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「よく呑んでくれたなドライバー」
「え?どこですか?
…まぁ、透花の言動も怪しかったし…あと、まぁ手帳を見せたらあっさりと」
「なるほどね。プロだなぁ、ちゃんと募金しろよな。
てゆーかあー、はいはい思い出したわ…何人かいるなここ、前回の被害者」
「そうでしたっけ、え?」
「うんそー。どうなったかは知らないけど…なんか快く引き受けてくれたんだわ、軽症者ならって。場末の病院なのに大丈夫かよと思ったが、メンクリあんだよ、確か」
「…なるほど」
「設備もあるんだけど、リハビリ含め。
けどここ、なんてゆーかな…金がある病院かっこクリニックって感じだったな…何回か聴取で被害者面会行こうとしたが、軽症者なのに面会謝絶だったりで…。
そうだ…自殺者出たんだ、一人」
「……マジすか?」
「うん、確かね」
ふと顔を見合わせ「危なかったな」と、互いに実感する。
「この辺じゃ有名なのかもなぁ…だとしたら頷ける……。
父ちゃんとジイさんだよな?で、透花自身も罹ったことがあると…」
……平良も言ってたな、さりげなくだが。そこで腎臓やったんか、と…。
「……んー、でもそっちは刑事に任せよっかなぁ」
「ん?」
「いや。まぁ…。
引っ掛かりましたよね、死亡手当」
「……なるほど?」
「これ結局、終わった話なら掘れませんしね」
「ちなみに見てきたよ書類。黒塗り」
「あーね…まぁ正直ウチには関係ないしなぁ…見せてくれないっすよね」
「それこそマジで、あの一家が麻薬案件であの病院で死なないとどうにもね」
「……あ、そっか…。
え、じゃあなんで……」
「逃げたいんだよ、あの子」
「……なるほど……しっくり来ました」
「だから行く訳でして」
…坂下は、仕事は緩やかだが自分より感情型だ。
なるほど。でも、これに諭されてきたよな、いままで。
「…取りましょうね、センパイ」
「珍しく絆されてんな~。
お前って奇跡引いちゃうよね、マジで。台風予報よりは当たるんよなぁ…」
「検挙逃しますけどね」
「それな。多分くどいからだな、ハイエナくん」
スっと、団地の入口に路駐する。
近場に無断駐車の国産車があったので「俺たちは出しとこ…」と駐車許可証を出し車から出る。
階段口の付近をキョロキョロするが…あの女ぶん投げてたからな…と、向かいあたりが駐車場だ…器物破損してたらマジで困る…と、丁度202、3の前にあった車のボンネットでケータイを発見した。
…遠目から見てもサンルーフ、ボンネットには着実に凹みがある…フロントガラスでないことは幸いだが…うわぁ最悪…と、一応証拠として様々な角度から写真を撮る。ナンバーも控えた。
「……後でこの人に連絡取るべきだな…防犯カメラないし…」
「…ですかね~…最悪…」
「ま、器物破損2件で行けば余裕──」
付近でチャイムが聞こえた。
振り向けば自宅も青木家も見えるが…背の高い男が「すんませーん、警察の者ですー」と…ドスは効いていないがかなり低い声で青木家にピンポンしている。
……シックに決め下品さはないがどう見てもなんとなく、ヤクザだ。
「やべ、」と、坂下が忍び早歩きで向かう。
着いて行こうとして目に付いた、手帳でチャイムを隠しているがそれ見えないし顔部分のところも手で隠してるしやっぱりヤクザだ…と安慈も急ぐ。
「青木さんのお宅で間違いないでしょーかー」と再びピンポンするのも聞こえる。
二階に上がればまぁまぁ、足音が隠せるような団地ではない。
ヤクザはチラッとこちらを見たが、次にはまた「すみませーん、青木さんいらっしゃいますよねー」と…昭和感が強い…またまたピンポンを鳴らしているので「ちょっと、」と坂下が先頭を切るが。
『……はぁい!』
ドアからうっすら、紀子の声がする。
「騒音被害の通報を受けましてー」
『そんなわけないでしょ!』
……ドアの近くだ。
「いえありましたー。お隣さんが」
「ちょちょ、ちょっと待って!」
坂下がそのヤクザの肩を掴もうとしたが、ヤクザはふっと坂下の方を見、鼻元に指を立てる。
「いや、」
「なんなんですか!」
ドアがそのまま開きそうになり「おっと」とヤクザが後ろへ下がる。その拍子に坂下はドア前に移動出来たようだ。
追い付き側に寄れば、ヤクザからちらっと「平良誠一」の手帳を見せられ…目が合った。
男前…あ、目の下ホクロとか…あの国民的爽やかイケメン歌手………風味、だ。強そうすぎる…と、のんびり思うことしか出来ず。
「あ、昼ぶりですね。こんばんは」
坂下も自分の手帳をさっと出してすぐしまい、「…齋藤氏の件もありまして、警備も強化体制な中通報を受けたので…」とデタラメを平然と言いやがる。
「…騒音なんて、」
「あとは…緊急車両からもこちらに話が来ましてね…奥さんがいらっしゃって良かったですが…ご就寝前でしたかね?
