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そんなリディをシメオンは憐憫の眼差しで見つめ語りかける。
「ブランデ侯爵令嬢、私はただアメリと幸せに暮らしたいだけだ。君こそこんな嘘偽りや人を蔑み陥れるような下卑た行為をして何がしたかったんだ?」
すると、鋭い眼差しでシメオンを睨み付けてリディは言った。
「私はただ幸せになりたかっただけですわ!」
その言葉にアメリは怒りを覚えた。
「他人の不幸の上にある幸せなんて、そんなもの幻想に過ぎません。そんな考え方をしているうちは、貴女に本当の幸せが訪れることなんて絶対にない!!」
そう叫んで涙をこぼすアメリを、シメオンは強く抱きしめた。それを見てリディは叫んだ。
「なによ、この女! 可愛い子ぶって自分の方が正しいみたいな顔して!! わざわざこんなに大勢の前で私を陥れて、断罪のつもり?!」
シメオンがそれに答える。
「断罪? そもそも君が自分勝手に振る舞い、我々に関わってこなければこんなことにはならなかったはずだ。そして、今日も君が騒がなければ穏便にすませることができたものを。墓穴を掘ったな」
それを聞いたリディは、突然奇声を発するとアメリを睨み付け、殴りかかろうとした。が、その場にいた使用人たちに取り押さえられる。
それを見て吐き捨てるようにシメオンは言った。
「侯爵令嬢ともあろうものが、こんなことをするとはね。早く連れて行ってくれ」
シメオンがそう言うと、使用人たちによってリディは部屋の外へ連れていかれた。
その時、エステルが手を叩き大きな音をたて自身に注目を集めると微笑んだ。
「本日はみなさんに不快な思いをさせてしまってごめんなさいね。このまま楽しくディナーをいただく気持ちにはなれないかもしれませんし、今日はお開きにさせてもらいますわ。でも、せっかく来ていただいたのだし、ディナーを楽しみたい方はどうぞ楽しんでくださいな。それと、お詫びと言ってはなんですけれど、お土産を用意させてもらいますわね」
それを聞いても、席を立つ招待客はいなかった。シメオンとアメリが席に着くと、結局そのまま晩餐会が開催されることとなった。
先ほどのことについて労う言葉はあれど、咎める者は一人もいなかった。それに、アメリとシメオンの婚姻について祝福の言葉が多く聞かれた。
色々あったものの、その後は問題なく晩餐会は終わった。
どっと疲れもしたが、アメリはシメオンが本当にリディのことをなんとも思っていなかったのだと、今回のことで確信してほっとした。
アメリは二人の部屋に戻ると、シメオンに抱きかかえられながら不思議に思ったことを質問した。
「ブランデ侯爵令嬢が城下から追放されたとは、どういうことなんですの?」
シメオンは苦笑して答える。
「ブランデ侯爵令嬢は城下でも相当やらかしたらしい。その噂は聞いていたから、今回のことも国王に報告したんだ。すると王太子殿下から手紙がきてね、やり取りしているうちにあの書状が届いたというわけさ」
「そうなんですの。一体なにをしたのかしら……」
「さぁね。私も詳しいことは知らない。ただ王太子殿下は『リディの顔は二度と見たくない』と手紙に書いていたぐらいだから、相当なことをしたのだろう」
「王太子殿下がそんなことを仰るなんて」
「そうなんだ。私も驚いた」
ゲームの内容とずいぶん話が違うとアメリは驚いた。そして不意にもう一つ聞いておかなければならないことを思い出した。
「シメオン様、それともう一つお聞きしたいことがあります。シメオン様はバッカーイの森で私が治療魔法を使ったのをいつからご存知だったのですか?」
「あの時私は見たんだ。矢に射られ混濁する意識の中で君が私に治療魔法かけてくれていたのを。それに、ブランデ侯爵令嬢がタイミング良くどこからともなく現れ君を突飛ばし怪我をさせたことも」
そう言うと、その時に怪我した額にキスした。
「あの時、ブランデ侯爵令嬢を突き放して君を抱きしめたかったが、まだ体力が回復しきっていなかったのか体が動かなくて、君を守れなかったことが今でも悔やまれる」
「毒を受けたのですもの仕方ありませんわ。それに今日、私を守ってくださったではありませんか」
「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」
