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第四章「ディープな関係!?」

15 ズモッ

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「ヤバい。ひっじょーにヤバい」

 ……アシュカとキッスしたなんてレノにバレたら、速攻ヤラレルッ!!

 俺はベッドの上で恐怖に慄いていた。

「これは何としても隠さなければ」

 俺は心の中で強く決意する。しかしそこへタイミングよくドアがノックされた。

「ヒャッ!?」
「キトリー様、失礼しますよ。……って、何してるんですか」

 入ってきたレノは窓辺のカーテンに包まって隠れている俺をすぐに見つけ、呆れた様子で聞いてきた。

「い、いやー。か、かくれんぼ?」
「隠れるならもっとちゃんと隠れてください」

 レノに注意され、俺は大人しく「はい」と答えてカーテンから出る。しかし歩み寄ってきたレノは俺の目の前に立つと、じっと俺を見た。

「な、なに?」

 俺が尋ねれば、レノは容赦なくズモッと俺の頬を片手で挟んだ。おかげで俺の口はタコになる。

「にゃ、いきなしにゃにしゅんだ!」
「キトリー様、私に何かいう事があるんじゃありませんか?」

 レノはにっこり笑って俺に聞いてきた。なので俺はドキッ! と胸が高鳴る。勿論、ときめきではなく恐怖の方で。

 ……てか、どうしてもう知ってんの!? 見てたのか?! ……うーん。この粘着ストーカー・レノならやりかねん。

 俺はそう思うが、とりあえず誤魔化してみる。

「にゃ、にゃんにょこちょかにゃ~?」
「今の内に言った方が身の為ですよ? 湖から帰ってきてからずっと様子がおかしいですからね。何かありましたよね? 湖で」

 レノはそう俺に尋ねてきた。どうやらアシュカにキッスをされた事はまだ知られていないようだ。

「にゃにいっちぇんだ。ザャックたちがいちゃのに、にゃにがおきぃるってんだ」
「まあ、それはそうなんですけど。どうも、アナタの様子がおかしいですからねぇ?」

 レノはじぃーっと赤い瞳で俺を見つめる。それはさながら蛇の目で……あわわわっ。

「おかしくないもん。ちょっとかんがえぎょとしてただけだもん」
「そうですか。……ならキトリー様を信じます」

 レノはそう言うと頬を挟んでいた手を離した。なので俺はホッとするが、そこはやっぱりレノだった。

「でも、嘘を吐いていた場合には私のお願い事をなんでも一つ聞いてもらいますからね?」
「えっ!?」
「おや? 何もなかったんですよね?」

 レノはちらりと俺を見る。なので俺は反射的に。

「な、何もなかった!」

 そう言ってしまった。

 ……なんで、嘘ついちゃうんだ俺! しかもお願い事って俺に何をさせるつもりだ!?

 俺は不安げにレノを見る。そうすれば、レノはニコォッと楽し気に笑った。ひぇぇぇ!

 ……ヤバい。これはひっじょーにヤバい!! 絶対、俺に何かさせる気だ。これは何がなんでも隠し通さねば!!

「では、夜も遅いので私はこれで失礼します」
「もしかして、それだけを言いに来たのか?」
「ええ、そうですよ。今日も明かりは自分で消してくださいね。昨晩、消してませんでしたよ」

 レノに今更チクリと言われ、俺はうぐっと口を歪める。

「わ、悪かったよ。今日はちゃんと消すから」
「なら、結構。今日遊んだ分、明日はまた目を通して頂く書類がありますから、夜更かししないように」

 レノに言われ俺は素直に「おう」と答える。そうすればレノは「では失礼します」と言って俺から離れ、ドアへと向かった。
 その後姿に俺はホッとする。だが、いつもの如くレノは出て行く前に俺に振り返り、微笑んだ。

「ああ、坊ちゃん。私は信じてますが、嘘を吐いていた場合は覚悟しておいてくださいね?」

 レノはそう言うと部屋を出て行った。だから俺はプルプルと震える。

 ……あいつ、本当は知ってんじゃねーのか?! てか覚悟って何!? 俺にいやらしいプレイでもさせるつもりか?!

 そう思った時、俺の脳内に前世で姉(マイシスター)が読んでいたハードな監禁・凌辱もののBL本が蘇る。受(うけ)につけさせる手錠や縄、コスプレ、そして攻(せめ)が手にする数々の大人の玩具たち。童貞だから見た事も触った事もないのに知識だけはしっかりある俺、なので。

 ……キャァァーーッ、ハレンチよぉぉぉーーッ!!

 俺は心の中で大絶叫し、昨夜と同じようにゴロンゴロンっとしばらくベッドの上を転げた。そして当然の如く、この日の夜も俺は明かりをつけたまま寝てしまったのだった。

 
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