息子さんが職場で倒れ」
「はぁ!?嘘吐かないでよ透花の職場から」
「……誤通報なんですかね?」
そのタイミングで安慈がひょこっと顔を出し「いや、誤通報じゃないですが」と…。
部屋の電気が真っ暗だ。
「すいませんね刑事さん、俺がちょっと焦ってピンポンしちゃったせいで通報行ったのかもですね。
ですが…これねぇ?」
…ケータイの外傷が目立たないのが残念だ…。
「透花ちゃんがぶっ倒れた際、居留守使いましたよね」
「……おじいちゃんが寝てたし」
「投げることないでしょ」
「…証拠は?しかも壊れて」
「いま向かいの車のボンネットで発見しましたが?」
「だから何、私がやったって言」
「あんた、ジイさんどうしたんだよ」
間があり「は…?」と弱々しくなった。
今だ。
「え?どこですか?
…まぁ、透花の言動も怪しかったし…あと、まぁ手帳を見せたらあっさりと」
「なるほどね。プロだなぁ、ちゃんと募金しろよな。
てゆーかあー、はいはい思い出したわ…何人かいるなここ、前回の被害者」
「そうでしたっけ、え?」
「うんそー。どうなったかは知らないけど…なんか快く引き受けてくれたんだわ、軽症者ならって。場末の病院なのに大丈夫かよと思ったが、メンクリあんだよ、確か」
「…なるほど」
「設備もあるんだけど、リハビリ含め。
けどここ、なんてゆーかな…金がある病院かっこクリニックって感じだったな…何回か聴取で被害者面会行こうとしたが、軽症者なのに面会謝絶だったりで…。
そうだ…自殺者出たんだ、一人」
「……マジすか?」
「うん、確かね」
ふと顔を見合わせ「危なかったな」と、互いに実感する。
「この辺じゃ有名なのかもなぁ…だとしたら頷ける……。
父ちゃんとジイさんだよな?で、透花自身も罹ったことがあると…」
……平良も言ってたな、さりげなくだが。そこで腎臓やったんか、と…。
「……んー、でもそっちは刑事に任せよっかなぁ」
「ん?」
「いや。まぁ…。
引っ掛かりましたよね、死亡手当」
「……なるほど?」
「これ結局、終わった話なら掘れませんしね」
「ちなみに見てきたよ書類。黒塗り」
「あーね…まぁ正直ウチには関係ないしなぁ…見せてくれないっすよね」
「それこそマジで、あの一家が麻薬案件であの病院で死なないとどうにもね」
「……あ、そっか…。
え、じゃあなんで……」
「逃げたいんだよ、あの子」
「……なるほど……しっくり来ました」
「だから行く訳でして」
…坂下は、仕事は緩やかだが自分より感情型だ。
なるほど。でも、これに諭されてきたよな、いままで。
「…取りましょうね、センパイ」
「珍しく絆されてんな~。
お前って奇跡引いちゃうよね、マジで。台風予報よりは当たるんよなぁ…」
「検挙逃しますけどね」
「それな。多分くどいからだな、ハイエナくん」
スっと、団地の入口に路駐する。
近場に無断駐車の国産車があったので「俺たちは出しとこ…」と駐車許可証を出し車から出る。
階段口の付近をキョロキョロするが…あの女ぶん投げてたからな…と、向かいあたりが駐車場だ…器物破損してたらマジで困る…と、丁度202、3の前にあった車のボンネットでケータイを発見した。
