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第2話

チート桁外れの実力

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チュンチュンと鳥の声が聞こえる。
未来は自分のスマホの音で目覚めた。
現在の時間は五時三十分である。
ここは未来の部屋のはずだ。
だが、未来の隣に散乱したトランプと叶、絵馬が居た。
この様子を見る限り四人は夜遅くまで叶のトランプに付き合わされ、寝落ちしたのだとさとった。
未来はハァとため息をつき、顔を洗いに行こうと立ち上がった。
未来が洗面所に行こうとすると洗面所の隣に位置するキッチンからジュージューと何かを調理しているような音がしているのに気づいた。
「あぁ、いつも通りの時間ですね。おはようございます。未来」
そこには、少し微笑みながらあいさつをしてきた制服の上にエプロンをしている深夜の姿があった。
未来は「おはよ」と短く返事をし、相変わらず完璧なやつだと思った。
深夜は勉強ができる上に運動も料理もできる。
弱点なんて見えないように見えるが実際は感情を顔に出すことが下手で、敵に仲間が傷つけられたらすぐにキレて誰の手にもおえなくなる。
未来は深夜の本当の弱点を知っているからこそ朝早くから全員分の朝ごはんを作ってくれている完璧人間が可愛く見えた。
「何笑ってるんですか?」
どうやら未来は無意識ににやけてしまっていたようだ。
「いや、別に?可愛いと思っただけでぇ」
「?未来の方が可愛いでしょう?」
深夜は意味がわからないといった様に未来に言い返した。

二人が話していると、叶と絵馬が寝ているベットからスマホのカメラのシャッター音が聞こえた。
未来と深夜はまさかと思いベッドのある方向を見た。
二人の予感は的中していた。
その上未来の妹の絵馬まで、叶が撮ったと思われるスマホの画面を見てニヤニヤしていた。
その絵馬の笑顔はこれまでにないほど嬉しそうな顔だったので、未来は洗面所に行き、深夜は朝ごはん作りに戻った。
二人は放っておくことにした。

チーン
どうやら食パンが焼けたようだ。
今四人は未来の部屋にいる。
四人はどこで食べるかで少し言い争ったが、結局全員移動するのがめんどくさいということでそのまま未来の部屋で食べることになったのだ。
未来は一部屋に一つある大きい家族用のような大きさの机を自分の部屋の大きなベッドの隣に置いた。
四人で寝ていても叶が転がるスペースがあるので相当大きいというのがわかる。

叶と絵馬はすでに椅子に座っていた。
この椅子は自分ね部屋から持ってきたものだ。
一度帰ったのなら着替えてくればいいものを、叶はオレンジと黄色のパジャマを、絵馬は水色のウサギの耳付きのパジャマを着ている。
未来と深夜はもう制服を着ている。
まだ新品のためパリッとしていてテカっているのが見える。
深夜はネクタイを緩めてあるので苦しくないのだろうが、未来はチョーカーをしているため、少し苦しい。
だが、未来自身は慣れたら平気だと思っている。
未来のチョーカーは特殊能力を無意識に発動するのを防ぐためだ。
未来の能力は自分の想像を現実にするので周りに迷惑がかかる。
そのことを深夜に話すと今つけているチョーカーをくれたということだ。
しかも、このチョーカーは手作りだ。
改めて深夜は普通ではないと感じる。
未来の制御するものに比べて深夜は首から手の甲、足の甲まで包帯だらけだ。
これは深夜が飛び降りだの入水だのをしたせいで作った傷を隠すために未来がやれといったことだ。
その自殺の傷の中には前にこの異世界に居た時未来を庇ってずっと治らない傷が紛れている。
深夜は気にしなくてもいいといっていたが、未来は未だに心残りだ。

未来が色々と考えながら椅子に座ると深夜が二人分のコーヒーと二人分のココアを持ってきた。
未来のコーヒーにはちゃんとミルクが丁度良い分だけ入っていた。
やはり深夜はよく回りを見ている。
やはり完璧なのだと思う。
深夜が料理を運んで椅子に座ると叶が手を合わせるようにいった。
「いただきます!」
叶の声に合わせて三人はいただきますと言った。
深夜の作った朝ごはんは昨日食べたものに並ぶほど美味しいものだった。
半熟オムレツにプチトマトとレタス、ソーセージとパンが二枚だった。
朝からなかなかの量だが、美味しいためいくらでも食べられる程美味しい。
「深夜!デザート!」
叶はもう食べ終わったようだ。
あれだけ食べたのにまだ食べるらしい。
「叶。プリンが冷蔵庫にありますが全員食べ終わるまで待ってください。」
「わかった!待つ!」
その上、深夜はプリンまで手作りして置いたらしい。
一体何時に起きたのか。
未来は食べ終わると、ごちそうさまでしたと言い、深夜に声をかけた。
叶といつのまにか食べ終わっていた絵馬は冷蔵庫にスライディングして言った。
「なぁ、深夜。」
未来が立ち上がり自分の食べ終わった皿をキッチンに運ぼうとしながら深夜を呼んだ。
深夜も皿を持ちながらこちらを向いた。
二人は一緒にキッチンに入って行き、皿を置いた。
「深夜って今日何時に起きた?」
深夜は何だそんなことかという風な顔をして答えた。
「五時ですよ。未来とあまり変わりません。それに、ここで嘘でも着いたらずっと見張ってるでしょう?」
未来はギクッとするとともに安心した。
深夜は昔から寝ていても熟睡状態にならないのでこのまえは一週間徹夜をしたのだ。
未来からしたら心配でたまらない。
ふと視線を感じると、やはり叶と絵馬だった。
結局四人はプリンを食べ終え、国王に会いに行くことになった。