そう言って微笑むシメオンの胸にアメリは顔を埋めた。
こうしてリディと決着をつけたアメリは、結婚式までに覚えなければならないマナーを身に付け、魔法学をしっかり学んだ。
もともとバロー家で教養を学ばせてもらっていたアメリにとって、それらはさほど難しいことではなかったが、忙しいことには変わりなかった。
その忙しい合間を縫って、シメオンと共にアメリはボドワン家にも挨拶をしにいった。アメリはとても緊張していたが、祖父であるリカルドは優しくアメリを迎え入れた。
「お前は、亡くなった私の妻にそっくりだ。お前に会えたことは、まるで奇跡のようだよ。さぁ、おいで今までつらい思いをしてきたのではないか?」
そう言ってアメリの頭を優しく撫でるリカルドに、アメリは感動して涙を流した。そして、改めて家族の暖かさを感じた。
「お祖父様、ありがとうございます。私もお祖父様に会えたこと、とても嬉しく思います。それに私はバロー家でとても大切にしてもらっていますし、お祖父様にもこうして会えてとても幸せです」
すると、それを聞いてリカルドはテランスに向き直る。
「テランス、お前は素晴らしい娘をもったな。私は誇らしい」
そう言って、アメリとテランスの手を取り重ねると微笑んだ。
リカルドはアメリが今までどうバロー家で過ごしたのか、母親のステラはどんな人物だったのかを聞きたがった。
アメリはステラとの思い出や、バロー家での思い出を事細かに話して聞かせると最後に、シメオンとの婚姻報告をした。
リカルドはとても喜び、アメリとシメオンを祝福してくれた。
たった数日の滞在だったが、一気にお互いの距離が縮んだ気がした。
こうして着々と結婚式までの半年という短いあいだになんとかすべての準備を終えると、無事に結婚式当日を迎えることができた。
アメリはファニーがデザインしてくれたドレスを眺める。
「このドレス、私とても気に入ってますの。これを着てシメオン様のとなりに立てるなんて、本当に夢のようですわ」
そう言って喜ぶアメリをシメオンは眩しそうに見つめ抱きしめた。
「良かった、君が私を望んでくれて。さぁ、今日はお互いに忙しくなる。早く支度をしなければね」
ファニーのデザインしたドレスは本当に素晴らしいものだった。
幾重にも美しいレースが上から下までふんだんに使われており、腰の切り返しのところに薔薇モチーフの装飾が後ろに向かって流れるように飾られている。
そのドレスに身を包まれ最後に美しいケープを身に付けるとアメリは幸せを噛みしめた。
アメリがそのドレスを着てシメオンの前に姿を現すと、シメオンは言葉もなくじっとアメリを見つめた。
「どう、でしょうか?」
「とても、とても美しいよ……。君とこうしていられるなんて、本当に夢のようだ。ここ数日ふわふわした気持ちになって、とても落ち着かなかった。アメリ、本当に私を選んでくれてありがとう」
「お礼を言いたいのは私の方ですわ。シメオンこそ今まで私を支えてくださってありがとう」
シメオンはアメリの手を取り手の甲にキスをすると微笑んだ。
「私は君がそう言う人だから惹かれた。子供のころから、いや、きっと初めて会ったときから君を愛してる」
そう言うとアメリに口づけ、二人揃ってゆっくり式場に足を踏み入れた。
こうして盛大に式が執り行われ、二人は領民、両家、近隣の貴族たちにも祝福された。
式のあと、アメリはシメオンに目隠しをされある場所に連れていかれた。
「もう、なんですの? まだ目隠しを取ってはだめ?」
「もう少しまって。さぁ、ここに立って。体の向きはこっち。よし、じゃあ目隠しを外していいよ」
そう言われ目隠しを取ると、目の前に立派な屋敷が建っていた。アメリは戸惑いながらシメオンに訊く。
「ここはどこですの? それにあの屋敷は?」
「しばらく二人だけで住む私たちだけの別荘だよ。私たちは今まで忙しすぎた。だからしばらく二人きりでゆっくり過ごしていいと父から暇をもらった。この別荘は私から君へのプレゼントだ」
アメリは驚いて振り返りシメオンを見上げた。
「それは本当ですの?」
「そうだよ。少し物足りない?」
アメリは首を振るとシメオンに抱きついた。
「シメオン、ありがとう。別荘よりも二人きりで過ごせるのがとても嬉しいですわ!!」
「良かった。私も今日からの日々が楽しみだ」
