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「W」
「W」一気読み用
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プロローグ
終わりの始まり
悲鳴と共に目が覚めた。
現状を理解できないまま辺りを見渡すと、そこには血まみれで体の一部が切断されている男と泣きじゃくっている女性がへたり込んでいた。
混乱して息もみだれている、落ち着かなければいけないと、状況整理する為にも僕は少し目を閉じた。
たった数秒であるが、えらく長く感じるまぶたの中の暗闇に、カナデは走馬灯を見た。
僕はカナデ、一般には裕福とよばれる家元に生まれ・・・
・・・・僕には双子の弟がいて僕はその双子の兄であって弟のヒビキは僕よりちょとコミュニケーションをとるのが苦手でいつも一緒にいる、かわいいやつで・・・
・・・・大学に入って友達が沢山できた。まずはマコト、マコトは馬鹿が付く正直者で嘘もつけないまっすぐで正義感の強い友達で、次にリュウイチ、短気だが面倒見のいい頼れるやつ。次にユウタ。引っ込み思案だが、よく頭が働くインドア派な性格だけど男友達たちではみんな仲がいい。リナは、泣き虫だがとても気のきく優しい子だ。スズカはリナの大の友達で、ものすごく好奇心旺盛でアグレッシブな女の子。そしてアイは付き合い始めて間もない僕の恋人だ。時々何を考えているか分からないけど、そんなミステリアスな彼女でも意外としっかりしている大好きな彼女だ。そのサークル友達と・・僕と・・・。
「確か、僕と弟のヒビキと友達と旅行にいく為に、ボートにのって波止場でボートを止めるときアイの帽子が風でとばされたのを皆で見ていた。
離島の山奥のあるぼくの家族の別荘である洋館へきていて・・・
沢山あるいて汗をかいたのでシャワーを借りようと部屋に入り、それから・・。」
目を開けると何が起きたか少しずつ理解していくなかで、今まさに大変な事になっていることをようやくカナデは意識できた。
目を開けてもそこに広がる光景はまだ、瞳のおくにあった走馬灯の続きとしか思えない。
その瞬間からカナデは
「終わりの始まりがきた」ということだけはしっかり理解した。
~~~~~「 W 」~~~~~
~~~~~~~ day1 ~~~~~~~~
目の前で血まみれになって倒れていてそれに体の一部が無くなっている。彼はカナデと一緒に旅行にきている友達の内の一人のマコトで泣いているのはアイだった。
アイは僕をみて恐れている様子だし明らかに避けるような態度だ。僕はマコトにたいして「大丈夫か!」と、
大声を出しながら状態を確認するが嫌な予感通り彼は死んでいることが判明した。悲鳴と大声を聞いて他の旅行の為に一緒にきていた友達も、この多目的ホールのぼくらの元へ駆けつけてきた。
リュウイチが大声でどなりこみながら僕たちに声をかけてきてが、その質問の内容が信じられないもので僕は二度驚いた。
「奏が・・奏がマコトを殺したの・・?」
何を言っているんだ!!
確かに今まで気を失っていたかもしれないが僕がそんな事する訳がない。動機もないし、友達なのに。
「アイ、訳の分からない事をいうな!すぐに警察に連絡して、きてもらおう」ユウタがそういい、リュウイチは乱暴に僕の身柄を押さえた。
冷静なリュウイチは携帯があるじゃないかと携帯電話で警察へ電話をかけようとしたとき奏は言った。「僕も訳が分からないんだ僕じゃない信じてくれ!
殺人だというなら犯人は他にいる!」
「どういうことだ?ちゃんと説明しろ」リュウイチはすごんでいる
僕はここにきてからの経緯を混乱している皆の前でわかるように、この屋敷についてからの経緯をわざとらしく説明しはじめた。
「船で移動してこの離島についてから皆で少し山を登った、屋敷についたときには汗をかいていたのでシャワーを浴びようと中へすすんだとき疲れていたのか意識が朦朧としたんだ。だから皆に悪いけど先に個室で少し休んでいた。」
「そして悲鳴が聞こえて目が覚めたらマコトが血まみれで倒れていて、そばにはアイがいたんだ」
皆は静まり返って話を聞いていた。
リュウイチは冷静に「それでも人が死んでいるんだ!警察に来てもらって話をしたほうがいいだろ!」
皆も同意だった。カナデは納得がいかないなりにも、自分じゃないと言い張るが警察を呼ぶ事には賛成した。
だが、「まじかよ・・・。」リュウイチが怒りながらも同様した様子で警察と話しているようだ。電話はつながったが嵐の影響でこの島には少なくても早くて3日は様子を見なくてはいけない
タイミング悪く大きな台風がきているようで遅くて1週間は船をだせないみたいだった。「もしかしたら事故かもしれないし」リナは静かに言う。
リナがしゃべり終わると同時にスズカは怖い事をいいだす「呪いよ!殺人じゃないってならこの館のあの話にでてくる化け物の呪いでしょ!!」
全員がパニックになっている、幸い館には食料もあるし人数分の個室もある。嵐もしくは台風を凌ぐことはできるが警察は来ない。ぼくは皆に落ち着いてほしくてこういった。
「わかった皆きいてくれ、ここは僕の家族の別荘だ、責任をもって僕が怪物がいないことや呪いのことも、マコトは事故だった事を証明してみせるから」
ユウタはとがった口調でカナデの言葉をさえぎった「ふざけるな、お前がやってない証拠があるわけでもないだろ!殺人だったらお前じゃなくてもメンバーにいることわかってて一緒になんていられるかよ。それにマコトの死に方は異常だ!俺は警察がくるまで部屋に閉じこもるからな」
そういって、さっさと個室のほうへいってしまった。皆も同意見のようでそれぞれ急いで個室にこもって鍵をしめてしまった。
それでもカナデは決意していた。「怪物なんていないし、呪いもない。そんなバカな事が。。マコトの死に方は事故じゃないのが明らかだし犯人は僕じゃない以上犯人は他にいる。必ず真犯人をみつけだしてみせる」僕もいったん整理する為に部屋で少し頭を休めよう。
カナデはバルコニーにある書斎のドアノブが開いているのでそこで休む事にした。この館は奏の家族の別荘だし、
何度も家族で訪れているので館の作りは覚えている。それでも奏はこのとき何度も違和感を感じていた。「ぼくもマコトが死んで悲しいし、怖い。
それに何だかもの凄く疲れている。少し眠ったら皆が落ち着いた頃に話をしにいこう」
時間がどれくらい経過したかわからないが全然休んだ気にもなれないような素振りのカナデは、
だるそうに起き上がる。
カナデはベッドの上で少しぼーっとしながら目を開けた時、戦慄が、寒気が背中を襲う。まず目に入ったのが休む時、書斎の部屋にはいってベットに横になったはずなのに
奏が辺りを見回すとそこは知らない子供部屋だった。あたりには子供が遊ぶ玩具が散乱している。それに、、、
「それにこの部屋からナニカの気配を感じる・・・。」
奏はここにいちゃいけない気持ちでいっぱいになった。勘違いであってほしい、勘違いじゃなかったらどうしよう。そう考えながら部屋を早くでないといけない焦りで心臓が今にもどうにかなってしまいそうな様子だ。
その時、ベッドの近くから静かな息づかいが聞こえた。かすかに、一瞬だが聞き間違いなく「(息づかいだ・・。)」
カナデの緊張はピークに達したが相手に悟られないように部屋をでようと、最初で最後の冷静さでドアノブに手を伸ばしたがその時
悲鳴が聞こえた。その声には聞き覚えがあった間違いない「アイだ!なにかあったのか!?」カナデは一瞬自分の緊張すら忘れ心配になりドアノブをひねったが開かない。
こわくなってドアノブのあたりを見回すと不思議な金属のパズルのような鍵がかかっている。
(縦横移動自由、重なりや回転は不可、星マークを星マークへ移動できたらクリア)
驚いたカナデは我に返る。
ズズズ・・。
にぶい音が近くから聞こえた。扉の向こうではなく、この部屋で聞こえた。カナデは恐ろしくて後ろを振り返り周りを見渡す事はできないでいた、(後ろを向いたら最後
もう生きて戻って来れない)カナデは恐怖でそう思ってしまいパズルを解く事に集中した。
焦って冷静にパズルを解けない間にも近くからする音が次第に、大きく大胆な音をだして近づいてくる・・・。廊下の外では悲鳴が聞こえたっきり何も音がしなくなっていた。
外も中も気が気じゃなくなり、頭がおかしくなりそうな状況でカナデはやっとの思いでパズルを解きロックを解除できた。木製でできている扉の中からとても似合わない機械的な音でロックがはずれる音が聞こえた時、部屋の中の音は止まっていた。カナデは急いで扉をあけて勢いよくドアをあけて廊下にでる。
「やった!あいた!」
開けたら閉めるという一連の動作で、つい後ろを振り返り扉に手をかけた時、彼は見た。
自分の振り返った目の前にソレは音もなくじっと立っていた。カナデは声もでず、ソレが何なのかも確認できないまま恐怖に身をまかせて思い切りすぐ扉をしめた。
その直後扉からウィーンカチャカチャ」とまたも扉にそぐわぬ音が聞こえてきてカナデは少しほっとした。「そうだ!アイを探さないと!」
どこのか、わからないうすぐらい廊下を走っていたら人の声が聞こえてきた。
廊下おくには階段があり急いで降りた。皆が集まっていてその場所は食堂の奥にあるキッチンの食料庫だったことにカナデは驚いた。
おそる、おそる明るい食堂のほうへ行くと、皆がそこにいた。
皆が集まっている中にアイの姿とユウタの姿が見当たらない。
カナデをみつけるなりリュウイチがくってかかる「またお前か!何をしたんだ!」カナデはたった今起きた事、見た事を皆に説明して危険人物がいることを必死に伝えた。
リナとスズカは涙目になりながらおびえて、リュウイチは静かに「まじかよ・・・。ユウタとアイはまさか・・。」といい、彼の目からは光が消え失せた状態だった。
このとき一瞬、止まっていた時を動かしたのはリナだった。もう嫌だと泣きながら、嵐とわかっていても館を出ようと入り口のほうへ走って行く。
カナデもリュウイチもスズカも逃げ出したい気持ちでいっぱいだが今はリナを止めようとすぐに追いかけて玄関ホールにでる。
リナが扉のドアノブに手を掛けたとき、
リナはこの世のものとは思えない悲鳴をあげた。体をぶるぶる振るわせ、白目を向き泡をふいても扉のドアノブからは手を離さない。
その握った手からは「ジュー・・」と焼ける音が聞こえ、肉が焦げるような臭いがすぐホールに立ちこめた。
今起きている絶望や不安を混ぜ返したような臭いが全てがむせかえって吐き出しそうな空気につつまれていた。
全員何が起きたかわからないまま、声も出せず、
その場から一歩も動けないままリナの死を、ただただ見ているしかなかった。
日がすっかり沈み夜になり、気づかないうちに壁にかかったロウソクに火が灯る。カナデ達のパニックなんて知らないといわんばかりに、
時計の針達は真夜中へむけて足を進める頃だった。
~~~~~~~ day2 ~~~~~~~
全員その場でリナが倒れるまでぴくりとも動く事ができず恐怖に支配されていた。
スズカは声もでないままその場に立ち崩れる。リュウイチは目を伏せ、カナデは目の前が真っ白になっていた。「どうなってやがんだ・・。」リュウイチは言う。
その時、ふとカナデはリナが倒れている側に唯一玄関ホールにある小窓に目を移すと、そこから海が見えていた。「あっ」
すぐに違和感の正体に気づいた。「ボートがない」
この館に辿りつくまでには本土からボートにのり波止場にボートを止めちょっとした階段を登り、登りきったところにある。来たときにはアイの帽子が残念にも海風に煽られ飛ばされていたのは記憶に新しい。
海からはこの大きな館でも屋根などの一部しかみえないくらい、木々に囲まれまるで隠しているかのようにヒッソリと建っているのだ。
小窓からは普段なら波止場が見えるのでボートの状況も見えていたはずなのだが、街頭が照らしている波止場には見慣れたボートはなかった。
リュウイチは胸騒ぎが止まらなくなっていた。「畜生。化け物が本当にいるのかよ、くるならこい!全員殺してみろ!俺はここにいるぞ!」リュウイチは大きな声で叫び続けたが
返してくれたのは、化け物の返事ではなくシクシクと泣き続けるスズカの声だけだった。
「ここは、危険だ!ユウタやアイを探して合流しよう、そしてどこかに助けがくるまで立てこもるんだ」カナデが頼もしくみえた。リュウイチが怒りが収まらないままカナデに殴り掛かろうとした時、カナデの背後にあるガラス張りでできて中庭が見える景色が目に入った。リュウイチはカナデの胸ぐらをつかんだまま振り上げた右腕を止めたまま、じっと
奥にある廊下をみていた。「お、おい。化け物ってもしかしてあれか?」奥にある廊下の窓からこちらをみつめて動かない異形の人形のようなものが居るのが見える。いや、置いてある?
