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最終章「プロポーズは指輪と共に!」

35 結婚相手は?

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「キトリーッ!!」 
「兄様!? うぎゅぷっ!」

 俺はロディオンの登場に驚いて、座っていたソファから立ち上がると、ロディオンはいつもの如く熱い抱擁を俺に見舞った。おかげで息ができない。

「あぁ、キトリー。神聖国で会ったぶりだね。元気にしてたかい?」

 ロディオンはまるで数年ぶりに会ったみたいな口ぶりで言う。でも大体二カ月ぶりぐらいだ。全然元気にしている。しかし、今はそれを訂正するどころじゃない。

「にいたま、ぐるじぃ……!」

 俺はロディオンの背中をぺしぺしっと叩く。するとロディオンはすぐさま俺をパッと離した。

「あぁ、すまない、キトリー。ついお前が可愛くて」

 ……なんかこれ、毎回の事になってきたな。

 俺は新鮮な空気を吸いながら思う。しかしロディオンの陰に隠れて、その後ろに立つ人物に俺は気がついていなかった。

「りっちゃん、久しぶりね」

 ロディオンの後ろからひょっこりと顔を出した人物に俺は目を見開く。

「ねぇ、ランネット様!?」

 ……あぶねっ、危うく『姉ちゃん!?』って呼ぶとこだった! てか、なんで姉ちゃんがこんなところに?! 神聖国からわざわざ遊びにきたのか!? でも、ロディオンと一緒のタイミングで??

 俺は色々と考えを巡らす。だが、その後ろでレノがぼそっと言った。

「ランネット様がロディオン様のお相手ですよ」
「ええっ!?」

 俺はレノの囁きに驚きの声を上げる。

 ……ロディオンの結婚相手が姉ちゃんッ!?

 俺はロディオンとランネット様こと姉ちゃんの顔を見合わせる。するとロディオンは不思議そうな顔を見せた。

「おや? キトリーも私が結婚の申し込みをした時にその場に居たじゃないか」
「え、いつ、どこで?! というかこの前、神聖国で会ったのが初めましてじゃないの!?」
「そうだが、この人だと、思ってね。ビビッと来たんだ」

 ……ビビッとって、それ静電気じゃ?

 俺は驚きのあまり、ちょっとぽかんっとしてしまう。しかしそんな中、姉ちゃんに視線を向ければ、姉ちゃんは何も言わずニコッと俺に微笑んだ。

『これでまた私達、姉弟ね』

 そう姉ちゃんの瞳が言っていた。そして姉ちゃんもロディオンと結婚することにノリノリみたいだ。

 ……まあ、ロディオンはかなりのイケメンだからなぁ。前世からイケメンボーイズを追いかけていた姉ちゃんにとってはいい相手かも。それにロディオンは性格もいいし、優秀だし、優しいし。ちょっと俺が好きすぎるブラコンが玉に瑕だけど……でも現世の兄と前世の姉が結婚って、これって意外とすごいんでは??

 俺はロディオンと姉ちゃんを改めて見る。
 しかし、ぽけーっと見ている俺の傍で、ロディオンは俺達のやり取りを見守っていたジュリオット様とロメオさんに挨拶をした。

「ジュリオット様、ロメオさん、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。お久しぶりです、相変わらずお元気そうですね」

 ロディオンは頭を下げて、ソファに並んで座る二人に挨拶をした。

「ああ。ロディオン君も相変わらず、キトリー君の事が大好きだねぇ」

 ジュリオット様はふふっと笑って言った。するとロディオンは躊躇いもなく答える。

「はい、キトリーはこの世で一番可愛いですから!」

 ……いや、俺は可愛くないし、未来の嫁さんがいる前でなんちゅーことを。そこは嫁さんを一番に……って、姉ちゃんも『うんうん』って頷いてるし! そこは怒るところでは!?

 俺は呆れた視線を二人に向ける。だが、俺に構わず四人はワイワイと楽しそうに話を続ける。俺のどこが可愛いとか、素晴らしいとか。

 ……ちょっと、誰か突っ込みなさいよ! てか、もう聞いてらんないんですけど!?

 そう思うが、もはや止めに入る隙間はなく。俺は後ろに控えているレノに視線を向ける。

 ……レノ、止めてきて! てかロディオンの事、知ってたなら教えろよな!?

 俺が視線で訴えるとレノはニコッと笑うだけだった。コノヤロウ~!
 しかし、そんな俺にロディオンが声をかけた。

「ああ、そうだ。キトリー、父様から手紙を預かって来たよ」
「父様から?」

 ロディオンは内ポケットに入れていた一通の手紙を俺に渡した。俺はそれを受け取り、じっと見る。

 ……なんだか嫌な予感。

 俺はそう思うが、読まない訳にもいかず。

 その日の夜、俺は自分の部屋のベッドに座って読むことにした――――。
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