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47 目が覚めて
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シュリから飲み物を手渡された後、俺は目を覚ました。
……体が怠い、喉が渇いた。
俺はぼんやりと目を開け、天井を見上げた。遮光カーテンが窓をさえぎり、隙間から明るい光が部屋の中に入っている。
その光の強さから、まだ日中のようだ、と俺は推測する。だがすぐに、なんで日中にベッドで眠っているんだ?! と慌てて体を起こした。すると体の違和感にすぐ気がつく。
……体が軽い? それにどうして服がぶかぶかに?
俺は不思議に思って大きくなっている服を掴んだ。するとあり得ないものが見えて俺は目を瞬かせる。
そこにあったのは肌色の体毛が無い、普通の人種の手だったからだ。
「っ!?!?」
俺は信じられなくて両手をまじまじと見返す、大きい服の袖から出た人種の手。そしてハッとして自分の顔を触ると、そこには長い鼻も毛深い顔も、牙さえなくなっていた。
嘘だろうッ!?
俺は急いでベッドから降り、感覚のおかしな体を動かして、大きな服に足を引っかけそうになりながら、寝室の隣のバスルームに駆け込んだ。
そして鏡に映ったのは、見たこともない人種の男だった。
鏡に映る男は一瞬呆け、ちょっとしてから自分の顔をぺたぺたと触る。それは俺と同じ行動をしていた。黒髪に慣れ親しんだ黄色の瞳、父さんによく似て、でも目元はどこか母さんに似ている男がそこにいる。そして俺はようやく鏡に映っているのが俺だと理解した。
「……なんで、こんなことが」
俺は唖然として呟き、困惑した。
……お、思い出せ、どうしてこうなったのか。
俺は回らない頭でぐるぐると考え、必死に考えようとした。どうしてこんな風に変化してしまったのか。
でも、そんな折、バスルームのドアが急に開いた。
油断していた俺は子供のように「うわっ!」と驚いて声を上げて、身を構える。振り返ってみれば、ドアを開けたのはシュリだった。
「やっぱりここにいた。目が覚めたみたいだな……。うん、ちゃんと人種化してるな!」
シュリはにこっと笑って言い、俺はハッとシュリにあの得体のしれない飲み物を飲まされたことを思い出した。
「シュリ! あれは何だったんだ!? どうして俺はこんな姿に!」
俺はシュリに詰め寄り、尋ねた。人種化して俺は185㎝ぐらいに縮んだのか、どこかシュリとの視線が近い。その事にちょっとドキッとした俺だが、シュリは何気なく答えた。
「あれは獣人を人種化する薬なんだ」
「人種化!?」
そんな薬が存在するのか!? と思うとシュリは俺の心を読んだように話を続けた。
「あれは俺がオリジナルで作ったものだ。昔、ウィリアに作って欲しいって頼まれてね」
「ウィリア? 俺と同じ狼の獣人だったっていう?」
「そ、ウィリアもアレクシスと同じように獣人の姿に悩んでいた時があったんだ。自分の見かけじゃ、エルサルの相手になれないって。それで俺に作って欲しいって頼んできたんだ……それを思い出してさ。薬を作ったんだ」
シュリの話に俺は考える。
ウィリアという人は俺とよく似ているらしい。そしてエルサルはとてつもなく美人だ。そんな美人の相手なんて務まるわけないと思うのは容易に想像できる。
「けど、それで、どうして俺に?」
「ウィリアが言ったんだ。薬のおかげで目が覚めた、自分である事に誇りが持てたって……アレクシスは自分の姿が好きじゃないんだろう? でも人種化したらと思って」
シュリはそう説明してくれた。それにしたって、これは。
俺は自分の手と鏡に映った顔をもう一度、見る。そこには見慣れない、でも確かに俺がそこにいる。
夢にまでみた姿だ。もう毛深くもなく、長い鼻もない、牙すらも。みんなと同じ人の形をかたどっている。けれど自分じゃないみたいで違和感ばかりだ。
「ま、効力は一週間ほどだ。今はその姿を楽しんだらいい」
シュリはそう言った。けれど、俺はむっと眉間に皺を寄せる。
「一週間?! 一週間って言ったか!?」
俺はシュリの肩を掴んで揺さぶった。
「ああ、大体一週間だ。短くて六日、長くて八日だな」
「そうじゃなくてっ! 明後日には陛下の警護が! それに服!」
人種化してしまった俺の体は少し縮み、今の服は着れないだろう。どうしたら!?