シメオンはそのままアメリを抱き上げると、その場でくるくると回転し、アメリを抱きかかえたまま屋敷へと向かって行った。
色々あったものの、悪役令嬢で断罪か不幸な結婚の二択しかなかったアメリは、シメオンに溺愛されたことによって、幸せのうちにその生涯を終えることができたのでした。
「ブランデ侯爵令嬢、私はただアメリと幸せに暮らしたいだけだ。君こそこんな嘘偽りや人を蔑み陥れるような下卑た行為をして何がしたかったんだ?」
すると、鋭い眼差しでシメオンを睨み付けてリディは言った。
「私はただ幸せになりたかっただけですわ!」
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それを聞いたリディは、突然奇声を発するとアメリを睨み付け、殴りかかろうとした。が、その場にいた使用人たちに取り押さえられる。
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シメオンがそう言うと、使用人たちによってリディは部屋の外へ連れていかれた。
その時、エステルが手を叩き大きな音をたて自身に注目を集めると微笑んだ。
「本日はみなさんに不快な思いをさせてしまってごめんなさいね。このまま楽しくディナーをいただく気持ちにはなれないかもしれませんし、今日はお開きにさせてもらいますわ。でも、せっかく来ていただいたのだし、ディナーを楽しみたい方はどうぞ楽しんでくださいな。それと、お詫びと言ってはなんですけれど、お土産を用意させてもらいますわね」
それを聞いても、席を立つ招待客はいなかった。シメオンとアメリが席に着くと、結局そのまま晩餐会が開催されることとなった。
先ほどのことについて労う言葉はあれど、咎める者は一人もいなかった。それに、アメリとシメオンの婚姻について祝福の言葉が多く聞かれた。
色々あったものの、その後は問題なく晩餐会は終わった。
どっと疲れもしたが、アメリはシメオンが本当にリディのことをなんとも思っていなかったのだと、今回のことで確信してほっとした。
アメリは二人の部屋に戻ると、シメオンに抱きかかえられながら不思議に思ったことを質問した。
「ブランデ侯爵令嬢が城下から追放されたとは、どういうことなんですの?」
シメオンは苦笑して答える。
「ブランデ侯爵令嬢は城下でも相当やらかしたらしい。その噂は聞いていたから、今回のことも国王に報告したんだ。すると王太子殿下から手紙がきてね、やり取りしているうちにあの書状が届いたというわけさ」
「そうなんですの。一体なにをしたのかしら……」
「さぁね。私も詳しいことは知らない。ただ王太子殿下は『リディの顔は二度と見たくない』と手紙に書いていたぐらいだから、相当なことをしたのだろう」
「王太子殿下がそんなことを仰るなんて」
「そうなんだ。私も驚いた」
ゲームの内容とずいぶん話が違うとアメリは驚いた。そして不意にもう一つ聞いておかなければならないことを思い出した。
「シメオン様、それともう一つお聞きしたいことがあります。シメオン様はバッカーイの森で私が治療魔法を使ったのをいつからご存知だったのですか?」
「あの時私は見たんだ。矢に射られ混濁する意識の中で君が私に治療魔法かけてくれていたのを。それに、ブランデ侯爵令嬢がタイミング良くどこからともなく現れ君を突飛ばし怪我をさせたことも」
そう言うと、その時に怪我した額にキスした。
「あの時、ブランデ侯爵令嬢を突き放して君を抱きしめたかったが、まだ体力が回復しきっていなかったのか体が動かなくて、君を守れなかったことが今でも悔やまれる」
「毒を受けたのですもの仕方ありませんわ。それに今日、私を守ってくださったではありませんか」
「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」
そう言って微笑むシメオンの胸にアメリは顔を埋めた。
こうしてリディと決着をつけたアメリは、結婚式までに覚えなければならないマナーを身に付け、魔法学をしっかり学んだ。
もともとバロー家で教養を学ばせてもらっていたアメリにとって、それらはさほど難しいことではなかったが、忙しいことには変わりなかった。
