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第四章 王都エルシュタット
ガレット商会本店・パン屋【夢のはじまり】
しおりを挟む次の日、ユートは王都のとある大きな建物内にある応接室に座っていた
「さぁさぁユート様!こちらは当店自慢のお茶とお菓子です
こちらを飲みながらゆっくり商談しましょう!
そちらのユエル様にはこちらの果汁ジュースを用意しました」
「はぁ、では有難く頂きます」
「ゴクゴク・・・キュ~♪」
恰幅の良い男性が笑いながら勧めてくる
ユートはこの日、日用品や家具等を買いに王都の店を渡り歩いていた
すると街中で偶然出会ったアレックパーティに色々買うならガレット商会本店に行くといいよと言われガレット商会に来ていた
中に入り商品を物色していると目の前にいる男性に声を掛けられ自己紹介をするとすぐさまこの部屋に連れてこられた
ユートは出されたお茶を飲んでいると男性から話し始める
「私の名はガレット商会会長 ノーラン・ガレット
ユート様の噂はうちのジョーイから聞いていますよ!うちの護衛依頼を引き受けて頂いたとか
あのブランを救った方に護衛して頂けるとはいやはや運が良い!」
「こちらこそジョーイさんと繋がりが持てて良かったです。色々とお世話になりましたから」
その言葉を聞いたガレットは嬉しさのあまり目を大きく開きユートの手を強く握りしめ、体を震わせる
「そんな有難いお言葉を……我がガレット商会の総力を上げてでもユート様の欲しい物を集めさせていただきます!」
「そんなに凄い物が欲しいわけではないので…」
あはは…と笑いながらユートは話す
欲しい物をいくつかガレットに伝えるとガレットは小さいベルを鳴らし商会の従業員を呼び出す
数分後には従業員が持ってきた商品で部屋が溢れかえっていた
「こちらが当店のオススメする商品の一部になります
まだ他にもありますのでこちらの並んでいる物がお気に召さない場合はまたお持ちします」
ユートはそう言われ部屋一面に並べられた商品を次々物色し始める
商品が選び終わり会計を済ませ次々と収納していると慌てて部屋に入ってくる人がいた
「ユートさんお久しぶりです!」
「ジョーイさん!?お久しぶりです!ブランの街にいるはずのジョーイさんが何故王都に?」
ユートがそう話すとジョーイは理由を話した
ジョーイはユートがBランクに上がった後、すぐにAランク昇格の話が出ているのをマーキスから聞き、最初は試験が終わるまでガランで待っていようと思っていたのだが、ユートがグラウディンの素材を持ち帰った事を聞き、いてもたってもいられず慌てて王都にやって来たそうだ
「それで先程従業員からユートさんが来店されてると連絡が来まして」
「そうでしたか…」
「はい。ですので出来ればなのですが当店にも卸して頂けると幸いなのですが……」
「ジョーイ、卸して貰うとうちとしては有難いがおそらく国王様との話し合いが必要になる」
ジョーイの提案を聞き難しい顔をするガレット
グラウディンの素材は他のドラゴンとは違い、全く流通しない素材
生きる伝説の素材のため、手に入れる事はほぼゼロに近い代物だ
さらに国からの特殊依頼で手に入れた素材であるので素材の分配権利は第一に王国、第二にユート個人の順番で優先される為、一商会が独占はできない
その話を聞きなるほど。と思いながらユートが二人に提案する
「分配の件なのですがマーキスさんから話がありまして半分を王国で買取、残りは好きにしていいと言われました
武器や武具の素材として使いたいので少しガモンさんに渡しますが、残ってるのであればお譲り致しますよ」
ユートの提案を聞き二人互いの顔を見つめ抱擁する
少し時間が経ち二人は落ち着くとすぐに離れ椅子に座り直す
「ゴホン、失礼つい取り乱してしまいました
ではユートさん、素材の残りは全て当店で買取でよろしいでしょうか?」
「そうですね。冒険者ギルドの方も卸してもらいたいみたいなのでそこは話し合いをしてもらっても大丈夫ですか?」
「わかりました。では会長
私の方から冒険者ギルドに出向きすぐに取引を始めます
ユートさん、護衛依頼の件はまた後日お話致しましょう」
「頼んだジョーイ。少しでも多く勝ち取るように」
二人はにやりと悪い顔をするとジョーイはユートにお辞儀をして急いで部屋を出ていく
