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「なんでもありませんわ」
「そうなのか? 私としては君に少しでも嫉妬してもらえていたら嬉しいんだが」
そう言うとエルヴェは改めて正面からアリエルを抱き締めた。
「とにかく君を見つけることができて本当に安心した。散々探したんだ。フィリップは『娘は安全な場所にいる』とだけ言って君の居場所を教えてくれなかったしね。早く見つけないと君がこの国から出ていってしまうのではないかと、私は気が気ではなかった」
そして少し体を離してアリエルの顔を見つめる。
「そこのベンチで少し話をしよう」
「はい」
アリエルはエルヴェに手を引かれ並んでベンチに座ると、前方をしばらくぼんやり見つめたあと言った。
「やはり、殿下は気が変わってアラベルを好きになるかもしれませんわ……。それなら最初からアラベルと婚約された方が私にとっても、殿下にとってもいいことかもしれませんわね」
するとエルヴェは慌てて答える。
「アリエル、君が私を信用しきれない気持ちはよくわかっているつもりだ。だが、それだけは絶対にない、断言できる」
エルヴェはそう言うとアリエルの顔を覗き込む。
「私は知っているんだ。君がどれだけ私との再会を楽しみにしていたか、私に刺繍入りのハンカチを贈るためにどれだけ練習を重ねてきたか、そして私の隣に並ぶためにどれだけ努力をしてきたのかも」
アリエルは驚いてエルヴェを見つめた。エルヴェは微笑むと話を続ける。
「だが、それらはすべて人伝で聞いてきたことだ。人伝にではなく、これからは君の口からそういった君自身の話をたくさん聞きたい」
「私自身のことをですの?」
「そうだ、君自身のことだ。なんでもいい、例えば好きな花や好きな色。今までで一番楽しかったことや、つらかったこと。それ以外にもどんなに些細な日常のことでも私は君のことならすべて知りたいんだよ」
そう言ってアリエルの頬を指先でなでると話を続ける。
「そして、願わくば君にも私のことをもっと知ってほしい。そうしてお互いにお互いのことを知りながら、ゆっくり君の中で私に対する愛を育んでほしい」
アリエルはエルヴェの瞳をじっと見つめながら涙をこぼした。
「でも怖いんですの、殿下を信じてまた裏切られることが……」
エルヴェはポロポロと流れるアリエルの涙を拭うと強く抱きしめた。
「君につらい思いばかりさせてしまって本当にすまない。だが、私は今度こそ君を裏切らない。私は君を心から愛している。君だけだ、私は君しかいらないんだ。君を愛している」
「本当に、本当に信じてもいいんですの?」
「信じてほしい、これから一生かけてでもそれを証明するから」
アリエルは涙が止まらなくなりエルヴェの胸の中で泣き続けた。エルヴェはアリエルの気が済むまでずっと黙ってアリエルの背中を撫で続けた。
アリエルはやっと涙が止まり落ち着いてきたところで、体を少し離してエルヴェの顔を見つめた。
エルヴェは不安そうな顔でアリエルを見つめ返し、返事をまっている。その顔を見てアリエルはもう一度だけエルヴェを信じようと思った。
「わかりました、殿下を信じようと思います」
「ありがとう、アリエル。本当にありがとう」
微笑むと、エルヴェはもう一度アリエルを抱きしめた。
お互いにお互いの存在を確認するかのように抱き合っていたが、しばらくしてエルヴェは体を離すとアリエルの顔を見つめる。そして少し躊躇いながら言った。
「私は君に打ち明けなければならないことがある」
「打ち明けなければならないこと、ですの?」
エルヴェは頷くと、深呼吸した。
「それを聞いたら君は私を嫌いになるかもしれない。だから今の私には、まだそれを君に話す覚悟ができていないんだ。でも近いうちに必ず君にそれを話そうと思う。待っていてくれるか?」
「わかりました、私は殿下を信じると今決めたのですから、殿下を信じて話してくれるのを待ちます」
するとエルヴェはアリエルの額に自身の額をくっつけ、手を握った。
「私は君に甘えてばかりだ。君を裏切り、君を傷つけた。そんな私を信じてくれてありがとう」