この魔法科学校は国王が作ろうと言い出した場所だ。
なので学校の一番偉いのは国王となるのだ。
学校は国王のポケットマネーで成り立っている。

四人は寮を出て学校の本館の中心部にあたる校長室に向かった。
時刻は六時丁度。
朝早いせいか学校には四人以外の生徒は一人もいなかった。
廊下を歩く四人の足音だけが響いていた。

ガラガラ
叶が校長室の部屋を開ける。
未来は深夜の後ろから校長を覗くようにしている。
絵馬は深夜の隣でおとなしくしている。
深夜は制服の上から一つ大きいサイズの黒いパーカーを羽織ってフードを深くかぶっている。
この異世界では親なしは嫌われる。 
その上、黒髪は親なしの象徴だと言われている目立って仕方ない。
なので、フードを被ることにしたのだ。
まぁ深夜自身キレたらどうしようもないのだがな。
「やぁ、朝から早いな。」
国王が口を開く。
「やほ!国王!おはよー!」
重々しい空気の中、校長である国王にタメ口で会話できる勇者がここに居た。
流石だ叶。
三人は同時にそう感じた。
未来が叶の無礼を謝ろうと少し前に出て謝る。
右手は深夜と繋いでいる。その手は震え、どれだけ緊張しているのかよくわかった。
深夜はその手を強く掴み安心させるようにした。
「構わないよ。タメ口でもいい。叶。あの条件を忘れたのでは無いだろう。私と君達四人はもう友達だ。よろしき頼むよ。」
この国の一番偉い人と友達になるなど前代未聞だが、護衛は慣れているのか止めようとしなかった。
「よろしくにゃ!」
叶は嬉しそうにそう返した。
未来は国王が気分を悪くして居ないのがわかり安心し、深夜の顔を見てニコッと音が出そうなほど眩しい笑顔をした。
深夜は無言でフードをもっと深くかぶり未来の頭をガシガシと撫でた。
未来は恥ずかしそうにしていたが途中で叶や国王に見られていることに気づき、深夜に止めるように言った。
だが、深夜がそんな言葉に従うこともなく、ひたすら未来の頭を撫でていた。
国王と叶の周りには花が飛んでいる。

国王はコホンと咳をし、話を始めた。
「叶、未来、絵馬、そして深夜。この魔法科学校に通うことにしてくれてありがとう。君たちは素晴らしい力を感じる。
君たちは私からの推薦ということで試験は無い。クラスは別名最強クラスのSクラスだ。この学校は、クラスの実力ごとにポイントが配られている。Sクラスはこれまで実力で見れば最強だが、見下す癖があり、他のクラスからあまりしたわれていないのだ。この学校は学生証の端にあるポイントが零になると退学となる。一日に一度下のクラスの人間が上のクラスに戦線布告ができる時間がある。十二時から十三時の一時間だ。昼の時間だがらカフェテリアなどでの決闘は無しだが、校庭か実力室ならば思いっきりやってもらって構わない。因みに学生証は冒険者カードと同じ役割をする。だがら冒険者ギルドで学生証を出せば自分と同等か、それ以下の依頼なら受けられる。
パーティを組んでそのうちの八割が、依頼よりも上または、同等ならば全員で依頼を受けることができる。冒険者については冒険者ギルドで詳しく聞いてくれ。
学生証をなくした場合再発行として銅貨三枚必要だがら大切にするように。因みに学校のクラスは下からC、B、B +、A、A +、S、Nとなる。Nクラスは教員用のクラスだからな。生徒の中ではSが一番すごいからな。君たちならば私にも勝てるのだろうが、後でもステータスを確認するといいさ。Sクラスは東校舎の一番端だ。担任はこの世界の大賢者と呼ばれる奴だ。頑張るといいさ。」

国王の話が終わると叶は直ぐにステータスを確認したいと言った。
すると、国王は自分の座っている椅子の後ろから鑑定する板を取り出した。

一一一一一一一一一一一一一一一一一一
メイハク        45歳

種族、ヒューマン

L V、98

HP、578396/578396

MP、24763/24763

力、2300

知力、3622

耐久、76374

素早さ、2744

運、1542

属性、風

特殊能力、なし

固有スキル、三寒四温(身体強化)

