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第一話
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「あれ、今日なんか早いっすね」
バイトを上がって3分くらいで帰ろうとしている俺に、真里がカップラーメンを食いながら言ってきた。
「彼女?」
「違うけど、そう!じゃぁね!」
ビニール傘を手に取ってドアを開けようとしたとき、「光也さん」と呼ばれたので振り返ると、何かが飛んできた。とっさにキャッチして見てみると、“アップルデニッシュ”だった。
「はぁ、へ?てか、え?」
「飯くらい食いなさいって。あんた最近げっそりしてる。飯食ってます?」
「はぁ、さんきゅってお前どんだけ食うつもりだったん?てかアップルデニッシュ…キャラギャップすげぇな」
「えぇ?何が?」
ダメだこいつズレていやがる。
「いや、いいや…若いな、お前」
「シーフード食ったら甘いもん食いたくなるんじゃないかなって思ってストックしといた」
「あっそう…。若いな…」
「つったって2つ?3つくらいしか変わらないでしょーよ」
汁まで飲み干してゴミ箱へカップを投げた。見事ゴール。
そんな時だった。控え室の扉が勢いよく開いた。
「あらぁ、しまちゃぁん」
鼻の抜けたような声で言われた。思わず後ずさりしてしまう。が、肩をがっちり掴まれてしまった。目を合わせないようにしようにも、少し下を向けば胸ががら空き。仕方なく顔を見れば、平安美人顔負けの高面積厚化粧。
「おはようございます店長」
露骨に嫌そうな顔で言ったつもりが、どこが目だか分からない笑顔で「おはよぉしまちゃぁん」と嬉しそうに言ってくる。
あー、すっげぇタイミング悪ぃ。
「じゃ、おつか」
「しまちゃん!そうだ、お願いがあるのぉ」
うわぁ、嫌だぁ。
「…はい?」
「この日この日ぃ!」
半ば強引に後ろ向き状態、靴が脱げぬまま転けそうになった。まるでエルボー。
「あら、ごめんねぇ。
神崎くぅん、スケジュール取ってぇ」
真里は面倒臭そうに奥の棚からスケジュールのファイルを取り、ぽいっとぞんざいに店長に手渡した。
「ここ!今週の火曜日!
夜勤変わってくんなぁい?」
あ~あ、やっぱり。
「ちょっと待ってくださいね」
靴紐をわざとゆっくり緩めて時間稼ぎをした。
「その日ねぇ、ちょっとぉ、店長どうしでぇ、会議入っちゃったの~!」
嘘つけ。どうせ合コンだろ。
店長の横を無理矢理通って真里の前に座り、アップルデニッシュの袋を開ける。そんな俺たちの前に店長はスケジュールを広げてくる。
「ねぇどぉ?」
そこでやっとスケジュールを見てみると、昼間俺は普通に8時間シフト入っている。
まともにこいつ見てないな、スケジュール。
「これ、まるまる変わるんですか?夜8時から朝6時までですけど…」
「店長会議って言ってもお酒とか入ったものになるからぁ~」
んなわけあるかよっ!
「店長。ここ、志摩さんがっつり8時間入ってますよ」
真里が先を越して言ってくれた。細長く形のいい指が志摩光也のスケジュールラインをなぞる。
「えぇ、うっそー。
じゃぁ3時間削ってー」
「いやいや、どこ削る気ですか?前も後ろも、削っちゃったらこれ、新人の主婦一人ですよ?」
「えぇー!じゃぁ神崎くんはー?」
「入れたら入れてますよ」
「…しまちゃぁん、別の日に付けてあげるからぁ…入ってくれなぁい?」
「店長、この日さぁ、志摩さん朝から入ってるわけですよ。そのあと夜勤?
