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第五章「告白は二人っきりで!」
26 レノとの会話
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「どうしました?」
「いや、なんでも」
俺はそう答えて、前を見る。
……やっぱ、あれだけ言っておきながらだけど、レノと一緒に国に帰れるのは嬉しいな。家族やみんなとも別れずに済んだし。
俺は家族や別邸で待つ家人達を思い浮かべる。そしてサラおばちゃんの事も。
……レノにサラおばちゃんを捨てさせることにならなくて本当に良かった。でも……そういや、サラおばちゃん皇女様疑惑がまだ残ってたんだよな。あの皇女様の娘はやっぱり偽物だったしぃ。
俺はちらっとレノを見る。
「さっきから何なんですか? 何か言いたい事があるのでは?」
「あ、いや……レノさ、前に俺に本物の皇女様の子供が見つかったらどうするって聞いたじゃん? あれってどういう意味だったのかなーって今更ながらに思って」
「ああ、あれですか。あれは……後で二人っきりの時に教えますよ」
「え! いいの!?」
「キトリー様が聞いたんじゃないですか」
「いや、てっきり教えてくれないのかと」
「後継問題が解決しましたからお教えしますよ。ところで、私も聞きたい事があります。エンキ様と二人で話された時、何を話したんです? 後で教えてくれる、とのことでしたが?」
レノに言われて、俺はそう言えばそんな事を言ったな、と思い出す。
……あの時はまだ皇女様の娘だって確証がなかったら伝えられなかったんだよな。あれはエンキ様と俺だけの話だったし。でももうわかった事だし、いいかな。
「あれはエンキ様に自称皇女の娘が本物じゃないって教えられたんだよ。でもあの時はまだ確証はなかったし、俺とエンキ様だけの話だったから教えられなかったの」
俺が正直に答えるとレノは少し驚いた。どうやらレノも俺が答えるとは思っていなかったらしい。
「そんな話をしていたのですか」
「そっ。だから言ったろ? ちゃんとその時になったら教えるって」
俺が告げるとレノは嬉しそうな顔を見せた。
「ありがとうございます。話してくれて」
「俺は話せることはちゃんと話すよ」
「では、もう一つ聞いても?」
レノに問いかけられて俺は「ん?」と尋ね返す。そうすればレノは笑顔で俺に聞いてきた。
「どうしてランネット様から”りっちゃん”と親し気に呼ばれているのですか?」
……なんで、それを知っているぅぅぅぅーッ!?
「な、何の事だ?」
「鐘が落ちてきた時、ランネット様はキトリー様の事を”りっちゃん”と呼んでいましたよね? それに二人は妙に親し気です。一体、どういう関係なのですか?」
「ど、どういう関係って、別に普通の関係だけど!?」
俺が誤魔化して言えばレノはじぃっと俺を見つめてくる。
「そうですか。嘘を吐かれたようですので、キトリー様が宝箱に入れて大事にしている本の数々を燃やさせていただきますね?」
「おいぃぃぃっ!! それは酷すぎるだろ!!」
……なんつーむごいことをする気だ、こいつはッ!!
「じゃあ、話してくださいますか?」
レノに尋ねられ俺はうぐっと口を閉じる。
……レノに姉ちゃんのことを話すってことは前世の事を話すってことだろ? 全然違う異世界から転生してきた記憶があるって、どう話すよ。そもそもレノは信じてくれるか?