そのときその異形のナニカは大きな異形の薪割り斧をもって動き出した。明らかにあのままいけばこの玄関ホールにたどり着く。リュウイチは今までの行為で罪悪感の気持ちでいっぱいになったがとりあえず「にげるぞ!」そういってスズカとカナデの腕をつかんでは、向こうの廊下とは逆にある廊下を辿って逃げる事にした。走っている途中もの凄い衝撃音が聞こえたが3人はなりふりかまわず個室の部屋がある別館へ走り、適当な部屋にはいりすぐ鍵をしめた。
3人は息を整え潜む為に息をころした。
「本当に化け物がいるなんて」スズカはそれ以上ショックで声もだせないくらい青ざめてしまっている。「2人を探さないと」リュウイチとカナデは焦る。どうしようかそれぞれが部屋の適当に腰を下ろしたとき、リュウイチは手を伸ばしたとき何かに当たった。
「ユウタのパソコンだ」パソコンにはなにか写っていることにリュウイチは気づいた。ユウタはこの館の秘密をたまたまナニカ見つけてメモしていたようだ。しかし肝心のところでパスワードがかかってあり、いくつかパスを解かないと次へは進めない。3人は部屋に置いてあるてきとうなお菓子や食べ物を食べながらパスワードの解決に努力した。ひとつめの問題は文字や数字ではなく、「なぞなぞ」のような問題だ。
・3Lと5Lの容器がある、それぞれを使用しぴったり4Lの状態の液体を用意しろ
リュウイチはしぶしぶ、ためすと案外簡単に解く事が出来た。すると誰かの日記のようなページにとんだ。
日記を読み続けているとこの館にある昔話しという、よく聞いた噂だったが色々わかってきた所でまたも「なぞなぞ」がでてきた。ユウタはなぜこんな面倒なことをしたのだろう。
・7分と9分をはかれる砂時計がある。それぞれを使用しぴったり20分を計れ。
リュウイチは頭を抱えて静かに「パスぅ・・。」と言い。スズカに代わる。スズカは意外にもこれもなんなくクリアし、日記の重要部分にさしかかった。
とある昔に、富豪一家がすんでいた。その家族はとてもみんな家族想いでした。
ある日双子の兄弟のうち兄がイジメに合い自殺してしまった。
「家族はとても悲しみました。次は自分の番だと恐れ始めた弟は気がくるい始めました。
弟は一晩で家族全員を無惨な方法で殺してしまった。兄弟は年をとっても見た目が子供のまま年齢を重ねるという発育障害。
弟は家族に秘密の癖があり、その癖は命をうばってしまう事だ。はじめはストレス発散の為に虫や植物、次第に興味が広がり犬や猫と動物に対象が移り実験までしてしまうほどだった。
あるとき、動物をつかった実験をしているところを兄に目撃されてしまう。いじめられているが唯一同じ境遇にいた兄は絶対的な味方であったが、これを機に兄にまで裏切られると焦りだした弟は兄だけは敵にしたくない思いである計画を思いつく。」
「なんだこれは?」絵本かなにかの内容の様にも感じる内容に、皆はそろって息を呑む内容だった文章はここで終わっている。
何かが起きている。そしてこの館には得体のしれないナニカが潜んでいて皆はきっとそれに巻き込まれている。カナデは焦りを感じた。
「とにかく、ユウタとアイを探さないと、だが扉の外にでるのは危険そうだ。どうする?」リュウイチは困りきった顔で言う。精神的にも肉体的にも徐々に皆は疲弊していった。
そのとき上の階からピアノの音が聞こえてきた。皆はびっくりし構えた。音は何かを弾くというより鳴らしてしまったかのような「ジャーン」という音だけなってすぐに静かになった。「もしかしてさっきの奴じゃ・・それとも。」スズカは不安そうに言う。「とにかくここを出るしかねえだろ」リュウイチは意を決して、ついには恐る恐る息を殺しながら扉を開けて隙間から目だけで廊下を追う。
あたりは静まりかえっている。
「さっき音がなったのは上だが、あいつが追っかけてきてるなら1Fだ。どうする?」リュウイチは振り返り皆の意見をきいた。リュウイチの問いにカナデは悩みながら答える「あれから結構時間もたったよね。どうしようか・・。」
「どうするんだよ」リュウイチはふたたび廊下に目をやると何かが凄い勢いで扉の前を横切る。「うわっ!!」驚いて後ろに飛び退ける。ふわふわしたワンピースのようなものが見えた気がしたと思い返してる最中すぐにカナデ達が来た道の方角から
「ゴッ」「ゴッ」と何回も何かを叩き付けるような音がきこえる。
皆がどうしたと心配してる間にもリュウイチはすぐに今通ったのはアイではないかと思い、皆に「いくぞ!アイだ!」といいアイを追いかける為に全員で勢いよく部屋を飛び出した。
部屋をぬけてふわふわした服がちらりと視界にはいるうちに声をだした「アイ!待ってくれ俺たちだ!」
リュウイチの声で、ふわふわした動作がとまった。
「皆、怖かった!会いたかったよ。」とアイがそこにいた「ピアノの音はアイがやったの?」カナデは質問するが「それどころじゃないよ!廊下のほうから聞こえるでかい音は絶対あいつだよ早くにげよう!」スズカは焦って皆もそれには同意だった。「このままじゃ外に逃げれない以上隠れきるのは難しい、何か武器が必要だ」カナデが提案し、リュウイチも同意する「キッチンにいって武器を探そう」そういうと
一行は階段を使い二階へ移動した部屋に隠れるか悩んだがさっきの音と今度は違う音が下の階から近づいてくる、きっと追いかけてきているに違いない。部屋でやりすごすのは危険かもしれないと判断して
二階の廊下からキッチンへ向かうために廊下にでる。廊下を走る途中嫌なものを見つけた。
腕が落ちていた。スズカは「うっ」と口を押さえる。廊下には落ちている腕を中心に天井や壁にまで血がとびちっていた。この腕時計と服は・・・
皆はすぐに気づいた「ユウタだ。」ユウタのデジタルの腕時計と今日着ていた服だった。
ユウタはもう駄目かもしれないと全員思ったがそこで立ち止まっている時間はないと焦りながらも静かに大きな玄関ホールを目指す。玄関ホールにつながる扉にたどり着き、リュウイチは「いいな?あけるぞ」そういいそっと扉をあけようとするが開かない。「なんでだよ!」リュウイチが癇癪を起こしているときカナデはふと後ろを見るとアイは何かをみている。
「アイ、どうしたんだ?」アイは何も答えてくれない。無理もない。あんなに怯えていたのだから言葉すら失ってしまったのかと思ってしまうカナデだった。スズカも気になって「何をみているの?」と訪ねると
スーっとアイは何も言わないまま指を指す。
アイの指を指した方向に見えるのは窓からみえる中庭くらいだ。「だからなんだよ!」リュウイチは怒りっぽく訪ねようとしたら「シーー!」アイが一言だけしゃべった。
全員で窓をそっとのぞくと、中庭がみえた、暗い中庭のモニュメントの付近だけ明るさがありまるで闇に残された一つの希望みたいにみえた。
その奥で何か動いていたように見える。
「アイツだ・・・!」リュウイチは中庭の奥にある1F廊下の窓をじっと見つめる。何度も何度も、あの斧を振りかぶってるアイツを見つけた。その得体のしれないやつは斧を振りかぶるのをやめ何か地面から掴みひきずりながら静かにさっきカナデ達がいた別館のほうへ歩いて行った。
「つまり後ろからここにくるのも時間の問題じゃないか」焦りながらリュウイチは、開かない扉に手をかける、「鍵か?もしかして」リュウイチが不満そうにいい「スズカ、ヘアピン貸せ!」そう言ってスズカから乱暴にヘアピンを取り、鍵穴にさしこみ器用にまわす。「カチャリ」と静かに音はなり扉の威圧感はなくなった。
「本当に鍵がかかっていたなんて」「でもこれで向こうに行って、ここの扉を封鎖できる。あいつはこっちにこれないぞ」リュウイチは扉をあけて大きな玄関ホールにでた。全員が扉を通過した時、後ろのほうから奇麗なピアノの音色が響き渡る。何かの曲なんだろうがわからない「あのやろう!楽しんでやがるのか!ふざけやがって」
リュウイチはずっと怒りっぱなしだったが冷静だった「武器をとりにいくぞ」階段をおりてまっすぐにキッチンへ全員でなだれこもうとするがカナデは1Fの渡り廊下のほうへ走った。「こっちも閉めれるかも!」
1Fの渡り廊下の扉も同じくして鍵がついていた。これで閉じ込めれたのではないかと少しホットする。
館にたどり着いてから何も食べてないし寝れてない、武器もないのでキッチンへ行き色々と準備することに集中した。「とりあえず包丁とかは全部使える物は持っておこう」そう言いながら冷蔵庫にあるものに手を伸ばし肉やら果物にかぶりつく、少し安心したのか一行は、うとうとし始めた。
「さすがに寝ないってのは無理だろ」順番に見張りながら少しでも寝よう。」そういいリュウイチが最初の見張りをかって出たのでみんなは少し眠った。
カナデは夢をみた。
「さっきのやつが手招きしている、何も喋らないけどずっと、こっちへ来いそう言ってるかのように見えた。奴の元へおびき出され殺されてしまう。そう思う夢だ。続きがあってアイツは気付くとずっと僕を追いかけている。僕の友達を皆殺していき、僕が一人ぼっちになるまで・・・」
「おい、、、」
「おい、お前のばんだぞ」
リュウイチに起こされたカナデは冷や汗でびっしょりだった「ああ、ごめんよ」そういって見張りを交代した。リュウイチは糸がきれたようにストンと、すぐに眠りについた。カナデは今見た夢をぼーっと思い返していた。そのとき急に違う事を思い出した。
「・・リナ?」「それにマコトは・・」
そう、あの広い玄関ホールから外に出ないのは入り口の扉に罠が仕掛けられていて出れないからだ。なんでそんな事わかるかというと「あの扉でリナは死んだはず・・」
玄関ホールで死んだはずのリナの死体が無かった事にカナデが気付いたのにリュウイチやスズカは忘れていた。そんな異様な状態を思い出している時だった、急に眠気に襲われたカナデは自分のほっぺたをつねったりして我慢していたが限界になって意識が遠のいていた。かすかに(やばい)と思いながらもあけた目の前にはキッチン入り口付近にリナがにっこり笑って、たっているように見えた。そのままカナデは意識を失ってしまった。
「おい!」
「おい!ふざけんな!」
バシっとほっぺたを何かがぶつかる。自分はこんな勢いでつねった覚えは無いと少し混乱しているとリュウイチがすごんで言った。「お前の見張りの番だろうが!なに寝てんだよ!それに、それにスズカがいねーぞ!」
カナデが眠ってしまって、気付くとそこにはスズカの姿だけなかった。
こうして危険な状態の中またも3人になりスズカを探さないといけない状況になり、まったく事態がいい方向へ進展しない状況に疲労は回復しなかった。
スズカがいなくなったのでその原因と、スズカを探す事にした。
辺りは雨音は以前強くなる一方で、外では3日目の朝を通り過ぎた頃だった。
~~~~~~~~~ day3 ~~~~~~~~~~~~
カナデは胸の内につっかえている不安を吐き出しそうになりながらも、もしかしたらヤツの仕業かと怯え皆でホールに出る。ホールは静かに皆を迎える。「ホールにはいねぇ、もしかして外にでたのか?」リュウイチが外の様子を伺おうとドアの扉に向かった時、カナデは叫ぶ。
「リュウイチだめだ!扉に触れちゃいけない!」危うくリュウイチはドアノブに触れる寸前だった。その時ようやく気づく。
「リナが、リナもいねえ!」
あまりの不自然さと、違和感、非常識、異常事態が相次ぎ完全に皆の感覚は狂っていた。「多目的ホールのほうも見てみよう!」カナデは急いで多目的ホールへ向かう。扉を慎重に調べながら多目的ホールに全員入ると、そこには・・。
何もない。
異常事態とは何か?そう言わんばかりに机や椅子が奇麗に整列して列をみださないまま凛としている。その様子は「いつ私たちの出番がくるのか」と待っているようだ。「ここにもいない?どこなんだ?」全員で踵を返し今来たばかりの道を辿りホールへ戻る。この間1分も満たない短い時間の中で何かが変わる。多目的ホールの扉をあけて初めて知る真実がある。
扉を開けてすぐ目に入るのはガラス張りで出来た、大きな壁。その丸見えの壁から見える向こうは奇麗な中庭で、中庭の真ん中には大きな騎士の石像が見張りをするようにいつもは佇んでいる。でも今日は違う。今日はその石像が構える異形の薪割り斧にズタボロのスズカが上から落下したかのように突き刺さっていたのだった。