大体次の日見てくださいよ。志摩さん朝からでしょ?」
「あ、ホントだぁ…」
真里すげぇ。なんか頼もしいな。
「今回は我慢っすね。どーしてもなら志摩さんとスケジュール変わったらどうです?次の日とかさ」
「ちょっ、我慢って…!」
「光也さんタバコ行こっか」
「ふにゃ?」
アップルデニッシュ食いながらだったので、まともに返事が出来なかった。
「あんたマイペースだなぁ…」
「いふいふ」
行く行く、と言ったんだけど伝わったかな。
真里が立ち上がったのでアップルデニッシュをくわえたまま真里について行くことにした。テキトーにお疲れ様ですと言うも、店長は返事してくれなかった。
逃げるように控え室を後にする。
外に出ると真里がさりげなく俺のビニール傘を開いてくれた。そういえばさっき転けそうになったときとっさに傘立てに戻したんだ。
「このタイプのビニ傘やっぱいいわ。ボタンひとつでぽんっ、みたいな」
もう一本傘持ってるし、そのまま傘を渡されるかと思いきや、「まぁまぁゆっくり食いなよ」とか言って左側を開けてくれたのでそこに入って歩く。おかげでアップルデニッシュ完食。
「ガチで相合い傘っすね」
調子に乗って真里は俺の腰辺りに手を置いて歩く。
「キモいわ!」
「つか細いな光也さん。ちゃんと飯食えよ」
「いや食ってるから、てかお前は何だ、母ちゃんか」
「まったく世話が焼ける子ね~。いつもぼーっとしてるんだから~。しっかりしないと24時間連勤させられちゃうわよ~」
うわ、口調がちょっと、そっちのママっぽいぞ。けど正論だ。
「はぁい、気を付けまーす」
「つかデブババア必死だよな~。合コンなんかで必死になる前に別のことやれよ~」
「36だし焦ってんだろうけどね。毎週行ってるからな。ただもう婚活した方が良いような気もするよね」
「プライドってやつ?女ってホントそーゆーとこ嫌だわ。無駄に感情的だし。支離滅裂だわ。理解したくもない。でも行き場を無くすと省みない。
手当たり次第漁ってさ。知ってます?あいつこの前新人の高校生誘っててさ」
「えっ、マジ?」
「ただ純粋だったのか、新人君ポカーンとしてたわ」
全く知らなかった。
喫煙所には誰もいなかった。ポケットからセブンスターを出して火をつける。真里がハイライトを出した時に傘を受け取ったが、やっぱりまた、傘の主導権は握られてしまった。
「傘開いたら?持っててやるよ?」
「ここ狭いし面倒臭い」
まったく物臭だなぁ。
「てか光也さん急ぎだった?なんか引き留めちゃったけど」
「まぁタバコくらいならいいよ。店長から逃げられたし」
「まぁ、あのままだったら多分ごり押しされて、あんたのことだからガチで24時間勤務になってたよね」
そんな俺頼りないかなぁ?まぁ俺も、真里が言った通りになりそうだなぁとちょっと納得しかけてるけども。
「そんなダメかね?俺」
「うん」
うわぁはっきりと言われた。
「だって流されやすいんだもん。あんたそんなんじゃそのうち変な女に引っ掛かって振られてボロ雑巾みたいになっちゃうぜ?」
ぎくっ。それ最近の俺だし。
変な理由で別れたし、なんか子供拾っちゃったし。このままだとボロ雑巾?
