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アリエルはその気迫に呆気にとられていたが、その後も何度も名で呼ぶように催促され仕方なしに名を呼んだ。
「オパール様……」
「お姉様ってば、敬称もいりませんわ。名で呼んで下さい」
「オパール?」
すると、オパールは満面の笑みで答える。
「お姉様、なぁに?」
アリエルはそんなオパールが可愛らしく感じて、思わず頭を撫でた。そして、失礼なことをしてしまったと気づき慌てて手を引っ込めると頭を下げた。
「ハイライン公爵令嬢、失礼なことをしてしまい大変申し訳ありませんでした」
すると、オパールはむくれた。
「なぜ謝るのです? 私はとても嬉しかったですのに!」
「わかりました、善処いたします」
するとオパールはアリエルの腕にしがみついた。
「嬉しい! お姉様よろしくお願いしますわ!」
それをきっかけにアリエルは、毎日オパールの屋敷にお茶に誘われるようになった。そんなアリエルを見て、朝食の席でアラベルが言った。
「お姉様しか誘われないなんて、きっと私はオパール様に嫌われているのですね……」
それを聞いてアリエルは、知り合ってもいないのだから誘われるはずがないのになにを言っているのかと思いながら答えた。
「アラベル、貴女ハイライン公爵令嬢とお話ししたことがありますの?」
「もちろんありませんわ。話したことがあれば、私をお誘いくださるはずですもの。でも、先日の舞踏会で私は挨拶できませんでしたから私に遠慮しているのですわ。それに、お姉様もドレスを汚されたからと言って恩着せがましくしては嫌われてしまいますわよ?」
思い切りため息をつくとアリエルは言った。
「面識がないなら誘われなくとも仕方のないことですわ」
そこでベルタが口を挟む。
「アラベル、お姉様を困らせてはいけません。ハイライン公爵令嬢と知り合いになれば貴女も誘われるかもしれないからそれまで待ちなさい」
それを聞いてアラベルは明らかにがっかりした顔をした。
「そんな、姉妹なのですし紹介するのは当然だと私思いますわ。それなのにそんなことを言うだなんてお母様はお姉様の味方ですのね……」
今度はフィリップが口を挟む。
「アラベル、お前は少し我慢を学びなさい。アリエル、気にすることはない。とにかくハイライン公爵令嬢に失礼のないようにしなさい」
そう言ってアリエルに微笑んだ。
その日オパールの屋敷を訪ねるとアリエルはオパールに忠告するつもりで言った。
「オパール、私の妹のアラベルのことなのだけど」
するとオパールはアリエルに抱きついて言った。
「お姉様の妹は私だけですわ!」
アリエルは苦笑しながら答える。
「そう言ってくれるのは嬉しいけれど……。オパールはアラベルを知っていて?」
むっとしながら不機嫌そうにオパールは言った。
「あのあざとい令嬢ですわよね?! お姉様と血が繋がっていて、同じ顔をしているのになんであんなに感じが悪いのかしら?」
「なにかありましたの?」
アリエルはオパールの顔にかかった髪の毛を耳にかけながら質問した。
「言いたくありません!」
むくれたオパールが可愛らしくて、アリエルはオパールの額にキスをした。
「貴女が言いたくないのなら言わなくて構いませんわ」
するとオパールはアリエルを更にギュッと抱き締めてからアリエルに訊いた。
「でもお姉様、なんであの女の話を?」
そう訊かれて、アリエルは話すか迷ったが答えた。
「あの子がオパールと友達になりたいみたいなんですの。でも、私はオパールにアラベルを会わせたくありませんわ」
するとオパールはじっとアリエルを見つめてから言った。
「そうなんですの? だったら私アラベルにお手紙書きますわ。渡してくださる?」
アリエルは気が乗らなかったが、仕方なくそれを了承して頷いた。
