123 / 176
第五章「告白は二人っきりで!」
27 なぜお前がここに!?
しおりを挟む
「お嬢さん方、申し訳ないけどこの人の事は諦めてくれるかな?」
颯爽に現れ、二人の女の子に言ったのは琥珀色の瞳を持つ人物だった。でもその人物を見て俺は「あ」と小さく呟く。
けれど、その声は彼らには届かず、琥珀色の瞳を持つその人物はエンキ様の隣に立った。そうすれば彼女達は突然現れた人物を怪訝な顔で睨みつける。
「一体、どちら様ですの?」
「神聖国の方ではないようですけど。エンキ様の何なんです?」
棘のある声で彼女達が尋ねれば、その人物はエンキ様の肩に手を置いてにっこりと笑った。
「俺? 俺はこの人の大事な人」
その人物が告げると彼女達はよろめいた。
「ま、まさかッ!」
「え、エンキ様、本当ですの!?」
嘘だと言って! とでも言いたげな顔で二人は尋ねたが、エンキ様はこくりと頷いた。
「本当だよ。だからごめんね、二人とも」
エンキ様が告げると、二人はショックを受けた様子で何も言わずに走り去った。
その後姿をエンキ様は申し訳ない様子で眺めていたが、琥珀色の瞳を持つ人物は呆れた顔でエンキ様を見つめた。
「昔と変わらず、おモテになる事で」
「そんな事ないさ。それより久しぶりだね、元気そうで何よりだ」
エンキ様はそう言うと朗らかに笑って言った。その笑みは今まで見た事のないほどの柔らかく、眼差しには愛しさが溢れている。だからエンキ様の大事な人、と言うのは本当なのだろう。
しかし……しかしだ!!
「何が、元気そうで何より、だ。大変なことになってたくせに、連絡のひとつくらい……ん? どうしたキトリー」
琥珀色の瞳を持つ人物は俺に肩を掴まれ振り返ると、親し気に俺の名を呼んだ。
それもそうだろう、何せここに現れたのは――――。
「どうした、じゃない! アントニオッ!!」
俺は目の前にいる人物の名を叫んだ。
そう、俺の目の前にいたのは本屋を営む、俺のマイフレンド・トニ男ことアントニオだった。
「お前、ちょっとこっちにこい。話を聞かせて貰おうじゃないか。事と次第によっては、浮気ってことで許さんぞ??」
俺はぐっと拳を握ってアントニオに告げる。だがアントニオは眉間に深い皺を寄せた。
「は? なんで俺が浮気なんだよ? 何言ってるんだ?」
「何って今、浮気発言しただろ! エンキ様の大事な人は自分だって言っただろーが!」
……ちゃーんとこの目で見たんですからね!! 言い逃れは許さんゾ!
俺はフスンッと鼻息荒く言う。そうすればアントニオは「ああ」と呟くとエンキ様を見た。
「あれは言葉のアヤってやつだよ。女の子達を追っ払うにはちょうど良かっただろ? それに俺がこの人の大事な人ってのはあながち間違いじゃないし」
「やっぱり浮気かぁああぁん!!? うちのセリーナを泣かせたら、ただじゃ済まさん!」
俺はちょっとお父さん視点で告げる。本当の養父さんはお爺なんだけど。
でもお怒りモードの俺にレノが後ろから話しかけた。
「キトリー様、ちょっと」
「レノ、話は後だ。今はアントニオに事情を」
「あの。もしかしてですけど、アントニオ君はエンキ様のご子息なのでは?」
「そう、アントニオがエンキ様の息子だって話を………………は?」
俺は思わず間抜けな声を出してレノに振り返る。
「あ、アントニオがエンキ様の息子?! なんで、そんな」
「エンキ様とアントニオ君の瞳、全く一緒です。それに腕に付けている組紐も」
レノに言われて、エンキ様とアントニオの顔を見合わせれば、その瞳は良く似ている。というか、言われてみればアントニオはどこかエンキ様に似ている。
アントニオは赤髪だが、これで黒髪なら更に似る事だろう。その上、エンキ様とアントニオの組紐は全く一緒のものだった。
……どっかで見たことあるって、ここだったのか!
そして俺はなんとなくエンキ様に感じていた違和感の正体に気がつく。それはエンキ様が俺に対して妙に親切で、色々と話してくれたその理由。
……そうだ! エンキ様のあの感じ、おっちゃん(ジェレミーの父ちゃん)と同じ感じなんだ!!
俺は今更ながらにハッと気がついた。
そして正体が分かった今、アントニオは笑って答えた。
「やっぱりレノさんは勘がいいですね。そうです、俺はこの人の息子なんですよ」
「で、でも、さっき大事な人って!」
「大事な人の息子ってことだけど?」
……言い方ぁぁぁ~~ッ!!