「あ、図星っすね?光也さんそーゆーときね、一瞬目がね、ぴくってなるんすよ」
「な、なんだお前!」
「ほらほら、右目の泣き黒子あたりね。あーおもしろ」
確かに前の彼女にもよく、嘘がわかりやすいって言われたな。
ちょっと誤魔化そうと思って顔を反らすと、なんか小さなカエルが小さな虫を補食した瞬間で、思わず目をそらした。
二人で傘に入ってるせいかなんとなく匂いが籠る。特にハイライトのラム酒の匂い。
タバコを少し叩いて灰を捨てるその真理の指は、細長いのに、俺みたいに骨っぽい訳じゃなくて。なんかこんなのに女は惹かれるんだろうなと、ふと思った。
長身だけどただひょろ長いわけでもなくがたいもまぁまぁで顔もわりと良い方だと思うんだが、何故かそういえば、真里に女の影を見ない。出会いがないんだろうか。俺だって、彼女、大学の頃の知り合いとかだったしな。
「お前さ、彼女とかいないの?」
「なんすかいきなり。
いないいない。面倒くせぇもん、女なんて」
「まぁ、確かに面倒だけどさ…女の方からこねぇの?お前モテそうだけど」
「ブロックショットするから問題なし」
なるほど。
「光也さんこそね、マジ気をつけた方がいいっすよ。あんたみたいな人はね、クソ女共が、『キャーかっこいーちょー草食系ちょークールぅ~!』とか言って実はこんなボーッとした人で、『きゃー、ちょーかわいいんですけどぉ~!』とか言って寄ってくる、年上女にパクリと喰われる。最初は良くてもそのうち女側の欲求が増える、気付いたらめっちゃ背負わされてぽーいパターン」
「なんだよ、バカにしてねぇ?」
「半分ね。
でもあんた良い人だから、俺が悪いんだとか言ってかっこつけちゃうタイプ」
「なんかマリちゃん場数踏んでね?」
「踏んでない踏んでない」
ヒラヒラと満更でもなく手を振るが、どことなく表情は何かを割りきってるような、割りきってないような。
「変なやつ」
「まぁね、よく言われますよ。
さて、そろそろ行かないとね。光也さんの彼女怖ぇから」
「あー…、彼女ね…。
別れた。今日は別件」
「へっ!?」
真里は驚きのあまり変な声をあげた。
「この前な」
「…そっか」
タバコの火を消して吸い殻入れに捨てると、傘を渡される。真里は自分の傘を開いた。
「今度飲み行きましょうよ。しばらく行ってないし」
なんだろ、一応慰めてくれてんのかな。
「あー、そういえばそうだね」
「正直ね、別れてちょっと清々してるわ…。傷心中に言うことじゃないけど」
そう言うと真里は右手をヒラヒラとかざして歩き出した。
「お疲れ!」
そのまま真里はバイト先、俺は真逆の自宅の方へ歩く。
そうか、真里からはそんな風に見えていたんだな。
バイトを上がって3分くらいで帰ろうとしている俺に、真里がカップラーメンを食いながら言ってきた。
「彼女?」
「違うけど、そう!じゃぁね!」
ビニール傘を手に取ってドアを開けようとしたとき、「光也さん」と呼ばれたので振り返ると、何かが飛んできた。とっさにキャッチして見てみると、“アップルデニッシュ”だった。
「はぁ、へ?てか、え?」
「飯くらい食いなさいって。あんた最近げっそりしてる。飯食ってます?」
「はぁ、さんきゅってお前どんだけ食うつもりだったん?てかアップルデニッシュ…キャラギャップすげぇな」
「えぇ?何が?」
ダメだこいつズレていやがる。
「いや、いいや…若いな、お前」
「シーフード食ったら甘いもん食いたくなるんじゃないかなって思ってストックしといた」
「あっそう…。若いな…」
「つったって2つ?3つくらいしか変わらないでしょーよ」
汁まで飲み干してゴミ箱へカップを投げた。見事ゴール。
そんな時だった。控え室の扉が勢いよく開いた。
「あらぁ、しまちゃぁん」
鼻の抜けたような声で言われた。思わず後ずさりしてしまう。が、肩をがっちり掴まれてしまった。目を合わせないようにしようにも、少し下を向けば胸ががら空き。仕方なく顔を見れば、平安美人顔負けの高面積厚化粧。
「おはようございます店長」
露骨に嫌そうな顔で言ったつもりが、どこが目だか分からない笑顔で「おはよぉしまちゃぁん」と嬉しそうに言ってくる。
あー、すっげぇタイミング悪ぃ。
「じゃ、おつか」
「しまちゃん!そうだ、お願いがあるのぉ」
うわぁ、嫌だぁ。
「…はい?」
「この日この日ぃ!」
半ば強引に後ろ向き状態、靴が脱げぬまま転けそうになった。まるでエルボー。
「あら、ごめんねぇ。
神崎くぅん、スケジュール取ってぇ」
真里は面倒臭そうに奥の棚からスケジュールのファイルを取り、ぽいっとぞんざいに店長に手渡した。
「ここ!今週の火曜日!