体中穴だらけになるほど、なんども異形の薪割り斧の槍の部分を突き刺したような傷をおい、
これ以上滴ることがないほど血液が流出し枯渇していたようだ。アイは目を伏せその場にしゃがみ込み、カナデとリュウイチはまさかと思い廊下の扉の鍵をすぐにチェックしにいった。
すると「鍵がかかったままだ!?どういうことだ?」扉は昨晩逃げる際に鍵をかけたままだった。鍵はこちらからしか掛けれない仕組みになっていて、ヤツはこちら側には来れないのにスズカは向こうで死んでいる。ということだった。スズカを注意して見てみるとスズカと石像の下には血で作ったような池みたいに血溜まりができている。
そこには、手帳らしきものが紛れ込んでいたのかすかに見えた気がした。それにカナデだけが気付いていた「手帳がみえる!なにかヒントがあるかもしれない」
しかしいくら武器を手にしたとはいえ相手は得体の知れない怪物だ、ヤツが扉の向こうで待ち構えていると考えただけで恐怖で扉の向こうへは行ける気がしない。
「でも、いくしかねぇよな!」リュウイチが怒鳴る。
「行こう!」カナデがそういうと決意が固まったようだが、アイだけは立ち上がれない。「ここで離れる訳にはいかねーだろ」
「そうだよ危険すぎる」それでもアイは動けずに居た。しかたなく多目的ホールに行き、内側から鍵をかけてもらい「俺たちがここに戻るまで決して扉を開けるなよ!」そう言って二人はアイを完全な密室に残し遂に中庭へ目指す事にした。
中庭には二階側の廊下からは見えるだけで、外に出ることは出来ない。従って一階側の廊下からしか行けない一方通行だ。念のため一階の廊下側だけ鍵をあけて進むことにした。包丁を強くにぎりしめたリュウイチが「ふーふー」と息を荒立て始め「いくぞっ」そう言って勢いよく扉を開ける。扉を開けた先の廊下にはスズカより先に行方不明になっていたユウタの死体がバラバラになってそこら中に飛び散っていた。カナデは「うっ」と低い声をだしてこらえる。「ユウタぁ・・本当にユウタなのか・・・?」リュウイチは残念そうにしながらも辺りをヒントになりそうなものがないか調べて行く。
ここまで異常な状態が続くと、人が死んでいるのにも関わらず感覚が麻痺していく。
廊下には汗や血、木材でできた壁や天井の古くさいシミや思い出と、くさい臭い。そこにはこの夏最後を告げたような、残り香が残っている。耳をこらすと皆で騒いで遊んだ昔の残響が聞こえた気がしていたが、目の前の色鮮やかな幻とモノクロの今の景色が重なった時、無情にも現実へ引き戻され切ない気持ちがこみ上げる予感している最後の夏。
ユウタの一部の近くには見慣れないクローバーマークの鍵が落ちていたのでとりあえず拾っておいた。きっと昨日逃げるときに聞こえていた激しい音は、ユウタを斧で痛めつけてた音だったのだろうと、二人はすぐに感じていた。二人は会話もすることなく目で合図し、構えながら中庭へでる扉を開けた。
そこにも幸いヤツはいない。カナデはスズカの元へ走り血溜まりから手帳を拾う。「読めるといいんだが・・」
「弟は兄を殺した。
そのときの衝動はもう今まで行ってきたどんな実験よりも得るものを感じていた。
弟の衝動はもう止まらなかった。ついには自らの癖と興味を最終目標である人間にしてしまったのだ。
そして、
イジメに関わった者達はこの事件がおきる少し前から全員が依然として行方不明である」
手帳を覗き込んだリュウイチがこぼす「くそ・・嫌なこと思い出させやがって・・。」カナデはどういうことだ?と思いリュウイチに訪ねた「嫌なことってなんだよ?」リュウイチはずっとカナデを見つめ「お前ふざけてんのか、今回だってお前が色々理由つけてあんなに言うからここに来たのに・・。」
「いったい何の話だ?」
その時、別館のほうからピアノのメロディーが聞こえてきた。
「くそ、この話は終わりだ!このまま怯えるのはもうごめんだ!アイツを倒しにいくぞ」
リュウイチはもう止めることができないと直感できるほどの気迫に満ちていた。それにきっと怯えて助けをま待っているだけなら全滅する事になるだろう。そう思ってカナデも、うなづいた。二人は手に持った凶器をぎらつかせ、忍び足でピアノの置いてある部屋へ近づく、扉の前にさしかかった時ピアノの音ははげしく「ボーン!」という和音を立てて止まった。
「いくぞ!」
カナデが扉をあけてリュウイチが部屋へと叫びながら飛び込む。カナデはそれを見た瞬間から急に意識が遠のいていた。目を開けた時、リュウイチの姿はなくカナデを待っていたのは無人のピアノだけだった。
徐々に太陽がすべり落ちて行き、カラスが不安を表すように騒ぎだす頃だった。
カナデはリュウイチを見失い何が起きたか、わからない。でもいつもの事のように少し冷静だった。だがこのままでは命の危険を感じるので今出来る事を精一杯考えた。「何かヒントは!」すこし持ち物を整理したり、うろうろしたりして鍵と手帳がある、あとは今までみた暗号のような話。「これらを合わせて考えてみるきっと何かのヒントになるはずだ。」近くの部屋にリュウイチが居ないか探しながらアイの元へ行かないといけないと思い、カナデは考え込む為にピアノの椅子に腰をかけた。その時ふと目をやった先にピアノの楽譜がある。よく見ると譜面には音符が表記されていなく文字がひたすらに書かれている。読んでみるとおぞましい内容だった。
「弟は家族の皆に秘密の癖があり、その癖は命をうばってしまう事だ。始めはストレス発散の為に虫や植物、次第に興味が広がり犬や猫と動物に対象が移り実験までしてしまうほどだった。
ある時、動物を使った実験をしているところを「兄」に目撃されてしまう。いじめられているが唯一同じ境遇にいた兄は絶対的な味方であったが、これを機に兄にまで裏切られると焦りだした弟は兄だけは敵にしたくない思いである計画を思いつく。
弟は兄を殺した。
そのときの衝動はもう今まで行ってきたどんな実験よりも得るものを感じていた。
「どういうことだ!この内容からすると弟は兄を殺している。」
「だとしたら誰の目線で書かれている物なんだ」
今まで見てきた内容の日記をすべて足すと怖い内容の日記になった事にカナデは恐怖を隠せないでいる。
譜面の最後にはカナデが持っている鍵と同じマークの絵が描かれていて、それはどこかで見た事のあるマークだった。しかしこの時カナデは思い出せないでいた。
「いまはリュウイチを探すのが先決だ!」
その時、カナデの不安はヤツが側にいるというセンサーのように感じていた。(近くに居る気がしてたまらない。)
カナデはそれでも、見つかるまでは気づかないふりですまそうと、そっと全身をセンサーのように歩き出した。いくつか部屋を探していると、最後に入った部屋にはリュウイチが倒れ込んでいた。「リュウイチ!生きてるか!?」カナデはリュウイチのもとへと走り近づく。
「くそ、ふざけやがって・・」
そういうとリュウイチはあごで方向をさす。そこには扉の影で包丁が突き立ったままのヤツが倒れ込んでいた。
「ピアノの部屋にはいった時、アイツは斧を振り回しながら突進してきた。なんとか何回かヤツには包丁で突きを食らわせたがそのままお前をぶっ飛ばして逃げやがったんだ。お前は奴に突進されて倒れてるけど、とどめをさせると思って追ってきたら扉の後ろに隠れてやがったんだ、だから、へへ。このザマだ」
リュウイチは傷こそ深いがまだ生きているそれに、ヤツはもういない。もうリュウイチが倒したんだ。
「けどよぉ・・」
リュウイチは出血のしすぎで喋りきれないまま意識を失ってしまった。リュウイチはUSBメモリを握りしめていた。このメモリを使えるのは玄関ホール二階からいく書斎のパソコンだけだった。その時カナデは思い出す。「そうだ、この鍵のマークは書斎の引き出しの鍵だ!なにかわかるぞ」カナデはリュウイチをおぶさりホールをめざした。
「リュウイチ、しっかりしろ!生きるんだ!」
ヤツのことは気になったが出血も沢山しているし、死んでいるだろうと思い扉をその場から早く離れたい気持ちの一心でリュウイチの怪我の手当の為にもまずはアイのいる多目的ホールへきた。
「アイ?ぼくだカナデだ!リュウイチが怪我をしたんだ開けてくれ」
返事はない。カナデは扉に手をかけると扉のロックはされておらず扉がすーっと開いてしまった。「アイ!何かあったのか!?」部屋には誰も居なかった。
「いったいどうして・・」リュウイチをテーブルの上におろし奥へ進もうとしたとき。
「ドンっ!」とカナデは何者かに後ろから頭を何かで殴られ倒れてしまう。意識が薄れて行くとき微かにぼやけた視界にうつったのは、鈍器をもって息をあらくしていたアイの姿だった。
カナデは眠りについた。
カナデは夢をみた。
カナデは自分がとうとう殺されてしまう夢をみた。
1年前カナデを含むメンバー6人は旅行の為この別荘に来ていた。別荘には昔起きた事件があり夏の肝試しということで訪れていたがメンバーの内、
カナデがメンバーのいたずらにより死んでしまう事件がおきた。(まさに今の状況だな・・)カナデは夢だとわかって何となく目が覚める。意識が徐々にはっきりしてきて辺りを見回すと書斎のデスクに座りながら寝ていた。「それにしてもどうしてアイがぼくを殴ったんだ、それにここは・・」
納得のいかないまま目的地へ来ていたが、ついでにUSBファイルの確認をするためパソコンをつける。手際よく準備を進めるとそこにはムービーファイルがはいっていた。再生をするとそこには今回の旅行の内容である、皆との思い出のシーンばかりが映っている。モニタの中のリナやスズカ、ユウタやリュウイチが元気にはしゃいで僕を呼んでいる。隣にはこの時から恋人になったアイが恥ずかしそうに僕の手をにぎっているシーン等が映っていて、気づくとカナデは涙が止まらなくなっていた。
「みんな・・。」
泣きながらファイルをみていると違和感を感じ始めた。
「こんなシーン知らないぞ・・それにいったいこれは誰がとった映像なんだ?」
異変に気付きファイルを確認しているとテキストファイルで日記がみつかり、内容を読んでぞっとした。内容は弟であるヒビキのものだとすぐにわかった。
「兄貴は死んだ。この館で死んだ。あいつらが殺したんだ。僕の秘密を知られたくないから・・」
続きに目をやろうとした時だった。
かなしばりに合ったかのように全身が固まってしまい動けなくなった僕に、そっと声を掛けてきた人物がいる。
ぼくの目の前のそいつは、意外なやつだった。
夏のむせ返る暑さと陽炎を脳裏に焼き付け、まるでそのまま全ての記憶を全焼させてしまうような暑い夏の頃だった
~~~~~~~~~ Final day ~~~~~~~~~~~~
「やぁやぁ、やっとお気づきかい?」
暗がりの部屋の中、書斎のデスク上にあるPCモニタの光でようやく目視できるほどのあかり。辺りは狙ったかのような闇。
まるでそこから生まれたような存在感で、そいつはそこにいる。
目の前にいるのは殺人鬼の怪物、あの噂の館主人にして何度も話に出てきた例の兄弟の弟と直感で思った。動けない僕に唯一あった動きといえば、この全身を流れる冷や汗だけだ。
「そう身構えるなよ。俺達は仲間なんだぜ?」
「一体何を言っているんだ、それに死んでおらずここに居るってことは、リュウイチやアイは・・。」
暗がりでよく見えないがニヤついた口調なのがわかる。その口調でヤツは云う
「俺は何もしてないぜ?俺はな」
「お前がやったことの掃除。つまり後始末だけだ。」
どういった真意があるのか分からない。分からないがまだ二人は無事みたいな事を言う。だが不安でしょうがないのは変らない。それにヤツは全てを知っているかの様な口ぶりで会話を続ける。
それに僕には襲いかかってこないのも気がかりだ。
ぼくは頭がぼーっとしてる中、何か心のなかで引っかかる物を感じていてそれを探っていた。
「まだ思い出せないのか?まぁいいや、そろそろクライマックスだ。
そのお前が見ている日記の続きを読んではっきりさせるんだな」
このまま何もできず、何もしないよりはマシという想いで、ぼくはヒビキの日記らしき物の続きを読む事にした。
「兄貴は俺を裏切った。いやあの女のせいだ!