そうしてそこでしばらく過ごしたのち、額を離すとエルヴェが言った。
「君は一度屋敷へ戻った方がいいだろう。それと、この前のお茶会は君が居なくなってしまったので中止になった。もう一度改めて開催予定なのだが、それに来てくれないだろうか?」
アリエルは驚いてエルヴェを見つめた。
「まさか、私が帰っただけで?」
「そうだ。私もオパールも君が行方不明でお茶会どころでは……」
アリエルは慌てて頭をさげた。
「申し訳ありません」
「謝る必要はない。そもそもアラベルがドレスを盗んだ時点で、あのお茶会は中止にすべきだったのだ。さぁ、とにかくもどろう」
そう言って微笑むと立ち上がった。それに続いてアリエルも立ち上がると、エルヴェが思い出したようにアリエルの足元を見た。
「そういえば君は靴を履いていなかったね」
アリエルはそう言われて自分の足元に視線を落としたあと、エルヴェの顔を見て恥ずかしそうに笑った。
「そういえば、そうでしたわ」
エルヴェとアリエルは自分たちが走ってきた場所を振り返る。すると、ヒールが点々と落ちているのが見えた。それを見て二人は互いに見つめ合うと、こらえきれずに笑い合った。
「君はここで座っていて。私が拾ってこよう」
エルヴェはそう言ってアリエルをベンチに座らせ、落としたヒールを拾ってくるとアリエルの足元に跪いた。
「殿下、そのようなことを殿下がなさるなんて!」
「いや、させてほしい」
そう言って膝にアリエルの足を乗せヒールを履かせた。アリエルは恥ずかしくて顔を覆っていたが、そんなアリエルをエルヴェは優しい眼差しで見つめた。
そして、立ち上がるとアリエルに手をさしのべる。
「さぁ、行こう」
アリエルはその手をしっかりつかむと立ち上がった。
ファニーは二人が一緒に居るのを見ると、残念そうに言った。
「やっぱり、王子が迎えにきちゃったね」
「ファニー、アリエルを今まで保護してくれたこと感謝する」
「別に王子のためじゃないから、感謝はいらないかなぁ~。あ、そうそう、ドレスができてるよ。サファイアのやつ」
「そうか」
そう言うとエルヴェはアリエルに向き直る。
「君にドレスをプレゼントしたい。次のお茶会で着てほしいのだが着てくれるか?」
「はい、もちろんです。ありがとうございます」
「よかった。だが、またアラベルに盗まれる恐れもあるから、ドレスはこちらで預かってもらう。いいね?」
「はい、よろしくお願いいたします」
アリエルはファニーに挨拶を済ませると、アンナと共に三日ぶりにホラント家へ戻った。
エントランスに入るとベルタが出迎えてくれた。
「おかえりなさいアリエル。とても心配しましたのよ? でも、貴女が帰ってきてくれてお母様は安心しましたわ」
「お母様、ごめんなさい」
ベルタは優しく微笑むと、アリエルの肩をだいてフィリップの書斎までアリエルを連れていった。
書斎に入ると、フィリップは後ろに手を組んで窓の外を眺めており、振り返らずに言った。
「アリエル、心の整理はできたか?」
「はい、お父様。ご迷惑をおかけしました」
「うん、帰ってきたからそれでいい。だが、次は行動に移す前に私に言いなさい」
「はい」
「わかったならいい」
そう言うと、そこで言葉を切りしばらく沈黙したのち続ける。
「アラベルにはお前が家出をしていたことを言っていない。体調が悪くて療養してきたと話してあるから、何か聞かれたらそう答えなさい」
「はい、わかりました。では失礼します」
そう言ってアリエルが部屋を出ると、廊下でベルタが待っていた。
「お父様はね、とっても貴女のことを心配してらしたのよ? でもちゃんと貴女が手紙をくれたから戻って来るって信じて待ってらしたみたい。さぁ、今日はとにかくゆっくり休みなさい」
そう言って部屋まで送ってくれた。アリエルは両親の優しさに心から感謝した。
その後数日間、屋敷内でアラベルに会うことが何度かあったが、アラベルはその度にアリエルに同情するかのような眼差しを向けるだけで、なにか言ってくるということはなかった。
