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おまけ1 私は見てしまいました
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私の名はレクス。王宮で執事として長年勤めております。
グランツ殿下が幼少のころからずっとその成長を見守ってまいりました。
殿下はとても優秀なかたで、なにひとつ欠点のない完璧なかたでした。
そのせいか、人間離れしたような少し冷たい印象もありました。
両陛下がとても暖かみのある、情の深い御方でいらっしゃるだけに、私は恐れ多くも自分の立場も忘れそんな殿下のことを少々心配しておりました。
そんなある日のことでございます。
いつも完璧でいらっしゃる殿下が取り乱したようにお戻りになられると、すぐに自室に向かわれてしまいました。
どうしてしまわれたのかと思い報告せねばならないことを今伝えるべきか躊躇しつつ、お部屋の前まで向かいました。
部屋の前に行きますと、少々扉が開いていることに気づきました。
私はこれも殿下らしくないことだと思いながら、その扉を閉じようとそっと近づきました。
そのとき、部屋の中の様子を見てしまったのです。それを見た私は驚愕いたしました。
あの殿下が、ご婦人のハンカチをポケットから取り出しその匂いを香っていらしたのです。
「あぁ、オリ、オリ。早く君をこの腕の中に閉じ込めたい。君がほしい。私は君がほしいんだ」
そう呟いてらっしゃいました。
私は殿下の人間らしい一面を垣間見てほっとすると同時に、リートフェルト男爵令嬢が嫁いで来られたら全力で歓迎しお迎えしようと決意を新たにし、そっと扉を閉じたのでございます。
グランツ殿下が幼少のころからずっとその成長を見守ってまいりました。
殿下はとても優秀なかたで、なにひとつ欠点のない完璧なかたでした。
そのせいか、人間離れしたような少し冷たい印象もありました。
両陛下がとても暖かみのある、情の深い御方でいらっしゃるだけに、私は恐れ多くも自分の立場も忘れそんな殿下のことを少々心配しておりました。
そんなある日のことでございます。
いつも完璧でいらっしゃる殿下が取り乱したようにお戻りになられると、すぐに自室に向かわれてしまいました。
どうしてしまわれたのかと思い報告せねばならないことを今伝えるべきか躊躇しつつ、お部屋の前まで向かいました。
部屋の前に行きますと、少々扉が開いていることに気づきました。
私はこれも殿下らしくないことだと思いながら、その扉を閉じようとそっと近づきました。
そのとき、部屋の中の様子を見てしまったのです。それを見た私は驚愕いたしました。
あの殿下が、ご婦人のハンカチをポケットから取り出しその匂いを香っていらしたのです。
「あぁ、オリ、オリ。早く君をこの腕の中に閉じ込めたい。君がほしい。私は君がほしいんだ」
そう呟いてらっしゃいました。
私は殿下の人間らしい一面を垣間見てほっとすると同時に、リートフェルト男爵令嬢が嫁いで来られたら全力で歓迎しお迎えしようと決意を新たにし、そっと扉を閉じたのでございます。
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