アイが兄貴をたぶらかし俺等家族から引き離そうとするからだ、、、。
それを笑って見過ごすアイツ等も同罪だ。兄貴はアイツ等にきっと俺の秘密を話し、唯一仲間だった兄貴もあいつらと同じ所から
俺を見下すんだ。そんなの耐えられない
兄貴には実験台になってもらうよ。この館で事故にみせかけてアイツ等のせいにするんだ。アイツ等を利用してアイツ等も殺してやろう」
「何だって!?」
カナデは戦慄する。
「やった。やってやった。兄貴は死んだ。あんなに血を流して。
温かかった血があんなに流れてみるみる冷たくなって・・
アイに支配される前におれが解き放ってやったんだ、はははは。
アイツ等、馬鹿だな自分達のいたずらで兄貴が死んだと思って自己嫌悪に苛まれてるよ、ははは。
次はお前等だ残酷に殺してやる呪いのようにな!
とうとうこの時がきたよ。兄貴を追悼旅行とか言ったら、のこのこ集まってきた馬鹿なやつら。順番に殺してやる。お前らのせいで兄貴を殺さないといけなくなったんだ
罪をつぐなえ!
今日はリナを感電で焼き殺してやった、肉が焦げて目ん玉が蒸発したようだ。おもしろかったな・・次は誰をやろう」
このあと、今に至るまで事細かに残酷な内容の日記が綴られていてカナデは未だに信じられず鼓動がたかなりっぱなしだった。
文章を読んでいてそこには信じられない内容ばかりが書かれている。特に始まりのほうで僕は死んだ事になっているが、一体どういう事だろうか。
「現に僕はこうして生きている・・・。」
何が起きているかますます混乱する一方で、事件の裏では黒幕が弟のヒビキであることが判明した。じゃあ一体目の前にいるこいつは、、、。
「お前は、ヒビキなのか、、、?」
「ちがう、ちがうよ。」「ヒビキはお前だ。」
「えっ!?」
意味がわからない。そんな唖然としているカナデを男は見つめ語りだした。
「いいか、混乱しているようだがヒビキはお前だ。ソレは間違いない。現にお前はさっきリュウイチにとどめをさして返り血をびっしょり浴びて笑ってたじゃないか。」
「その証拠にほら俺が録画したファイルもそこにはある。だから続きをみろっていってんの」
実はカナデはこの時すでに思い出していた。
カナデの思い出の中身はひどいものだった。吸い込まれるように記憶の中に進んで行く
記憶のなかにはリュウイチがいて、気付くと知らない部屋に僕がいた。
そして。
僕に必死に何かを伝えてるリュウイチを抱き上げ、そっと僕は始めはゆっくりと丁寧に、料理の下ごしらえをするかのように、リュウイチに包丁を突き刺し始めた。
何度も。
何度も。何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。。。。。
夕暮れのカラスが鳴き止まないように、何度も何度も突き刺した。
それでも抱きかかえて息絶えているリュウイチは何故か笑顔のままだった。
そのメモリにある動かぬ証拠と信じたくはない僕の記憶が完全に一致した時、
僕は僕ではなく、ヒビキになっていた。
そう、僕カナデは1年前にヒビキによって殺され死んでいた。そしてこの肉体は双子の弟であるヒビキのものである。信じたくはないが、僕カナデはヒビキの肉体に精神が乗り移っていたのだ。
その事実を受け入れてしまった瞬間電撃が身体中走り「全て」を思い出した。
今回の計画から、殺し方、順番、トラップ。全てだ。
この怪物の正体、そしてヒビキとこの怪物の接点、幼い頃この別荘でよく過ごした。その時から奴は居たのだった。そしてヒビキの残酷性を見抜き「裏の顔」であるヒビキを育てていたのだ。
別荘とはよく言ったものだ。話を全てまとめると、あの「噂」の正体である兄弟は今もここに潜んでいたのだ。正確には「弟」だけ。
弟繫がりであるヒビキは奴と出会ってから、崇拝に似た思いでどんどん歪んだ性格へと変わっていった。怪物であった奴自体は、もう結構な年齢のはずである、そして今「怪物の正体」はヒビキなのだ。
把握した、
認識をした、
そして理解をした。
どうして誰も僕を一度としてカナデと呼ばなかった事も、アイが僕を遠ざけていた事も、
誰かが死ぬ時、僕は必ず意識が無かった。それは肉体の持ち主であるヒビキが行動していたからだ。
僕を追いかける悪夢は、この計画から皆を救いたい思いで抵抗した意識だ、その意識を塗り替えるためにヒビキが僕を追い出そうとする、そういった意味だったのか。
「リュウイチ・・・。」
「邪魔だよ、奏兄さん、、、。」
もうカナデは奏では無かった。ただ結果を見続けるだけの意識になりつつあった。
「さて残りのアイを探しに行かないと、、クククク。メインディシュだ、あいつは特段ひどい方法で殺してやらないとなぁ。」
「行くのかいヒビキ。」
「あぁ・・」
「俺は、モウ役目をヲえた。トしも年だ、ソしてこの傷ナガくは持つマい。サァ、オレヲコロシテ、ツギノ、ホンモノノカイブツニ、オマエハナルノダ」
「ひひひ、わかってるって。じゃあな化け物さんよ」
ヒビキは壁に飾ってあった猟銃に一発の銃弾を込め、奴の頭をじーっと狙いを定め、躊躇なく引き金を引いた。
ヒビキは何も感じてない。奏も同時にそれを共有している。猟銃を捨てヒビキは部屋を後に、アイを探しに出発した。
この時、ヒビキも奏もアイの居場所をもう知っていた。そしてアイもヒビキでありながらも、奏であることも「最初から」気付いていた。だから皆でいる時はアイはヒビキを静かに監視し、一対一にならない構図を作り続け逃げていた。一番初めにマコトが死んでいた現場での発言は、すぐにヒビキではなく、死んだはずの奏の意識へ対しての質問だった。
私達を恨んでいるの?それとも私を恨んでいるの?ヒビキを止めに来てくれたの?そう思っての発言だった。
外の嵐は止み、爽やかな風が一吹きし、清々しい空気に変化し何もかも終わりを告げるようになった頃だった。
アイと奏が結ばれた記念の大樹が洋館の近くの崖近くにある。その大樹には上陸した際に飛ばされたアイの帽子が引っかかっていた。アイはそこに佇み、その時を待っていた。
間も無くして、ヒビキはその大樹へ辿り着いた。
「このクソ女よくわかったな?そしてここへよく来てくれた予定通りにな」
「ねぇ、ヒビキそして奏、私達を恨んでいるの?そしてここに来たって事は、そう、、やっぱり私で最後なのね。私知ってたわ。ヒビキ、あなたの性格もこの旅行の事も。やっぱりあなた達は双子の兄弟なのね。奏が助けに来てくれたのね。」
「はぁ?そんな訳ねーだろ、計画は完璧だった。奏兄さんを奪ったお前ごときに看破はあるまい」
ヒビキは怪物の象徴である異形の斧を持っていてそれを構えた時だった。アイは無言で片手をスッとあげストップの意を表した。
少し間を置き、アイはポケットから手紙のようなものを取り出し、ゆっくり折り、紙飛行機を作ってヒビキへふわっと飛ばした。そしてアイは語り始めた。
「あのねヒビキ、その手紙は匿名希望の方から私宛へ届いたものなの。今回の旅行で全員死ぬ。どんな手順でどんな殺し方、どんな順番かはわからない。でもアイ、きっとお前は最初と最後だ。」
ヒビキは紙飛行機を広げ、手紙の内容を読み始めた。
「それだけは分かる。そしてこの旅行を止めると、きっとお前等だけでは済まない。関係ない人間がこれからも少しづつ消えていくだろう。もし、止めれるとしたら君だけだろうアイ。お前に覚悟はあるか?覚悟があるなら、この話をこれで、できれば終わりにしてほしい。
兄弟ってのはな、兄貴は弟を守らなきゃいけない、弟は兄の背中を追わざるえない、一概に言えないがこんな特殊な血を引いた俺達ならな。アニキは、俺を置いて先に逝ってしまった、俺はアニキを救えなかった。なんでこんな広い世界で俺達なんだ。俺は世界を憎み怪物を選ぶ事にした。そして、後の怪物を生んでしまった。次の怪物を止めれるのはアイお前だろう。覚悟があるなら来い、待ってる。」
「馬鹿な!一体・・これは」
アイはヒビキの会話を切って、話し続けた。
「ねぇヒビキ、なんで、あなた達兄弟を世界が選んだんだろうね。それともあなた達が選んでしまったのかな?
皆を殺した事をとても許せないわ、そして大事な私の恋人である奏を殺した事も、ううん、何より、分かっていて誰一人救えなかった私自身が一番、私は許せないわ。私も世界が憎い。きっとあなた達兄弟も私達ももっと違った世界があったと思うの。皆が笑える世界。
「マコトが死んだ時、気付いたの、あなた達は重なってる、そうダブって見えたの「W」。この話は続きがあるの。
そしてこれでお仕舞いになるわ。手紙の主が言ってた通りよ。私、アイ「A」からきっと始まってしまったの。
そして手紙の主正体「X」、首謀者であるヒビキyouである「Y」そして「Z」。
ねぇ「Z」の意味を知ってる?最終・最高・究極などに使われるわ。他にはこう、、、「これよりひどいものはない最低最悪のという意味」つまりここで終わりよ。」
「・・・・。アイ?」
「ヒビキ、いいわ。私で終わりにしましょう。恨んでいいわ、私もこの世界を恨むから、、、さようなら。」
アイは大樹の裏の崖へ向かって歩き始めた。
「駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!!それじゃあ俺の復習が!計画通りにはならない!!!!勝手に死ぬな!!」
ヒビキは斧を振りかぶってアイを走って追いかける。アイに追いつき斧を振りかぶるのではなく、、異形の斧を捨て、アイをぐいっと引き止めた。崖から落ちるギリギリで引き止める。アイは半歩、崖から足を出している状態だ。
アイを思い切り引き寄せ、ヒビキが崖から落ちる。
すれ違い刹那。聞こえた。
「アイ、死んじゃ駄目だよ。僕が終わらせる。」
アイが涙を流し笑顔で言う。「そう、、行くのね。ありがとう奏。出会えて嬉しかったわ。」
「カナデェェェェ!許さない!!この俺があぁあぁ」
最後の断末魔が聞こえ遠のいて行く。
「なぁ響ごめんな。こんな兄ちゃんで、でもこれからずっと一緒にいるから、僕達は兄弟だろ?