夜勤変わってくんなぁい?」
あ~あ、やっぱり。
「ちょっと待ってくださいね」
靴紐をわざとゆっくり緩めて時間稼ぎをした。
「その日ねぇ、ちょっとぉ、店長どうしでぇ、会議入っちゃったの~!」
嘘つけ。どうせ合コンだろ。
店長の横を無理矢理通って真里の前に座り、アップルデニッシュの袋を開ける。そんな俺たちの前に店長はスケジュールを広げてくる。
「ねぇどぉ?」
そこでやっとスケジュールを見てみると、昼間俺は普通に8時間シフト入っている。
まともにこいつ見てないな、スケジュール。
「これ、まるまる変わるんですか?夜8時から朝6時までですけど…」
「店長会議って言ってもお酒とか入ったものになるからぁ~」
んなわけあるかよっ!
「店長。ここ、志摩さんがっつり8時間入ってますよ」
真里が先を越して言ってくれた。細長く形のいい指が志摩光也のスケジュールラインをなぞる。
「えぇ、うっそー。
じゃぁ3時間削ってー」
「いやいや、どこ削る気ですか?前も後ろも、削っちゃったらこれ、新人の主婦一人ですよ?」
「えぇー!じゃぁ神崎くんはー?」
「入れたら入れてますよ」
「…しまちゃぁん、別の日に付けてあげるからぁ…入ってくれなぁい?」
「店長、この日さぁ、志摩さん朝から入ってるわけですよ。そのあと夜勤?
大体次の日見てくださいよ。志摩さん朝からでしょ?」
「あ、ホントだぁ…」
真里すげぇ。なんか頼もしいな。
「今回は我慢っすね。どーしてもなら志摩さんとスケジュール変わったらどうです?次の日とかさ」
「ちょっ、我慢って…!」
「光也さんタバコ行こっか」
「ふにゃ?」
アップルデニッシュ食いながらだったので、まともに返事が出来なかった。
「あんたマイペースだなぁ…」
「いふいふ」
行く行く、と言ったんだけど伝わったかな。
真里が立ち上がったのでアップルデニッシュをくわえたまま真里について行くことにした。テキトーにお疲れ様ですと言うも、店長は返事してくれなかった。
逃げるように控え室を後にする。
外に出ると真里がさりげなく俺のビニール傘を開いてくれた。そういえばさっき転けそうになったときとっさに傘立てに戻したんだ。
「このタイプのビニ傘やっぱいいわ。ボタンひとつでぽんっ、みたいな」
もう一本傘持ってるし、そのまま傘を渡されるかと思いきや、「まぁまぁゆっくり食いなよ」とか言って左側を開けてくれたのでそこに入って歩く。おかげでアップルデニッシュ完食。
「ガチで相合い傘っすね」
調子に乗って真里は俺の腰辺りに手を置いて歩く。
「キモいわ!」
「つか細いな光也さん。ちゃんと飯食えよ」
「いや食ってるから、てかお前は何だ、母ちゃんか」
「まったく世話が焼ける子ね~。いつもぼーっとしてるんだから~。しっかりしないと24時間連勤させられちゃうわよ~」
うわ、口調がちょっと、そっちのママっぽいぞ。けど正論だ。
「はぁい、気を付けまーす」
「つかデブババア必死だよな~。合コンなんかで必死になる前に別のことやれよ~」
「36だし焦ってんだろうけどね。毎週行ってるからな。ただもう婚活した方が良いような気もするよね」
「プライドってやつ?女ってホントそーゆーとこ嫌だわ。無駄に感情的だし。支離滅裂だわ。理解したくもない。でも行き場を無くすと省みない。
手当たり次第漁ってさ。知ってます?あいつこの前新人の高校生誘っててさ」
「えっ、マジ?」
「ただ純粋だったのか、新人君ポカーンとしてたわ」
全く知らなかった。
喫煙所には誰もいなかった。ポケットからセブンスターを出して火をつける。真里がハイライトを出した時に傘を受け取ったが、やっぱりまた、傘の主導権は握られてしまった。
「傘開いたら?持っててやるよ?」
「ここ狭いし面倒臭い」
まったく物臭だなぁ。
「てか光也さん急ぎだった?なんか引き留めちゃったけど」
「まぁタバコくらいならいいよ。店長から逃げられたし」
「まぁ、あのままだったら多分ごり押しされて、あんたのことだからガチで24時間勤務になってたよね」
そんな俺頼りないかなぁ?まぁ俺も、真里が言った通りになりそうだなぁとちょっと納得しかけてるけども。
「そんなダメかね?俺」
「うん」
うわぁはっきりと言われた。
「だって流されやすいんだもん。あんたそんなんじゃそのうち変な女に引っ掛かって振られてボロ雑巾みたいになっちゃうぜ?」
ぎくっ。それ最近の俺だし。
変な理由で別れたし、なんか子供拾っちゃったし。このままだとボロ雑巾?