そう思うとシュリがにまっと笑って、答えた。
「服は大丈夫だぞ! ロニーが服の調達をしてくれた。ネイズよりちょっと大きいめの服をルルのところに頼んだって言っていたぞ。ミシャが俺の服もできてるからって、夕方過ぎには一緒に配達してくれるそうだ。あとロニーが今日はもうゆっくり休んでいいって。後の事はしておきますって言っていた。それとだな、明日、ネイズとルサディアが顔を出しに来いって」
シュリは途中からズボンのポケットに入れていたメモを取り出して俺に言った。ちらりと覗いてみると、隊長に伝えること! とロニーの文字が書かれている。
しかし不意に疑問に思う。ここは寮の俺の部屋だ、一体いつ帰ってきたのだろうか? と。
それが顔に出ていたのか、シュリが俺の心を読むのがうまくなったのか、シュリはさらっと答えた。
「あの薬を飲んだ後。アレクシス、倒れちゃったから、俺が移動魔術でここに連れてきたんだ。でもその前にロニーが戻ってきてくれて、色々驚きながら手配してくれたぞ。……あ、それとロニーも変身後の姿をじっくり見たいから、明日は早めに隊長室に来てくださいね! って言ってた」
シュリは俺に告げ、俺ははぁーっと盛大なため息を吐いた。
ずっと願い続けていた夢だった。でも突然すぎて、俺は喜ぶ、というよりも戸惑いの方が大きかった。それに何となく恥ずかしい。この姿で一週間。……一週間と言っても、なかなかの長さだ。ずっと隠れていたいが、そうもいかないだろう。体調が悪いと言って部屋に引きこもっていても、俺が人種化したことを聞いているのなら、向こうから俺に会いに来るはずだ。それに明後日には誕生祭もある。俺が抜けると配置が変わってしまう。……俺に選択肢はないという事だ。はぁぁぁぁぁっ。
頭をもたげる俺に、俺を勝手に人種化した張本人は何食わぬ顔をして笑った。
「きっと明日から大変だぞ?」
そりゃそうだ。と俺は思ったが、シュリの言った言葉を身に染みてわかるのは、明日になってからなってからだった。
* * * * * * * * *
日常が忙しく、18日までお休みします。すみません(;・ω・)
続きはしばしお待ちくださいませ。
……体が怠い、喉が渇いた。
俺はぼんやりと目を開け、天井を見上げた。遮光カーテンが窓をさえぎり、隙間から明るい光が部屋の中に入っている。
その光の強さから、まだ日中のようだ、と俺は推測する。だがすぐに、なんで日中にベッドで眠っているんだ?! と慌てて体を起こした。すると体の違和感にすぐ気がつく。
……体が軽い? それにどうして服がぶかぶかに?
俺は不思議に思って大きくなっている服を掴んだ。するとあり得ないものが見えて俺は目を瞬かせる。
そこにあったのは肌色の体毛が無い、普通の人種の手だったからだ。
「っ!?!?」
俺は信じられなくて両手をまじまじと見返す、大きい服の袖から出た人種の手。そしてハッとして自分の顔を触ると、そこには長い鼻も毛深い顔も、牙さえなくなっていた。
嘘だろうッ!?
