上 下
133 / 190

おまけ アルメリアのいないアブセンティー

しおりを挟む
 これは、アルメリアが単身ヒフラに行っていた間のお話。





「アルメリアがいないとわかっていても、この時間になるとここにきてしまうな」

 アルメリア専用のドローイング・ルームのソファでくつろぎながらムスカリはそう呟いた。

「そうですね、僕もお嬢様のお側にいられないことがとてもつらく感じます」

 リカオンがそう答えると、リアムが声を出して笑った。

「私もそうだったが、君も最初はアルメリアを誤解していたじゃないか。随分な変わりようだな」

 すると、申し訳なさそうにスパルタカスが会話に入る。

「それは私も一緒です。閣下を誤解していました。実際会ってみると、あんなに素晴らしい女性はいないのですが」

 それを聞いて、リカオンが大きく頷く。

「お嬢様のお側にいれば、誰でもその魅力に気づくでしょう。ここにいる皆がそれを知っています」

 それを受けてムスカリは不機嫌そうに答える。

「お前たちのように、あとからアルメリアの魅力に気づいたような奴らと私を一緒にするなよ。私は昔から彼女しか見ていない。だからこそ、こんなに分かりやすくアピールしているというのに、アルメリアには全く相手にされないのだからこれほどじれったいことはない」

 そこでアドニスが口をだす。

「殿下には遅れを取りましたが、私だってアルメリアのことは初めて知ったときから、素晴らしい女性だと知っていました。まさか、殿下が仰っていた心に決めた女性が彼女だとは思いもしませんでしたけれど」

「お前も少しは人を見る目があったということか」

 そこでリアムが答える。

「いえ、アルメリアに実際に会いアルメリアをを知れば、誰でも彼女の魅力に気づくでしょう。それと他の令嬢とは違っていてとても謙虚なのも魅力です」

 そのときリカオンがさっと手を上げ、口を開いた。

「長くお側にいさせていただいて気がついたことがあります。お嬢様は謙虚過ぎるがゆえに大前提として、自分はぜったいに好かれてないと思って動いている節があります。なので、こちらに意識を向けたいのならはっきり気持ちを伝えなければならないでしょう」

 アドニスは驚いた顔で答える。

「あんなに好意を示しているのに?」

「はい、恐らく紳士だから礼儀としてそうしていると思っているでしょう」

 リアムもリカオンに質問する。

「特別なプレゼントをしても?」

「はい。恐らくなにかのお詫びや、付け届け程度にしか考えませんよ」

 それを聞いてリアムは頭を抱えた。

 そこでムスカリは不適な笑みを見せた。

「わかった。ならば好きなだけ押してよいということだな? それならば我慢しないことにしよう」

 そんなムスカリを見て、アドニスも不適な笑みを浮かべて言った。

「ならば私も加減はしません。最終的に選ぶのはアルメリアです。恨みっこなしでいきましょう」

 それに対しリアムが答える。

「そうですね、恨みっこなしで。最終的にアルメリアが選んだ通りにします」

 それを聞いて、その場にいた全員が頷いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたはその人が好きなんですね。なら離婚しましょうか。

水垣するめ
恋愛
お互い望まぬ政略結婚だった。 主人公エミリアは貴族の義務として割り切っていた。 しかし、アルバート王にはすでに想いを寄せる女性がいた。 そしてアルバートはエミリアを虐げ始めた。 無実のエミリアを虐げることを、周りの貴族はどう捉えるかは考えずに。 気づいた時にはもう手遅れだった。 アルバートは王の座から退かざるを得なくなり──。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

【完結】潔く私を忘れてください旦那様

なか
恋愛
「子を産めないなんて思っていなかった        君を選んだ事が間違いだ」 子を産めない お医者様に診断され、嘆き泣いていた私に彼がかけた最初の言葉を今でも忘れない 私を「愛している」と言った口で 別れを告げた 私を抱きしめた両手で 突き放した彼を忘れるはずがない…… 1年の月日が経ち ローズベル子爵家の屋敷で過ごしていた私の元へとやって来た来客 私と離縁したベンジャミン公爵が訪れ、開口一番に言ったのは 謝罪の言葉でも、後悔の言葉でもなかった。 「君ともう一度、復縁をしたいと思っている…引き受けてくれるよね?」 そんな事を言われて……私は思う 貴方に返す返事はただ一つだと。

(完)あなたの瞳に私は映っていなかったー妹に騙されていた私

青空一夏
恋愛
 私には一歳年下の妹がいる。彼女はとても男性にもてた。容姿は私とさほど変わらないのに、自分を可愛く引き立てるのが上手なのよ。お洒落をするのが大好きで身を飾りたてては、男性に流し目をおくるような子だった。  妹は男爵家に嫁ぎ玉の輿にのった。私も画廊を経営する男性と結婚する。私達姉妹はお互いの結婚を機に仲良くなっていく。ところがある日、夫と妹の会話が聞こえた。その会話は・・・・・・  これは妹と夫に裏切られたヒロインの物語。貴族のいる異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。 ※表紙は青空作成AIイラストです。ヒロインのマリアンです。 ※ショートショートから短編に変えました。

(完結)私の夫を奪う姉

青空一夏
恋愛
私(ポージ)は爵位はないが、王宮に勤める文官(セオドア)の妻だ。姉(メイヴ)は老男爵に嫁ぎ最近、未亡人になったばかりだ。暇な姉は度々、私を呼び出すが、私の夫を一人で寄越すように言ったことから不倫が始まる。私は・・・・・・ すっきり?ざまぁあり。短いゆるふわ設定なお話のつもりです。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

姉上が学園でのダンスパーティーの席で将来この国を担う方々をボロクソに言っています

下菊みこと
恋愛
微ざまぁ有り。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...