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「…ん?」
「ドアップしますが、」
「えぇぇ……」
茶髪碧眼の“天使ちゃん”がゲイビデオさながら、相手の性器を持ちふとつまらなそうにてっぺんを眺めている瞬間の画像。
海江田は所長の前にグイッと入り込んでマウスを奪い、肋骨の下にある蝶のタトゥーにフォーカスした。
「これ」
蝶が止まる足元。
「画質はちょっとまぁ、サバ切れなんでわかりにくいかもですが…」
「……ケロイド?カテーテル痕か?それ」
「に、見えなくないですよね。
なんとなく、こういうタトゥーってなんか、羽広げてるやつ使いそうっすよね、とも思ったり」
「…まぁ確かに…わからんが…」
「あと、まぁすんませんですが…」
1度戻り全体像から、“天使ちゃん”の視線の先にフォーカスするとやはり「やめろや海江田…」と言われてしまうが。
「いや重要重要。こっちの方がわかりやすい」
「えぇえ~、何見せられてんだよコレ……」
くぼみ部分はハッキリしている。
画質は粗くなっていくが明らかにくぼみにある“何か”。
「……あー、なるほどね海江田さん」
「一時期流行りましたよね」
「しかしそこまでゴテゴテしてるとつーか多分…シリコンじゃないか?この相手はヤクザじゃないな、どちらかと言えば」
「あ、そうなんすね」
「流行ったようだが普通そんな…それ一個じゃない…ように見えるしんなん、女に使うアホなんていないだろ…と、多分ヤクザは言うと思う。
となると、そのビーズは馬鹿な成金がカモにされて売り付けられたんじゃないかな」
「え?平良なんか…ソッチ詳しくない?」
間。
まぁ…そうだろうな。あんたたまに出ちゃってるよとつい平良を見、「こっちの方が割るの早そうです?」と話題を変えてやる。
「わからん」
「…じゃ、戻しましてこの子…天使ちゃんの方。去年ならもしかすると児ポなんすよ」
「……え?」
「身分証は“永住権”で通した23なんですが、つっても特別養子縁組なんで関係ないんすが」
「は?どーゆーこと?」
「こっち来た時から永住なんだとしたら、日本の法律が適用されますよね?
ですが…入国とか調べんとなんともなんですが、母親のSNSからすると年齢が合わないんですよね。もしかするとこの時期、ギリ17かもしれない」
「…それは最早ヤクザレベルの話じゃなくないか…?
…ちょっと考える」
「なるほど」
漸くキリッとした所長だがやはり「てゆうか平良も海江田もなんでこんな直視出来んだよ」と小言を言ってきた。
「いやそこっすか。こんなんまだまだっしょ」
「海江田、お前昨日からずーーっとこれ眺めてたんか?」
「いやもっとやべぇ、グロ系のも漁ったんでもう感覚がおかしいです」
「はぁあ~?」
「カテーテル痕ね…つまりその潜りすぎましてそっち系とか…あとそっちで画像検索掛けたらこの子の幼少期っすかね…あっちでのキワモノが」
「俺子供いるんだよね海江田。ちょっ…吐きそうになってきた…」
「だと思って一番マシな瞬間を選びましたが…。
あ、スマホ通知来てる、やっぱり。23分前か…天使ちゃんがライブ配信を」
「お前なんかキメてんのかラリっちまってねえ!?え!?お隣さんだったんでしょ、てか登録したの!?」
「いやその辺は鍵突破すりゃいいだけなんで払ってませんよ?今から本人か確認します」
「お前のエンジンの吹かし方バグってんだよマジで!あとそれバレたり消されたらこっちが吹っ飛ぶっつってんだよ!」
「平良さん平良さん~、こっちのやつ解析一緒によろしくっす」
「嫌だ。てめぇ喧嘩売ってんのかマジで」
てめぇ呼びされてしまった。これは多分ダメなやつだなと、仕方ない。デスクに戻り通知からサイトに入る。
「逆探はしてっかんなてめぇ」と、向かいのデスクからヤジが飛ぶ。バレたか。でもあんたもやっぱり見てんじゃん、とイヤホンを着けた。