俺は一瞬そう思うが、レノならきっとどんな荒唐無稽な話だろうと信じてくれるだろう。それに、きっとこれからもレノとの付き合いは長くなっていく。それなら前世の事を話しておいてもいいのかもしれない……いずれは。
「まー、その内にな。だから本を燃やすのは勘弁してくれ」
「わかりました。それなら止めておきましょう」
レノは聞き分けよく俺の言葉に頷いた。だから俺は思わず聞き返してしまう。
「やけにすんなり聞き入ってくれるな」
「その内に話してくれるんでしょう? なら信じて待ちます」
レノは笑って言い、俺はなんだか胸がむず痒い。人に信じられるって言うのは嬉しいけど、むず痒いモノなのだ。
「でも、早めに話してくださると嬉しいです」
「ああ、わかったよ」
俺が返事をすればレノはそれで満足したようだ。
……レノには別邸に戻った後、すこし落ち着いた頃に話してみてもいいかもな。ちょっと反応が怖いけど。
俺はそんな風に思う。
けれどレノと歩き、庭園内の四阿へと足を伸ばせば、若い女の子の声が聞こえてきた。
「エンキ様! 私はまだ諦めてませんわ!」
「私だって! ずっとエンキ様のお嫁さんになれると思っていたのですから!」
その声のする方を見れば、四阿内の椅子に座るエンキ様が二人の女の子に言い寄られていた。というか、二人はジルド&エルダー枢機卿の娘たちだった。
「な、レノ。あれって枢機卿達の娘だよな? 確か、話はなかったことになったんじゃなかったっけ?」
「そのようでしたが、本人たちは諦めていなかったようですね」
俺達はこそこそっと話しつつ庭園の物陰から、女の子二人に言い寄られるエンキ様を眺めた。
「エンキ様、好きなんです。どうか付き合うだけでも考えてください!」
「それなら私だって! エンキ様、私を選んでください!」
女の子達は押せ押せでエンキ様に言い寄る。なかなかガッツのある女の子達だ。けれどエンキ様は困り顔で二人を宥めた。
「二人とも、悪いが私は誰とも生涯番うつもりはないんだ。私には心に想う大切な人がいるから」
エンキ様はハッキリと断った、しかし。
「それでも構いません。きっと私が忘れさせて見せます!」
「いいえ、私が!!」
二人は言い合うと互いに睨み合う。さながら男女の修羅場だ。
……まあ、エンキ様は巻き込まれてるだけって感じだけど。モテる男は辛いってやつだな。
「そろそろエンキ様を助けるか」
「そうですね」
俺はレノと話し、エンキ様の救援に向かおうと一歩を踏み出そうとした。
けれど、そこに突如として第三者が現れた。
「お嬢さん方、申し訳ないけどこの人の事は諦めてくれるかな?」
「いや、なんでも」
俺はそう答えて、前を見る。
……やっぱ、あれだけ言っておきながらだけど、レノと一緒に国に帰れるのは嬉しいな。家族やみんなとも別れずに済んだし。
俺は家族や別邸で待つ家人達を思い浮かべる。そしてサラおばちゃんの事も。
……レノにサラおばちゃんを捨てさせることにならなくて本当に良かった。でも……そういや、サラおばちゃん皇女様疑惑がまだ残ってたんだよな。あの皇女様の娘はやっぱり偽物だったしぃ。
俺はちらっとレノを見る。
「さっきから何なんですか? 何か言いたい事があるのでは?」
「あ、いや……レノさ、前に俺に本物の皇女様の子供が見つかったらどうするって聞いたじゃん? あれってどういう意味だったのかなーって今更ながらに思って」
「ああ、あれですか。あれは……後で二人っきりの時に教えますよ」
「え! いいの!?」
「キトリー様が聞いたんじゃないですか」
「いや、てっきり教えてくれないのかと」
「後継問題が解決しましたからお教えしますよ。ところで、私も聞きたい事があります。エンキ様と二人で話された時、何を話したんです? 後で教えてくれる、とのことでしたが?」
レノに言われて、俺はそう言えばそんな事を言ったな、と思い出す。
……あの時はまだ皇女様の娘だって確証がなかったら伝えられなかったんだよな。あれはエンキ様と俺だけの話だったし。でももうわかった事だし、いいかな。
「あれはエンキ様に自称皇女の娘が本物じゃないって教えられたんだよ。でもあの時はまだ確証はなかったし、俺とエンキ様だけの話だったから教えられなかったの」
俺が正直に答えるとレノは少し驚いた。どうやらレノも俺が答えるとは思っていなかったらしい。
「そんな話をしていたのですか」
「そっ。だから言ったろ? ちゃんとその時になったら教えるって」
俺が告げるとレノは嬉しそうな顔を見せた。
「ありがとうございます。話してくれて」
「俺は話せることはちゃんと話すよ」
「では、もう一つ聞いても?」
レノに問いかけられて俺は「ん?」と尋ね返す。そうすればレノは笑顔で俺に聞いてきた。
「どうしてランネット様から”りっちゃん”と親し気に呼ばれているのですか?」
……なんで、それを知っているぅぅぅぅーッ!?