こんな運命だったけど今度はちゃんと守ってあげるからね。」「ずっと一緒さ約束だよ兄さん」
夜が開け警備隊、消防団員、救急隊員が船でこちらに向かっているのが見えた頃だった。
愛は深呼吸をして、歩きだし、「異形の斧」を拾い、ひきづって進む。
愛が振り向いた時、大樹からは帽子が消えていた。空は雲ひとつない綺麗な朝日が顔だしている。
「ねぇ、次は皆違う形で、、、笑顔で会えるといいね、、、。」
「そうね、今の私には朝日が眩しいわ。」
end
終わりの始まり
悲鳴と共に目が覚めた。
現状を理解できないまま辺りを見渡すと、そこには血まみれで体の一部が切断されている男と泣きじゃくっている女性がへたり込んでいた。
混乱して息もみだれている、落ち着かなければいけないと、状況整理する為にも僕は少し目を閉じた。
たった数秒であるが、えらく長く感じるまぶたの中の暗闇に、カナデは走馬灯を見た。
僕はカナデ、一般には裕福とよばれる家元に生まれ・・・
・・・・僕には双子の弟がいて僕はその双子の兄であって弟のヒビキは僕よりちょとコミュニケーションをとるのが苦手でいつも一緒にいる、かわいいやつで・・・
・・・・大学に入って友達が沢山できた。まずはマコト、マコトは馬鹿が付く正直者で嘘もつけないまっすぐで正義感の強い友達で、次にリュウイチ、短気だが面倒見のいい頼れるやつ。次にユウタ。引っ込み思案だが、よく頭が働くインドア派な性格だけど男友達たちではみんな仲がいい。リナは、泣き虫だがとても気のきく優しい子だ。スズカはリナの大の友達で、ものすごく好奇心旺盛でアグレッシブな女の子。そしてアイは付き合い始めて間もない僕の恋人だ。時々何を考えているか分からないけど、そんなミステリアスな彼女でも意外としっかりしている大好きな彼女だ。そのサークル友達と・・僕と・・・。
「確か、僕と弟のヒビキと友達と旅行にいく為に、ボートにのって波止場でボートを止めるときアイの帽子が風でとばされたのを皆で見ていた。
離島の山奥のあるぼくの家族の別荘である洋館へきていて・・・
沢山あるいて汗をかいたのでシャワーを借りようと部屋に入り、それから・・。」
目を開けると何が起きたか少しずつ理解していくなかで、今まさに大変な事になっていることをようやくカナデは意識できた。
目を開けてもそこに広がる光景はまだ、瞳のおくにあった走馬灯の続きとしか思えない。
その瞬間からカナデは
「終わりの始まりがきた」ということだけはしっかり理解した。
~~~~~「 W 」~~~~~
~~~~~~~ day1 ~~~~~~~~
目の前で血まみれになって倒れていてそれに体の一部が無くなっている。彼はカナデと一緒に旅行にきている友達の内の一人のマコトで泣いているのはアイだった。
アイは僕をみて恐れている様子だし明らかに避けるような態度だ。僕はマコトにたいして「大丈夫か!」と、
大声を出しながら状態を確認するが嫌な予感通り彼は死んでいることが判明した。悲鳴と大声を聞いて他の旅行の為に一緒にきていた友達も、この多目的ホールのぼくらの元へ駆けつけてきた。
リュウイチが大声でどなりこみながら僕たちに声をかけてきてが、その質問の内容が信じられないもので僕は二度驚いた。
「奏が・・奏がマコトを殺したの・・?」
何を言っているんだ!!
確かに今まで気を失っていたかもしれないが僕がそんな事する訳がない。動機もないし、友達なのに。
「アイ、訳の分からない事をいうな!すぐに警察に連絡して、きてもらおう」ユウタがそういい、リュウイチは乱暴に僕の身柄を押さえた。
冷静なリュウイチは携帯があるじゃないかと携帯電話で警察へ電話をかけようとしたとき奏は言った。「僕も訳が分からないんだ僕じゃない信じてくれ!
殺人だというなら犯人は他にいる!」
「どういうことだ?ちゃんと説明しろ」リュウイチはすごんでいる
僕はここにきてからの経緯を混乱している皆の前でわかるように、この屋敷についてからの経緯をわざとらしく説明しはじめた。
「船で移動してこの離島についてから皆で少し山を登った、屋敷についたときには汗をかいていたのでシャワーを浴びようと中へすすんだとき疲れていたのか意識が朦朧としたんだ。だから皆に悪いけど先に個室で少し休んでいた。」
「そして悲鳴が聞こえて目が覚めたらマコトが血まみれで倒れていて、そばにはアイがいたんだ」
皆は静まり返って話を聞いていた。
リュウイチは冷静に「それでも人が死んでいるんだ!警察に来てもらって話をしたほうがいいだろ!」
皆も同意だった。カナデは納得がいかないなりにも、自分じゃないと言い張るが警察を呼ぶ事には賛成した。
だが、「まじかよ・・・。」リュウイチが怒りながらも同様した様子で警察と話しているようだ。電話はつながったが嵐の影響でこの島には少なくても早くて3日は様子を見なくてはいけない
タイミング悪く大きな台風がきているようで遅くて1週間は船をだせないみたいだった。「もしかしたら事故かもしれないし」リナは静かに言う。
リナがしゃべり終わると同時にスズカは怖い事をいいだす「呪いよ!殺人じゃないってならこの館のあの話にでてくる化け物の呪いでしょ!!」
全員がパニックになっている、幸い館には食料もあるし人数分の個室もある。嵐もしくは台風を凌ぐことはできるが警察は来ない。ぼくは皆に落ち着いてほしくてこういった。
「わかった皆きいてくれ、ここは僕の家族の別荘だ、責任をもって僕が怪物がいないことや呪いのことも、マコトは事故だった事を証明してみせるから」
ユウタはとがった口調でカナデの言葉をさえぎった「ふざけるな、お前がやってない証拠があるわけでもないだろ!殺人だったらお前じゃなくてもメンバーにいることわかってて一緒になんていられるかよ。それにマコトの死に方は異常だ!俺は警察がくるまで部屋に閉じこもるからな」
そういって、さっさと個室のほうへいってしまった。皆も同意見のようでそれぞれ急いで個室にこもって鍵をしめてしまった。
それでもカナデは決意していた。「怪物なんていないし、呪いもない。そんなバカな事が。。マコトの死に方は事故じゃないのが明らかだし犯人は僕じゃない以上犯人は他にいる。必ず真犯人をみつけだしてみせる」僕もいったん整理する為に部屋で少し頭を休めよう。
カナデはバルコニーにある書斎のドアノブが開いているのでそこで休む事にした。この館は奏の家族の別荘だし、
何度も家族で訪れているので館の作りは覚えている。それでも奏はこのとき何度も違和感を感じていた。「ぼくもマコトが死んで悲しいし、怖い。
それに何だかもの凄く疲れている。少し眠ったら皆が落ち着いた頃に話をしにいこう」
時間がどれくらい経過したかわからないが全然休んだ気にもなれないような素振りのカナデは、
だるそうに起き上がる。
カナデはベッドの上で少しぼーっとしながら目を開けた時、戦慄が、寒気が背中を襲う。まず目に入ったのが休む時、書斎の部屋にはいってベットに横になったはずなのに
奏が辺りを見回すとそこは知らない子供部屋だった。あたりには子供が遊ぶ玩具が散乱している。それに、、、
「それにこの部屋からナニカの気配を感じる・・・。」
奏はここにいちゃいけない気持ちでいっぱいになった。勘違いであってほしい、勘違いじゃなかったらどうしよう。そう考えながら部屋を早くでないといけない焦りで心臓が今にもどうにかなってしまいそうな様子だ。
その時、ベッドの近くから静かな息づかいが聞こえた。かすかに、一瞬だが聞き間違いなく「(息づかいだ・・。)」
カナデの緊張はピークに達したが相手に悟られないように部屋をでようと、最初で最後の冷静さでドアノブに手を伸ばしたがその時
悲鳴が聞こえた。その声には聞き覚えがあった間違いない「アイだ!なにかあったのか!?」カナデは一瞬自分の緊張すら忘れ心配になりドアノブをひねったが開かない。
こわくなってドアノブのあたりを見回すと不思議な金属のパズルのような鍵がかかっている。
(縦横移動自由、重なりや回転は不可、星マークを星マークへ移動できたらクリア)
驚いたカナデは我に返る。
ズズズ・・。
にぶい音が近くから聞こえた。扉の向こうではなく、この部屋で聞こえた。カナデは恐ろしくて後ろを振り返り周りを見渡す事はできないでいた、(後ろを向いたら最後
もう生きて戻って来れない)カナデは恐怖でそう思ってしまいパズルを解く事に集中した。
焦って冷静にパズルを解けない間にも近くからする音が次第に、大きく大胆な音をだして近づいてくる・・・。廊下の外では悲鳴が聞こえたっきり何も音がしなくなっていた。
外も中も気が気じゃなくなり、頭がおかしくなりそうな状況でカナデはやっとの思いでパズルを解きロックを解除できた。木製でできている扉の中からとても似合わない機械的な音でロックがはずれる音が聞こえた時、部屋の中の音は止まっていた。カナデは急いで扉をあけて勢いよくドアをあけて廊下にでる。
「やった!あいた!」
開けたら閉めるという一連の動作で、つい後ろを振り返り扉に手をかけた時、彼は見た。
自分の振り返った目の前にソレは音もなくじっと立っていた。カナデは声もでず、ソレが何なのかも確認できないまま恐怖に身をまかせて思い切りすぐ扉をしめた。
その直後扉からウィーンカチャカチャ」とまたも扉にそぐわぬ音が聞こえてきてカナデは少しほっとした。「そうだ!アイを探さないと!」
どこのか、わからないうすぐらい廊下を走っていたら人の声が聞こえてきた。
廊下おくには階段があり急いで降りた。皆が集まっていてその場所は食堂の奥にあるキッチンの食料庫だったことにカナデは驚いた。
おそる、おそる明るい食堂のほうへ行くと、皆がそこにいた。
皆が集まっている中にアイの姿とユウタの姿が見当たらない。
カナデをみつけるなりリュウイチがくってかかる「またお前か!何をしたんだ!」カナデはたった今起きた事、見た事を皆に説明して危険人物がいることを必死に伝えた。
リナとスズカは涙目になりながらおびえて、リュウイチは静かに「まじかよ・・・。ユウタとアイはまさか・・。」といい、彼の目からは光が消え失せた状態だった。
このとき一瞬、止まっていた時を動かしたのはリナだった。もう嫌だと泣きながら、嵐とわかっていても館を出ようと入り口のほうへ走って行く。
カナデもリュウイチもスズカも逃げ出したい気持ちでいっぱいだが今はリナを止めようとすぐに追いかけて玄関ホールにでる。
リナが扉のドアノブに手を掛けたとき、
リナはこの世のものとは思えない悲鳴をあげた。体をぶるぶる振るわせ、白目を向き泡をふいても扉のドアノブからは手を離さない。
その握った手からは「ジュー・・」と焼ける音が聞こえ、肉が焦げるような臭いがすぐホールに立ちこめた。
今起きている絶望や不安を混ぜ返したような臭いが全てがむせかえって吐き出しそうな空気につつまれていた。
全員何が起きたかわからないまま、声も出せず、
その場から一歩も動けないままリナの死を、ただただ見ているしかなかった。
日がすっかり沈み夜になり、気づかないうちに壁にかかったロウソクに火が灯る。カナデ達のパニックなんて知らないといわんばかりに、
時計の針達は真夜中へむけて足を進める頃だった。
~~~~~~~ day2 ~~~~~~~
全員その場でリナが倒れるまでぴくりとも動く事ができず恐怖に支配されていた。
スズカは声もでないままその場に立ち崩れる。リュウイチは目を伏せ、カナデは目の前が真っ白になっていた。「どうなってやがんだ・・。」リュウイチは言う。
その時、ふとカナデはリナが倒れている側に唯一玄関ホールにある小窓に目を移すと、そこから海が見えていた。「あっ」
すぐに違和感の正体に気づいた。「ボートがない」
この館に辿りつくまでには本土からボートにのり波止場にボートを止めちょっとした階段を登り、登りきったところにある。来たときにはアイの帽子が残念にも海風に煽られ飛ばされていたのは記憶に新しい。
海からはこの大きな館でも屋根などの一部しかみえないくらい、木々に囲まれまるで隠しているかのようにヒッソリと建っているのだ。
小窓からは普段なら波止場が見えるのでボートの状況も見えていたはずなのだが、街頭が照らしている波止場には見慣れたボートはなかった。
リュウイチは胸騒ぎが止まらなくなっていた。「畜生。化け物が本当にいるのかよ、くるならこい!全員殺してみろ!俺はここにいるぞ!」リュウイチは大きな声で叫び続けたが
返してくれたのは、化け物の返事ではなくシクシクと泣き続けるスズカの声だけだった。
「ここは、危険だ!ユウタやアイを探して合流しよう、そしてどこかに助けがくるまで立てこもるんだ」カナデが頼もしくみえた。リュウイチが怒りが収まらないままカナデに殴り掛かろうとした時、カナデの背後にあるガラス張りでできて中庭が見える景色が目に入った。リュウイチはカナデの胸ぐらをつかんだまま振り上げた右腕を止めたまま、じっと
奥にある廊下をみていた。「お、おい。化け物ってもしかしてあれか?」奥にある廊下の窓からこちらをみつめて動かない異形の人形のようなものが居るのが見える。いや、置いてある?
