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最終章「プロポーズは指輪と共に!」

16 ドンドコドコドコッ

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「坊ちゃん、どうなんです?」

 そうレノに聞かれて俺は答えた。

「……したい」

 思わず小声になったけど、レノにはしっかりと聞こえていたようで、さっきより赤い瞳がキラキラ度二倍増しで輝く。

 ……もー、至近距離でキラキラ飛ばすな!!

 俺は眩しすぎて、うぎゅっと目を瞑る。でも、そんな俺の唇に何かが触れる感触があった。驚いて目を開ければレノが俺にキスしてる!

「ん、んむっ!?」

 ……ちょ、レノさん、また急なんですケドッ!?!?

 俺は内心慌てる。けど、驚きよりも嬉しさの方が胸を占めた。今までは恥ずかしさばっかりだったのに。

 ……俺、レノの事がやっぱり好きなんだな。……って、おい! ちょ、舌を入れていいなんて言ってないぞッ!?

 俺は改めて自分の気持ちに気がつくが、そうしているとレノは俺の唇をこじ開けて舌を入れてきた。傍若無人に動き回るレノの舌は俺の舌を舐め、上顎を擦り、歯列をなぞる。
 おかげで俺は背中がぞくぞくして、すぐに呼吸困難になる。

「ん、んふっ! ……ぷはっ!」
「はぁっ、坊ちゃん」

 俺はレノのねっとりしたキスから解放されて息を吐くが、レノは俺をそのままベッドに押し倒した。そして俺が抱き締めていた枕をはぎ取ると、俺の首元に顔を埋める。

「ちょ、ちょ、レノ?!」

 ……も、もしかして、この前言ってたもっとえっちな事をこのまましちゃう気なのか~っ!? あばっ、あばばっ!

 俺は急展開にテンパるが、レノはすぅーっと俺の匂いを嗅ぐように息を吸うと、今度は大きなため息を吐いた。

「はぁーっ、蛇の生殺しとはまさにこの事ですね」
「は?」

 ……ヘビのナマゴロシ? なんのこっちゃ??

 俺は頭にハテナを浮かべる。しかしレノは不服そうな顔をして、俺から離れた。

「これ以上は私の我慢が持ちません。ですので、失礼します」

 レノはそう言うとベッドを早々に降りようとする、だが。

 ……ちょっと待てぇ――いッ!

 俺はむんぎゅっとレノの服を掴んで引き留めた。

「ちょっと待て!」
「坊ちゃん、放してください」
「放すか! お前、やっぱりこの前から変だぞっ!? なんだよ我慢って! いつものレノなら、人の話を聞かないで俺にお触りするところだろ!」

 俺はレノの服を掴んだまま言った。そうすればレノはちらっと俺に振り返った。

「それは、我慢せずに坊ちゃんに触れてもいいという事ですか?」

 レノに問いかけられて俺はボッと頬が熱くなる。

「あ、い、いや……その」

 なんて言っていいのかわからない、どう答えても恥ずかしいから。でも不意にお爺の言葉が俺の頭を過った。

『好きな相手に求められることほど、喜ばしいことはございません』

 だから俺は顔を俯かせて、すっごく小さな声で正直に答えた。

「……ぅ、ん」

 それは蚊の鳴くような声だったが、レノにはちゃんと聞こえていたようで。レノは「はぁーっ」と深いため息を吐くと、突然俺をぎゅぅーっと抱き締めた。

「人がどれほど我慢してるか、全くあなたと言う人は……。これはもう旦那様からのお叱りを受けるしかありませんね」

 レノは最後呟くように言い、俺は首を傾げる。

「父様のお叱り?」

 ……なんでレノが父様のお叱りを受けるんだ?

 そう思ってレノに詳しく俺は尋ねようとする。けれど、レノの手が俺の寝巻を捲って背中を撫で始めた。

「ひぇっ、れ、レノ?!」
「触っていいんでしょ?」

 慌てる俺にレノはそう言うと、背中をスルスルと撫でながら俺の首元に顔を寄せて、ちゅっとキスをした。柔らかいレノの唇の感触に俺はドキリとしてしまう。

「レノ、ま、待て。父様の、こと」
「話は後です」

 レノは止める俺を無視して、俺をベッドに押し倒した。柔らかいベッドに寝転がされた俺は自然を上を向く。すると、そこにはレノの顔があって、俺を見つめる赤い瞳が何を言わなくても”俺が欲しい”と雄弁に語ってくる。

 その熱い視線につられるように、俺の頬は、体が、また熱くなる。ドンドコドコドコッ、俺の心臓が煩い。
 胸の内にドラマーを飼った覚えはないんだが……ドコドコドコドコッ。

「レ、ノ」
「坊ちゃん」

 レノは俺を呼ぶと、そっと顔を近づけてきた。俺は胸の高鳴りを抑えつつ、大人しく目を瞑る。

 ……あー、レノとまたチューしちゃうんだ~っ!!

 俺はレノの唇が触れるのを待ち、期待と恥ずかしさを感じながらそんな事を思う。でもレノの気配が近づき、唇が触れる直前。



 ――――――ガッシャ―ンッ!!



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