アリエルも、アラベルにはなるべく関わらないようにして過ごした。
「そうなのか? 私としては君に少しでも嫉妬してもらえていたら嬉しいんだが」
そう言うとエルヴェは改めて正面からアリエルを抱き締めた。
「とにかく君を見つけることができて本当に安心した。散々探したんだ。フィリップは『娘は安全な場所にいる』とだけ言って君の居場所を教えてくれなかったしね。早く見つけないと君がこの国から出ていってしまうのではないかと、私は気が気ではなかった」
そして少し体を離してアリエルの顔を見つめる。
「そこのベンチで少し話をしよう」
「はい」
アリエルはエルヴェに手を引かれ並んでベンチに座ると、前方をしばらくぼんやり見つめたあと言った。
「やはり、殿下は気が変わってアラベルを好きになるかもしれませんわ……。それなら最初からアラベルと婚約された方が私にとっても、殿下にとってもいいことかもしれませんわね」
するとエルヴェは慌てて答える。
「アリエル、君が私を信用しきれない気持ちはよくわかっているつもりだ。だが、それだけは絶対にない、断言できる」
エルヴェはそう言うとアリエルの顔を覗き込む。
「私は知っているんだ。君がどれだけ私との再会を楽しみにしていたか、私に刺繍入りのハンカチを贈るためにどれだけ練習を重ねてきたか、そして私の隣に並ぶためにどれだけ努力をしてきたのかも」
アリエルは驚いてエルヴェを見つめた。エルヴェは微笑むと話を続ける。
「だが、それらはすべて人伝で聞いてきたことだ。人伝にではなく、これからは君の口からそういった君自身の話をたくさん聞きたい」
「私自身のことをですの?」
「そうだ、君自身のことだ。なんでもいい、例えば好きな花や好きな色。今までで一番楽しかったことや、つらかったこと。それ以外にもどんなに些細な日常のことでも私は君のことならすべて知りたいんだよ」
そう言ってアリエルの頬を指先でなでると話を続ける。
「そして、願わくば君にも私のことをもっと知ってほしい。そうしてお互いにお互いのことを知りながら、ゆっくり君の中で私に対する愛を育んでほしい」
アリエルはエルヴェの瞳をじっと見つめながら涙をこぼした。
「でも怖いんですの、殿下を信じてまた裏切られることが……」
エルヴェはポロポロと流れるアリエルの涙を拭うと強く抱きしめた。
「君につらい思いばかりさせてしまって本当にすまない。だが、私は今度こそ君を裏切らない。私は君を心から愛している。君だけだ、私は君しかいらないんだ。君を愛している」
「本当に、本当に信じてもいいんですの?」
「信じてほしい、これから一生かけてでもそれを証明するから」
アリエルは涙が止まらなくなりエルヴェの胸の中で泣き続けた。エルヴェはアリエルの気が済むまでずっと黙ってアリエルの背中を撫で続けた。
アリエルはやっと涙が止まり落ち着いてきたところで、体を少し離してエルヴェの顔を見つめた。
エルヴェは不安そうな顔でアリエルを見つめ返し、返事をまっている。その顔を見てアリエルはもう一度だけエルヴェを信じようと思った。
「わかりました、殿下を信じようと思います」
「ありがとう、アリエル。本当にありがとう」
微笑むと、エルヴェはもう一度アリエルを抱きしめた。
お互いにお互いの存在を確認するかのように抱き合っていたが、しばらくしてエルヴェは体を離すとアリエルの顔を見つめる。そして少し躊躇いながら言った。
「私は君に打ち明けなければならないことがある」
「打ち明けなければならないこと、ですの?」
エルヴェは頷くと、深呼吸した。
「それを聞いたら君は私を嫌いになるかもしれない。だから今の私には、まだそれを君に話す覚悟ができていないんだ。でも近いうちに必ず君にそれを話そうと思う。待っていてくれるか?」
「わかりました、私は殿下を信じると今決めたのですから、殿下を信じて話してくれるのを待ちます」
するとエルヴェはアリエルの額に自身の額をくっつけ、手を握った。
「私は君に甘えてばかりだ。君を裏切り、君を傷つけた。そんな私を信じてくれてありがとう」
そうしてそこでしばらく過ごしたのち、額を離すとエルヴェが言った。