武器、片手剣

一一一一一一一一一一一一一一一一一一

国王はこのステータスでも、世界二位らしい。
一位でさえ、レベル120が限界らしい。 
一位は召喚された勇者だという。
勇者として召喚された場合、目がさめるのは国王の豪華な椅子の前だ。
その上、勇者召喚された人はステータスを確認できるスキルが必ずつく。
この世界では勇者候補以外は普通召喚しようとはしない。
人生に一度しか使えないのだから召喚し放っておくよりも、国に貢献することができる勇者召喚の方が、名誉のことでも金のことでもずっといい。
だが、四人は召喚されたというのに目が覚めたのは雑草が生い茂る故郷の村だったし、スキルにステータスを確認することができるわけでも無い。
ならば四人は勇者召喚に巻き込まれたという事になる。
四人のステータスは来る前からずっとやっていたゲームのステータスと全く同じだ。
ゲームをこの世界でやってもレベルが上がるということもわかった。
つまり、四人はゲームでも現実でモンスターを倒してもレベルを上げることができるということだ。

四人はそれらのことを確認した後、四人は国王から学生証もとい、ギルドカードを受け取り、校長室を後にした。
四人は転入という形になるらしい。
ちなみに登校は明日からで、今日から正式に寮の一因となる。
四人は笑顔を交わした後冒険者ギルドに向かい正式に冒険者登校をする事にした。

学校を出て冒険者ギルドへの道を歩いて行くと何やら争いをしているらしかった。
しかも争っているのはギルドの目の前だ。
なんと迷惑なのだろうか。
争っていたのは二人の大男。
間にいる女の人を取り合っているのだろうか。
だが、女の人は受付という文字が入った腕輪をしていた。
多分ギルドの受付嬢だろう。
二人の男は酒が入っているらしく酷く酔っていた。
現在の時刻は八時である。
よくも朝っぱらから酒が飲める。
まだ十五歳だが尊敬できると未来は思った。
ふと隣を見るとか叶の姿が無かった。
まさかと思い男の方を見ると案の定叶が男と受付嬢の間に両手を広げ立っていた。
「ねえねえ、おじさん。この女の人に何しているのかにゃ?」
「あ?なんだお前。正義の味方か?なかなか良い女じゃねーか。どうだい?その受付嬢の代わりに俺の相手でもするかい?」
一人の男はジロジロと叶を舐め回すように見た。
そして、その男は壁の方に吹っ飛び、その壁に激突した。
叶が顔面を殴ったのだ。
「よ、よくも、親分を!お、オラァ!」
先程の男の子分だろうか、十人ほどの敵が叶に襲いかかって来る。
叶が相手をしている間に未来が受付嬢を男の前から離す。
叶は回し蹴りや飛び蹴りをお見舞いして見事に全員倒した。
後ろから鋭い殺気を感じる。
叶が慌てて振り返るとそこにはもう一人の男が片手剣を構えて居た。
「オレの事を忘れてもらっちゃわりーぜ。オレ様は王都で最強と謳われる剣士のレツ様だ!そこに居る赤髪と紫髮と黒髪いや親無しはお前さんの仲間だろう。どうだい。相手になってやるよ。」
「丁重にお断りいたします!」
叶はそう即答した。
だが、
「あやまあ、お前らに拒否権はないけどー?」
レツはそういうと剣を振りかぶり叶を狙った。
叶は伸縮可能な鎌を使いレツからの一撃を塞いだ。
それと同時に未来は両手剣を、絵馬は二つの剣を構えた。
深夜はスマホを操作させている。
レツについての情報収集だ。
深夜はある程度の事ならハッキングし、情報を集めることができる。
どうやらレツという男は弱い冒険者に勝負を挑み、金や防具など高価なものを巻き上げるような悪党らしい。
だが、剣の腕は魔法科学校卒業の剣士レベルらしく、受付嬢もその圧倒的な力の差になすすべがなかったらしい。
叶が鎌を振るうレツは攻撃を避ける。
なかなか勝負が決まらない。
そのとき、レツはわずか一メートルの距離から叶に風魔法中級の攻撃魔法フィリアを放った。
流石の叶でも避け切ることはできなかったのか、壁に激突した。
だが、叶の耐久は49677だ。
傷など作るはずがない。
だが叶は鎌を畳み、ポケットにしまった。
レツは深夜を指差して言った。
「よお、親無し。すげー強いオレ様に喧嘩売られるのは災難だったなぁ。まあすぐに殺してやるよ。いくぞ!」
レツは深夜の返事も待たずに剣を構え、深夜に向かって突っ込んでいった。
ハァ。
深夜がため息をつき言った。
「殺すなど、できるようになってから言って欲しいですね。未来の方がまだ楽しめますよ。」
深夜はそう言うと突進してくるレツのおでこにデコピンをした。
デコピンからは想像がつかないような音が鳴る。
レツが吹っ飛ぶ。
レツは壁に食い込み、泡を吹いて気絶していた。
深夜はパンパンと手をはらい脱げてしまったフードを再び深くかぶった。
未来はため息をついた。
自称有名な剣士がいたからか観客が大量にいた。
少しの沈黙の後、黄色い歓声と大量の拍手が聞こえた。
受付嬢が泣きながら感謝をしてくる。
そして、衝撃の事実を告げられた。






あのレツという男は世界第四位の実力の持ち主だという事を。
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