「ところで、お姉様は近々どこかへお出掛けする予定はありますの?」
「いいえ、特には」
するとオパールは嬉しそうにアリエルから体を離すとアリエルの手を取った。
「だったら、来週一緒に私とロングピークの別荘に行きませんこと?!」
そこで突然一度目の夏、ロングピークの別荘で土砂災害があり避暑に行っていたハイライン公爵令嬢がそれに巻き込まれたことを思い出した。
「オパール、ダメですわ! ロングピークに行ってはいけません」
慌てて言うアリエルに驚いてオパールは訊く。
「お姉様、私とお出掛けするのはいや?」
アリエルは慌てて返す。
「違いますわ、山はあまり好きではなくて……。できれば湖の方が良いですわ」
「そうなんですの? わかりましたわ。でしたらルーモイの別荘にいきましょう! 湖の近くですし、とっても素敵な別荘なんですのよ。お姉様も気に入ると思いますわ。それと夏にはお兄様も戻るし、お姉様にお兄様を紹介しますわね!」
そう答えると、オパールはアリエルの返事も待たずに予定を立て始めた。アリエルはオパールがロングピークに行かないことにホッとしながら、オパールの計画内容を微笑みながら聞いていた。
そうしてゆっくりオパールと過ごしたあと、屋敷に帰る直前にオパールはアリエルを待たせるとアラベルに宛てた手紙を書いて渡した。
「これをアラベルに渡してくださる?」
「わかりましたわ。渡しておきますわね」
なにが書かれているのか少し不安に思いながらも、アリエルはその手紙を受け取った。
アリエルが屋敷に戻ると、アラベルがエントランスでアリエルの帰りを待っていた。
「アリエルお姉様、オパール様に私のことを紹介してくださった?」
挨拶もなしに紹介してくれて当然といった感じのアラベルの言動に苛立ちを感じながら、アリエルは無言でオパールからの手紙をアラベルに渡した。
「お姉様、ありがとう。お姉様ならこうしてくださると思ってましたわ! ではこのお手紙ゆっくりお部屋で読みますわね!」
「オパール様……」
「お姉様ってば、敬称もいりませんわ。名で呼んで下さい」
「オパール?」
すると、オパールは満面の笑みで答える。
「お姉様、なぁに?」
アリエルはそんなオパールが可愛らしく感じて、思わず頭を撫でた。そして、失礼なことをしてしまったと気づき慌てて手を引っ込めると頭を下げた。
「ハイライン公爵令嬢、失礼なことをしてしまい大変申し訳ありませんでした」
すると、オパールはむくれた。
「なぜ謝るのです? 私はとても嬉しかったですのに!」
「わかりました、善処いたします」
するとオパールはアリエルの腕にしがみついた。
「嬉しい! お姉様よろしくお願いしますわ!」
それをきっかけにアリエルは、毎日オパールの屋敷にお茶に誘われるようになった。そんなアリエルを見て、朝食の席でアラベルが言った。
「お姉様しか誘われないなんて、きっと私はオパール様に嫌われているのですね……」
それを聞いてアリエルは、知り合ってもいないのだから誘われるはずがないのになにを言っているのかと思いながら答えた。
「アラベル、貴女ハイライン公爵令嬢とお話ししたことがありますの?」
「もちろんありませんわ。話したことがあれば、私をお誘いくださるはずですもの。でも、先日の舞踏会で私は挨拶できませんでしたから私に遠慮しているのですわ。それに、お姉様もドレスを汚されたからと言って恩着せがましくしては嫌われてしまいますわよ?」
思い切りため息をつくとアリエルは言った。
「面識がないなら誘われなくとも仕方のないことですわ」
そこでベルタが口を挟む。
「アラベル、お姉様を困らせてはいけません。ハイライン公爵令嬢と知り合いになれば貴女も誘われるかもしれないからそれまで待ちなさい」
それを聞いてアラベルは明らかにがっかりした顔をした。