「君は一度屋敷へ戻った方がいいだろう。それと、この前のお茶会は君が居なくなってしまったので中止になった。もう一度改めて開催予定なのだが、それに来てくれないだろうか?」
アリエルは驚いてエルヴェを見つめた。
「まさか、私が帰っただけで?」
「そうだ。私もオパールも君が行方不明でお茶会どころでは……」
アリエルは慌てて頭をさげた。
「申し訳ありません」
「謝る必要はない。そもそもアラベルがドレスを盗んだ時点で、あのお茶会は中止にすべきだったのだ。さぁ、とにかくもどろう」
そう言って微笑むと立ち上がった。それに続いてアリエルも立ち上がると、エルヴェが思い出したようにアリエルの足元を見た。
「そういえば君は靴を履いていなかったね」
アリエルはそう言われて自分の足元に視線を落としたあと、エルヴェの顔を見て恥ずかしそうに笑った。
「そういえば、そうでしたわ」
エルヴェとアリエルは自分たちが走ってきた場所を振り返る。すると、ヒールが点々と落ちているのが見えた。それを見て二人は互いに見つめ合うと、こらえきれずに笑い合った。
「君はここで座っていて。私が拾ってこよう」
エルヴェはそう言ってアリエルをベンチに座らせ、落としたヒールを拾ってくるとアリエルの足元に跪いた。
「殿下、そのようなことを殿下がなさるなんて!」
「いや、させてほしい」
そう言って膝にアリエルの足を乗せヒールを履かせた。アリエルは恥ずかしくて顔を覆っていたが、そんなアリエルをエルヴェは優しい眼差しで見つめた。
そして、立ち上がるとアリエルに手をさしのべる。
「さぁ、行こう」
アリエルはその手をしっかりつかむと立ち上がった。
ファニーは二人が一緒に居るのを見ると、残念そうに言った。
「やっぱり、王子が迎えにきちゃったね」
「ファニー、アリエルを今まで保護してくれたこと感謝する」
「別に王子のためじゃないから、感謝はいらないかなぁ~。あ、そうそう、ドレスができてるよ。サファイアのやつ」
「そうか」
そう言うとエルヴェはアリエルに向き直る。
「君にドレスをプレゼントしたい。次のお茶会で着てほしいのだが着てくれるか?」
「はい、もちろんです。ありがとうございます」
「よかった。だが、またアラベルに盗まれる恐れもあるから、ドレスはこちらで預かってもらう。いいね?」
「はい、よろしくお願いいたします」
アリエルはファニーに挨拶を済ませると、アンナと共に三日ぶりにホラント家へ戻った。
エントランスに入るとベルタが出迎えてくれた。
「おかえりなさいアリエル。とても心配しましたのよ? でも、貴女が帰ってきてくれてお母様は安心しましたわ」
「お母様、ごめんなさい」
ベルタは優しく微笑むと、アリエルの肩をだいてフィリップの書斎までアリエルを連れていった。
書斎に入ると、フィリップは後ろに手を組んで窓の外を眺めており、振り返らずに言った。
「アリエル、心の整理はできたか?」
「はい、お父様。ご迷惑をおかけしました」
「うん、帰ってきたからそれでいい。だが、次は行動に移す前に私に言いなさい」
「はい」
「わかったならいい」
そう言うと、そこで言葉を切りしばらく沈黙したのち続ける。
「アラベルにはお前が家出をしていたことを言っていない。体調が悪くて療養してきたと話してあるから、何か聞かれたらそう答えなさい」
「はい、わかりました。では失礼します」
そう言ってアリエルが部屋を出ると、廊下でベルタが待っていた。
「お父様はね、とっても貴女のことを心配してらしたのよ? でもちゃんと貴女が手紙をくれたから戻って来るって信じて待ってらしたみたい。さぁ、今日はとにかくゆっくり休みなさい」
そう言って部屋まで送ってくれた。アリエルは両親の優しさに心から感謝した。
その後数日間、屋敷内でアラベルに会うことが何度かあったが、アラベルはその度にアリエルに同情するかのような眼差しを向けるだけで、なにか言ってくるということはなかった。
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