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Came back clearly to me…
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友達関係は頻繁に会わなくなればわりとすぐに切れてしまう。それは小、中学と経験した。5人グループ、いや、20人4チーム在籍していても交友関係が残っている人間は今のところいない。
街から出ればより一層だ。
高校から帰って来る、それだけでもなんとなく一線を引かれているのを感じる、これは当たり前だ、自分が陣地に一線を引いているのだから。
三澤は多分1人くらい、幼い頃遊んだ共通の人物と繋がりがあるような気配はあるが、ここも恐らく一線が引かれている。三澤も洸太も他所へ出ている、昔程ご近所事情を聞かなくなった。
俺はつまり、二線目を引いているのか、周りに。
聞かなくてもわかる、二線も行けば「敬遠」になってしまっている事ぐらい。それは、学力だろう。自分が通う学校はぼちぼち良く、この街の外にしかない学校だからだ。
最近はそこまで神経質にならなくなっていた。
知らない情報はつまり「いらないもの」だから自分の手元にない。見知っていた顔も生死すら分からない状態だが、今のところ「誰かが死んだ」という情報を耳にも目にしてないから、生きていると思っている。
別にそれで良い。
もしそうじゃなかったら?と考えても意味は無いしどっちでもいいのだけれども、では何故葵はずっと心に残っていたのか。不可抗力なのだろうか、それとも別の何かなのだろうか。
葵は知らないうちに生きていて、知らない何かになっていた。これを知ってしまったが故にモヤモヤしている。
この霧を晴らしたい、だから知りたいのだろうか。
…しかし、改めて考えると今日の…「分からない」と答えた葵に対し妙に納得した。
そして、更にわからなくなった。
…始めから。
あの出会った日も自分は曖昧なまま、まるで蜃気楼のように徐々に徐々にと気持ちがぼやけてくる。もっと遠くなれば恐らく逃げ水のように、却ってはっきり見えるのだろうか。
逃げ水は脳に作用する磁場の歪みだ。今は、それくらいの気持ちでいる。見えているのに全く届かないとだけはわかる。
「それより洸太、あんた合宿はいつ取る?」
「…合宿?」
「車の」
「…ああ、決めてなかった」
「バイクは早く取れるけど、車は今のうちに入れておかないとねぇ…冬も念の為入れておく?」
…街、関係から1回離れてみる。しかも「免許を取る」という合理的な理由で。
「夏は?」
「まだ18にならないでしょうが」
「…よくわかんないから任せる…でも…早く取りたい」
別に大した理由じゃないけど。
「合宿じゃなくて帰りに通う?」
「あー、そうしよっかな…」
バイトでも本当に探した方がいいのかもしれない。
ふと母親が「何かやりたいことないの?」と、今日は珍しく干渉を寄越してくる。
「…まだ考えてないけど……」
街の外にある無難な大学のパンフでも見てテキトーにピンと来た所に行き考えようかと思っていた。
『現実味が全くない』
と母に告げることはない。
誰か達はよく言う「次の瞬間には死んでいるかもしれないし」とも違う、「未来を見据えないと苦労をする」とも違う何か。
それを手にすることにすら実感がわかない。何が良いか分からないし良かったか悪かったかを判断するのが果たして未来なのか今なのかもわからないけど、今はまず母親とともに居て、学校には三澤がいるし…葵が帰ってきた。はっきり言ってそれで手いっぱい。今か未来は二の次なのだ。
自分の人生を振り返る、つまり回顧をするのであれば今も過去も「ことなかれ」であり、酷く怠惰だった。流されるまま今に至るけれど、恐らく自分は二度、大きな決断をした。
あの公園で一人ぼっちだった葵を見つけたのと、市外の高校を選んだことだ。
それが正解だったのかと「今」考えたらもう、わからない位置にいる。その瞬間だけは間違いなく「未来」のようなものを考えていたはずなのに。
はずなのに?
じゃあ、後悔しているのか?
そんな、今は授業で学んでいない、例えば「哲学」やら「心理学」、この、違いすらわからないままの自分で何かを導き出すことが今出来るとも思えないでいたが。
家に着いて、緊急だったようだ。夕飯のカップラーメンを食い部屋に戻ってから、葵の「女子の制服姿」を当たり前に思い出した。
その葵は仰向けに寝転ぶ洸太に四つん這いで迫ってくる。この、今寝ているベットの上の現象だ。
もしも、普通の再会をしていたら…?
