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「カルテル抗争と言ったな、それはどこか潰れたのか取り合ってるのか…」
「そりゃぁ一ヶ所基地が潰れてからはこの商売はなかなか不況に至るわけだが、逆説だ。ここは平和な国だからね。非正規が売れるんだろ」
「良い場所教えてやるよミシェル。特1だ。と言ってもここにはまだ上がってきていない、つまりは生きた情報を持ってるぞ。特1の、アレックス・シンドラーが」
にやっと笑った朔太郎にミシェルは「マジで?」と聞いてくる。
リンゴの飴を握らせた。
「まあ開示してくれるかはわからんが俺よりは直営同士でカルテル組めるだろ。
アニシン第二の話なら俺も最近興味を持った。ちょっと違った視点の資料なら俺が残しといたぞ」
「違った視点?」
「先日すっ飛んだ政治家の家の強盗事件だ。正直結び付くかはわからない…と言うのが現段階の普通の意見だろうが不審点はまだ上がっていない。来るのが遅かったなミシェル」
そう言って朔太郎が棚をちらっと見ると、それだけでクロエが「はいどうぞ」とファイルを持ってミシェルに渡す。
「…バザロフ?なんでこんな金持ちが絡んで来る?」
「さぁまだわからん。それも死んだ情報だからな。俺の国には「死人に口無し」という言葉があるし」
「…いや、イギリス系だけど幽霊本当に嫌いなんだよサクタロウ」
「組5のくせに。敵が敵だ、山の中で幽霊追うのなんて普通よりあるだろ全く。
ついでに言えば案外近くにいるぞ、俺には見える」
「…何何何っ、なんなの一体」
「まぁ冗談はいいとしてミシェル、どうせならこの段ボール2つ、確実な裏付けが欲しくないか?こちらが掴んだ決定的な裏付けというやつが。この量の郵送には7日は掛かるだろうよ」
「…何言ってんの?」
「取引先、ルート、物。あるいはカルテルの中身か。どれかひとつでも押さえられてないから権限があっさり剥奪されたんだろ?」
「…はぁ」
「ついでに言えば日本の刑事ドラマに名台詞がある。『事件は会議室で起きてるんじゃない』と」
「…え゛っ」
「フランチャイズというのはやり易いな、はは、」
そう言う朔太郎が段ボールの中身をまた漁るのに「待って!」と焦るミシェルだが、「クロエ、アレクのとこまでお連れしろ」と問答無用に命じる。
クロエも楽しそうに「日本製の瓶がたくさん詰まってたでしょ」とにこにこした。
「えっ、えっ、」
「眠れない劇薬みたいなやつ飲んでんだってさ日本人って。怖いよね」
あれはどちらかというと増強剤に近いはずなんだけどね日本のやつは、と思ったが、朔太郎は特に何も言い返すこともなくただただ資料に目を通した。
魔法使いのクロエがあっさりとミシェルを連れて行く。
…始めに手にした資料にはなるほど、フレンチ・ギアナ、スリナムあたりのフランス領地の麻薬貿易についてか。一切合切は確かに協定Aが独占している。
立場や位置的にはCIAならまだわかるがそもそもその段階ではない、ということか、だからと言ってFSBならばこれはロシア関連でしか介入は不可、どちらかといえばこの協定Aとされる組織はDGESの事案であろう。
いち早くロシア組織が動いたということは単純にロシアの何かであることが明確だ。
この“輸出先a”というのは、ということはロシア関連であることは間違いないだろう、物は例の“モダフィニル”やら“リタリン”やら、如何にも軍人をハイにさせるような劇薬と、鎮痛剤だろうか、ランナーズハイの“エンドルフィン”、同じオピオイド系だが指定薬物の“フェンタニル”と…最早確かに闇医者レベル。
クロエが言う「あっぱらぱーしかいない」に信憑性が出てきた。ここまでくればいっそヘロインでも打ち込めば良いだろうになるほど、これが商売どころと掻い潜れるラインということか。
そして銃器輸入はなるほど1年前からちょくちょくと、RPG-7やらM203グレネードランチャーやら、一端にゲリラ戦をやる組織以外触りもしないものがちらほら見える。
その他増えた銃器がレミントンM700は置いといてSKS、なるほど武器はソビエト寄りだ。輸出先aやらbやらcやらと散らして少量ずつ密売し今日まで凌いでいるのだろう。
こうまで来れば確かに組織犯罪5部隊(銃器・薬物捜査)では余らせる事案だ。
しかしそれは言うならばアレックスと同じ理論だ、警察でやれることをすれば良い。ハッキングでも二重スパイでもない。これらは寧ろこちらの敵と捉えるのが普通だろう。そんなやつらのためにAやらaやら、確かに腹は立つ。
ふと、眉間に皺を寄せていた状況にことっと、淹れたコーヒーがデスクに置かれたのが朔太郎の視界に入る。