そのときその異形のナニカは大きな異形の薪割り斧をもって動き出した。明らかにあのままいけばこの玄関ホールにたどり着く。リュウイチは今までの行為で罪悪感の気持ちでいっぱいになったがとりあえず「にげるぞ!」そういってスズカとカナデの腕をつかんでは、向こうの廊下とは逆にある廊下を辿って逃げる事にした。走っている途中もの凄い衝撃音が聞こえたが3人はなりふりかまわず個室の部屋がある別館へ走り、適当な部屋にはいりすぐ鍵をしめた。
3人は息を整え潜む為に息をころした。
「本当に化け物がいるなんて」スズカはそれ以上ショックで声もだせないくらい青ざめてしまっている。「2人を探さないと」リュウイチとカナデは焦る。どうしようかそれぞれが部屋の適当に腰を下ろしたとき、リュウイチは手を伸ばしたとき何かに当たった。
「ユウタのパソコンだ」パソコンにはなにか写っていることにリュウイチは気づいた。ユウタはこの館の秘密をたまたまナニカ見つけてメモしていたようだ。しかし肝心のところでパスワードがかかってあり、いくつかパスを解かないと次へは進めない。3人は部屋に置いてあるてきとうなお菓子や食べ物を食べながらパスワードの解決に努力した。ひとつめの問題は文字や数字ではなく、「なぞなぞ」のような問題だ。
・3Lと5Lの容器がある、それぞれを使用しぴったり4Lの状態の液体を用意しろ
リュウイチはしぶしぶ、ためすと案外簡単に解く事が出来た。すると誰かの日記のようなページにとんだ。
日記を読み続けているとこの館にある昔話しという、よく聞いた噂だったが色々わかってきた所でまたも「なぞなぞ」がでてきた。ユウタはなぜこんな面倒なことをしたのだろう。
・7分と9分をはかれる砂時計がある。それぞれを使用しぴったり20分を計れ。
リュウイチは頭を抱えて静かに「パスぅ・・。」と言い。スズカに代わる。スズカは意外にもこれもなんなくクリアし、日記の重要部分にさしかかった。
とある昔に、富豪一家がすんでいた。その家族はとてもみんな家族想いでした。
ある日双子の兄弟のうち兄がイジメに合い自殺してしまった。
「家族はとても悲しみました。次は自分の番だと恐れ始めた弟は気がくるい始めました。
弟は一晩で家族全員を無惨な方法で殺してしまった。兄弟は年をとっても見た目が子供のまま年齢を重ねるという発育障害。
弟は家族に秘密の癖があり、その癖は命をうばってしまう事だ。はじめはストレス発散の為に虫や植物、次第に興味が広がり犬や猫と動物に対象が移り実験までしてしまうほどだった。
あるとき、動物をつかった実験をしているところを兄に目撃されてしまう。いじめられているが唯一同じ境遇にいた兄は絶対的な味方であったが、これを機に兄にまで裏切られると焦りだした弟は兄だけは敵にしたくない思いである計画を思いつく。」
「なんだこれは?」絵本かなにかの内容の様にも感じる内容に、皆はそろって息を呑む内容だった文章はここで終わっている。
何かが起きている。そしてこの館には得体のしれないナニカが潜んでいて皆はきっとそれに巻き込まれている。カナデは焦りを感じた。
「とにかく、ユウタとアイを探さないと、だが扉の外にでるのは危険そうだ。どうする?」リュウイチは困りきった顔で言う。精神的にも肉体的にも徐々に皆は疲弊していった。
そのとき上の階からピアノの音が聞こえてきた。皆はびっくりし構えた。音は何かを弾くというより鳴らしてしまったかのような「ジャーン」という音だけなってすぐに静かになった。「もしかしてさっきの奴じゃ・・それとも。」スズカは不安そうに言う。「とにかくここを出るしかねえだろ」リュウイチは意を決して、ついには恐る恐る息を殺しながら扉を開けて隙間から目だけで廊下を追う。
あたりは静まりかえっている。
「さっき音がなったのは上だが、あいつが追っかけてきてるなら1Fだ。どうする?」リュウイチは振り返り皆の意見をきいた。リュウイチの問いにカナデは悩みながら答える「あれから結構時間もたったよね。どうしようか・・。」
「どうするんだよ」リュウイチはふたたび廊下に目をやると何かが凄い勢いで扉の前を横切る。「うわっ!!」驚いて後ろに飛び退ける。ふわふわしたワンピースのようなものが見えた気がしたと思い返してる最中すぐにカナデ達が来た道の方角から
「ゴッ」「ゴッ」と何回も何かを叩き付けるような音がきこえる。
皆がどうしたと心配してる間にもリュウイチはすぐに今通ったのはアイではないかと思い、皆に「いくぞ!アイだ!」といいアイを追いかける為に全員で勢いよく部屋を飛び出した。
部屋をぬけてふわふわした服がちらりと視界にはいるうちに声をだした「アイ!待ってくれ俺たちだ!」
リュウイチの声で、ふわふわした動作がとまった。
「皆、怖かった!会いたかったよ。」とアイがそこにいた「ピアノの音はアイがやったの?」カナデは質問するが「それどころじゃないよ!廊下のほうから聞こえるでかい音は絶対あいつだよ早くにげよう!」スズカは焦って皆もそれには同意だった。「このままじゃ外に逃げれない以上隠れきるのは難しい、何か武器が必要だ」カナデが提案し、リュウイチも同意する「キッチンにいって武器を探そう」そういうと
一行は階段を使い二階へ移動した部屋に隠れるか悩んだがさっきの音と今度は違う音が下の階から近づいてくる、きっと追いかけてきているに違いない。部屋でやりすごすのは危険かもしれないと判断して
二階の廊下からキッチンへ向かうために廊下にでる。廊下を走る途中嫌なものを見つけた。
腕が落ちていた。スズカは「うっ」と口を押さえる。廊下には落ちている腕を中心に天井や壁にまで血がとびちっていた。この腕時計と服は・・・
皆はすぐに気づいた「ユウタだ。」ユウタのデジタルの腕時計と今日着ていた服だった。
ユウタはもう駄目かもしれないと全員思ったがそこで立ち止まっている時間はないと焦りながらも静かに大きな玄関ホールを目指す。玄関ホールにつながる扉にたどり着き、リュウイチは「いいな?あけるぞ」そういいそっと扉をあけようとするが開かない。「なんでだよ!」リュウイチが癇癪を起こしているときカナデはふと後ろを見るとアイは何かをみている。
「アイ、どうしたんだ?」アイは何も答えてくれない。無理もない。あんなに怯えていたのだから言葉すら失ってしまったのかと思ってしまうカナデだった。スズカも気になって「何をみているの?」と訪ねると
スーっとアイは何も言わないまま指を指す。
アイの指を指した方向に見えるのは窓からみえる中庭くらいだ。「だからなんだよ!」リュウイチは怒りっぽく訪ねようとしたら「シーー!」アイが一言だけしゃべった。
全員で窓をそっとのぞくと、中庭がみえた、暗い中庭のモニュメントの付近だけ明るさがありまるで闇に残された一つの希望みたいにみえた。
その奥で何か動いていたように見える。
「アイツだ・・・!」リュウイチは中庭の奥にある1F廊下の窓をじっと見つめる。何度も何度も、あの斧を振りかぶってるアイツを見つけた。その得体のしれないやつは斧を振りかぶるのをやめ何か地面から掴みひきずりながら静かにさっきカナデ達がいた別館のほうへ歩いて行った。
「つまり後ろからここにくるのも時間の問題じゃないか」焦りながらリュウイチは、開かない扉に手をかける、「鍵か?もしかして」リュウイチが不満そうにいい「スズカ、ヘアピン貸せ!」そう言ってスズカから乱暴にヘアピンを取り、鍵穴にさしこみ器用にまわす。「カチャリ」と静かに音はなり扉の威圧感はなくなった。
「本当に鍵がかかっていたなんて」「でもこれで向こうに行って、ここの扉を封鎖できる。あいつはこっちにこれないぞ」リュウイチは扉をあけて大きな玄関ホールにでた。全員が扉を通過した時、後ろのほうから奇麗なピアノの音色が響き渡る。何かの曲なんだろうがわからない「あのやろう!楽しんでやがるのか!ふざけやがって」
リュウイチはずっと怒りっぱなしだったが冷静だった「武器をとりにいくぞ」階段をおりてまっすぐにキッチンへ全員でなだれこもうとするがカナデは1Fの渡り廊下のほうへ走った。「こっちも閉めれるかも!」
1Fの渡り廊下の扉も同じくして鍵がついていた。これで閉じ込めれたのではないかと少しホットする。
館にたどり着いてから何も食べてないし寝れてない、武器もないのでキッチンへ行き色々と準備することに集中した。「とりあえず包丁とかは全部使える物は持っておこう」そう言いながら冷蔵庫にあるものに手を伸ばし肉やら果物にかぶりつく、少し安心したのか一行は、うとうとし始めた。
「さすがに寝ないってのは無理だろ」順番に見張りながら少しでも寝よう。」そういいリュウイチが最初の見張りをかって出たのでみんなは少し眠った。
カナデは夢をみた。
「さっきのやつが手招きしている、何も喋らないけどずっと、こっちへ来いそう言ってるかのように見えた。奴の元へおびき出され殺されてしまう。そう思う夢だ。続きがあってアイツは気付くとずっと僕を追いかけている。僕の友達を皆殺していき、僕が一人ぼっちになるまで・・・」
「おい、、、」
「おい、お前のばんだぞ」
リュウイチに起こされたカナデは冷や汗でびっしょりだった「ああ、ごめんよ」そういって見張りを交代した。リュウイチは糸がきれたようにストンと、すぐに眠りについた。カナデは今見た夢をぼーっと思い返していた。そのとき急に違う事を思い出した。
「・・リナ?」「それにマコトは・・」
そう、あの広い玄関ホールから外に出ないのは入り口の扉に罠が仕掛けられていて出れないからだ。なんでそんな事わかるかというと「あの扉でリナは死んだはず・・」
玄関ホールで死んだはずのリナの死体が無かった事にカナデが気付いたのにリュウイチやスズカは忘れていた。そんな異様な状態を思い出している時だった、急に眠気に襲われたカナデは自分のほっぺたをつねったりして我慢していたが限界になって意識が遠のいていた。かすかに(やばい)と思いながらもあけた目の前にはキッチン入り口付近にリナがにっこり笑って、たっているように見えた。そのままカナデは意識を失ってしまった。
「おい!」
「おい!ふざけんな!」
バシっとほっぺたを何かがぶつかる。自分はこんな勢いでつねった覚えは無いと少し混乱しているとリュウイチがすごんで言った。「お前の見張りの番だろうが!なに寝てんだよ!それに、それにスズカがいねーぞ!」
カナデが眠ってしまって、気付くとそこにはスズカの姿だけなかった。
こうして危険な状態の中またも3人になりスズカを探さないといけない状況になり、まったく事態がいい方向へ進展しない状況に疲労は回復しなかった。
スズカがいなくなったのでその原因と、スズカを探す事にした。
辺りは雨音は以前強くなる一方で、外では3日目の朝を通り過ぎた頃だった。
~~~~~~~~~ day3 ~~~~~~~~~~~~
カナデは胸の内につっかえている不安を吐き出しそうになりながらも、もしかしたらヤツの仕業かと怯え皆でホールに出る。ホールは静かに皆を迎える。「ホールにはいねぇ、もしかして外にでたのか?」リュウイチが外の様子を伺おうとドアの扉に向かった時、カナデは叫ぶ。
「リュウイチだめだ!扉に触れちゃいけない!」危うくリュウイチはドアノブに触れる寸前だった。その時ようやく気づく。
「リナが、リナもいねえ!」
あまりの不自然さと、違和感、非常識、異常事態が相次ぎ完全に皆の感覚は狂っていた。「多目的ホールのほうも見てみよう!」カナデは急いで多目的ホールへ向かう。扉を慎重に調べながら多目的ホールに全員入ると、そこには・・。
何もない。
異常事態とは何か?そう言わんばかりに机や椅子が奇麗に整列して列をみださないまま凛としている。その様子は「いつ私たちの出番がくるのか」と待っているようだ。「ここにもいない?どこなんだ?」全員で踵を返し今来たばかりの道を辿りホールへ戻る。この間1分も満たない短い時間の中で何かが変わる。多目的ホールの扉をあけて初めて知る真実がある。
扉を開けてすぐ目に入るのはガラス張りで出来た、大きな壁。その丸見えの壁から見える向こうは奇麗な中庭で、中庭の真ん中には大きな騎士の石像が見張りをするようにいつもは佇んでいる。でも今日は違う。今日はその石像が構える異形の薪割り斧にズタボロのスズカが上から落下したかのように突き刺さっていたのだった。