…遠目から見てもサンルーフ、ボンネットには着実に凹みがある…フロントガラスでないことは幸いだが…うわぁ最悪…と、一応証拠として様々な角度から写真を撮る。ナンバーも控えた。
「……後でこの人に連絡取るべきだな…防犯カメラないし…」
「…ですかね~…最悪…」
「ま、器物破損2件で行けば余裕──」
付近でチャイムが聞こえた。
振り向けば自宅も青木家も見えるが…背の高い男が「すんませーん、警察の者ですー」と…ドスは効いていないがかなり低い声で青木家にピンポンしている。
……シックに決め下品さはないがどう見てもなんとなく、ヤクザだ。
「やべ、」と、坂下が忍び早歩きで向かう。
着いて行こうとして目に付いた、手帳でチャイムを隠しているがそれ見えないし顔部分のところも手で隠してるしやっぱりヤクザだ…と安慈も急ぐ。
「青木さんのお宅で間違いないでしょーかー」と再びピンポンするのも聞こえる。
二階に上がればまぁまぁ、足音が隠せるような団地ではない。
ヤクザはチラッとこちらを見たが、次にはまた「すみませーん、青木さんいらっしゃいますよねー」と…昭和感が強い…またまたピンポンを鳴らしているので「ちょっと、」と坂下が先頭を切るが。
『……はぁい!』
ドアからうっすら、紀子の声がする。
「騒音被害の通報を受けましてー」
『そんなわけないでしょ!』
……ドアの近くだ。
「いえありましたー。お隣さんが」
「ちょちょ、ちょっと待って!」
坂下がそのヤクザの肩を掴もうとしたが、ヤクザはふっと坂下の方を見、鼻元に指を立てる。
「いや、」
「なんなんですか!」
ドアがそのまま開きそうになり「おっと」とヤクザが後ろへ下がる。その拍子に坂下はドア前に移動出来たようだ。
追い付き側に寄れば、ヤクザからちらっと「平良誠一」の手帳を見せられ…目が合った。
男前…あ、目の下ホクロとか…あの国民的爽やかイケメン歌手………風味、だ。強そうすぎる…と、のんびり思うことしか出来ず。
「あ、昼ぶりですね。こんばんは」
坂下も自分の手帳をさっと出してすぐしまい、「…齋藤氏の件もありまして、警備も強化体制な中通報を受けたので…」とデタラメを平然と言いやがる。
「…騒音なんて、」
「あとは…緊急車両からもこちらに話が来ましてね…奥さんがいらっしゃって良かったですが…ご就寝前でしたかね?
息子さんが職場で倒れ」
「はぁ!?嘘吐かないでよ透花の職場から」
「……誤通報なんですかね?」
そのタイミングで安慈がひょこっと顔を出し「いや、誤通報じゃないですが」と…。
部屋の電気が真っ暗だ。
「すいませんね刑事さん、俺がちょっと焦ってピンポンしちゃったせいで通報行ったのかもですね。
ですが…これねぇ?」
…ケータイの外傷が目立たないのが残念だ…。
「透花ちゃんがぶっ倒れた際、居留守使いましたよね」
「……おじいちゃんが寝てたし」
「投げることないでしょ」
「…証拠は?しかも壊れて」
「いま向かいの車のボンネットで発見しましたが?」
「だから何、私がやったって言」
「あんた、ジイさんどうしたんだよ」
間があり「は…?」と弱々しくなった。
今だ。
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