がっつり青木透花だった。
めちゃくちゃ顔色が悪い。その様まで朝のままだ。
「あー……やっぱそうか……」とイヤホンを取り「平良さん当たりました」と告げる。
「…盗聴器ぶっ壊して来ちゃったんだよな…どうせならそっちも逆探してもらった方が確実だったな…」
「………兎に角黙れよハイエナ野郎っ、」
「こう見えてショックと焦りと」
「わかるけど。わかったから許可出るまで待て。マフィア案件じゃなくてよかったな」
「……まぁ、そうっすね」
「…てめぇのせいで仕事とトラウマ加速しそうだわクソ野郎。
久しぶりにアポ取っから。市場くらいは教えてくれんだろ…多分。博打だが。期待すんな」
「すんませんね。そっちはありがとうございます。
後は俺が矢面に立つんで」
「坂下も一緒に腎臓売り飛ばされる覚悟しとけ」
随分な嫌味を言われたものだ…。やっぱりなこの陰険腹黒俗野郎。彼ピッピかなんかと別れやがったんだな、最近。こっちは色々知ってんだかんな…とは思いつつ、感謝はしておく。
あれ?
画面を見て気付く。
言うならばさっきと同じシーンなのだが…明らかに撮り方が違う。
去年のやつは横から、つまり行為を第三者が撮っている訳だが。
生ライブはどうやらこれは…あ、ホントだめちゃくちゃゴツ…増えてるかも、最早大人のグロおもちゃレベルなんだがこの短小デブ成金。カモられてんなぁ…。
上から…これはどうやらヤッてる相手がスマホ片手に…てとこか。
「平良さん」
「だからっ、うるせー」
「当たりです。この成金…いや同じやつかわかりませんが」
「見てるわボケっ!あーあー可愛いねぇ天使ちゃんっ!
……逆探すっから」
スン、と声色を下げる。
わかる…勃ちそうでいてなんだか…スン…とさせんだよな…記憶のデバック、昨日もそうだった。
「ドアップしますが、」
「えぇぇ……」
茶髪碧眼の“天使ちゃん”がゲイビデオさながら、相手の性器を持ちふとつまらなそうにてっぺんを眺めている瞬間の画像。
海江田は所長の前にグイッと入り込んでマウスを奪い、肋骨の下にある蝶のタトゥーにフォーカスした。
「これ」
蝶が止まる足元。
「画質はちょっとまぁ、サバ切れなんでわかりにくいかもですが…」
「……ケロイド?カテーテル痕か?それ」
「に、見えなくないですよね。
なんとなく、こういうタトゥーってなんか、羽広げてるやつ使いそうっすよね、とも思ったり」
「…まぁ確かに…わからんが…」
「あと、まぁすんませんですが…」
1度戻り全体像から、“天使ちゃん”の視線の先にフォーカスするとやはり「やめろや海江田…」と言われてしまうが。
「いや重要重要。こっちの方がわかりやすい」
「えぇえ~、何見せられてんだよコレ……」
くぼみ部分はハッキリしている。
画質は粗くなっていくが明らかにくぼみにある“何か”。
「……あー、なるほどね海江田さん」
「一時期流行りましたよね」
「しかしそこまでゴテゴテしてるとつーか多分…シリコンじゃないか?この相手はヤクザじゃないな、どちらかと言えば」
「あ、そうなんすね」
「流行ったようだが普通そんな…それ一個じゃない…ように見えるしんなん、女に使うアホなんていないだろ…と、多分ヤクザは言うと思う。
となると、そのビーズは馬鹿な成金がカモにされて売り付けられたんじゃないかな」
「え?平良なんか…ソッチ詳しくない?」
間。
まぁ…そうだろうな。あんたたまに出ちゃってるよとつい平良を見、「こっちの方が割るの早そうです?」と話題を変えてやる。
「わからん」
「…じゃ、戻しましてこの子…天使ちゃんの方。去年ならもしかすると児ポなんすよ」
「……え?」
「身分証は“永住権”で通した23なんですが、つっても特別養子縁組なんで関係ないんすが」
「は?どーゆーこと?」
「こっち来た時から永住なんだとしたら、日本の法律が適用されますよね?
