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第二話
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無事に店はオープンし、その時間には真里や他の従業員が数人入ってきた。真里は俺を見て、呆れたような驚いたような表情を浮かべた。
「あれ、おはようございます」
「おはよう」
「まさか?」
真里のそれには答えないでいると、真里は案の定で溜め息を吐いた。
「あんた、昨日言ったじゃねぇか」
「大丈夫、それも今日まで。これはガチで」
声を潜めて先ほどの話をした。だが真里は、いい顔をしない。
「…俺は正直、嶋田もあんまり」
と言っているときに嶋田さんが店に戻ってくる。先ほどまで控え室(兼事務所)に籠っていたのだ。恐らく、電話をしていたのだろう。店長なり、上層部なりに。
心配そうに、長谷川さんも寄ってきて、
「志摩くん、ありがたいけど、確かに神崎君の言う通りだよ…君は頑張り屋さんだからね…」
なんか、逆に心配をかけてしまったかもしれない。別に無理してる訳じゃないんだけどな。
その日はそのまま難なくピークを終え、14時に休憩。
やっと一段落。そう思ったら急に気が抜けたのかぼーっとする。
「光也さん休憩一緒。ご褒美にコーヒー奢る」
控え室の貴重品ロッカーから財布を取り出そうと、鍵を開けようとするが、2、3回ロッカーを間違えて鍵を刺してしまう。やっと自分のロッカーにたどり着いたら今度は右と左を逆に回してしまい、開かない。
「光也さん?」
「あー、間違えたわ」
「…大丈夫?」
「うん。休憩はわりとオフモードやねん」
やっと空いたロッカーから財布とタバコを出して控え室を出ると、慌てたように真里が追いかけてきて、左の脇腹辺りをがしっと掴まれた。
「今日何日目だっけ?バイト」
「んー?あー、覚えてない」
「俺休みだった…月曜日は?」
「月曜…入ってたなぁ」
「水曜は?」
「うーん、休み…あ、いや、夜勤変わった日だ」
「…あんた最後休んだのいつ?」
「休憩中なんだからいいよ…」
真里と喫煙所に向かう。外の日差しが暑い。一瞬真里は手を離し、今度は首筋辺りに神妙な顔で触れてきた。
「そうだけどさ」
喫煙所にあった自販機でスポーツ飲料を買い、俺に渡してきた。
「あぁ、ありがとう」
タバコを吸うのもダルい。だが癖みたいなもので、取り敢えず一本取って火をつけた。何口か吸うと、気持ち悪くなってきて火を消し、スポーツ飲料を飲んだ。
心配そうに真里が見てきたので、「なんだよ?」といつものようにふざけた感じで返し、もう一本火を点けた。今度は一口目で噎せる。
「顔色悪ぃし熱いんですけど」
額に手の平を当てられた。確かに、真里の手の方が冷たいような気がしなくもない。
「そりゃぁ、夏だし」
さっきから冷や汗みたいなもんが凄い。真里の手を剥がすように払いのけ、「大丈夫だよ」と一言返す。
「いや、大丈夫じゃないよ」
あー、ぼーっとする。
「じゃぁ休憩寝てる。寝てれば治る」
「何言ってんのあんた」
これ以上言ってもダメそうなので先に喫煙所を出る。言われてみて気付いたが頭も痛い。
「あれ、おはようございます」
「おはよう」
「まさか?」
真里のそれには答えないでいると、真里は案の定で溜め息を吐いた。
「あんた、昨日言ったじゃねぇか」
「大丈夫、それも今日まで。これはガチで」
声を潜めて先ほどの話をした。だが真里は、いい顔をしない。
「…俺は正直、嶋田もあんまり」
と言っているときに嶋田さんが店に戻ってくる。先ほどまで控え室(兼事務所)に籠っていたのだ。恐らく、電話をしていたのだろう。店長なり、上層部なりに。
心配そうに、長谷川さんも寄ってきて、
「志摩くん、ありがたいけど、確かに神崎君の言う通りだよ…君は頑張り屋さんだからね…」
なんか、逆に心配をかけてしまったかもしれない。別に無理してる訳じゃないんだけどな。
その日はそのまま難なくピークを終え、14時に休憩。
やっと一段落。そう思ったら急に気が抜けたのかぼーっとする。
「光也さん休憩一緒。ご褒美にコーヒー奢る」
控え室の貴重品ロッカーから財布を取り出そうと、鍵を開けようとするが、2、3回ロッカーを間違えて鍵を刺してしまう。やっと自分のロッカーにたどり着いたら今度は右と左を逆に回してしまい、開かない。
「光也さん?」
「あー、間違えたわ」
「…大丈夫?」
「うん。休憩はわりとオフモードやねん」
やっと空いたロッカーから財布とタバコを出して控え室を出ると、慌てたように真里が追いかけてきて、左の脇腹辺りをがしっと掴まれた。
「今日何日目だっけ?バイト」
「んー?あー、覚えてない」
「俺休みだった…月曜日は?」
「月曜…入ってたなぁ」
「水曜は?」
「うーん、休み…あ、いや、夜勤変わった日だ」
「…あんた最後休んだのいつ?」
「休憩中なんだからいいよ…」
真里と喫煙所に向かう。外の日差しが暑い。一瞬真里は手を離し、今度は首筋辺りに神妙な顔で触れてきた。
「そうだけどさ」
喫煙所にあった自販機でスポーツ飲料を買い、俺に渡してきた。
「あぁ、ありがとう」
タバコを吸うのもダルい。だが癖みたいなもので、取り敢えず一本取って火をつけた。何口か吸うと、気持ち悪くなってきて火を消し、スポーツ飲料を飲んだ。
心配そうに真里が見てきたので、「なんだよ?」といつものようにふざけた感じで返し、もう一本火を点けた。今度は一口目で噎せる。
「顔色悪ぃし熱いんですけど」
額に手の平を当てられた。確かに、真里の手の方が冷たいような気がしなくもない。
「そりゃぁ、夏だし」
さっきから冷や汗みたいなもんが凄い。真里の手を剥がすように払いのけ、「大丈夫だよ」と一言返す。
「いや、大丈夫じゃないよ」
あー、ぼーっとする。
「じゃぁ休憩寝てる。寝てれば治る」
「何言ってんのあんた」
これ以上言ってもダメそうなので先に喫煙所を出る。言われてみて気付いたが頭も痛い。
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