「そんな、姉妹なのですし紹介するのは当然だと私思いますわ。それなのにそんなことを言うだなんてお母様はお姉様の味方ですのね……」
今度はフィリップが口を挟む。
「アラベル、お前は少し我慢を学びなさい。アリエル、気にすることはない。とにかくハイライン公爵令嬢に失礼のないようにしなさい」
そう言ってアリエルに微笑んだ。
その日オパールの屋敷を訪ねるとアリエルはオパールに忠告するつもりで言った。
「オパール、私の妹のアラベルのことなのだけど」
するとオパールはアリエルに抱きついて言った。
「お姉様の妹は私だけですわ!」
アリエルは苦笑しながら答える。
「そう言ってくれるのは嬉しいけれど……。オパールはアラベルを知っていて?」
むっとしながら不機嫌そうにオパールは言った。
「あのあざとい令嬢ですわよね?! お姉様と血が繋がっていて、同じ顔をしているのになんであんなに感じが悪いのかしら?」
「なにかありましたの?」
アリエルはオパールの顔にかかった髪の毛を耳にかけながら質問した。
「言いたくありません!」
むくれたオパールが可愛らしくて、アリエルはオパールの額にキスをした。
「貴女が言いたくないのなら言わなくて構いませんわ」
するとオパールはアリエルを更にギュッと抱き締めてからアリエルに訊いた。
「でもお姉様、なんであの女の話を?」
そう訊かれて、アリエルは話すか迷ったが答えた。
「あの子がオパールと友達になりたいみたいなんですの。でも、私はオパールにアラベルを会わせたくありませんわ」
するとオパールはじっとアリエルを見つめてから言った。
「そうなんですの? だったら私アラベルにお手紙書きますわ。渡してくださる?」
アリエルは気が乗らなかったが、仕方なくそれを了承して頷いた。
「ところで、お姉様は近々どこかへお出掛けする予定はありますの?」
「いいえ、特には」
するとオパールは嬉しそうにアリエルから体を離すとアリエルの手を取った。
「だったら、来週一緒に私とロングピークの別荘に行きませんこと?!」
そこで突然一度目の夏、ロングピークの別荘で土砂災害があり避暑に行っていたハイライン公爵令嬢がそれに巻き込まれたことを思い出した。
「オパール、ダメですわ! ロングピークに行ってはいけません」
慌てて言うアリエルに驚いてオパールは訊く。
「お姉様、私とお出掛けするのはいや?」
アリエルは慌てて返す。
「違いますわ、山はあまり好きではなくて……。できれば湖の方が良いですわ」
「そうなんですの? わかりましたわ。でしたらルーモイの別荘にいきましょう! 湖の近くですし、とっても素敵な別荘なんですのよ。お姉様も気に入ると思いますわ。それと夏にはお兄様も戻るし、お姉様にお兄様を紹介しますわね!」
そう答えると、オパールはアリエルの返事も待たずに予定を立て始めた。アリエルはオパールがロングピークに行かないことにホッとしながら、オパールの計画内容を微笑みながら聞いていた。
そうしてゆっくりオパールと過ごしたあと、屋敷に帰る直前にオパールはアリエルを待たせるとアラベルに宛てた手紙を書いて渡した。
「これをアラベルに渡してくださる?」
「わかりましたわ。渡しておきますわね」
なにが書かれているのか少し不安に思いながらも、アリエルはその手紙を受け取った。
アリエルが屋敷に戻ると、アラベルがエントランスでアリエルの帰りを待っていた。
「アリエルお姉様、オパール様に私のことを紹介してくださった?」
挨拶もなしに紹介してくれて当然といった感じのアラベルの言動に苛立ちを感じながら、アリエルは無言でオパールからの手紙をアラベルに渡した。
「お姉様、ありがとう。お姉様ならこうしてくださると思ってましたわ! ではこのお手紙ゆっくりお部屋で読みますわね!」
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