「あ、図星っすね?光也さんそーゆーときね、一瞬目がね、ぴくってなるんすよ」
「な、なんだお前!」
「ほらほら、右目の泣き黒子あたりね。あーおもしろ」
確かに前の彼女にもよく、嘘がわかりやすいって言われたな。
ちょっと誤魔化そうと思って顔を反らすと、なんか小さなカエルが小さな虫を補食した瞬間で、思わず目をそらした。
二人で傘に入ってるせいかなんとなく匂いが籠る。特にハイライトのラム酒の匂い。
タバコを少し叩いて灰を捨てるその真理の指は、細長いのに、俺みたいに骨っぽい訳じゃなくて。なんかこんなのに女は惹かれるんだろうなと、ふと思った。
長身だけどただひょろ長いわけでもなくがたいもまぁまぁで顔もわりと良い方だと思うんだが、何故かそういえば、真里に女の影を見ない。出会いがないんだろうか。俺だって、彼女、大学の頃の知り合いとかだったしな。
「お前さ、彼女とかいないの?」
「なんすかいきなり。
いないいない。面倒くせぇもん、女なんて」
「まぁ、確かに面倒だけどさ…女の方からこねぇの?お前モテそうだけど」
「ブロックショットするから問題なし」
なるほど。
「光也さんこそね、マジ気をつけた方がいいっすよ。あんたみたいな人はね、クソ女共が、『キャーかっこいーちょー草食系ちょークールぅ~!』とか言って実はこんなボーッとした人で、『きゃー、ちょーかわいいんですけどぉ~!』とか言って寄ってくる、年上女にパクリと喰われる。最初は良くてもそのうち女側の欲求が増える、気付いたらめっちゃ背負わされてぽーいパターン」
「なんだよ、バカにしてねぇ?」
「半分ね。
でもあんた良い人だから、俺が悪いんだとか言ってかっこつけちゃうタイプ」
「なんかマリちゃん場数踏んでね?」
「踏んでない踏んでない」
ヒラヒラと満更でもなく手を振るが、どことなく表情は何かを割りきってるような、割りきってないような。
「変なやつ」
「まぁね、よく言われますよ。
さて、そろそろ行かないとね。光也さんの彼女怖ぇから」
「あー…、彼女ね…。
別れた。今日は別件」
「へっ!?」
真里は驚きのあまり変な声をあげた。
「この前な」
「…そっか」
タバコの火を消して吸い殻入れに捨てると、傘を渡される。真里は自分の傘を開いた。
「今度飲み行きましょうよ。しばらく行ってないし」
なんだろ、一応慰めてくれてんのかな。
「あー、そういえばそうだね」
「正直ね、別れてちょっと清々してるわ…。傷心中に言うことじゃないけど」
そう言うと真里は右手をヒラヒラとかざして歩き出した。
「お疲れ!」
そのまま真里はバイト先、俺は真逆の自宅の方へ歩く。
そうか、真里からはそんな風に見えていたんだな。
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