その忙しい合間を縫って、シメオンと共にアメリはボドワン家にも挨拶をしにいった。アメリはとても緊張していたが、祖父であるリカルドは優しくアメリを迎え入れた。
「お前は、亡くなった私の妻にそっくりだ。お前に会えたことは、まるで奇跡のようだよ。さぁ、おいで今までつらい思いをしてきたのではないか?」
そう言ってアメリの頭を優しく撫でるリカルドに、アメリは感動して涙を流した。そして、改めて家族の暖かさを感じた。
「お祖父様、ありがとうございます。私もお祖父様に会えたこと、とても嬉しく思います。それに私はバロー家でとても大切にしてもらっていますし、お祖父様にもこうして会えてとても幸せです」
すると、それを聞いてリカルドはテランスに向き直る。
「テランス、お前は素晴らしい娘をもったな。私は誇らしい」
そう言って、アメリとテランスの手を取り重ねると微笑んだ。
リカルドはアメリが今までどうバロー家で過ごしたのか、母親のステラはどんな人物だったのかを聞きたがった。
アメリはステラとの思い出や、バロー家での思い出を事細かに話して聞かせると最後に、シメオンとの婚姻報告をした。
リカルドはとても喜び、アメリとシメオンを祝福してくれた。
たった数日の滞在だったが、一気にお互いの距離が縮んだ気がした。
こうして着々と結婚式までの半年という短いあいだになんとかすべての準備を終えると、無事に結婚式当日を迎えることができた。
アメリはファニーがデザインしてくれたドレスを眺める。
「このドレス、私とても気に入ってますの。これを着てシメオン様のとなりに立てるなんて、本当に夢のようですわ」
そう言って喜ぶアメリをシメオンは眩しそうに見つめ抱きしめた。
「良かった、君が私を望んでくれて。さぁ、今日はお互いに忙しくなる。早く支度をしなければね」
ファニーのデザインしたドレスは本当に素晴らしいものだった。
幾重にも美しいレースが上から下までふんだんに使われており、腰の切り返しのところに薔薇モチーフの装飾が後ろに向かって流れるように飾られている。
そのドレスに身を包まれ最後に美しいケープを身に付けるとアメリは幸せを噛みしめた。
アメリがそのドレスを着てシメオンの前に姿を現すと、シメオンは言葉もなくじっとアメリを見つめた。
「どう、でしょうか?」
「とても、とても美しいよ……。君とこうしていられるなんて、本当に夢のようだ。ここ数日ふわふわした気持ちになって、とても落ち着かなかった。アメリ、本当に私を選んでくれてありがとう」
「お礼を言いたいのは私の方ですわ。シメオンこそ今まで私を支えてくださってありがとう」
シメオンはアメリの手を取り手の甲にキスをすると微笑んだ。
「私は君がそう言う人だから惹かれた。子供のころから、いや、きっと初めて会ったときから君を愛してる」
そう言うとアメリに口づけ、二人揃ってゆっくり式場に足を踏み入れた。
こうして盛大に式が執り行われ、二人は領民、両家、近隣の貴族たちにも祝福された。
式のあと、アメリはシメオンに目隠しをされある場所に連れていかれた。
「もう、なんですの? まだ目隠しを取ってはだめ?」
「もう少しまって。さぁ、ここに立って。体の向きはこっち。よし、じゃあ目隠しを外していいよ」
そう言われ目隠しを取ると、目の前に立派な屋敷が建っていた。アメリは戸惑いながらシメオンに訊く。
「ここはどこですの? それにあの屋敷は?」
「しばらく二人だけで住む私たちだけの別荘だよ。私たちは今まで忙しすぎた。だからしばらく二人きりでゆっくり過ごしていいと父から暇をもらった。この別荘は私から君へのプレゼントだ」
アメリは驚いて振り返りシメオンを見上げた。
「それは本当ですの?」
「そうだよ。少し物足りない?」
アメリは首を振るとシメオンに抱きついた。
「シメオン、ありがとう。別荘よりも二人きりで過ごせるのがとても嬉しいですわ!!」
「良かった。私も今日からの日々が楽しみだ」
シメオンはそのままアメリを抱き上げると、その場でくるくると回転し、アメリを抱きかかえたまま屋敷へと向かって行った。
色々あったものの、悪役令嬢で断罪か不幸な結婚の二択しかなかったアメリは、シメオンに溺愛されたことによって、幸せのうちにその生涯を終えることができたのでした。
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