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カタカタ、カタカタ。
朔太郎は始業30分前にパソコンと対峙していた。
朝、速攻で入ってきてはこの調子。
まるで急ぐように集中しスピードを上げ打ち込んでいる。内容は昨日の「第4漁港」の件。
これは朝から邪魔をしてはならないが暇だと、クロエはいつものように黙っていたが、それはドアが叩かれ終了した。
始業前だというのにうとうとしていたらしいクロエに朔太郎が「お前が行け」と見つめ、「俺が行きます」の声なき同意で、クロエはソファーから起き上がる。
「…はい」
「こんにちは、宅急便です」
見慣れない。
謎、と言いたい朔太郎に構わずクロエは「あ、は~い」とドアを開ける。
どうやら宛はあるらしい。
それは本当に宅配屋で、「黒江百合様にお間違いないでしょうか?」と、商品の引き渡しを行っていた。
朔太郎が睨むように見るが、クロエはまるで構わずにソファーに座り、「ちょっと貸して」と物臭に背後にある朔太郎のデスクへ手を伸ばしカッターを取る。
…まさかRPGか。
とじっと朔太郎が眺めているがそれでもクロエは気にしない。
段ボールから出てきたのはしかし予想外の、「ナース服」だった。
「…は?」
「あーよしよしどうかなぁ、サイズ。レディースかぁ…」
どうやらクロエは完全に覚醒したようだった。
嬉しそうに包装を開けるクロエに「おい、」と声を掛ける。
「何?」
「なんだってそれ」
「可愛いでしょ」
「はぁ!?」
「でもサイズ合うかなぁ…。ナース服って凄く良いねぇ、ポケットも良い感じに」
「お前は自由だなホントに…次はそれなのか」
「うんまぁね。ちょっと着てみて改造する」
「いーから仕事してなよ」と言ってくるクロエに若干イラついた。
「はぁ、」
ソファーの上で「あ、意外といけるな」とナース服を着てから「どう?」と立ち上がり見せてきたクロエは朔太郎にとって心底どうでもよかったが、予想していたのとはまた違かった。
コスプレ、というよりちゃんとした病院用なのだから、そこに若干感心する。
「あ、うん、着た感じぴったりフィットだ。よかった~」
「…マジもんじゃね?」
「うん、そうだよ?良いでしょ」
「…最早なんも言うことねぇよ」
一体こいつは何を目指してるんだか。
また脱いでどうやら「改造」を始めたようだった。
そうかもう良いわと、前日のことを思い出し、朔太郎は自ら、生き残っているシュレッダーの電源を入れておくことにした。
そんなときふと、本棚の一角、「アニシン第二基地爆発事件」の字が目に入りそのファイルを手にした。
…正直、形がまだまだ曖昧で気持ちが悪い。
そういえばクロエにこの、自分の経歴書などを書かせようか、なんせ情報がなかったのだしと、またパソコンに向かいちょっとだけ爆発事件について入り込む。
上がってきていない役員名簿は、どこかが抑えていればサーバー自体は共有な部分があるしこのパソコンなら見ることができる、得に特犯1あたりであれば。
と、少し潜り込めば案の定、本当に主要そうな物にはセキュリティが掛かっていた。
が、掛かっていないものもあった、ドンピシャでアレクのフォルダに入ったがやつは思った通り、クロエについて文書を作成途中だったようだ。
パラパラとなんの気なしに関連の資料を眺め「クロエ」と声を掛ける。
別のブラウザでまた一から潜ってファイルを開いていき、隊員名簿まで行き着いたとき、「あれ、」と異変に気が付いたのだった。
「…何サクちゃん、まだ時間じゃないんだけど」
答えずに潜る、パソコン上の役員名簿が、手にしたファイルに記載された人数より増えていた。
アニシン第二の隊員は全部で19人、爆発の規模によりこれらはイコール死傷者(行方不明者を含む)だと思い込んでいたが、パソコンで見るファイルには「役員名簿」とあり、書類は24枚と記載されている。
つまり5人ほどは無傷だったのか。
いや、そんなことより。
役員名簿の、例えば経歴等のデータはいずれにせよ、上がってきたものに関しては、ならば欠損があったはずで、アレクがクロエの話を持ってきた時点では間違いなく19枚(19人)、だった筈なんだが。
この更新は自分に知らされていない。
潜りすぎて見失った、再度保存場所を確認すればどうやら公安全体の、だが、こちらに上がってはいない「共有データ」に保存されていた。つまり、これは確定要素ではない、のだろうけど。
クリックしてフォルダを開いたあたりで「もう、何?」と痺れを切らしたクロエが側に来る。ナース服は取り敢えず着たようだった。
「…アニシン第二って全部で24人か?」
「ん、わかんないけどそんくらいじゃない?」
確かにまぁ誰も、隊員全てが死傷者などとは言っていなかったが。
「あの事故で無傷で生き残ったやつが」
「いや、いないと思うよわかんないけど。規模も規模だし、なんせ夜中に全焼失だからね」
ということは新たに身元が見つかった、が正しいのだろうか。
…てっきり行方不明者のなかにクロエがいるものだと思ってたが、いや、待て。
行方不明者を含む「確認済みの」データの内訳が19名なら、やはりこの5人は別の「生存者」か。何故これを考えなかったんだろう。