体中穴だらけになるほど、なんども異形の薪割り斧の槍の部分を突き刺したような傷をおい、
これ以上滴ることがないほど血液が流出し枯渇していたようだ。アイは目を伏せその場にしゃがみ込み、カナデとリュウイチはまさかと思い廊下の扉の鍵をすぐにチェックしにいった。
すると「鍵がかかったままだ!?どういうことだ?」扉は昨晩逃げる際に鍵をかけたままだった。鍵はこちらからしか掛けれない仕組みになっていて、ヤツはこちら側には来れないのにスズカは向こうで死んでいる。ということだった。スズカを注意して見てみるとスズカと石像の下には血で作ったような池みたいに血溜まりができている。
そこには、手帳らしきものが紛れ込んでいたのかすかに見えた気がした。それにカナデだけが気付いていた「手帳がみえる!なにかヒントがあるかもしれない」
しかしいくら武器を手にしたとはいえ相手は得体の知れない怪物だ、ヤツが扉の向こうで待ち構えていると考えただけで恐怖で扉の向こうへは行ける気がしない。
「でも、いくしかねぇよな!」リュウイチが怒鳴る。
「行こう!」カナデがそういうと決意が固まったようだが、アイだけは立ち上がれない。「ここで離れる訳にはいかねーだろ」
「そうだよ危険すぎる」それでもアイは動けずに居た。しかたなく多目的ホールに行き、内側から鍵をかけてもらい「俺たちがここに戻るまで決して扉を開けるなよ!」そう言って二人はアイを完全な密室に残し遂に中庭へ目指す事にした。
中庭には二階側の廊下からは見えるだけで、外に出ることは出来ない。従って一階側の廊下からしか行けない一方通行だ。念のため一階の廊下側だけ鍵をあけて進むことにした。包丁を強くにぎりしめたリュウイチが「ふーふー」と息を荒立て始め「いくぞっ」そう言って勢いよく扉を開ける。扉を開けた先の廊下にはスズカより先に行方不明になっていたユウタの死体がバラバラになってそこら中に飛び散っていた。カナデは「うっ」と低い声をだしてこらえる。「ユウタぁ・・本当にユウタなのか・・・?」リュウイチは残念そうにしながらも辺りをヒントになりそうなものがないか調べて行く。
ここまで異常な状態が続くと、人が死んでいるのにも関わらず感覚が麻痺していく。
廊下には汗や血、木材でできた壁や天井の古くさいシミや思い出と、くさい臭い。そこにはこの夏最後を告げたような、残り香が残っている。耳をこらすと皆で騒いで遊んだ昔の残響が聞こえた気がしていたが、目の前の色鮮やかな幻とモノクロの今の景色が重なった時、無情にも現実へ引き戻され切ない気持ちがこみ上げる予感している最後の夏。
ユウタの一部の近くには見慣れないクローバーマークの鍵が落ちていたのでとりあえず拾っておいた。きっと昨日逃げるときに聞こえていた激しい音は、ユウタを斧で痛めつけてた音だったのだろうと、二人はすぐに感じていた。二人は会話もすることなく目で合図し、構えながら中庭へでる扉を開けた。
そこにも幸いヤツはいない。カナデはスズカの元へ走り血溜まりから手帳を拾う。「読めるといいんだが・・」
「弟は兄を殺した。
そのときの衝動はもう今まで行ってきたどんな実験よりも得るものを感じていた。
弟の衝動はもう止まらなかった。ついには自らの癖と興味を最終目標である人間にしてしまったのだ。
そして、
イジメに関わった者達はこの事件がおきる少し前から全員が依然として行方不明である」
手帳を覗き込んだリュウイチがこぼす「くそ・・嫌なこと思い出させやがって・・。」カナデはどういうことだ?と思いリュウイチに訪ねた「嫌なことってなんだよ?」リュウイチはずっとカナデを見つめ「お前ふざけてんのか、今回だってお前が色々理由つけてあんなに言うからここに来たのに・・。」
「いったい何の話だ?」
その時、別館のほうからピアノのメロディーが聞こえてきた。
「くそ、この話は終わりだ!このまま怯えるのはもうごめんだ!アイツを倒しにいくぞ」
リュウイチはもう止めることができないと直感できるほどの気迫に満ちていた。それにきっと怯えて助けをま待っているだけなら全滅する事になるだろう。そう思ってカナデも、うなづいた。二人は手に持った凶器をぎらつかせ、忍び足でピアノの置いてある部屋へ近づく、扉の前にさしかかった時ピアノの音ははげしく「ボーン!」という和音を立てて止まった。
「いくぞ!」
カナデが扉をあけてリュウイチが部屋へと叫びながら飛び込む。カナデはそれを見た瞬間から急に意識が遠のいていた。目を開けた時、リュウイチの姿はなくカナデを待っていたのは無人のピアノだけだった。
徐々に太陽がすべり落ちて行き、カラスが不安を表すように騒ぎだす頃だった。
カナデはリュウイチを見失い何が起きたか、わからない。でもいつもの事のように少し冷静だった。だがこのままでは命の危険を感じるので今出来る事を精一杯考えた。「何かヒントは!」すこし持ち物を整理したり、うろうろしたりして鍵と手帳がある、あとは今までみた暗号のような話。「これらを合わせて考えてみるきっと何かのヒントになるはずだ。」近くの部屋にリュウイチが居ないか探しながらアイの元へ行かないといけないと思い、カナデは考え込む為にピアノの椅子に腰をかけた。その時ふと目をやった先にピアノの楽譜がある。よく見ると譜面には音符が表記されていなく文字がひたすらに書かれている。読んでみるとおぞましい内容だった。
「弟は家族の皆に秘密の癖があり、その癖は命をうばってしまう事だ。始めはストレス発散の為に虫や植物、次第に興味が広がり犬や猫と動物に対象が移り実験までしてしまうほどだった。
ある時、動物を使った実験をしているところを「兄」に目撃されてしまう。いじめられているが唯一同じ境遇にいた兄は絶対的な味方であったが、これを機に兄にまで裏切られると焦りだした弟は兄だけは敵にしたくない思いである計画を思いつく。
弟は兄を殺した。
そのときの衝動はもう今まで行ってきたどんな実験よりも得るものを感じていた。
「どういうことだ!この内容からすると弟は兄を殺している。」
「だとしたら誰の目線で書かれている物なんだ」
今まで見てきた内容の日記をすべて足すと怖い内容の日記になった事にカナデは恐怖を隠せないでいる。
譜面の最後にはカナデが持っている鍵と同じマークの絵が描かれていて、それはどこかで見た事のあるマークだった。しかしこの時カナデは思い出せないでいた。
「いまはリュウイチを探すのが先決だ!」
その時、カナデの不安はヤツが側にいるというセンサーのように感じていた。(近くに居る気がしてたまらない。)
カナデはそれでも、見つかるまでは気づかないふりですまそうと、そっと全身をセンサーのように歩き出した。いくつか部屋を探していると、最後に入った部屋にはリュウイチが倒れ込んでいた。「リュウイチ!生きてるか!?」カナデはリュウイチのもとへと走り近づく。
「くそ、ふざけやがって・・」
そういうとリュウイチはあごで方向をさす。そこには扉の影で包丁が突き立ったままのヤツが倒れ込んでいた。
「ピアノの部屋にはいった時、アイツは斧を振り回しながら突進してきた。なんとか何回かヤツには包丁で突きを食らわせたがそのままお前をぶっ飛ばして逃げやがったんだ。お前は奴に突進されて倒れてるけど、とどめをさせると思って追ってきたら扉の後ろに隠れてやがったんだ、だから、へへ。このザマだ」
リュウイチは傷こそ深いがまだ生きているそれに、ヤツはもういない。もうリュウイチが倒したんだ。
「けどよぉ・・」
リュウイチは出血のしすぎで喋りきれないまま意識を失ってしまった。リュウイチはUSBメモリを握りしめていた。このメモリを使えるのは玄関ホール二階からいく書斎のパソコンだけだった。その時カナデは思い出す。「そうだ、この鍵のマークは書斎の引き出しの鍵だ!なにかわかるぞ」カナデはリュウイチをおぶさりホールをめざした。
「リュウイチ、しっかりしろ!生きるんだ!」
ヤツのことは気になったが出血も沢山しているし、死んでいるだろうと思い扉をその場から早く離れたい気持ちの一心でリュウイチの怪我の手当の為にもまずはアイのいる多目的ホールへきた。
「アイ?ぼくだカナデだ!リュウイチが怪我をしたんだ開けてくれ」
返事はない。カナデは扉に手をかけると扉のロックはされておらず扉がすーっと開いてしまった。「アイ!何かあったのか!?」部屋には誰も居なかった。
「いったいどうして・・」リュウイチをテーブルの上におろし奥へ進もうとしたとき。
「ドンっ!」とカナデは何者かに後ろから頭を何かで殴られ倒れてしまう。意識が薄れて行くとき微かにぼやけた視界にうつったのは、鈍器をもって息をあらくしていたアイの姿だった。
カナデは眠りについた。
カナデは夢をみた。
カナデは自分がとうとう殺されてしまう夢をみた。
1年前カナデを含むメンバー6人は旅行の為この別荘に来ていた。別荘には昔起きた事件があり夏の肝試しということで訪れていたがメンバーの内、
カナデがメンバーのいたずらにより死んでしまう事件がおきた。(まさに今の状況だな・・)カナデは夢だとわかって何となく目が覚める。意識が徐々にはっきりしてきて辺りを見回すと書斎のデスクに座りながら寝ていた。「それにしてもどうしてアイがぼくを殴ったんだ、それにここは・・」
納得のいかないまま目的地へ来ていたが、ついでにUSBファイルの確認をするためパソコンをつける。手際よく準備を進めるとそこにはムービーファイルがはいっていた。再生をするとそこには今回の旅行の内容である、皆との思い出のシーンばかりが映っている。モニタの中のリナやスズカ、ユウタやリュウイチが元気にはしゃいで僕を呼んでいる。隣にはこの時から恋人になったアイが恥ずかしそうに僕の手をにぎっているシーン等が映っていて、気づくとカナデは涙が止まらなくなっていた。
「みんな・・。」
泣きながらファイルをみていると違和感を感じ始めた。
「こんなシーン知らないぞ・・それにいったいこれは誰がとった映像なんだ?」
異変に気付きファイルを確認しているとテキストファイルで日記がみつかり、内容を読んでぞっとした。内容は弟であるヒビキのものだとすぐにわかった。
「兄貴は死んだ。この館で死んだ。あいつらが殺したんだ。僕の秘密を知られたくないから・・」
続きに目をやろうとした時だった。
かなしばりに合ったかのように全身が固まってしまい動けなくなった僕に、そっと声を掛けてきた人物がいる。
ぼくの目の前のそいつは、意外なやつだった。
夏のむせ返る暑さと陽炎を脳裏に焼き付け、まるでそのまま全ての記憶を全焼させてしまうような暑い夏の頃だった
~~~~~~~~~ Final day ~~~~~~~~~~~~
「やぁやぁ、やっとお気づきかい?」
暗がりの部屋の中、書斎のデスク上にあるPCモニタの光でようやく目視できるほどのあかり。辺りは狙ったかのような闇。
まるでそこから生まれたような存在感で、そいつはそこにいる。
目の前にいるのは殺人鬼の怪物、あの噂の館主人にして何度も話に出てきた例の兄弟の弟と直感で思った。動けない僕に唯一あった動きといえば、この全身を流れる冷や汗だけだ。
「そう身構えるなよ。俺達は仲間なんだぜ?」
「一体何を言っているんだ、それに死んでおらずここに居るってことは、リュウイチやアイは・・。」
暗がりでよく見えないがニヤついた口調なのがわかる。その口調でヤツは云う
「俺は何もしてないぜ?俺はな」
「お前がやったことの掃除。つまり後始末だけだ。」
どういった真意があるのか分からない。分からないがまだ二人は無事みたいな事を言う。だが不安でしょうがないのは変らない。それにヤツは全てを知っているかの様な口ぶりで会話を続ける。
それに僕には襲いかかってこないのも気がかりだ。
ぼくは頭がぼーっとしてる中、何か心のなかで引っかかる物を感じていてそれを探っていた。
「まだ思い出せないのか?まぁいいや、そろそろクライマックスだ。
そのお前が見ている日記の続きを読んではっきりさせるんだな」
このまま何もできず、何もしないよりはマシという想いで、ぼくはヒビキの日記らしき物の続きを読む事にした。
「兄貴は俺を裏切った。いやあの女のせいだ!