自分の手で彼の紅潮した頬へ手を伸ばす。気持ちよさそうに、その掌に手を重ね、薄く笑って「こうちゃん、」と色っぽく名前を呼んでくる…。
想像しようとして自分の股間に触れようとしたが、結局LEDを消したライトしか見えない。
そこから先が全く分からない、いや、この妄想の続きの構成は自分の中で組み上がっているのだ。互いに裸になるだろう、葵がブレザーを脱いで洸太がシャツのボタンを外すかもしれないし、葵も同じく自分にそれをやってくるかもしれない。
街から出ればより一層だ。
高校から帰って来る、それだけでもなんとなく一線を引かれているのを感じる、これは当たり前だ、自分が陣地に一線を引いているのだから。
三澤は多分1人くらい、幼い頃遊んだ共通の人物と繋がりがあるような気配はあるが、ここも恐らく一線が引かれている。三澤も洸太も他所へ出ている、昔程ご近所事情を聞かなくなった。
俺はつまり、二線目を引いているのか、周りに。
聞かなくてもわかる、二線も行けば「敬遠」になってしまっている事ぐらい。それは、学力だろう。自分が通う学校はぼちぼち良く、この街の外にしかない学校だからだ。
最近はそこまで神経質にならなくなっていた。
知らない情報はつまり「いらないもの」だから自分の手元にない。見知っていた顔も生死すら分からない状態だが、今のところ「誰かが死んだ」という情報を耳にも目にしてないから、生きていると思っている。
別にそれで良い。
もしそうじゃなかったら?と考えても意味は無いしどっちでもいいのだけれども、では何故葵はずっと心に残っていたのか。不可抗力なのだろうか、それとも別の何かなのだろうか。
葵は知らないうちに生きていて、知らない何かになっていた。これを知ってしまったが故にモヤモヤしている。
この霧を晴らしたい、だから知りたいのだろうか。
…しかし、改めて考えると今日の…「分からない」と答えた葵に対し妙に納得した。
そして、更にわからなくなった。
…始めから。
あの出会った日も自分は曖昧なまま、まるで蜃気楼のように徐々に徐々にと気持ちがぼやけてくる。もっと遠くなれば恐らく逃げ水のように、却ってはっきり見えるのだろうか。
逃げ水は脳に作用する磁場の歪みだ。今は、それくらいの気持ちでいる。見えているのに全く届かないとだけはわかる。
「それより洸太、あんた合宿はいつ取る?」
「…合宿?」
「車の」
「…ああ、決めてなかった」
「バイクは早く取れるけど、車は今のうちに入れておかないとねぇ…冬も念の為入れておく?」
…街、関係から1回離れてみる。しかも「免許を取る」という合理的な理由で。
「夏は?」
「まだ18にならないでしょうが」
「…よくわかんないから任せる…でも…早く取りたい」
別に大した理由じゃないけど。
「合宿じゃなくて帰りに通う?」
「あー、そうしよっかな…」
バイトでも本当に探した方がいいのかもしれない。
ふと母親が「何かやりたいことないの?」と、今日は珍しく干渉を寄越してくる。
「…まだ考えてないけど……」
街の外にある無難な大学のパンフでも見てテキトーにピンと来た所に行き考えようかと思っていた。
『現実味が全くない』
と母に告げることはない。
誰か達はよく言う「次の瞬間には死んでいるかもしれないし」とも違う、「未来を見据えないと苦労をする」とも違う何か。
それを手にすることにすら実感がわかない。何が良いか分からないし良かったか悪かったかを判断するのが果たして未来なのか今なのかもわからないけど、今はまず母親とともに居て、学校には三澤がいるし…葵が帰ってきた。はっきり言ってそれで手いっぱい。今か未来は二の次なのだ。
自分の人生を振り返る、つまり回顧をするのであれば今も過去も「ことなかれ」であり、酷く怠惰だった。流されるまま今に至るけれど、恐らく自分は二度、大きな決断をした。
あの公園で一人ぼっちだった葵を見つけたのと、市外の高校を選んだことだ。
それが正解だったのかと「今」考えたらもう、わからない位置にいる。その瞬間だけは間違いなく「未来」のようなものを考えていたはずなのに。
はずなのに?
じゃあ、後悔しているのか?
そんな、今は授業で学んでいない、例えば「哲学」やら「心理学」、この、違いすらわからないままの自分で何かを導き出すことが今出来るとも思えないでいたが。
家に着いて、緊急だったようだ。夕飯のカップラーメンを食い部屋に戻ってから、葵の「女子の制服姿」を当たり前に思い出した。
その葵は仰向けに寝転ぶ洸太に四つん這いで迫ってくる。この、今寝ているベットの上の現象だ。
もしも、普通の再会をしていたら…?
自分の手で彼の紅潮した頬へ手を伸ばす。気持ちよさそうに、その掌に手を重ね、薄く笑って「こうちゃん、」と色っぽく名前を呼んでくる…。
想像しようとして自分の股間に触れようとしたが、結局LEDを消したライトしか見えない。
そこから先が全く分からない、いや、この妄想の続きの構成は自分の中で組み上がっているのだ。互いに裸になるだろう、葵がブレザーを脱いで洸太がシャツのボタンを外すかもしれないし、葵も同じく自分にそれをやってくるかもしれない。
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