アントニはしれッとした顔で俺に告げた。
「でも、エンキ様が結婚されたという話は聞いたことがありませんが……」
レノが尋ねれば、黙っていたエンキ様が声を上げた。
「それは私が話そう。少し長くなるから、どうぞ座って」
エンキ様に促され、俺達は空いていた三つの席に座ることにした。
そしてエンキ様は小さく息を吐いた後、俺達に昔話をしてくれた。
それは俺がまだ生まれる前の話、まだエンキ様が若い頃のお話を――――。
颯爽に現れ、二人の女の子に言ったのは琥珀色の瞳を持つ人物だった。でもその人物を見て俺は「あ」と小さく呟く。
けれど、その声は彼らには届かず、琥珀色の瞳を持つその人物はエンキ様の隣に立った。そうすれば彼女達は突然現れた人物を怪訝な顔で睨みつける。
「一体、どちら様ですの?」
「神聖国の方ではないようですけど。エンキ様の何なんです?」
棘のある声で彼女達が尋ねれば、その人物はエンキ様の肩に手を置いてにっこりと笑った。
「俺? 俺はこの人の大事な人」
その人物が告げると彼女達はよろめいた。
「ま、まさかッ!」
「え、エンキ様、本当ですの!?」
嘘だと言って! とでも言いたげな顔で二人は尋ねたが、エンキ様はこくりと頷いた。
「本当だよ。だからごめんね、二人とも」
エンキ様が告げると、二人はショックを受けた様子で何も言わずに走り去った。
その後姿をエンキ様は申し訳ない様子で眺めていたが、琥珀色の瞳を持つ人物は呆れた顔でエンキ様を見つめた。
「昔と変わらず、おモテになる事で」
「そんな事ないさ。それより久しぶりだね、元気そうで何よりだ」
エンキ様はそう言うと朗らかに笑って言った。その笑みは今まで見た事のないほどの柔らかく、眼差しには愛しさが溢れている。だからエンキ様の大事な人、と言うのは本当なのだろう。
しかし……しかしだ!!
「何が、元気そうで何より、だ。大変なことになってたくせに、連絡のひとつくらい……ん? どうしたキトリー」
琥珀色の瞳を持つ人物は俺に肩を掴まれ振り返ると、親し気に俺の名を呼んだ。
それもそうだろう、何せここに現れたのは――――。
「どうした、じゃない! アントニオッ!!」
俺は目の前にいる人物の名を叫んだ。
そう、俺の目の前にいたのは本屋を営む、俺のマイフレンド・トニ男ことアントニオだった。
「お前、ちょっとこっちにこい。話を聞かせて貰おうじゃないか。事と次第によっては、浮気ってことで許さんぞ??」
俺はぐっと拳を握ってアントニオに告げる。だがアントニオは眉間に深い皺を寄せた。
「は? なんで俺が浮気なんだよ? 何言ってるんだ?」
「何って今、浮気発言しただろ! エンキ様の大事な人は自分だって言っただろーが!」
……ちゃーんとこの目で見たんですからね!! 言い逃れは許さんゾ!
俺はフスンッと鼻息荒く言う。そうすればアントニオは「ああ」と呟くとエンキ様を見た。
「あれは言葉のアヤってやつだよ。女の子達を追っ払うにはちょうど良かっただろ? それに俺がこの人の大事な人ってのはあながち間違いじゃないし」
「やっぱり浮気かぁああぁん!!? うちのセリーナを泣かせたら、ただじゃ済まさん!」
俺はちょっとお父さん視点で告げる。本当の養父さんはお爺なんだけど。
でもお怒りモードの俺にレノが後ろから話しかけた。
「キトリー様、ちょっと」
「レノ、話は後だ。今はアントニオに事情を」
「あの。もしかしてですけど、アントニオ君はエンキ様のご子息なのでは?」
「そう、アントニオがエンキ様の息子だって話を………………は?」
俺は思わず間抜けな声を出してレノに振り返る。
「あ、アントニオがエンキ様の息子?! なんで、そんな」
「エンキ様とアントニオ君の瞳、全く一緒です。それに腕に付けている組紐も」
レノに言われて、エンキ様とアントニオの顔を見合わせれば、その瞳は良く似ている。というか、言われてみればアントニオはどこかエンキ様に似ている。
アントニオは赤髪だが、これで黒髪なら更に似る事だろう。その上、エンキ様とアントニオの組紐は全く一緒のものだった。
……どっかで見たことあるって、ここだったのか!
そして俺はなんとなくエンキ様に感じていた違和感の正体に気がつく。それはエンキ様が俺に対して妙に親切で、色々と話してくれたその理由。
……そうだ! エンキ様のあの感じ、おっちゃん(ジェレミーの父ちゃん)と同じ感じなんだ!!
俺は今更ながらにハッと気がついた。
そして正体が分かった今、アントニオは笑って答えた。
「やっぱりレノさんは勘がいいですね。そうです、俺はこの人の息子なんですよ」
「で、でも、さっき大事な人って!」
「大事な人の息子ってことだけど?」
……言い方ぁぁぁ~~ッ!!
アントニはしれッとした顔で俺に告げた。
「でも、エンキ様が結婚されたという話は聞いたことがありませんが……」
レノが尋ねれば、黙っていたエンキ様が声を上げた。
「それは私が話そう。少し長くなるから、どうぞ座って」
エンキ様に促され、俺達は空いていた三つの席に座ることにした。
そしてエンキ様は小さく息を吐いた後、俺達に昔話をしてくれた。
それは俺がまだ生まれる前の話、まだエンキ様が若い頃のお話を――――。
46
お気に入りに追加
1,187
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
天使の声と魔女の呪い
狼蝶
BL
長年王家を支えてきたホワイトローズ公爵家の三男、リリー=ホワイトローズは社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれており、悪役令息的存在とされていた。それは誰が相手でも口を開かず冷たい視線を向けるだけで、側にはいつも二人の兄が護るように寄り添っていることから付けられた名だった。
ある日、ホワイトローズ家とライバル関係にあるブロッサム家の令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムに心寄せる青年、アランがリリーに対し苛立ちながら学園内を歩いていると、偶然リリーが喋る場に遭遇してしまう。
『も、もぉやら・・・・・・』
『っ!!?』
果たして、リリーが隠していた彼の秘密とは――!?
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる