのを知っているから、局長はあまり電話をしてこないのだがどうしたのだろう。緊急事態だろうか。多分違うだろうけど。
「…はい、スミダ」
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『嫌だなー。大した用事だし何より別れの挨拶をしてやろうかなと思ったのに』
「あ?何?」
『俺と話すの最後かもよ?』
「え、辞職するんですか?」
『うん、お前がね』
一瞬判断するまでに時間が掛かった。間髪入れず、『お前、降格!』と告げられた。
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