アイが兄貴をたぶらかし俺等家族から引き離そうとするからだ、、、。
それを笑って見過ごすアイツ等も同罪だ。兄貴はアイツ等にきっと俺の秘密を話し、唯一仲間だった兄貴もあいつらと同じ所から
俺を見下すんだ。そんなの耐えられない
兄貴には実験台になってもらうよ。この館で事故にみせかけてアイツ等のせいにするんだ。アイツ等を利用してアイツ等も殺してやろう」
「何だって!?」
カナデは戦慄する。
「やった。やってやった。兄貴は死んだ。あんなに血を流して。
温かかった血があんなに流れてみるみる冷たくなって・・
アイに支配される前におれが解き放ってやったんだ、はははは。
アイツ等、馬鹿だな自分達のいたずらで兄貴が死んだと思って自己嫌悪に苛まれてるよ、ははは。
次はお前等だ残酷に殺してやる呪いのようにな!
とうとうこの時がきたよ。兄貴を追悼旅行とか言ったら、のこのこ集まってきた馬鹿なやつら。順番に殺してやる。お前らのせいで兄貴を殺さないといけなくなったんだ
罪をつぐなえ!
今日はリナを感電で焼き殺してやった、肉が焦げて目ん玉が蒸発したようだ。おもしろかったな・・次は誰をやろう」
このあと、今に至るまで事細かに残酷な内容の日記が綴られていてカナデは未だに信じられず鼓動がたかなりっぱなしだった。
文章を読んでいてそこには信じられない内容ばかりが書かれている。特に始まりのほうで僕は死んだ事になっているが、一体どういう事だろうか。
「現に僕はこうして生きている・・・。」
何が起きているかますます混乱する一方で、事件の裏では黒幕が弟のヒビキであることが判明した。じゃあ一体目の前にいるこいつは、、、。
「お前は、ヒビキなのか、、、?」
「ちがう、ちがうよ。」「ヒビキはお前だ。」
「えっ!?」
意味がわからない。そんな唖然としているカナデを男は見つめ語りだした。
「いいか、混乱しているようだがヒビキはお前だ。ソレは間違いない。現にお前はさっきリュウイチにとどめをさして返り血をびっしょり浴びて笑ってたじゃないか。」
「その証拠にほら俺が録画したファイルもそこにはある。だから続きをみろっていってんの」
実はカナデはこの時すでに思い出していた。
カナデの思い出の中身はひどいものだった。吸い込まれるように記憶の中に進んで行く
記憶のなかにはリュウイチがいて、気付くと知らない部屋に僕がいた。
そして。
僕に必死に何かを伝えてるリュウイチを抱き上げ、そっと僕は始めはゆっくりと丁寧に、料理の下ごしらえをするかのように、リュウイチに包丁を突き刺し始めた。
何度も。
何度も。何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。。。。。
夕暮れのカラスが鳴き止まないように、何度も何度も突き刺した。
それでも抱きかかえて息絶えているリュウイチは何故か笑顔のままだった。
そのメモリにある動かぬ証拠と信じたくはない僕の記憶が完全に一致した時、
僕は僕ではなく、ヒビキになっていた。
そう、僕カナデは1年前にヒビキによって殺され死んでいた。そしてこの肉体は双子の弟であるヒビキのものである。信じたくはないが、僕カナデはヒビキの肉体に精神が乗り移っていたのだ。
その事実を受け入れてしまった瞬間電撃が身体中走り「全て」を思い出した。
今回の計画から、殺し方、順番、トラップ。全てだ。
この怪物の正体、そしてヒビキとこの怪物の接点、幼い頃この別荘でよく過ごした。その時から奴は居たのだった。そしてヒビキの残酷性を見抜き「裏の顔」であるヒビキを育てていたのだ。
別荘とはよく言ったものだ。話を全てまとめると、あの「噂」の正体である兄弟は今もここに潜んでいたのだ。正確には「弟」だけ。
弟繫がりであるヒビキは奴と出会ってから、崇拝に似た思いでどんどん歪んだ性格へと変わっていった。怪物であった奴自体は、もう結構な年齢のはずである、そして今「怪物の正体」はヒビキなのだ。
把握した、
認識をした、
そして理解をした。
どうして誰も僕を一度としてカナデと呼ばなかった事も、アイが僕を遠ざけていた事も、
誰かが死ぬ時、僕は必ず意識が無かった。それは肉体の持ち主であるヒビキが行動していたからだ。
僕を追いかける悪夢は、この計画から皆を救いたい思いで抵抗した意識だ、その意識を塗り替えるためにヒビキが僕を追い出そうとする、そういった意味だったのか。
「リュウイチ・・・。」
「邪魔だよ、奏兄さん、、、。」
もうカナデは奏では無かった。ただ結果を見続けるだけの意識になりつつあった。
「さて残りのアイを探しに行かないと、、クククク。メインディシュだ、あいつは特段ひどい方法で殺してやらないとなぁ。」
「行くのかいヒビキ。」
「あぁ・・」
「俺は、モウ役目をヲえた。トしも年だ、ソしてこの傷ナガくは持つマい。サァ、オレヲコロシテ、ツギノ、ホンモノノカイブツニ、オマエハナルノダ」
「ひひひ、わかってるって。じゃあな化け物さんよ」
ヒビキは壁に飾ってあった猟銃に一発の銃弾を込め、奴の頭をじーっと狙いを定め、躊躇なく引き金を引いた。
ヒビキは何も感じてない。奏も同時にそれを共有している。猟銃を捨てヒビキは部屋を後に、アイを探しに出発した。
この時、ヒビキも奏もアイの居場所をもう知っていた。そしてアイもヒビキでありながらも、奏であることも「最初から」気付いていた。だから皆でいる時はアイはヒビキを静かに監視し、一対一にならない構図を作り続け逃げていた。一番初めにマコトが死んでいた現場での発言は、すぐにヒビキではなく、死んだはずの奏の意識へ対しての質問だった。
私達を恨んでいるの?それとも私を恨んでいるの?ヒビキを止めに来てくれたの?そう思っての発言だった。
外の嵐は止み、爽やかな風が一吹きし、清々しい空気に変化し何もかも終わりを告げるようになった頃だった。
アイと奏が結ばれた記念の大樹が洋館の近くの崖近くにある。その大樹には上陸した際に飛ばされたアイの帽子が引っかかっていた。アイはそこに佇み、その時を待っていた。
間も無くして、ヒビキはその大樹へ辿り着いた。
「このクソ女よくわかったな?そしてここへよく来てくれた予定通りにな」
「ねぇ、ヒビキそして奏、私達を恨んでいるの?そしてここに来たって事は、そう、、やっぱり私で最後なのね。私知ってたわ。ヒビキ、あなたの性格もこの旅行の事も。やっぱりあなた達は双子の兄弟なのね。奏が助けに来てくれたのね。」
「はぁ?そんな訳ねーだろ、計画は完璧だった。奏兄さんを奪ったお前ごときに看破はあるまい」
ヒビキは怪物の象徴である異形の斧を持っていてそれを構えた時だった。アイは無言で片手をスッとあげストップの意を表した。
少し間を置き、アイはポケットから手紙のようなものを取り出し、ゆっくり折り、紙飛行機を作ってヒビキへふわっと飛ばした。そしてアイは語り始めた。
「あのねヒビキ、その手紙は匿名希望の方から私宛へ届いたものなの。今回の旅行で全員死ぬ。どんな手順でどんな殺し方、どんな順番かはわからない。でもアイ、きっとお前は最初と最後だ。」
ヒビキは紙飛行機を広げ、手紙の内容を読み始めた。
「それだけは分かる。そしてこの旅行を止めると、きっとお前等だけでは済まない。関係ない人間がこれからも少しづつ消えていくだろう。もし、止めれるとしたら君だけだろうアイ。お前に覚悟はあるか?覚悟があるなら、この話をこれで、できれば終わりにしてほしい。
兄弟ってのはな、兄貴は弟を守らなきゃいけない、弟は兄の背中を追わざるえない、一概に言えないがこんな特殊な血を引いた俺達ならな。アニキは、俺を置いて先に逝ってしまった、俺はアニキを救えなかった。なんでこんな広い世界で俺達なんだ。俺は世界を憎み怪物を選ぶ事にした。そして、後の怪物を生んでしまった。次の怪物を止めれるのはアイお前だろう。覚悟があるなら来い、待ってる。」
「馬鹿な!一体・・これは」
アイはヒビキの会話を切って、話し続けた。
「ねぇヒビキ、なんで、あなた達兄弟を世界が選んだんだろうね。それともあなた達が選んでしまったのかな?
皆を殺した事をとても許せないわ、そして大事な私の恋人である奏を殺した事も、ううん、何より、分かっていて誰一人救えなかった私自身が一番、私は許せないわ。私も世界が憎い。きっとあなた達兄弟も私達ももっと違った世界があったと思うの。皆が笑える世界。
「マコトが死んだ時、気付いたの、あなた達は重なってる、そうダブって見えたの「W」。この話は続きがあるの。
そしてこれでお仕舞いになるわ。手紙の主が言ってた通りよ。私、アイ「A」からきっと始まってしまったの。
そして手紙の主正体「X」、首謀者であるヒビキyouである「Y」そして「Z」。
ねぇ「Z」の意味を知ってる?最終・最高・究極などに使われるわ。他にはこう、、、「これよりひどいものはない最低最悪のという意味」つまりここで終わりよ。」
「・・・・。アイ?」
「ヒビキ、いいわ。私で終わりにしましょう。恨んでいいわ、私もこの世界を恨むから、、、さようなら。」
アイは大樹の裏の崖へ向かって歩き始めた。
「駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!!それじゃあ俺の復習が!計画通りにはならない!!!!勝手に死ぬな!!」
ヒビキは斧を振りかぶってアイを走って追いかける。アイに追いつき斧を振りかぶるのではなく、、異形の斧を捨て、アイをぐいっと引き止めた。崖から落ちるギリギリで引き止める。アイは半歩、崖から足を出している状態だ。
アイを思い切り引き寄せ、ヒビキが崖から落ちる。
すれ違い刹那。聞こえた。
「アイ、死んじゃ駄目だよ。僕が終わらせる。」
アイが涙を流し笑顔で言う。「そう、、行くのね。ありがとう奏。出会えて嬉しかったわ。」
「カナデェェェェ!許さない!!この俺があぁあぁ」
最後の断末魔が聞こえ遠のいて行く。
「なぁ響ごめんな。こんな兄ちゃんで、でもこれからずっと一緒にいるから、僕達は兄弟だろ?
こんな運命だったけど今度はちゃんと守ってあげるからね。」「ずっと一緒さ約束だよ兄さん」
夜が開け警備隊、消防団員、救急隊員が船でこちらに向かっているのが見えた頃だった。
愛は深呼吸をして、歩きだし、「異形の斧」を拾い、ひきづって進む。
愛が振り向いた時、大樹からは帽子が消えていた。空は雲ひとつない綺麗な朝日が顔だしている。
「ねぇ、次は皆違う形で、、、笑顔で会えるといいね、、、。」
「そうね、今の私には朝日が眩しいわ。」
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