朔太郎は始業30分前にパソコンと対峙していた。
朝、速攻で入ってきてはこの調子。
まるで急ぐように集中しスピードを上げ打ち込んでいる。内容は昨日の「第4漁港」の件。
これは朝から邪魔をしてはならないが暇だと、クロエはいつものように黙っていたが、それはドアが叩かれ終了した。
始業前だというのにうとうとしていたらしいクロエに朔太郎が「お前が行け」と見つめ、「俺が行きます」の声なき同意で、クロエはソファーから起き上がる。
「…はい」
「こんにちは、宅急便です」
見慣れない。
謎、と言いたい朔太郎に構わずクロエは「あ、は~い」とドアを開ける。
どうやら宛はあるらしい。
それは本当に宅配屋で、「黒江百合様にお間違いないでしょうか?」と、商品の引き渡しを行っていた。
朔太郎が睨むように見るが、クロエはまるで構わずにソファーに座り、「ちょっと貸して」と物臭に背後にある朔太郎のデスクへ手を伸ばしカッターを取る。
…まさかRPGか。
とじっと朔太郎が眺めているがそれでもクロエは気にしない。
段ボールから出てきたのはしかし予想外の、「ナース服」だった。
「…は?」
「あーよしよしどうかなぁ、サイズ。レディースかぁ…」
どうやらクロエは完全に覚醒したようだった。
嬉しそうに包装を開けるクロエに「おい、」と声を掛ける。
「何?」
「なんだってそれ」
「可愛いでしょ」
「はぁ!?」
「でもサイズ合うかなぁ…。ナース服って凄く良いねぇ、ポケットも良い感じに」
「お前は自由だなホントに…次はそれなのか」
「うんまぁね。ちょっと着てみて改造する」
「いーから仕事してなよ」と言ってくるクロエに若干イラついた。
「はぁ、」
ソファーの上で「あ、意外といけるな」とナース服を着てから「どう?」と立ち上がり見せてきたクロエは朔太郎にとって心底どうでもよかったが、予想していたのとはまた違かった。
コスプレ、というよりちゃんとした病院用なのだから、そこに若干感心する。
「あ、うん、着た感じぴったりフィットだ。よかった~」
「…マジもんじゃね?」
「うん、そうだよ?良いでしょ」
「…最早なんも言うことねぇよ」
一体こいつは何を目指してるんだか。
また脱いでどうやら「改造」を始めたようだった。
そうかもう良いわと、前日のことを思い出し、朔太郎は自ら、生き残っているシュレッダーの電源を入れておくことにした。
そんなときふと、本棚の一角、「アニシン第二基地爆発事件」の字が目に入りそのファイルを手にした。
…正直、形がまだまだ曖昧で気持ちが悪い。
そういえばクロエにこの、自分の経歴書などを書かせようか、なんせ情報がなかったのだしと、またパソコンに向かいちょっとだけ爆発事件について入り込む。
上がってきていない役員名簿は、どこかが抑えていればサーバー自体は共有な部分があるしこのパソコンなら見ることができる、得に特犯1あたりであれば。
と、少し潜り込めば案の定、本当に主要そうな物にはセキュリティが掛かっていた。
が、掛かっていないものもあった、ドンピシャでアレクのフォルダに入ったがやつは思った通り、クロエについて文書を作成途中だったようだ。
パラパラとなんの気なしに関連の資料を眺め「クロエ」と声を掛ける。
別のブラウザでまた一から潜ってファイルを開いていき、隊員名簿まで行き着いたとき、「あれ、」と異変に気が付いたのだった。
「…何サクちゃん、まだ時間じゃないんだけど」
答えずに潜る、パソコン上の役員名簿が、手にしたファイルに記載された人数より増えていた。
アニシン第二の隊員は全部で19人、爆発の規模によりこれらはイコール死傷者(行方不明者を含む)だと思い込んでいたが、パソコンで見るファイルには「役員名簿」とあり、書類は24枚と記載されている。
つまり5人ほどは無傷だったのか。
いや、そんなことより。
役員名簿の、例えば経歴等のデータはいずれにせよ、上がってきたものに関しては、ならば欠損があったはずで、アレクがクロエの話を持ってきた時点では間違いなく19枚(19人)、だった筈なんだが。
この更新は自分に知らされていない。
潜りすぎて見失った、再度保存場所を確認すればどうやら公安全体の、だが、こちらに上がってはいない「共有データ」に保存されていた。つまり、これは確定要素ではない、のだろうけど。
クリックしてフォルダを開いたあたりで「もう、何?」と痺れを切らしたクロエが側に来る。ナース服は取り敢えず着たようだった。
「…アニシン第二って全部で24人か?」
「ん、わかんないけどそんくらいじゃない?」
確かにまぁ誰も、隊員全てが死傷者などとは言っていなかったが。
「あの事故で無傷で生き残ったやつが」
「いや、いないと思うよわかんないけど。規模も規模だし、なんせ夜中に全焼失だからね」
ということは新たに身元が見つかった、が正しいのだろうか。
…てっきり行方不明者のなかにクロエがいるものだと思ってたが、いや、待て。
行方不明者を含む「確認済みの」データの内訳が19名なら、やはりこの5人は別の「生存者」か。何故これを考えなかったんだろう。
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