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グランツの画策
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グランツはずっと悩んでいた。自分が初めて愛した女性が婚約してしまったからだ。
自分は王太子である。無理矢理ふたりの仲を裂こうと思えば裂くこともできるが、果たしてそれは彼女の幸せになるのだろうか。
それにそんなことをすれば、相手を愛する彼女に一生恨まれるかもしれない。そうなれば自分は立ち直れないだろう。
それに相手はあのホルト公爵家の令息である。いかに王太子といえど、下手に手を出せる相手ではない。
だが、だからと言ってこのまま彼女が他の男と結婚してしまったら、一生後悔するに違いなかった。
そうして毎日悩む日々が続いていた。
そんなある日のこと、彼女の兄であるイーファが自分に謁見を申し込んできた。
グランツは、イーファが自分のところへ訪ねてくるにらそれなりの事情があるに違いないと思い、それを直ちに許可すると他のスケジュールを後回しにしてイーファと会った。
「王太子殿下、オルヘルスのことでお願いがあるのです」
イーファは挨拶抜きに突然そう話を切り出した。いつもは礼儀正しい彼らしくないと思いながら、彼女の名前を出されたグランツは少し動揺する。
「なんだ?」
「ホルト公爵令息とオルヘルスの婚約を解消させてください。それができないのなら、ホルト公爵令息からオルヘルスを奪ってください」
「少し待て、それは穏やかではないな。理由を聞こう」
そう尋ねると、イーファは憤懣やる方ないといった表情を見せた。
「ふたりは政略結婚です。ですから、ある程度のことは仕方のないことだとは割りきっていますが、ホルト公爵令息はあまりにも不誠実過ぎる。オルヘルスの目の前で他の令嬢と現を抜かすなど言語道断です」
グランツは、正直そんな理由でふたりの間を裂けるならとうにやっていると思いながら言った。
「だが、そんなことは政略結婚では茶飯事ではないか」
「いえ、まだあるのです。ホルト公爵令息は女遊びをするために、どうやら領地のお金に手をつけているようなのです」
これは盲点だった。ホルト公爵家は、国王がときに頼りにするほどの資産家である。だからエーリクの金遣いが荒くともまったく不思議に思わなかった。
だが、その金の出所が国に一度納めなければならない領地の金なのだとすれば話は別である。
そうしてグランツが無言でどうエーリクを包囲するか考えていると、イーファはグランツがまだ悩んでいるのだと勘違いして言った。
「それに、殿下はよろしいのですか?」
「なにがだ」
「オルヘルスが他の男と結婚してしまっても」
グランツが驚いてイーファを無言で見つめると、その反応を見てイーファは続ける。
「私は知っているのです。殿下が時折体の弱いオルヘルスの姿を見にリートフェルト家の庭に、お忍びで訪れていたことを」
「なぜそれを?!」
そう答えたあと、グランツはしまったと思いながらイーファを見つめる。すると、イーファは苦笑しながら答える。
「あれはたまたまでしたが、寄宿舎から帰ってまず気分転換に庭を散歩しようと回り込んだとき、見慣れない庭師がいることに気づいたんです」
「まさか、それが私だとでも?」
「事実でしょう? もちろん、誰にも言うつもりはありませんが」
「なるほど、流石騎士団でも評価が高いだけはある。その庭師がなぜ私だと気づいた」
「振る舞いを見ればわかります」
「そうか、以後気を付けよう」
そう答えると、グランツはイーファに向けてニヤリと笑った。
「さて、ではオリとエーリクの婚約解消に向けてしっかり準備をしなけらばな。まずはお前がつかんでいる、エーリクの情報をもう少し詳しく聞こう」
こうしてグランツとイーファはオルヘルスの婚約解消に向けて動き始めた。
まずはイーファが言ったことの裏を取ると、ホルト領に゙いるハインリッヒにエーリクが横領していることを知らせた。
