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2021年ショートショート
夜の静寂
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誰でもいいから…いいから殺してくれと思う夜がたまにある。
僕はイヤホンを耳にした。
大好きな音楽を聴いて、低血圧な呼吸が肺に刺さる、それが心地よくドク…ドクっと頭に響くことがあるんだ。
それは誰にも邪魔をされない時間。唯一「自分とは」と考える碌でもない漣になり僕の身体に流れ出して行く。僕は、けして死にたいと思うわけではないのだ。
静かなベースとエレキが軋んだ階段を上る。僕は11階のフェンスを眺める。外は箱よりも遥かに寒い。そうして涙が少し滲んだ。
こうして静かに流れる時間は11回目。先々週に知らない誰かがここから落ちたと噂で聴いた。
まるでまだ息をする真っ赤な肉片はドク、ドクと僕の血潮を寝かしつけた。夜は寒い、叫び声もどこから聞こえるのかわからない場所。
フェンスを背にして凭れ掛かった。イヤホンは僕の好きなメロウの情景を目の前に写す。これだけが唯一鮮やかで、陽に照らされたあの赤い花を思い出す。
考えていることと思う気持ちはいつも違う。
この麻痺した鼓動はただただ痺れて僕を離さない。じんわり、じんわりと闇に包まれる僕は今、酷く心地がよかった。
貴方のことを考えている、貴方のために祈っている、貴方の全てを知りたいと思っている、貴方の情熱を受け止めている貴方への冷えた思いを目の当たりにしている貴方の形を成している。
謙遜も曖昧に響く夜の情景、さっき吐き出した冷気に胸焼けがした。
どうか、どうか誰も見ないでくれ。知らないでくれ。僕はただの人間なんだ、と生温い息が出た。
気付かなかった後悔が蓋を開けて出てくる。僕の夜は碌でもない。誰かに情熱も注げない、一人が好きなこんな僕。
誰か、誰かと空を見上げた。メロウな星座がそこにはあった。どうしていま、誰か、誰かと吐きたいのだろうか。
いつか散ったあの日の君へ。吹き返す夜の声、さよならと、聞こえなくなるまで。
明日寝よう。
僕はイヤホンを耳にした。
大好きな音楽を聴いて、低血圧な呼吸が肺に刺さる、それが心地よくドク…ドクっと頭に響くことがあるんだ。
それは誰にも邪魔をされない時間。唯一「自分とは」と考える碌でもない漣になり僕の身体に流れ出して行く。僕は、けして死にたいと思うわけではないのだ。
静かなベースとエレキが軋んだ階段を上る。僕は11階のフェンスを眺める。外は箱よりも遥かに寒い。そうして涙が少し滲んだ。
こうして静かに流れる時間は11回目。先々週に知らない誰かがここから落ちたと噂で聴いた。
まるでまだ息をする真っ赤な肉片はドク、ドクと僕の血潮を寝かしつけた。夜は寒い、叫び声もどこから聞こえるのかわからない場所。
フェンスを背にして凭れ掛かった。イヤホンは僕の好きなメロウの情景を目の前に写す。これだけが唯一鮮やかで、陽に照らされたあの赤い花を思い出す。
考えていることと思う気持ちはいつも違う。
この麻痺した鼓動はただただ痺れて僕を離さない。じんわり、じんわりと闇に包まれる僕は今、酷く心地がよかった。
貴方のことを考えている、貴方のために祈っている、貴方の全てを知りたいと思っている、貴方の情熱を受け止めている貴方への冷えた思いを目の当たりにしている貴方の形を成している。
謙遜も曖昧に響く夜の情景、さっき吐き出した冷気に胸焼けがした。
どうか、どうか誰も見ないでくれ。知らないでくれ。僕はただの人間なんだ、と生温い息が出た。
気付かなかった後悔が蓋を開けて出てくる。僕の夜は碌でもない。誰かに情熱も注げない、一人が好きなこんな僕。
誰か、誰かと空を見上げた。メロウな星座がそこにはあった。どうしていま、誰か、誰かと吐きたいのだろうか。
いつか散ったあの日の君へ。吹き返す夜の声、さよならと、聞こえなくなるまで。
明日寝よう。
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