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本編

8話

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 例の村に到着した。
 村の入り口には村人が警備をしていた。

「おい!お前は何者だ!」

 俺が入ろうとすると、呪いで弱っているとみえる村人二人が道を塞ぐ。

「俺はこの村の呪いを解きに来た者だ」

「この病を治してくれるのか!?」

 道を塞いでいる片方の村人がそう言う。

「罠だ!村に入って俺たちを殺す気だ!」

 もう一人の村人は俺を警戒しているらしい。
 それもそうだ。
 呪いが蔓延して弱っている状態の村にのこのこ部外者を入れるはずがない。
 今までがうまく行きすぎていたんだ。

「本当に危害は加えない。それでも警戒するなら俺の手荷物を気が済むまで調べても構わない。」

 そして、警戒していた村人のほうが手荷物検査を始める。
 それは10分程続いた。

「何も危ない物は持ってなさそうだ。後は村長の許可が下りればいいだろう」

 村人は俺を村長がいる家に案内した。
 向かっていく途中、村の中には何かの儀式をした後のような金色の布や装飾が飾られていた。
 案内された村長の家は他の家より一回り大きい木製の家。
 中に入ると、村長らしき御老人がいた。

「お主が呪いを解きに来たという若造か」

 村長も呪いにかかって弱っているはずだが、どこか勇ましい口調だ。

「隣の村の村長に頼まれて、この村の呪いを解きに来てやったんだ」

「ほほう、若造の癖に生意気な口調じゃのう。本当に我らにかけられた呪いを解けるんじゃろうな」

「ああ、だが報酬として金はもらうぞ。この村の周りに飾られている装飾品を見る限り、それなりには持っているんだろう」

 俺にはまだ金がないからな。ここらでほしいところだ。

「いいじゃろう。お主が本当に呪いを解けたらの話じゃが」

 村長が挑発的に言う。

「あぁ、この村の呪い全部解いてやるよ」

 村長の許可が下り、俺はまず重症の婆さんを治せと言われた。
 その婆さんは寝込み、声も発せないぐらい重症だった。
 俺は毎度の如く《呪い解除》を使用し、呪いを解いた瞬間、婆さんは起き上がった。
 それを村人の一人が確認し、俺の能力を認めてくれた。
 そこからは村人一人一人に《呪い解除》を使用した。

『《解除LV2》が《解除LV3》に上がりました。それに伴い、《毒解除》が使用可能になりました』

 レベルも上がり、金ももらえる。
 一石二鳥だ。
 俺は全員の村人の呪いを解き、金を貰った後、少しの間村を散策していた。
 散策している最中、思いがけない光景があった。
 村の広場の中心に十字架の形の木に括り付けられている傷だらけの少女がいた。
 なぜ、少女がこのような場所であんなみっともない姿でいるのだ!
 俺が助けに行こうとすると、村人が立ちはだかる。

「坊主、悪いことは言わねぇ。村人の呪いを治したんならさっさとこの村から立ち去れ」

「なぜあの少女はあんなところで括り付けられているんだ!」

 村人に聞く。

「あの子は悪魔に取り憑かれているんだ。2日前に自分の両親を殺したやつだぞ」

「悪魔だと!?誰がそう言ったんだ?」

 見る限り、この村には賢者や祭司がいないように見える。

「誰が決めたんだ!」

「この村の掟で村長が取り憑かれていると決めた者を処刑しているんだ」

 なんだと!?
 こいつらは掟に従って何の確証もないそんなことを信じているというのか。
 両親を殺したとはいえ、こんな幼い子をここまで残酷に処刑するか?
 俺は少女を助けるべく村人を押しのけ、少女を拘束している縄を解いた。
 つい少女と自分を重ね合わせてしまい、助けたくなってしまった。

「おい!逃げるぞ!」

 俺は少女を抱え、《身体能力限界解除》を使い、村から逃げた。
 少女は疲れ切っているため、気を失っていた。
 後ろからは村人が追いかけてくるが、スキルを使っている俺に追いつくことはないだろう。
 だが、これからどうしたものか……。
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