ホルト領は、現在大飢饉に見舞われていた。それも当然だろう。なぜなら息子であるエーリクが精霊から寵愛されているオルヘルスを蔑ろにしているからだ。
精霊の怒りを買って当然の行為だった。
ハインリッヒもおそらくはそれに気づいているものの、あまりにも飢饉の規模が大きすぎて領地を離れられないようだった。
このままオルヘルスがエーリクに゙嫁いだとしても、オルヘルスを蔑ろにし続ければホルト家は没落しオルヘルスはでもどることになっただろう。
それから彼女を手に入れることもできるが、それでは遅すぎるのだ。
こうして連絡を受けたハインリッヒは、エーリクが横領までしていることは信じられないといった様子だった。
横領の証拠はつかんでいた。グランツはハインリッヒのところまで出向いてでも、エーリクの横領を証明し婚約の解消を迫るつもりで準備していた。
それと同時に、オルヘルスとの婚約の準備も怠らなかった。
ちょうどそのころ、ファニーと言う奇っ怪なデザイナーがユヴェル国を訪れていた。
そのデザイナーの噂は折に触れて聞いていたので、グランツはこのデザイナーに接触し今後ずっと彼女のドレスをデザインするように頼んだ。
まずはプレゼントを贈り彼女の心をつかむのだ。
この頃には、この作戦に協力するようになったステフからも彼女についての情報を手に入れることができるようになっていた。
グランツはそれらをすべて覚え、彼女がどうすれば喜ぶかをあれやこれやと考えていた。そうして彼女を最大限に甘やかし、喜ぶ顔が見たかったのだ。
そうして着々と準備をしていたころ、あの出来事が起きた。舞踏会でのエーリクとオルヘルスの婚約解消騒ぎである。
グランツは渡りに船だと内心喜び、それと同時に彼女がまったくエーリクを愛していないことを目の前で確認することができて大満足だった。
だが、ここで安心してはいられなかった。
なんせ、彼女を狙っている貴族は他にもたくさんいたからだ。だからこの場を利用し、他の者に手を出されないよう彼女に婚約を申し込んだ。
彼女は困惑していたが、グランツはこれからゆっくり時間はかかってでも必ず彼女の気持ちをこちらに向かせようと思っていた。
そう、グランツには彼女しか見えていなかった。
自分は王太子である。無理矢理ふたりの仲を裂こうと思えば裂くこともできるが、果たしてそれは彼女の幸せになるのだろうか。
それにそんなことをすれば、相手を愛する彼女に一生恨まれるかもしれない。そうなれば自分は立ち直れないだろう。
それに相手はあのホルト公爵家の令息である。いかに王太子といえど、下手に手を出せる相手ではない。
だが、だからと言ってこのまま彼女が他の男と結婚してしまったら、一生後悔するに違いなかった。
そうして毎日悩む日々が続いていた。
そんなある日のこと、彼女の兄であるイーファが自分に謁見を申し込んできた。
グランツは、イーファが自分のところへ訪ねてくるにらそれなりの事情があるに違いないと思い、それを直ちに許可すると他のスケジュールを後回しにしてイーファと会った。
「王太子殿下、オルヘルスのことでお願いがあるのです」
イーファは挨拶抜きに突然そう話を切り出した。いつもは礼儀正しい彼らしくないと思いながら、彼女の名前を出されたグランツは少し動揺する。
「なんだ?」
「ホルト公爵令息とオルヘルスの婚約を解消させてください。それができないのなら、ホルト公爵令息からオルヘルスを奪ってください」
「少し待て、それは穏やかではないな。理由を聞こう」
そう尋ねると、イーファは憤懣やる方ないといった表情を見せた。
「ふたりは政略結婚です。ですから、ある程度のことは仕方のないことだとは割りきっていますが、ホルト公爵令息はあまりにも不誠実過ぎる。オルヘルスの目の前で他の令嬢と現を抜かすなど言語道断です」
グランツは、正直そんな理由でふたりの間を裂けるならとうにやっていると思いながら言った。
「だが、そんなことは政略結婚では茶飯事ではないか」
「いえ、まだあるのです。ホルト公爵令息は女遊びをするために、どうやら領地のお金に手をつけているようなのです」