「そりゃぁ一ヶ所基地が潰れてからはこの商売はなかなか不況に至るわけだが、逆説だ。ここは平和な国だからね。非正規が売れるんだろ」
「良い場所教えてやるよミシェル。特1だ。と言ってもここにはまだ上がってきていない、つまりは生きた情報を持ってるぞ。特1の、アレックス・シンドラーが」
にやっと笑った朔太郎にミシェルは「マジで?」と聞いてくる。
リンゴの飴を握らせた。
「まあ開示してくれるかはわからんが俺よりは直営同士でカルテル組めるだろ。
アニシン第二の話なら俺も最近興味を持った。ちょっと違った視点の資料なら俺が残しといたぞ」
「違った視点?」
「先日すっ飛んだ政治家の家の強盗事件だ。正直結び付くかはわからない…と言うのが現段階の普通の意見だろうが不審点はまだ上がっていない。来るのが遅かったなミシェル」
そう言って朔太郎が棚をちらっと見ると、それだけでクロエが「はいどうぞ」とファイルを持ってミシェルに渡す。
「…バザロフ?なんでこんな金持ちが絡んで来る?」
「さぁまだわからん。それも死んだ情報だからな。俺の国には「死人に口無し」という言葉があるし」
「…いや、イギリス系だけど幽霊本当に嫌いなんだよサクタロウ」
「組5のくせに。敵が敵だ、山の中で幽霊追うのなんて普通よりあるだろ全く。
ついでに言えば案外近くにいるぞ、俺には見える」
「…何何何っ、なんなの一体」
「まぁ冗談はいいとしてミシェル、どうせならこの段ボール2つ、確実な裏付けが欲しくないか?こちらが掴んだ決定的な裏付けというやつが。この量の郵送には7日は掛かるだろうよ」
「…何言ってんの?」
「取引先、ルート、物。あるいはカルテルの中身か。どれかひとつでも押さえられてないから権限があっさり剥奪されたんだろ?」
「…はぁ」
「ついでに言えば日本の刑事ドラマに名台詞がある。『事件は会議室で起きてるんじゃない』と」
「…え゛っ」
「フランチャイズというのはやり易いな、はは、」
そう言う朔太郎が段ボールの中身をまた漁るのに「待って!」と焦るミシェルだが、「クロエ、アレクのとこまでお連れしろ」と問答無用に命じる。
クロエも楽しそうに「日本製の瓶がたくさん詰まってたでしょ」とにこにこした。
「えっ、えっ、」
「眠れない劇薬みたいなやつ飲んでんだってさ日本人って。怖いよね」
あれはどちらかというと増強剤に近いはずなんだけどね日本のやつは、と思ったが、朔太郎は特に何も言い返すこともなくただただ資料に目を通した。
魔法使いのクロエがあっさりとミシェルを連れて行く。
…始めに手にした資料にはなるほど、フレンチ・ギアナ、スリナムあたりのフランス領地の麻薬貿易についてか。一切合切は確かに協定Aが独占している。
立場や位置的にはCIAならまだわかるがそもそもその段階ではない、ということか、だからと言ってFSBならばこれはロシア関連でしか介入は不可、どちらかといえばこの協定Aとされる組織はDGESの事案であろう。
いち早くロシア組織が動いたということは単純にロシアの何かであることが明確だ。
この“輸出先a”というのは、ということはロシア関連であることは間違いないだろう、物は例の“モダフィニル”やら“リタリン”やら、如何にも軍人をハイにさせるような劇薬と、鎮痛剤だろうか、ランナーズハイの“エンドルフィン”、同じオピオイド系だが指定薬物の“フェンタニル”と…最早確かに闇医者レベル。
クロエが言う「あっぱらぱーしかいない」に信憑性が出てきた。ここまでくればいっそヘロインでも打ち込めば良いだろうになるほど、これが商売どころと掻い潜れるラインということか。
そして銃器輸入はなるほど1年前からちょくちょくと、RPG-7やらM203グレネードランチャーやら、一端にゲリラ戦をやる組織以外触りもしないものがちらほら見える。
その他増えた銃器がレミントンM700は置いといてSKS、なるほど武器はソビエト寄りだ。輸出先aやらbやらcやらと散らして少量ずつ密売し今日まで凌いでいるのだろう。
こうまで来れば確かに組織犯罪5部隊(銃器・薬物捜査)では余らせる事案だ。
しかしそれは言うならばアレックスと同じ理論だ、警察でやれることをすれば良い。ハッキングでも二重スパイでもない。これらは寧ろこちらの敵と捉えるのが普通だろう。そんなやつらのためにAやらaやら、確かに腹は立つ。
ふと、眉間に皺を寄せていた状況にことっと、淹れたコーヒーがデスクに置かれたのが朔太郎の視界に入る。
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