天獄

二色燕𠀋

文字の大きさ
上 下
20 / 48
アンビバレンス

6

しおりを挟む
「…ピルケースは俺も良い案だなって思ったよ。半井、ロゴ作りたいって言ってたよね」
「あ、うん、そーなんだよね」
「デザインとか決まってんすか?」
「あ、」
「あー、俺ちょっと考えたんだけど実はさ。ちょーっとさっき照れ臭くて言えなくて~」
「え、そーだったの!?」
「うん~」

 にへら、と笑う半井についつい綻び「何それ超見たいじゃん、言ってよ!」と軽く腕を叩く。
 「いや~ホントに?ホントに?」と楽しそうな半井の前に、ハゼはすっと紙と鉛筆を出し「はいどうぞ」と奨めてくれた。

 「んっとね~」と半井が紙に向かうと、「他グッズとか出してる?」とハゼに聞かれ、「ああうん、出してるよ、半井作で」とスマホの物販ページを見せる。
 ハゼはまるでバグのように固まった。

「なにこれ、猫?犬?チクワ?」
「わかんない…」

 「ダメだな描けない!」と、半井も半井だ、物凄い早さでギブアップしたらしい。

「…俺のイメージと鉛筆力が伴わないかも、ちょっと待ってね」

 そして半井はスマホを操作し始める。

「てゆうか連れて来たってことはこの人リーダー?」
「あ、いや、決まってない」
「え、そうなの?なんで?」

 「そー」と上の空で言いながらケータイを弄る半井をよそに、ハゼから「あんたモテる?」と、めちゃくちゃ突拍子も何もない質問が飛び、意味がよくわからなかった。

「え、全然。見える?」
「女子ウケしそーな」

 「あったぁ!」と半井は嬉しそうに、バッとスマホ画面を見せてくる。
 …どうみても何かの当たり前なデザインフォントでしかなかった。

「いや、え!?」
「そうくるか~」
「いや、こんなような、なんて言うかもっと違うけど俺の画力では無理っていうか」
「は、ははは、」

 そんなカオス現象に、強面ハゼは少し幼く笑った。

「もう、これでいいじゃん」
「えぇー…」
「か、これをよーく見ながらあんたが描いた微妙なオリジナリティとかどう?物販見たけど多分、らしいんじゃない?」
「いや違うんだこれじゃ微妙に俺が言いたい感じじゃないんだ」
「そこんとこどー?ちなみにフォントじゃぶっちゃけなんか、原価と売値0なんじゃないかって思う、買うのファンなら。納得しないよなと」
「う~ん……」
「俺が描いてみるってのも、なんか違うしなぁ」
「それ!」
「うんそれ!の方が多分良い!」
「…マジで?は?あんたらそれでいーの?」

 言ってみた本人が「いや…え?」と混乱している。確かにそうだろう、しかし半井ではダメだとわかった。
 勿論今まで地上に出て5年、黒田や真鍋くんや自分でもダメなのだから半井でやってきたのだ。

「…マジかよまぁ、うーんじゃあなんか動画とかない?バンドイメージ的なやつ立てたいわ、モヒカンと薄い系じゃ全然わかんねぇ、カオスだわ」
「あ、多分オルタナだとは思う」

 説明しつつスマホの音源を開いて渡し、しまった、よく考えたら貴重品を渡していいのか?と過ったが、ハゼが「ん、」と無愛想に受け取りイヤホンをしてしまったのだから、引っ込みもつかなくなる。

 「これあんた?歌うまいね」と片耳にイヤホンをし、半井を手でしっしとやる自称年下。しかし半井は嬉しそうに「はーいクローズしとく~」と緩い。

「いやあんたいま使えないから帰っていいよ。籠って練るから。あ、薬はいる?」
「いらな~い、今ハッピーだから!」
「あっそ。じゃ、あんたは残って、話しもしたいし。
 あ、名刺ね、はい」

 鉄製の、シンプルな名刺入れから一枚名刺を渡された。

 アイテムショップhaze:クリエイター波瀬亮太

 器用に、曲を聞きながら鉛筆を持った波瀬を見て「わかった、あとで連絡よろしく!」と、半井は店から出て行ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

学校の脇の図書館

理科準備室
BL
図書係で本の好きな男の子の「ぼく」が授業中、学級文庫の本を貸し出している最中にうんこがしたくなります。でも学校でうんこするとからかわれるのが怖くて必死に我慢します。それで何とか終わりの会までは我慢できましたが、もう家までは我慢できそうもありません。そこで思いついたのは学校脇にある市立図書館でうんこすることでした。でも、学校と違って市立図書館には中高生のおにいさん・おねえさんやおじいさんなどいろいろな人が・・・・。「けしごむ」さんからいただいたイラスト入り。

HalcyoN

二色燕𠀋
BL
 夫の死を夢で知り海岸に行くと、海に1体の死体が漂っていた。  それが夫であると悟り、夫のもとに行こうと、いつの間にか鳥になっていた。 by アルキュオネー(ウィキペディアより少しいじり転載) 別編:TransienT

stay away

二色燕𠀋
BL
── 離れろ、近付くな、動くなよ。  神は、ゲイだ。  わからない、わからないよ、どうしよう、どうしようか。── ※天獄別編 Trance & R-ZE

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

処理中です...