ですが…入国とか調べんとなんともなんですが、母親のSNSからすると年齢が合わないんですよね。もしかするとこの時期、ギリ17かもしれない」
「…それは最早ヤクザレベルの話じゃなくないか…?
…ちょっと考える」
「なるほど」
漸くキリッとした所長だがやはり「てゆうか平良も海江田もなんでこんな直視出来んだよ」と小言を言ってきた。
「いやそこっすか。こんなんまだまだっしょ」
「海江田、お前昨日からずーーっとこれ眺めてたんか?」
「いやもっとやべぇ、グロ系のも漁ったんでもう感覚がおかしいです」
「はぁあ~?」
「カテーテル痕ね…つまりその潜りすぎましてそっち系とか…あとそっちで画像検索掛けたらこの子の幼少期っすかね…あっちでのキワモノが」
「俺子供いるんだよね海江田。ちょっ…吐きそうになってきた…」
「だと思って一番マシな瞬間を選びましたが…。
あ、スマホ通知来てる、やっぱり。23分前か…天使ちゃんがライブ配信を」
「お前なんかキメてんのかラリっちまってねえ!?え!?お隣さんだったんでしょ、てか登録したの!?」
「いやその辺は鍵突破すりゃいいだけなんで払ってませんよ?今から本人か確認します」
「お前のエンジンの吹かし方バグってんだよマジで!あとそれバレたり消されたらこっちが吹っ飛ぶっつってんだよ!」
「平良さん平良さん~、こっちのやつ解析一緒によろしくっす」
「嫌だ。てめぇ喧嘩売ってんのかマジで」
てめぇ呼びされてしまった。これは多分ダメなやつだなと、仕方ない。デスクに戻り通知からサイトに入る。
「逆探はしてっかんなてめぇ」と、向かいのデスクからヤジが飛ぶ。バレたか。でもあんたもやっぱり見てんじゃん、とイヤホンを着けた。
がっつり青木透花だった。
めちゃくちゃ顔色が悪い。その様まで朝のままだ。
「あー……やっぱそうか……」とイヤホンを取り「平良さん当たりました」と告げる。
「…盗聴器ぶっ壊して来ちゃったんだよな…どうせならそっちも逆探してもらった方が確実だったな…」
「………兎に角黙れよハイエナ野郎っ、」
「こう見えてショックと焦りと」
「わかるけど。わかったから許可出るまで待て。マフィア案件じゃなくてよかったな」
「……まぁ、そうっすね」
「…てめぇのせいで仕事とトラウマ加速しそうだわクソ野郎。
久しぶりにアポ取っから。市場くらいは教えてくれんだろ…多分。博打だが。期待すんな」
「すんませんね。そっちはありがとうございます。
後は俺が矢面に立つんで」
「坂下も一緒に腎臓売り飛ばされる覚悟しとけ」
随分な嫌味を言われたものだ…。やっぱりなこの陰険腹黒俗野郎。彼ピッピかなんかと別れやがったんだな、最近。こっちは色々知ってんだかんな…とは思いつつ、感謝はしておく。
あれ?
画面を見て気付く。
言うならばさっきと同じシーンなのだが…明らかに撮り方が違う。
去年のやつは横から、つまり行為を第三者が撮っている訳だが。
生ライブはどうやらこれは…あ、ホントだめちゃくちゃゴツ…増えてるかも、最早大人のグロおもちゃレベルなんだがこの短小デブ成金。カモられてんなぁ…。
上から…これはどうやらヤッてる相手がスマホ片手に…てとこか。
「平良さん」
「だからっ、うるせー」
「当たりです。この成金…いや同じやつかわかりませんが」
「見てるわボケっ!あーあー可愛いねぇ天使ちゃんっ!
……逆探すっから」
スン、と声色を下げる。
わかる…勃ちそうでいてなんだか…スン…とさせんだよな…記憶のデバック、昨日もそうだった。
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