そこからガレットと少し話をしてユートは店を後にした
ガレット商会を出て少し歩くとユートはふと思い出す
「そういえばマーキスさんのパン屋はここから近いんだったな
まだ行ったことないし一度顔を出すか」
ユートは足早に夢のはじまりを目指す
少し歩くと飲食店が建ち並ぶ区間に辿り着く
ユートは周りを見渡しながら歩いていると
凄く大きな建物に挟まれた小さなお店:夢のはじまりの看板を見つけた
店内に入るとふわ~っとパンの香りに包まれる
「いらっしゃいませ!ただいま焼きたてのこちら、ビナンカ草とベア肉のベーコン入りパンがオススメですよ!」
可愛らしい少女がユートに向かって声を掛ける
オススメされたパンは焼きたての為、香りがより引き立ってユートの鼻を刺激する
ぐぅぅぅ…
「確かに美味しそうですね。それじゃそのパンを二つ」
「ありがとうございます!では二つで大銀貨1枚になります!」
ユートは懐から大銀貨を取り出し少女に渡す
少女は笑顔でパンを二つ紙に包み、ユートに手渡す
すると少女の背後からシャツ一枚のムキムキ姿の男が現れる
「おっ?ユートじゃないか!うちの店に来てくれたのか!」
「はいマーキスさん。今オススメのパンを買わせてもらいました」
少女は二人が親しく話す姿をキョロキョロと見る
「お父さんの知り合い?」
「そうだぞ~こいつはユートって言うんだ
お前よりに二つ歳は上だがこれでもAランク冒険者だ
なによりお前がいつも会いたいって言ってたブランの英雄だぞ?」
デレっとした表情で話すマーキス
その話を聞くと少女バッと振り向き目をキラキラさせユートの顔を見つめる
「わたしマイラって言います!
あなたがあのブランの英雄様なんですか!!わたしあなたの大ファンです!
あまり歳が違わないのにブランを救ったってお父さんから聞いた時一度会ってみたい!って思ってました!
あの~握手してください!」
マイラは興奮しながらユートに手を差し出す
ユートは少し苦笑いしながら握手する
「英雄って言われる程ではないですよ
街を守る為に当然の事をしたまでですし、英雄はあの時戦いに参加した人達全員です」
ユートは謙虚にそう話すとマイラはさらに目をキラキラさせ握手した手をぶんぶん振る
「でも一番活躍したのはユートさんってお父さんから聞きました!
お父さんがそう言うならそうなんです!」
ユートは後ろでデレデレしているマーキスをギロッと見る
「そんな目で見るなよ…一緒に戦ったアレックだってそう言ってるんだ
そろそろ認めてもいいんじゃないか?」
「はぁ~もう認めてはいますけどあまり話を大きくしないで下さいね」
ユートはマーキスに釘を刺しながらも認める
ユートは称号にブランの英雄と書かれているのでもう諦めていた
「マイラそれにな、この間もユートはあの伝説の竜グラウディンと戦ったんだぞ!」
「ええっ!!!!」
マイラが大きな声で驚くとユートの背中にぶら下がって寝ていたユエルが目を覚ました
「キュ・・・キュ~?」
「!?あーこの子可愛い~♪」
マイラはユエルに近づくとパンを小さくちぎりユエルに食べさせる
「キュ?モグモグ…キュキュ!キュ~♪」
「良かったなユエル
マーキスさんのパンが美味しかったみたいですよ」
「それは俺が命をかけて作ったパンだからな!」
マーキスが笑いながら自慢しているとマイラはユエルを抱き抱えパン次々に食べさせる
「ふふっユエルちゃん可愛いな~
お父さんうちもユエルちゃんみたいな可愛い子飼わないの?」
「マイラ、ユエルはグラウディンの娘だからな……同じのを飼うのは無理だ」
マイラはユエルがグラウディンの娘と聞くとびっくりはしたがすぐに納得したのかユエルをなでなでし始める
「そっか~だからユエルちゃんはこんなに可愛いんだ~」
「キュ!」
エッヘン!っと胸を張ってる様子で飛び上がるユエル
そのままユートの頭に降り、羽をパタパタさせご機嫌そうなユエルであった
「じゃあまた買いに来ます」
「いつでもこい!欲しいパンがあったら作ってやるからな!」
「ユートさん、ユエルちゃんまた来てね!」
二人は店先でユート達に手を振る
ユートは手を振りユエルは尻尾をブンブン振り返す
「ちょっと日も落ちて少し暗いからさっさと帰るか」
「キュー!」
二人は自分達のマイホームに帰っていった
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