「な、何の事だ?」
「鐘が落ちてきた時、ランネット様はキトリー様の事を”りっちゃん”と呼んでいましたよね? それに二人は妙に親し気です。一体、どういう関係なのですか?」
「ど、どういう関係って、別に普通の関係だけど!?」
俺が誤魔化して言えばレノはじぃっと俺を見つめてくる。
「そうですか。嘘を吐かれたようですので、キトリー様が宝箱に入れて大事にしている本の数々を燃やさせていただきますね?」
「おいぃぃぃっ!! それは酷すぎるだろ!!」
……なんつーむごいことをする気だ、こいつはッ!!
「じゃあ、話してくださいますか?」
レノに尋ねられ俺はうぐっと口を閉じる。
……レノに姉ちゃんのことを話すってことは前世の事を話すってことだろ? 全然違う異世界から転生してきた記憶があるって、どう話すよ。そもそもレノは信じてくれるか?
俺は一瞬そう思うが、レノならきっとどんな荒唐無稽な話だろうと信じてくれるだろう。それに、きっとこれからもレノとの付き合いは長くなっていく。それなら前世の事を話しておいてもいいのかもしれない……いずれは。
「まー、その内にな。だから本を燃やすのは勘弁してくれ」
「わかりました。それなら止めておきましょう」
レノは聞き分けよく俺の言葉に頷いた。だから俺は思わず聞き返してしまう。
「やけにすんなり聞き入ってくれるな」
「その内に話してくれるんでしょう? なら信じて待ちます」
レノは笑って言い、俺はなんだか胸がむず痒い。人に信じられるって言うのは嬉しいけど、むず痒いモノなのだ。
「でも、早めに話してくださると嬉しいです」
「ああ、わかったよ」
俺が返事をすればレノはそれで満足したようだ。
……レノには別邸に戻った後、すこし落ち着いた頃に話してみてもいいかもな。ちょっと反応が怖いけど。
俺はそんな風に思う。
けれどレノと歩き、庭園内の四阿へと足を伸ばせば、若い女の子の声が聞こえてきた。
「エンキ様! 私はまだ諦めてませんわ!」
「私だって! ずっとエンキ様のお嫁さんになれると思っていたのですから!」
その声のする方を見れば、四阿内の椅子に座るエンキ様が二人の女の子に言い寄られていた。というか、二人はジルド&エルダー枢機卿の娘たちだった。
「な、レノ。あれって枢機卿達の娘だよな? 確か、話はなかったことになったんじゃなかったっけ?」
「そのようでしたが、本人たちは諦めていなかったようですね」
俺達はこそこそっと話しつつ庭園の物陰から、女の子二人に言い寄られるエンキ様を眺めた。
「エンキ様、好きなんです。どうか付き合うだけでも考えてください!」
「それなら私だって! エンキ様、私を選んでください!」
女の子達は押せ押せでエンキ様に言い寄る。なかなかガッツのある女の子達だ。けれどエンキ様は困り顔で二人を宥めた。
「二人とも、悪いが私は誰とも生涯番うつもりはないんだ。私には心に想う大切な人がいるから」
エンキ様はハッキリと断った、しかし。
「それでも構いません。きっと私が忘れさせて見せます!」
「いいえ、私が!!」
二人は言い合うと互いに睨み合う。さながら男女の修羅場だ。
……まあ、エンキ様は巻き込まれてるだけって感じだけど。モテる男は辛いってやつだな。
「そろそろエンキ様を助けるか」
「そうですね」
俺はレノと話し、エンキ様の救援に向かおうと一歩を踏み出そうとした。
けれど、そこに突如として第三者が現れた。
「お嬢さん方、申し訳ないけどこの人の事は諦めてくれるかな?」
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