俺は急いでベッドから降り、感覚のおかしな体を動かして、大きな服に足を引っかけそうになりながら、寝室の隣のバスルームに駆け込んだ。
そして鏡に映ったのは、見たこともない人種の男だった。
鏡に映る男は一瞬呆け、ちょっとしてから自分の顔をぺたぺたと触る。それは俺と同じ行動をしていた。黒髪に慣れ親しんだ黄色の瞳、父さんによく似て、でも目元はどこか母さんに似ている男がそこにいる。そして俺はようやく鏡に映っているのが俺だと理解した。
「……なんで、こんなことが」
俺は唖然として呟き、困惑した。
……お、思い出せ、どうしてこうなったのか。
俺は回らない頭でぐるぐると考え、必死に考えようとした。どうしてこんな風に変化してしまったのか。
でも、そんな折、バスルームのドアが急に開いた。
油断していた俺は子供のように「うわっ!」と驚いて声を上げて、身を構える。振り返ってみれば、ドアを開けたのはシュリだった。
「やっぱりここにいた。目が覚めたみたいだな……。うん、ちゃんと人種化してるな!」
シュリはにこっと笑って言い、俺はハッとシュリにあの得体のしれない飲み物を飲まされたことを思い出した。
「シュリ! あれは何だったんだ!? どうして俺はこんな姿に!」
俺はシュリに詰め寄り、尋ねた。人種化して俺は185㎝ぐらいに縮んだのか、どこかシュリとの視線が近い。その事にちょっとドキッとした俺だが、シュリは何気なく答えた。
「あれは獣人を人種化する薬なんだ」
「人種化!?」
そんな薬が存在するのか!? と思うとシュリは俺の心を読んだように話を続けた。
「あれは俺がオリジナルで作ったものだ。昔、ウィリアに作って欲しいって頼まれてね」
「ウィリア? 俺と同じ狼の獣人だったっていう?」
「そ、ウィリアもアレクシスと同じように獣人の姿に悩んでいた時があったんだ。自分の見かけじゃ、エルサルの相手になれないって。それで俺に作って欲しいって頼んできたんだ……それを思い出してさ。薬を作ったんだ」
シュリの話に俺は考える。
ウィリアという人は俺とよく似ているらしい。そしてエルサルはとてつもなく美人だ。そんな美人の相手なんて務まるわけないと思うのは容易に想像できる。
「けど、それで、どうして俺に?」
「ウィリアが言ったんだ。薬のおかげで目が覚めた、自分である事に誇りが持てたって……アレクシスは自分の姿が好きじゃないんだろう? でも人種化したらと思って」
シュリはそう説明してくれた。それにしたって、これは。
俺は自分の手と鏡に映った顔をもう一度、見る。そこには見慣れない、でも確かに俺がそこにいる。
夢にまでみた姿だ。もう毛深くもなく、長い鼻もない、牙すらも。みんなと同じ人の形をかたどっている。けれど自分じゃないみたいで違和感ばかりだ。
「ま、効力は一週間ほどだ。今はその姿を楽しんだらいい」
シュリはそう言った。けれど、俺はむっと眉間に皺を寄せる。
「一週間?! 一週間って言ったか!?」
俺はシュリの肩を掴んで揺さぶった。
「ああ、大体一週間だ。短くて六日、長くて八日だな」
「そうじゃなくてっ! 明後日には陛下の警護が! それに服!」
人種化してしまった俺の体は少し縮み、今の服は着れないだろう。どうしたら!?
そう思うとシュリがにまっと笑って、答えた。
「服は大丈夫だぞ! ロニーが服の調達をしてくれた。ネイズよりちょっと大きいめの服をルルのところに頼んだって言っていたぞ。ミシャが俺の服もできてるからって、夕方過ぎには一緒に配達してくれるそうだ。あとロニーが今日はもうゆっくり休んでいいって。後の事はしておきますって言っていた。それとだな、明日、ネイズとルサディアが顔を出しに来いって」
シュリは途中からズボンのポケットに入れていたメモを取り出して俺に言った。ちらりと覗いてみると、隊長に伝えること! とロニーの文字が書かれている。
しかし不意に疑問に思う。ここは寮の俺の部屋だ、一体いつ帰ってきたのだろうか? と。
それが顔に出ていたのか、シュリが俺の心を読むのがうまくなったのか、シュリはさらっと答えた。
「あの薬を飲んだ後。アレクシス、倒れちゃったから、俺が移動魔術でここに連れてきたんだ。でもその前にロニーが戻ってきてくれて、色々驚きながら手配してくれたぞ。……あ、それとロニーも変身後の姿をじっくり見たいから、明日は早めに隊長室に来てくださいね! って言ってた」
シュリは俺に告げ、俺ははぁーっと盛大なため息を吐いた。
ずっと願い続けていた夢だった。でも突然すぎて、俺は喜ぶ、というよりも戸惑いの方が大きかった。それに何となく恥ずかしい。この姿で一週間。……一週間と言っても、なかなかの長さだ。ずっと隠れていたいが、そうもいかないだろう。体調が悪いと言って部屋に引きこもっていても、俺が人種化したことを聞いているのなら、向こうから俺に会いに来るはずだ。それに明後日には誕生祭もある。俺が抜けると配置が変わってしまう。……俺に選択肢はないという事だ。はぁぁぁぁぁっ。
頭をもたげる俺に、俺を勝手に人種化した張本人は何食わぬ顔をして笑った。
「きっと明日から大変だぞ?」
そりゃそうだ。と俺は思ったが、シュリの言った言葉を身に染みてわかるのは、明日になってからなってからだった。
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日常が忙しく、18日までお休みします。すみません(;・ω・)
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