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Today is gonna be the day
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色弱関連から、いつの間にか美術館の展示、そこからゴッホについて調べていた。
ゴッホは生涯、同じような絵を描き続けたらしい。確かに、どのひまわりもあまり違いを感じなかった。
彼にはこちらとは違う色に見えているわけで…。
夜景のような絵も発見した。
“星月夜”。不思議な絵。絵の善し悪しは分からないけれど、なんともいえない世界観。現実に幻想が溶け込んだような。
これもやはり同じような絵が沢山ある。
こちらの視点に合わせようとしたのか、それとも別の何かがあったのか。
葵なら意味を知っているかな?聞いてみてもいいかもしれない。
……遊びに行ったことすらないな、そういえば。
いや、小さい頃は公園で遊んだけれども。高校生の「遊び」といえば話が変わってくる。
美術館自体はまぁ、電車に乗れば近い位置にある…。
「おい、お前」
ふと影が落ち目の前に教員が立ちはだかった。
なんの先生かは知らないがよくこうして、校門で立っている。
「あぁ、すんません」とスマホをしまう横目で他の生徒が目に付く。自分に的を絞ったこの一瞬で3人ほど、丈の短いスカートの女子生徒やイヤホンを付けっぱなしの生徒等が、すまし顔で校門を通過した。
あっさりケータイをしまったおかげか「ながらスマホやめろよ~」程度で解放され、次には新しくまた誰かを探している様。
こんなの、教員でありこういうものだと認識されてなければただの変態だろうなと、ポロシャツピンク襟のオッサンに思う。この学校の生徒、教師間でなければ成り立たない。
そんなことはどうでもいいけど。教室に向かう途中、教室側から歩いてきた桐生とすれ違った。不思議だ、普通は会わない。
「おはよーございまーす」
「おはよ。大丈夫そうだな」
葵かもしれないなと、教室に行けばやはり、葵が来ていることが確認出来た。
あれ。
顔が見えない…。
あぁ、そうか。
いつもならそっぽを向くようにイヤホンを装備し、ぼんやりと窓際を見ている、だから横顔が見えているのだけど、今日は違う。
何か作業をしている、夢中なようだ。
なんだろうなと「おはよう」と覗き込むようにして声を掛ければ「あっ、」と、驚いたらしい。カシャカシャ、ころんと何かが落ちたような……。
黒と黄色の、小さな玉が2粒。
「あ、悪ぃ…」
その玉が机から落ちそうになり、慌てて指で抑える。
イヤホンを外した葵は洸太を見て「あ、こうちゃんか、おはよう!」と、落ち着かない、取り敢えずな挨拶をし、辺りを見渡す。
葵の机の上には、何色もある小さい玉がケースで小分けにされていた。
あまり見慣れなくてピンと来なかったが、時間差で「ビーズ…」と認識出来た。
何かを製作途中だったようだ。
葵は洸太の手をじっと眺めている。
黒と黄色それぞれビーズを戻し、まだどこかに落ちているかもと探そうとしたが、葵が作成中の何かを置き、「大丈夫、沢山あるから!」と、いつもより少し大きな声…焦ったような声で言ってきた。
「そっか…ごめん」
「いいよいいよ!」
洸太が席に着くと、葵は再び透明な糸を手にするが、「えっと…」と眺め、糸を左右に持ち替え「いや、違うな…」とまた持ち替えたりしている。
円だろうか、小さいそれは皿のよう。しかし、よく見るとオレンジや茶色と色分けされ模様になっているようだ。
集中力は切れたらしい。所在無さ気に作業中のそれを置き、「ふー!」と腕を伸ばす。
葵は楽しそうな表情で、まだ出来ていないそれをこちらに翳し「リスちゃん」と笑いかけてきた。
「リス?」
「そー。
初めてやるにしては難易度高かったかも…頭の模様がさ~」
「なるほど、」
机の上を眺める。
ケースの上の段には白、茶色、赤、青、黒、黄色。下の段には緑、空き、水色、オレンジ、黒、ピンク。
ケースの蓋には鏡のように、黒い油性ペンでwhite、brown、red、blue、black ✓、yellowと、開けてあればそのまま見えるよう、つまり閉めたら逆文字だろう筆記体で書いてある。
なんとなく、これは桐生の字だろうかと思えた。なんせ、筆記体なんて少し習った程度だ。
「どうしよっかな…左目まで編んだしこの段編みきっちゃおうかな…」
そういえば黒だけ少し大きい。✓はなるほど、大、みたいなものかな。
「ホントだ、この黒大きいな」
「そー。きりゅーせんせーがわかりやすくしてくれた。下にも黒あるから…て言っても、こっちはパールだから見てわかるんだよねー」
「過保護なんだよなーあの人」という一言に、少しモヤッとした。
何故かはわかる。自分は今朝、美術館だとかを眺め考えていたから。
「器用だな」とつい素っ気なくなってしまったが、葵の態度は特に変わりもなく再びビーズを弄り始めたので、洸太も気にせずケータイで「ビーズアート」と調べる。
たまたまだった。
2駅先の構内で、今週の土日にビーズの展覧会があるらしい。
構内の展示なら多分、小規模のスペースだろう。ふと、「葵さ、」と声を掛けたところで「はよーっす」と、三澤が登校してきた。
ゴッホは生涯、同じような絵を描き続けたらしい。確かに、どのひまわりもあまり違いを感じなかった。
彼にはこちらとは違う色に見えているわけで…。
夜景のような絵も発見した。
“星月夜”。不思議な絵。絵の善し悪しは分からないけれど、なんともいえない世界観。現実に幻想が溶け込んだような。
これもやはり同じような絵が沢山ある。
こちらの視点に合わせようとしたのか、それとも別の何かがあったのか。
葵なら意味を知っているかな?聞いてみてもいいかもしれない。
……遊びに行ったことすらないな、そういえば。
いや、小さい頃は公園で遊んだけれども。高校生の「遊び」といえば話が変わってくる。
美術館自体はまぁ、電車に乗れば近い位置にある…。
「おい、お前」
ふと影が落ち目の前に教員が立ちはだかった。
なんの先生かは知らないがよくこうして、校門で立っている。
「あぁ、すんません」とスマホをしまう横目で他の生徒が目に付く。自分に的を絞ったこの一瞬で3人ほど、丈の短いスカートの女子生徒やイヤホンを付けっぱなしの生徒等が、すまし顔で校門を通過した。
あっさりケータイをしまったおかげか「ながらスマホやめろよ~」程度で解放され、次には新しくまた誰かを探している様。
こんなの、教員でありこういうものだと認識されてなければただの変態だろうなと、ポロシャツピンク襟のオッサンに思う。この学校の生徒、教師間でなければ成り立たない。
そんなことはどうでもいいけど。教室に向かう途中、教室側から歩いてきた桐生とすれ違った。不思議だ、普通は会わない。
「おはよーございまーす」
「おはよ。大丈夫そうだな」
葵かもしれないなと、教室に行けばやはり、葵が来ていることが確認出来た。
あれ。
顔が見えない…。
あぁ、そうか。
いつもならそっぽを向くようにイヤホンを装備し、ぼんやりと窓際を見ている、だから横顔が見えているのだけど、今日は違う。
何か作業をしている、夢中なようだ。
なんだろうなと「おはよう」と覗き込むようにして声を掛ければ「あっ、」と、驚いたらしい。カシャカシャ、ころんと何かが落ちたような……。
黒と黄色の、小さな玉が2粒。
「あ、悪ぃ…」
その玉が机から落ちそうになり、慌てて指で抑える。
イヤホンを外した葵は洸太を見て「あ、こうちゃんか、おはよう!」と、落ち着かない、取り敢えずな挨拶をし、辺りを見渡す。
葵の机の上には、何色もある小さい玉がケースで小分けにされていた。
あまり見慣れなくてピンと来なかったが、時間差で「ビーズ…」と認識出来た。
何かを製作途中だったようだ。
葵は洸太の手をじっと眺めている。
黒と黄色それぞれビーズを戻し、まだどこかに落ちているかもと探そうとしたが、葵が作成中の何かを置き、「大丈夫、沢山あるから!」と、いつもより少し大きな声…焦ったような声で言ってきた。
「そっか…ごめん」
「いいよいいよ!」
洸太が席に着くと、葵は再び透明な糸を手にするが、「えっと…」と眺め、糸を左右に持ち替え「いや、違うな…」とまた持ち替えたりしている。
円だろうか、小さいそれは皿のよう。しかし、よく見るとオレンジや茶色と色分けされ模様になっているようだ。
集中力は切れたらしい。所在無さ気に作業中のそれを置き、「ふー!」と腕を伸ばす。
葵は楽しそうな表情で、まだ出来ていないそれをこちらに翳し「リスちゃん」と笑いかけてきた。
「リス?」
「そー。
初めてやるにしては難易度高かったかも…頭の模様がさ~」
「なるほど、」
机の上を眺める。
ケースの上の段には白、茶色、赤、青、黒、黄色。下の段には緑、空き、水色、オレンジ、黒、ピンク。
ケースの蓋には鏡のように、黒い油性ペンでwhite、brown、red、blue、black ✓、yellowと、開けてあればそのまま見えるよう、つまり閉めたら逆文字だろう筆記体で書いてある。
なんとなく、これは桐生の字だろうかと思えた。なんせ、筆記体なんて少し習った程度だ。
「どうしよっかな…左目まで編んだしこの段編みきっちゃおうかな…」
そういえば黒だけ少し大きい。✓はなるほど、大、みたいなものかな。
「ホントだ、この黒大きいな」
「そー。きりゅーせんせーがわかりやすくしてくれた。下にも黒あるから…て言っても、こっちはパールだから見てわかるんだよねー」
「過保護なんだよなーあの人」という一言に、少しモヤッとした。
何故かはわかる。自分は今朝、美術館だとかを眺め考えていたから。
「器用だな」とつい素っ気なくなってしまったが、葵の態度は特に変わりもなく再びビーズを弄り始めたので、洸太も気にせずケータイで「ビーズアート」と調べる。
たまたまだった。
2駅先の構内で、今週の土日にビーズの展覧会があるらしい。
構内の展示なら多分、小規模のスペースだろう。ふと、「葵さ、」と声を掛けたところで「はよーっす」と、三澤が登校してきた。
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