これは盲点だった。ホルト公爵家は、国王がときに頼りにするほどの資産家である。だからエーリクの金遣いが荒くともまったく不思議に思わなかった。
だが、その金の出所が国に一度納めなければならない領地の金なのだとすれば話は別である。
そうしてグランツが無言でどうエーリクを包囲するか考えていると、イーファはグランツがまだ悩んでいるのだと勘違いして言った。
「それに、殿下はよろしいのですか?」
「なにがだ」
「オルヘルスが他の男と結婚してしまっても」
グランツが驚いてイーファを無言で見つめると、その反応を見てイーファは続ける。
「私は知っているのです。殿下が時折体の弱いオルヘルスの姿を見にリートフェルト家の庭に、お忍びで訪れていたことを」
「なぜそれを?!」
そう答えたあと、グランツはしまったと思いながらイーファを見つめる。すると、イーファは苦笑しながら答える。
「あれはたまたまでしたが、寄宿舎から帰ってまず気分転換に庭を散歩しようと回り込んだとき、見慣れない庭師がいることに気づいたんです」
「まさか、それが私だとでも?」
「事実でしょう? もちろん、誰にも言うつもりはありませんが」
「なるほど、流石騎士団でも評価が高いだけはある。その庭師がなぜ私だと気づいた」
「振る舞いを見ればわかります」
「そうか、以後気を付けよう」
そう答えると、グランツはイーファに向けてニヤリと笑った。
「さて、ではオリとエーリクの婚約解消に向けてしっかり準備をしなけらばな。まずはお前がつかんでいる、エーリクの情報をもう少し詳しく聞こう」
こうしてグランツとイーファはオルヘルスの婚約解消に向けて動き始めた。
まずはイーファが言ったことの裏を取ると、ホルト領に゙いるハインリッヒにエーリクが横領していることを知らせた。
ホルト領は、現在大飢饉に見舞われていた。それも当然だろう。なぜなら息子であるエーリクが精霊から寵愛されているオルヘルスを蔑ろにしているからだ。
精霊の怒りを買って当然の行為だった。
ハインリッヒもおそらくはそれに気づいているものの、あまりにも飢饉の規模が大きすぎて領地を離れられないようだった。
このままオルヘルスがエーリクに゙嫁いだとしても、オルヘルスを蔑ろにし続ければホルト家は没落しオルヘルスはでもどることになっただろう。
それから彼女を手に入れることもできるが、それでは遅すぎるのだ。
こうして連絡を受けたハインリッヒは、エーリクが横領までしていることは信じられないといった様子だった。
横領の証拠はつかんでいた。グランツはハインリッヒのところまで出向いてでも、エーリクの横領を証明し婚約の解消を迫るつもりで準備していた。
それと同時に、オルヘルスとの婚約の準備も怠らなかった。
ちょうどそのころ、ファニーと言う奇っ怪なデザイナーがユヴェル国を訪れていた。
そのデザイナーの噂は折に触れて聞いていたので、グランツはこのデザイナーに接触し今後ずっと彼女のドレスをデザインするように頼んだ。
まずはプレゼントを贈り彼女の心をつかむのだ。
この頃には、この作戦に協力するようになったステフからも彼女についての情報を手に入れることができるようになっていた。
グランツはそれらをすべて覚え、彼女がどうすれば喜ぶかをあれやこれやと考えていた。そうして彼女を最大限に甘やかし、喜ぶ顔が見たかったのだ。
そうして着々と準備をしていたころ、あの出来事が起きた。舞踏会でのエーリクとオルヘルスの婚約解消騒ぎである。
グランツは渡りに船だと内心喜び、それと同時に彼女がまったくエーリクを愛していないことを目の前で確認することができて大満足だった。
だが、ここで安心してはいられなかった。
なんせ、彼女を狙っている貴族は他にもたくさんいたからだ。だからこの場を利用し、他の者に手を出されないよう彼女に婚約を申し込んだ。
彼女は困惑していたが、グランツはこれからゆっくり時間はかかってでも必ず彼女の気持ちをこちらに向かせようと思っていた。
そう、グランツには彼女しか見えていなかった。
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